「文章を書くのは、いいことだね。
自分の気持ちが、よく整理できるから」(藤堂加奈)

僕同様「加奈〜いもうと〜」のSSを書いている方々が
同じ気持ちであれば、嬉しいです。

夕美小説・「命をみつめて」編
(ED6のルート・ネタバレあり・シリアス)

『蜜月』までは「夕美小説(ED3のルート)」と同様です。

☆お見舞いの品

外を歩いていると、偶然、藤堂君に会った。
前に街で会った時同様、藤堂君は嬉しそうじゃなかった。

「妹さんへの見舞いの品が欲しい」というので、私はフェスタに連れていった。
藤堂君が女性ものの小物に詳しくないことは、予想がついた。

藤堂君、「第二ボタン」以外に私に何かプレゼントしてくれたこと、
……あっただろうか。

その日、珍しく藤堂君はホテルに行くことを断った。

☆『初めて』のお見舞い

それからしばらく後、外を歩いていると、また、藤堂君に会った。
今度はご両親も一緒だった。

私は、練習どおり自己紹介した。

父:「これで我が家も安泰かな。」

よかった、悪い印象は持たれていないようだ。
妹さんの見舞いに行くと言うので、当然、私もついていった。
藤堂君と私は、恋人同士なのだから。

隆道:「予行演習してたな?」
夕美:「ばれたか。」

藤堂君は、私の両親に自己紹介するときは
ぶっつけ本番でするつもりなのだろうか?
そんな度胸、あるのだろうか。
いえ、それより、いつ、藤堂君は私の両親に
会ってくれるのだろう……。

妹さんの病室に入る直前、藤堂君は奇妙なことを言い出した。

隆道:「加奈はブラコンの気があるんだ。だから、
『大学関係の友人』ということにしておいてくれ。」
夕美:「え?」

私は……引き受けた。他の誰でもない、
私の恋人の藤堂君の頼みだから……。

それから、私は『初めて』妹さんと対面した。

藤堂君も妹さんの加奈ちゃんも、言葉少なげだった。
でも、私一人でも、しゃべり続けた。

藤堂君も加奈ちゃんも、私の大切な人だから……。

花が枯れかかっていたので、持ってきた花束と花瓶を持って部屋から出た。
部屋から帰ってくると、……加奈ちゃんは苦しみ、悶えていた。

最初で最後の加奈ちゃんのお見舞い。
……加奈ちゃんと私の会話は、それですべてだった。

☆突然の別れ

夜、藤堂君から電話がきた。

……訳がわからなかった。
「私と別れたい」と言うのだ。

私がさんざん理由を求めて、……やっと藤堂君は答えた。

隆道:『守るべき、大切な人がいたんだよ。
……お前とは、付き合えない。』

私は耳を疑った。
『守るべき、大切な人』とは、私のことではなかったのか……。

隆道:「比べて、選んだ。」
夕美:「誰なの?どうして?」

藤堂君は答えてくれない。
「すまない」を繰り返すだけだった。

夕美:「そう……なんだ。」

私は電話を切った。
その後数日間、私は何をしていたのか、……覚えていない。

その数日後、藤堂君の家に電話して……誰も出なかった。
父から「加奈ちゃんが最後の退院をした」ということを聞いていた。
でも、出なかった。

☆病院にて……

「加奈ちゃんの容体が悪化した」と聞かされたので、
病院に行った。行けば藤堂君に会えると思ったから。

藤堂君は、誰かと言い争いをしていた。

隆道:「ああ、……血の繋がらない兄だけどな!」
夕美:「え?それって……本当なの?」

そして、藤堂君とその男の子は殴り合いを始めた……。

……私は藤堂君と病院のベンチに座っていた。
私は、よりを戻そうとしたけれど、無駄だった。

代わりに、藤堂君はしゃべり始めた。
私は席を立った。

「藤堂君は、妹さんだけを愛している」
……それさえわかれば、充分だった。

☆最期

その日は寒い夜だった。……雪が降っていた。
「加奈ちゃんが危篤だ」というので、雪の中カーディガンを羽織って行った。

病室に入ると、藤堂君と加奈ちゃんと看護婦の近藤美樹さんがいた。
三人とも、眠っていた。……加奈ちゃんも、「まだ」眠っていた。

藤堂君は、加奈ちゃんの手を握ったまま眠っていた。
私は、藤堂君に私の羽織っているカーディガンを掛けてあげた。(注1)

藤堂君、私からだって気づかないかもしれないけど、
……でも、もう慣れてる。

夕美:「藤堂君……。君たちのこと、おじさまとおばさまから聞いた。
おじさま、藤堂君は昔の自分の言葉を守ったって、誉めてた。
……でも、私のことも、もう少し考えてほしかった。
私も、藤堂君と一緒に加奈ちゃんを送りたい。
……でも、私は邪魔なんだね。」

藤堂君の寝顔は……幸せそうだった。

夕美:「……藤堂君、いつも、突然すぎるよ……。
もう少し、私にも意見を言う時間をちょうだい。
……もう少し……私にも……考える時間を……ちょうだい……。」

……「死に逝く人を送る涙」以外の涙を流すべきではない。
病室から出て行くことが、そのときの私の義務だった。

「自分の好きな人の妹さんの最期を見取ることができなかった」
ということで一生後悔するかもしれないけれど……仕方が無かった。

その翌日……、「その直後加奈ちゃんが亡くなった」ということを、
父から知らされた。

☆命をみつめて

加奈ちゃんのお葬式には私も参列した。(注2)
藤堂君とは、なるべく顔を合わせないようにした。

数ヶ月後、『命をみつめて』という本が評判だというので、読んだ。
第五版が出ているほどの売れ行きの本だった。
そこには、加奈ちゃんのことや、肝移植のことが書いてあった。
現代の話題に即した、いかにも売れそうな本だった。

正直言って、私は今でも恨んでいる。
あんな振り方をした男を、そう簡単に許せるはずがない。
その原因になった女も……。

許せない一番の理由は「何故あのとき正直に教えてくれなかったのか」
ということ。「あの溝」は、永遠に埋まらない。
加奈ちゃんは、もうこの世にいないのだから。

……でも、許さなければ、「鬼ばば」だとみんなから言われそうだ。

そう言えば、明日、病院で紅葉狩りがある。
それに藤堂君を誘おう。誘って、藤堂君の真意を確かめよう。
……私をもう一度愛してくれるのかどうか。
私には、加奈ちゃんと違って、まだ時間があるのだから……。(注3)

注1−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「美樹さんが掛けてくれた」と隆道が「思い込んだ」だけで、
実際に誰が掛けたかは書いてなかったので……。
「両親(父)が掛けた」とも考えられますが、このほうがいいでしょう(笑)
実は、これと同じ様なシチュエーション、「加奈〜いもうと〜」発売前に
自作ゲームで使いました(拙作TOWNS用RPG「Gの紋章」)。
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注2−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ごめんなさい、
夕美小説(ED3のルート)で葬式の場面入れるの
忘れました。まあ、皆さんの想像どおりになると思いますが。
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注3−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「この後夕美と香奈と隆道で三角関係が展開される」
という説も見かけますが……(笑)
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