ED2続編「夕美の憂鬱」
私が藤堂君と加奈ちゃんの墓参りをして以来、
藤堂君は変わった……と言うより、元に戻った、というのだろうか。
私の誘いも受けるようになったし、私を誘って街に出かけるようにもなった。
でも、まだ夜のほうは……。
ただ一つ、今までと違うところは、以前流行した「たまご型ゲーム」
みたいなものを藤堂君がいつも持っている、ということだった。
藤堂君は、アクセサリーには興味無かったはずだけど。
私が聞いても、藤堂君は「何でもないよ」と言うだけだった。
隆道:「夕美。それじゃ、また明日。」
夕美:「うん。それじゃ。」
ちゅ。
いつもどおり、別れ際、藤堂君の後ろ姿を見送っていた。
下を見ると、何か落ちていた、いつも藤堂君が持っていたペンダントだった。
私はそれを拾った。「明日渡せばいい」そう考えていた。
私は、何気なく、あるボタンを押した。すると……。
??:『……えーと、ずっと考えて、今、少し楽になってます。』
突然声が聞こえた。よく聞くと、ペンダントから聞こえていた。
そのペンダントは、録音機能付きのペンダントだった。
その声には聞き覚えがあった。藤堂君の『妹』の加奈ちゃん。
そして、しばらくそれを聞いていると……。
加奈:『愛しています。』
夕美:「!」
私の目の前が真っ暗になった。
あの二人がベッドの上で抱き合っている場面を目撃した時以上の
衝撃が走った。
加奈ちゃんは、とっくに亡くなっているというのに……。
夕美:「藤堂君?まさか、いつもこんなもの聞いて……!」
その日以来、藤堂君の顔色は目に見えて悪くなっていった。
私の誘いも断るようになった。もちろん、藤堂君から私を誘うことも……。
数日後、藤堂君から電話が来た。
隆道:『夕美、白いペンダント、知らないか?
録音機能付きのやつなんだけど……。』
夕美:「う、ううん、……知らない。」
隆道:『……そうか。』
ガチャン!
それが私たちの最後の会話だった。
私は、……あることをした。それは、ある意味博打だった。
そして、数日後……。私は藤堂君に電話した。
夕美:「藤堂君、夜遅く電話してごめんなさい。でも、すぐ知らせたくて。
実は私、今、公園にいるの。それで、
前に藤堂君が言ってたペンダント、見つけたんだけど……。」
隆道:『え?ほ、本当か!?すぐ行く!』
すぐ?やっぱり……。
藤堂君はすぐに来た。
隆道:「夕美!ペンダントは?」
夕美:「これだけど……、一応確かめてみて。」
隆道:「あ……、ああ。」
隆道君はボタンを押した。すると……。
夕美:『藤堂君……、あ・い・し・て・る。』
藤堂君は驚いて、私のほうを見た。
夕美:「……変なものが入ってたから、消しちゃった。」
隆道:「夕美!お、お前……!!」
藤堂君は、私の見覚えのあるあの目で、
私を睨み付けた。そして、私の胸ぐらをつかんだ。
予想どおりの、藤堂君の反応だった。
……私は目をつぶり、歯を食いしばった。
でも、殴られる前に、言いたいことだけは言って……。
夕美:「あなたの本当に欲しいものは、……これでしょ?」
隆道:「え!?」
私はポケットからもう一つペンダントを取り出した。形も色も同じペンダント。
藤堂君はまた驚いたようだったけど、私は確かめることができなかった。
今、目を開けたら……、我慢してるものが……。
夕美:「私……、それと同じ物見つけるために、何日も街を探し回った。
何年も前の物だから結局見つからなくて、
最後は製造元に直接問い合わせたけど。
……でも、藤堂君の本心がわかって、私の苦労も報われたわ。
私たち、……もう終わりね。」
隆道:「…………。」
夕美:「ほら、藤堂君の大切な『加奈ちゃん』は返すわ。
……私より大切な、藤堂君の大好きな『加奈ちゃん』は返すわ!」
私の閉じた目から涙が溢れ出していた。私の心は痛んでいた。
こんな男に言いたいことを言って、胸がすっきりしたはずなのに……。
夕美:「さあ、殴りなさいよ!こんな、人をだますような女、殴りなさいよ!!」
藤堂君の手が離れた。
そして、藤堂君は呟くようにして言った。
隆道:「俺は、お前に甘えていたのかもしれない……な。
ラブレター事件で冤罪でお前を疑ったあとでも、加奈のことで
お前を裏切ったあとでも、お前は俺のために尽くしてくれて……。
今回のことも、もしばれても笑って許してくれるだろう、なんて、
心のどこかで考えていたのかもしれない。
……いつの間にか、俺のほうがお前の心を引き裂いていたんだな。」
夕美:「…………。」
隆道:「でも、今度は俺がお前に罵倒され、見捨てられる番だ。
今さらこんなこと言っても意味ないかもしれないけど、
でも、言わせてくれ。……ごめん、夕美。」
私の閉じた目からは、まだ涙が溢れ出していた。
でも、私は目を開けた。……藤堂君の目を見るために。
……もしかしたら……。
夕美:「……私のペンダント、最初から聞いてみて。」
隆道:「……あ、ああ。」
夕美:『藤堂君。あの時、あの事件の時の藤堂君、本当に恐かった。
藤堂君に怒鳴られて以来、私、
恐くて他の男の子を好きになれなくなっちゃった。
もし、またあんなことがあって、今度は乱暴されたりしたら……って。
でも、……他の男の子を好きになれなくなったほうが、
私にとっても都合が良かったのかも。
だって、今でも私は藤堂君のそばにいられるから……。』
夕美:「……惚れた女の弱みって言うのかな?
やっぱり、藤堂君のこと、放っておけない。
加奈ちゃんが藤堂君無しで生きられなかったのと同様、
藤堂君は加奈ちゃん無しで生きられなかったって、
加奈ちゃんが亡くなってやっとわかった。
それで、私が、加奈ちゃんに代わる存在になれたら……って、
ずっと考えてたけど、……でも、あんなもの聞かされて、私……。」
藤堂君はうつむいて、何か考えているようだった。
そして……。
バキッ!
藤堂君は、ためらいも無く古いペンダントを踏み潰した。
夕美:「と、藤堂君……。」
隆道:「明日、加奈に謝りに行くよ。ペンダント、壊しちゃったって。
……お前も一緒に行ってくれないか?」
夕美:「え?……いいの?」
隆道:「ああ。……それに、お前が一緒じゃないと、意味がないだろ?」
夕美:「え……ええ!」
夕美:(藤堂君には、ペンダントの加奈ちゃんの声を
テープに録音しておいたこと、まだ黙っていよう。
藤堂君が本当に私だけを愛してくれているという自信を、
私が持てるようになるまで……。)