夕美の幸福(ED3続編「『あのとき』はもう一度」後日談・『夕美シリーズ』完結編)

私を本気で愛してくれる人のために……
ウェディング夕美
……それから数日後のある日、私はあることをした。
「まだ早い」と言われそうだけれど、私としては「遅かった」くらいだ。
何故もっと早く気が付かなかったのだろう……。

その「計画」は、私が昔の物を整理している時に思い付いた。
考えてみれば、これが私にとって生まれて初めてのことだったのだ。
「好きな男にラブレターを出す」なんて……。

その日の夜遅く、私は手紙を隆道君の家の郵便受けに投函した。
翌日の午後、私は「ある場所」にいた。
しばらくすると、隆道君が来た。

隆道:「夕美、こんな所に呼び出して、どうしたんだよ?それも手紙で。」
夕美:「何言ってるの。呼び出したのは隆道君……、
いえ、藤堂君のほうじゃない。忘れちゃったの?」
隆道:「え?」

私は、少し色褪せた便箋を取り出した。
その便箋の中には、シャープペンシルで文字の書いてある紙が入っている。
何故「シャープペンシル」と断定できるのかと言うと、
その手紙を書いた本人が当時シャープペンシルしか使っていなかったことを、
私は「ある出来事」から知っているからだ。

隆道君が便箋を受け取り紙を取り出すと同時に、……私は暗唱を始めた。

夕美:「……『鹿島夕美さんへ。えっと、藤堂です。
この間の相性のことで、ちょっと話したいと思います。
クラスのみんなには聞かれたくない話なので、
できたら放課後、体育用具室の裏に来て下さい。
真剣に……待ってます。藤堂隆道』……。」

隆道君は紙の文字を見ず、私の目を見た。
……隆道君は驚いていた。

夕美:「十年近く経って、……やっと『二人っきり』になれたね。」
隆道:「ゆ、夕美……。な、何故、これを……?」
夕美:「私、『あの手紙捨てた』なんて一言も言ってないじゃない。
ちゃんと受け取ってたんだよ?……私もつい最近まで忘れちゃってたけど。」
隆道:「…………。」
夕美:「私、この手紙を貰った時から、ずっと隆道君だけを見てきたんだよ?
……隆道君、これでも『私が手紙を他人に見せた』って思ってる?」
隆道:「……い、いや。」
夕美:「隆道君、もう一度聞くよ?……私と……私と結婚してくれる?」
隆道:「あ、ああ。もちろん。」

隆道君は『あのとき』と同じように即答した。
……でも、隆道君の気持ちが『あのとき』とは違うことは、私にはわかっている。

夕美:「……ありがとう……。」

……私は隆道君に抱き付いていた。
私の方が積極的なのは小学校のときから変わらない。
でも、こういうカップルがいても、全然変じゃないと思う。

夕美:「隆道君、愛してる。」
隆道:「夕美……愛してる。」

びゅう!

……風が吹いた。
隆道君が私を抱き止めるために手を開いた拍子に
紙と便箋が隆道君の手から離れ、そのまま風に流されていく。
でも、隆道君も私も、そのまま動こうとしなかった。
あんな『紙切れ』より大切なものが、私たちはお互いにできたのだから……。

…………。

……そして今、私はウェディングドレスを着て、
隆道君と一緒に結婚式場にいる。
あの役立たず(失礼!)の三人組を始め大勢の招待客の見守る中、
花束贈呈の段になる。
父の顔を見た私の目から、涙が溢れ出している。
……父も、涙を流している。
周りから見れば恐らく「当たり前の」光景だろう。
しかし、父と私の涙の「本当の」意味は、恐らく父と私自身しか知らない。

この後、私は『KANA』のプレートのある部屋の
隣の部屋で「初夜」を過ごすことになっている。
『KANA』のプレートのある部屋はきれいに掃除してあるけれど、
本棚はそのまま置いてある。
隆道君は何も言わないけれど、もしかしたら、
無意識のうちにまだ加奈ちゃんの幻影を追っているのかもしれない。
私としては、「私たちの」ベッドの枕元に
『夕美ちゃん人形』が二体置いてあることが唯一の救いだけれど……。

しかし、私は絶対にくじけない。
加奈ちゃんは隆道君と違う世界に行ってしまったけれど、
私は今、隆道君の隣にいられるのだから……。

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