夕美の幸福・ED1編

あれから数ヶ月後のある雨の日、俺は街で見知った女性を見かけた。
その女性は傘を持っていないらしく、雨宿りをしているようだった。
俺は意を決してその女性に声をかけた。

隆道:「……久しぶり。」
夕美:「あ、藤堂君。」

その女性、鹿島夕美は俺を見ても嬉しそうな顔をしなかった。

隆道:「夕美、まだ怒ってるのか?」
夕美:「別にいいよ、そんなこと。……それより、
これから私のことを『夕美』なんて気安く呼ばないでくれる?」
隆道:「え?」

その言葉の意味を理解する前に、俺の背後から聞き覚えのある声がした。

仁敏:「夕美さん、お待たせ。」
夕美:「あ、仁敏さん!」

初めて夕美が笑った。俺ではなく中根に向かって。
中根は俺を見つけると、怪訝そうに言ってきた。

仁敏:「あれ?藤堂さん。夕美さんに何か用ですか?」
隆道:「いや、夕美が傘が無くて困ってるようだったから……。」
仁敏:「もう藤堂さんがそんな心配する必要はないですよ。」
隆道:「……え?」
仁敏:「藤堂さんは夕美さんを裏切って他の女性を選んだ。
藤堂さんにはもう夕美さんを幸せにする資格がないんです。
藤堂さんが幸せにすべき女性は他にいらっしゃるはずですから。」

それは……そうかもしれないが、それなら中根には『資格』が……?

夕美:「そういうこと。それじゃ藤堂君、……ばい。」

中根の傘に入りながら、夕美は俺に左手を振った。
その時、俺は初めて夕美の指に光るものを見つけた。

夕美:『私、お見合いをすることにしたわ。』

隆道:「そうか、夕美の見合い相手って……。」
夕美:「私、藤堂君より好きな人ができたの。
……って言うより、私を『本気で』愛してくれる人が……。」

夕美は俺に背を向けて腕を中根の腕にからめた。

そう、俺は生まれて初めて女に振られた。
しかし、俺に不快感はなく……

隆道:「鹿島、幸せにしてもらえよ!」
夕美:「藤堂君こそ、もう他の女に手を出したら駄目だよ!」

……鹿島と俺はそれぞれ別の道を歩き始めたことを自覚した。

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