ロシア語ガイド・翻訳・通訳に使える辞典・参考書
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露文解釈から和文露訳へ -
2012年2月23日 さとう好明
ロシア語をマスターするには語彙と文法を完璧にするしか道はない。つまり辞書(露和辞典、ときに国語辞典、英和辞典)を数多く引かないと上達しないということである。分からない単語を引くのは当然だが、いかに自分で疑問を見出すかというかということである。どうしてこうなるのかという疑問が出てこない人は何事においても上達しないと思う。その疑問を求める答えが見つけやすいように、いかにつぼを押さえて質問の形を整えるか(インターネットなら検索しやすい形に変える)という骨を磨くことである。予想外の答えだったり、類推通りの答えだったりすると、ドーパミンがタプタプとあふれるような快感を覚えることができる。質問をロシア語に限定する必要はない。言葉というのは生きているもので、人間関係そのものであり、プロでなくとも、あるいは未熟であってもロシア語を学習すると言うことは無意識に通訳や翻訳をしていることなので、世の中一般あらゆることに、疑問をもつようにすべきである。すぐに回答の出るものもあるし、時間のかかるもの、永久に確かな回答が出ないものもある。この場合答えの深追いはしない。手元の辞書で分からなかったり、検索エンジン一つで答えが出なければ、疑問ノートを作ってそれにメモしておく。身の回りに(寝るときも)メモとペンを置いておいて、何か疑問に思うことなどがあればメモするようにすればよい。また長時間勉強を続けるコツは眠くなったら、15〜20分横になって目をつぶる。そうすれば頭がすっきりする。
この他に筆者が勧めるのはロシア語の本の精読である。何故かと言うと、分からない単語や言い回しを調べずに放置しておいても、ロシア語の勉強を続ける以上、いつかは辞書を調べる必要が出てくるわけで、後より先がよいのは自明の理である。1冊の辞書でロシア語全ての単語や言い回しが分かる辞書はない。そのためメインとして常に手元で引く辞書と、その他にテーマ毎の辞書を使い分ける必要が出てくる。ソ連が崩壊してこれまで辞典に採録されなかった俗語や隠語が雑誌、マスコミ、あるいは国会の答弁にすら現れるようになった。そのためソ連崩壊前後に出版された露和辞典はそのような現代用語に対して無力である。このような中で使える辞書について私見を交え紹介してみたい。辞書を引くときにはこの本を翻訳するのだという気持ちでやってみるとよい。その方が実際の通訳や翻訳の実践的な練習になる。
ロシア語の単語、語句がある程度分かって、文法ができれば、どんな露文でも訳せるかというとそうではない。短文でも、社会、歴史、庶民の生活の基礎的知識がないとまったくわからないことがある。基本を知ったら、インターネットや専門書など細かい知識にアクセスできるようなノウハウを蓄積すべきである。常に雑知識にも興味をもつようにしたい。
翻訳をする上で、岩波や研究社などの一般用露和辞典や英和辞典の訳を鵜呑みにしてはいけない。例えばмалоизвестные
литераторыを辞書通り、「あまり知られていない文学者」と訳しても、間違いではあるまいが、何か説明的である。「無名の」と訳せないかと思い、国語辞典を引くと、「ジャーナリストなどにあまり知られていない」という意味がある。つまり「無名の文学者」とも訳せるわけである。手間を惜しまず国語辞典を引く重要さも忘れてはならない。Импрессариоの和訳が「興業主」とあるが、手元の国語辞典には、「興業師、プローモーター」がある。そうであれば、筆者は国語辞典の方を取る。日本語については国語辞典を信用する。これは露和辞典と国語辞典の役割が違うからである。露和辞典では、日本語とは語義がピタッと合っていなくても、説明というよりは何らかの訳をつけることを要求されるからである。
露和辞典の理想を言えば、よい和露辞典がない現状を考慮して、できるだけ用例を多くして和露としても使えるようにして欲しいと言うことである。どんな格や前置詞が来るか分かれば短くても構わない。例えばметестаз(転移)だけ載せるのではなくметастаз
в лаифатические узлы(リンパ節への転移)とすればよい。無論和露事典で収録語数が10万ぐらいで用例が多いのが出版されるならそれでもよい。
それにどんな分野でも専門用語терминыというのはある。科学技術分野の翻訳を例に挙げると、露和や和露の技術辞典ではいいものがない。そのため露英や英露の技術辞典(収録語彙が10万語以上のものが望ましい)で調べ、それを英和や和英のついている機械用語辞典、マグローヒル科学技術用語大辞典で用語を確認することになる。これらの用語の説明(定義)は簡潔なものであり、それらがテキストの文脈と矛盾しないかも一応見ておく必要がある。このように二度手間だが、これをしないで自分勝手な訳をするのは大いに危い。筆者は各種辞典をおよそ300種(400冊)持っているが、日常使うのはごく一部(20種ぐらいか)である。技術関係では船舶、航空宇宙、コンピューター、特許、冶金、林業、石油精製、自動車、溶接、化学、通信など、また衣服、ロシアの祝祭、家屋などは必要に応じて専門辞典や百科事典を使い分ける。ご参考までに筆者が翻訳や通訳の下調べによく使う辞典や参考書を挙げておく。露文解釈に比べて和文露訳は難しいので、特に和文露訳という観点から選んでみた。また辞典(事典)であっても、ロシア語の例文が多く、読破して、自分なりに整理すれば、ロシア語力が飛躍的に伸びると筆者が確信するものは*, **, ***を付した。初級の辞書や参考者がないのは、どんなものであれ使えない辞書や参考書というものはないし、初級のものは初学者でも今の自分に合うかどうか分かるということと、筆者のレベルは初学者のレベルではないので、そういう本は買わないし、下記に挙げる辞書や参考書は身銭を切ったものばかりであり、単に批評のために買うような金の、また時間の余裕もないということをご理解願いたい。
1.
*岩波ロシア語辞典(語数13万語)、1992
ソ連崩壊後にできた辞典で比較的新しいという意味で、研究社のものよりはるかに頻繁に使っている。毎日200回近くは引いていて非常に満足している。мочьの使い方、特にсмочьとの過去における用例の違いなどの説明などは見事である。ただこの辞典のファンとして今後の改良のために敢えて粗を探せば、いくつか見つかる。その都度気のついたものを下記のように挙げたわけで、今後増える可能性はある。特に書いてなければ2004年版以降のアカデミー版の露露辞典(全20巻予定)や4巻本(1983年)を参照してのコメントである。12ページадресで「(お祝いの)挨拶状、祝賀状、メッセージ」と訳があるが、「祝辞」という訳がないのはおかしい。25ページанабазисをヒエと訳しているが、Монгольский анабазис Унгерна прервался в преддверии Мировой войны.(ウンゲルンのモンゴル遠征は世界大戦の直前挫折した)という例でも分かるように、「遠征、進軍」と訳すべきではないか。ヒエなら、куриное просоやежовникが普通であろう。31ぺージАнтоновкаの訳で「大粒で甘酸っぱく芳香がある」とあるが、実際に何度かこのリンゴの品種を食べてみたが、「中型のやや小ぶりで、甘くはあるが酸っぱさはそれほど感じない」というのが正しいと思う。露露辞典をただ引き写したような訳はどうか。同じく31ページのантреприза
= частное зрелищное предприятие (театр, цирк и т. п.)を「劇団経営」と訳しているが、В
Корсаковом саду было несколько неудачных антреприз.という例文でも分かるように、「興行」と訳した方が自然であり適切であろう。33ページ
аподиктическийの訳2に「明白な(проблематический)」とあるが、Дальの辞典で調べても(他の露露辞典には載っていなかったので)、この語の解釈はубедительный,
ясный, понятныйなので、「明白な」という訳でよいし、象徴派作家のБелый にс аподиктическим фанатизмомという用例がある。ただпроблематическийには「明白な」という意味はないのではないか?38ページのартподготовкаを「攻撃準備砲撃」と訳しているが、日本語としてくどくはないか。アカデミー版の露露辞典ではартиллерийская
подготовка перед наступлением, атакойとしているから、歩兵などの攻撃前に敵の陣地を先に砲撃でたたくことであり、大岡昇平の「レイテ戦記」にあるように「砲兵の準備射撃」や「準備砲撃」とすべきではないか。ちなみに援護砲撃としないのは、それだと攻撃と同時だからである。69ページбезымянный
палецをくすり指とのみ訳しているが、日本語ではロシア語同様「無名指」ともいうので、これも載せるべきだ。72ページбелое
золотоをホワイトメタルとしているが、ホワイトメタルはバビットメタルбаббитという軸受合金であり、ホワイトゴールド(金とパラジウムの合金で宝飾用)が訳としては正しい。84ページбисквитをビスケットと訳しているが、これは廃れた用法で、オックスフォード露英辞典にあるように現代ではスポンジケーキの意味で使うのが普通である。アカデミー版の露露辞典にもлегкое
выпечное изделиеとあるし、モスクワなどのスーパーで見れば分かるはず。86ページのблагожелательныйの名詞балагожелательностьを「好意」と訳しているが、благожелательный = проявляющий
доброту, участие,расположениеであり、細かいようだが、「厚意」の方がよいと思う。この同義語である391ページのдоброжелательный,
доброжелательностьも同様である。好意はдружелюбие, расположениеがよいのではないか。日本語の「好意」は親切な心、親愛感を指すが、「厚意」は思いやりのある心をさすからである。95ページのбожий
дарをパン、食物と訳しているが、天与の才とする方が普通ではないか?97ページのкитайский
болванчикを「頭でっかちの神像」としているがтрадиционное фарфоровое изделие – сидящая мужская фигурка
с ритмиччно качающейся головой(頭がリズミカルに動く瀬戸物の男の座像)のはず。99ページのболячкаをおでき、腫れものと訳している。確かにザルービンにも傷、腫れものнарывとあるが、最新のアカデミー版ではболячка
= не до конца зажившая ранка на коже (обычно покрытая сухой корочкой); струпとある。生傷とか治りきっていない傷としたほうがよい。102ページборьба
с преступностьюを犯罪防止運動と訳しているが、作った日本語である。Полиции приходилось бороться с широко распростронёнными
пороками жизни: пьянством и азартом.という文もあることだから、「犯罪取締」のほうがよいと思う。109ページбронебойные
пулиを「破甲銃弾」と訳しているが、意味は分かるものの「徹甲弾」が正しいはず。122ページбудетの特殊用法として、結果の必然性を示すとあり、Пятью
пять будет двадцать пять.(Пятьюの力点の位置はПятьюのはず)の例が挙がっているが、これは古い用法ではないか?確かに城田先生の現代ロシア語文法(中・上級編、東洋書店、2003年)120ページにПять
и три будет восемь.とбудетは慣用上用いられると記載あるが、アカデミー版の露露辞典(Наука、2005年)のбытьにはこの用法がなく、восемьのところには、Пять
и три – восемь.となっている。だいたい、ロシア語の九九では岩波露和辞典の1574ページにПятью пять – двадцать пять.という例があるのを見るまでもなく、будетは現代語では使われていない。152ページвещие
птицыを不吉な鳥と訳しているが、アカデミー新版ではв народных поверьях – птицы (ворона, кукушка, филин и т.
д., предвещающие что-л.とあるだけである。ブィリーナのСуровен Суздалецの中でも、不吉な予言はするものの、主人公はその予言が実現しないよう活躍するわけで、「お告げをする鳥」ぐらいではないか。161ページのвзяткаをトランプの負け札としているが、アカデミーの露露にкарта,
карты, взятые старшей картой или козрёмとあるから、勝ち札と訳すべきだろう。負け札なら自分の手元に残らないはずではないか。165ページвизит
вежливостиを「表敬訪問」と訳しているが、ビジネスでは客先訪問の場合протокольный визитないしはпротокольная встречаを使うのが普通。визит вежливостиはОн пошёл наносить визиты вежливости начальству.(彼は上司に挨拶に行った)のように、上司や目上に対して使われる。169ページのвишняを「オウトウ」としているが、同じ果物のサクランボも、チェーホフの桜の園Вишневый
садの桜はвишня サワーチェリーであり、ソメイヨシノと違いミザクラである。ダークチェリーに似ているが酸っぱくて汁気が多く、実が感じられない。日本のデパートでは高級缶詰になっている。ぜひロシアで試食されてはどうか。ジュースも酸味があってうまい。日本でいうサクランボやダークチェリーはчерешняと言い、専門的に言えばвишня птичья のことである。179ページのпроявить (оказать)
внимание к кому-чемуとあるが、проявить внимание к であるが、оказать внимание + 与格であって、к はないはず。182ページводоёмを貯水池と訳しているが、貯水池はводохранилищеのはず。日本語の貯水池は人工のものであるが、водоёмは自然ないしは人工の水のたまったくぼみを指す。つまり河川、湖沼、貯水池の総称であり、水系と訳した方がまだましではないか。水系は河川のほかに湖沼も含める場合もあるからである。より厳密に言えば水系はводотокやводоём с текущей
движущейся водойが正しいとは思うが。内水という訳も検討したが、これは湖沼や河川のほかに港湾、内海も入るので広すぎるのでやめた。238ページのвыделение(化)の訳に「分離」とあるが、これでは意味が広すぎる。化学用語では「単離」であろう。分離はотделениеではないか?256ページのвыползеньを「脱皮した昆虫」とし、「抜け殻」は方言としているが、逆で一般的には「抜け殻」という意味であり、「脱皮した昆虫は」は方言と最新版アカデミー露露辞典にはある。284ページгаруспикを「腸卜官」と訳しているが、考古学者・民俗学者のСахаров
И. П. (1807 – 1863)によれば、гаруспексであり、生贄の動物の内臓、特に肝臓で占ったとある。「肝卜官」とでもした方がよいのではないか。301ページперегрызть
на глоткуはперегрызть глоткуの誤り。314ページのголубая мечтаを「のんきな夢」と訳しているが、これはсамая заветная, сокровенная, но
обычно несбыточная мечтаのことであるから、「心に秘めたかなわぬ夢」とか「野望」くらいではないか?326ページのграбёжを「略奪」と訳し、кражаとразбойの中間としているが、これでは意味不明であり、辞書の編集者もきちんとその違いを理解していないのではないかと思われる。кражаは窃盗であり、грабёжもразбойも同義語で強盗(行為)であるが、ニュアンス的には現行のロシアの刑法によれば、前者は武器や腕力の行使の有無は別にして、生命や健康に危害を加えない程度の暴力行為ないしは脅迫による強奪行為で、後者は暴力の行使を前提としている場合である。332ページгримасаを「渋面、しかめっつら」とのみ嫌悪感からくるもののみ訳しているが、намеренное
и непроизвольное искажение выражения, черт лицаということなので、гримаса
жалости(憐みでくしゃくしゃになった顔)などの例もあることから、「くしゃくしゃになった顔」のような訳も入れておくべきだ。354ページのдвойная
бухгалтерияを二重簿記とのみしてあるが、現在では二重帳簿о двурушнических лицемерных действияхについても言うから追記すべきだ。358ぺージのдебиторская
задолженностьを債務と訳しているが、意味はсумма долгов, причитающаяся какой-л. организации,
учреждению, предприятиюということで、売上(売掛)債権ないしは受取勘定が正しい。405ページのдолжностное
преступлениеは職務犯罪とあるが、背任罪のほうが日本語らしいと思う。410ぺージдоносительствоを「密告」としているが、занятие доносителя, доносчикаということなので、一見正しいように見えるが、密告は「密かに告げ知らせること、内部告発」という意味であり、доносительствоは露露辞典他の例文を見る限り、一度ではなく、何度も密告する、つまり密告を仕事(職務)にするということを示しているわけで、「密告という生業」とでもすべきではないか。450ページのжалованные
грамотыを恵与状としているが、安堵状のほうが広辞苑にもある言葉なので代えるべきだ。452ページのпахнет
жаренымを「うまい話がありそうだ」と訳しているが、この表現にはもう一つ危険が迫っているという意味で「きな臭いにおいがする」という意味があるので、これも併記すべきだ。479ページзавучを教務部主任と訳しているが、завуч
= неофициальное название заместителя директора школы по учебно- воспитательной
работе なので「教頭」と訳すべきである。ちなみに教務というのは学校の運営にかかわるもの、教科書の選定などを行い、教務主任というのは教師の中の教務の責任者というのであって、教頭ではない。2007年より副校長という肩書が新設されたところもあるが、学校の運営が主のようであるので、この場合は「教頭」と訳しておくのがよいと思う。同じく479ページзавхозを「経理部長」としているが、そうであればглавный
бухгатерではないのか?завхоз =хозяйственной частью (предприятия, учреждения, организации и т.п.);
материально ответственное лицо, занимающееся снабжением необходимыми для работы
материалами, оборудованием и т.п., следящее за состоянием помещения, обстановки
и т.п.であるから資材部長と訳すべきである。484ページзагулを「酒びたり」と訳しているが、これはпродолжительный
кутеж, пьянство, распутствоであって、酒色にふけることである。つまり「放蕩三昧」とでも訳すべきだ。「酒びたり」ならзапойのはず。Сергей
МаксимовにБольной стал пить не загулами, а запоем, что, как
известно, и безнадёжно и неисправимо.(その病人は酒色ではなく、酒びたりとなった。これは御承知のように望みもないし、元にも戻れない)とある。485ページзадаться
мысльюを「考えに耽る」と訳しているが、語義 (начать думать, размышлять) から考えて「思い(考え)をめぐらす」ではないか。486ページのзаделを「やりかけの仕事」と訳しているが、то,
что сделано, изготовлено про запас и может быть использовано в дальнейшемということであり、「仕掛品」のことであり、ほかにОн
создал хороший политический задел перед губернаторскими выборами.(彼は知事選の前にいい政治的財産をこしらえた)などの例もある。「まさかの時の貯え」ぐらいであろう。505ページのзаложить
ногу на ногу(足を組む)はзаложить ногу за ногуではないか? 509ぺージにあるКруг
замкнулся.を「鎖(円)が閉じた、すべてが明らかになった、わけがわかった」と訳しているが、これはо
безвыходности положенииを意味するのであり、「逃げ場を失った」とか「二進も三進もいかなくなった」とすべきではないか。522ページзапретительная
пошлинаを禁止的関税と訳しているが、禁止関税ではないか。少なくとも広辞苑にはそう書いてある。533ページзастатьの訳を「(目的・期待通りに)会える、見つける、捕まえる」とか、「(〜の所・現場を)押さえる、(現象・事件が)襲う」とあるが、要は「居合わせる、出くわす」という事だと思う。例文としては、Я
застал его уже писанием драмы.(彼がもうドラマを書いているのに居合わせた)のようなものも入れるべきだと思う。539ページのзаторをもろみと訳しているが、затор
= состав для брожения, используемый при изготовления пива, кваса и т. п.,
хакваскаとあり、つまり原料であってもろみではない。もろみは広辞苑では「醸造して、まだ粕をこさない酒または醤油」とあるから、ダーリの辞典にあるрака
= первая и вонючая выгонка вина из затора, погонが使えると思う。556ページのзелёныеは「国内戦時白軍とも赤軍とも戦った主として農民脱走兵から成る非正規部隊(森林に隠れていたことから)」とあるが、長々とした説明も結構だが、日本語には「緑林」という言葉があるので、それを使えばよい。同じく556ページのземлеутройствоを「耕地整理」と訳しているが、система
мероприятий, упорядочивающих землепользованиеのことだから、必ずしも耕地整理ではなく、区画整理とか用地整理とした方がよいのではないか。Построенные
по окончании землеустроительных работ были первые отели европейского вида.(区画(用地)整理の後、建設されたのは最初のヨーロッパ風ホテルだった)という例もある。577ページидтиの11にходить
8とあるが9の誤りである。601ページимущественные
праваの訳が物権法となっているが、財産権あるいは物権ではないか。Бизнесмен, отстаиваювающий имущественные права(財産権を守り抜くビジネスマン)という用例がある。Зарубинの露和辞典でも財産権となっている。607ページизмерительные
инструментыを計器と訳しているが、これはノギス、マイクロメーターなどのゲージ類であり、計器はизмерительные
приборыである。610ページинфузорияを滴虫類と訳しているが、これは旧称であり、繊毛虫類とすべきだ。もっというと一般的に出てくるのはинфузория-туфелькаのことなのでゾウリムシとする方がなじみがあるのでこの訳を載せた方がよいと思う。624ページисториографияを史学史と訳しているが、史学ではないか?露露辞典ではсовокупность
исторических исследований, посвящённых какому-л. периоду, какой-л. определенной
теме, проблеме и т. п.とある。642ページкаменщикを石屋、石工と訳しているが、рабочий, производящий кладку
различных сооружуний из камня, кирпичаのことであり、レンガ職人、レンガ工、石積み職人のことであって石工ではない。кирпичникというのはレンガ工場の工員ないしはレンガ工のことであるが、前者の場合が多い。石工というのはкаменотёсのことである。石屋は日本語では石工のことだが、インターネットで見ると石積み職人を意味する場合もある。643ページкамер-пажを「小姓、侍童」と訳しているが、正確には「宮廷付き小姓」、あるいは近衛士官学校生徒の中の成績優秀者が宮廷当直についたが、その当直を指した。同じくкамнепадを土石流と訳しているが、これはобвал
камней в горахだから「落石」が正しい。土石流はселевой потокとかселиという。650ページкарапузを「おちびちゃん」はともかく、「おでぶちゃん」とか「ずんぐりむっくり」と訳しているのはいただけない。карапузはмаленький
ребёнокということだから、これがどうして「おでぶちゃん」や「ずんぐりむっくり」という訳になるのか理解できない。671ページのклавиш,
клавишаを(さまざまな装置の)鍵盤、キーボードと訳してあるが、鍵盤にはキーとキーボートという意味があり、клавиша
(клавишでもよい)はэлемент клавиатурыという意味だから、キーでないとおかしい。677ぺージклубникаやземляникаの区別がないし、オランダイチゴという訳は正確だとしても古い。イチゴだけでよいのではないか。参考までに書くと、イチゴは普通клубникаと訳すが、本当のклубника (клубника = земляника мускатная, земляника мускусная,
земляника зеленая) のは実は小さくて、より香りが強く花軸は葉より上で収量が低いので栽培されない。つまり街でみかけるイチゴはклубника という名を冠した земляника ということになる。земляника にはдикорастущая (野生種)とсадовая (園芸種)があり、大粒の園芸種を民間(店頭)では誤って клубника と呼ぶとソ連大百科にも書いてある。ただ誤りだろうと何だろうとイチゴはклубникаが一般的であるのに変わりはない。684ページкожураを「果実、種子の厚い皮」とあるが、露露には「厚い皮」とは書いていない。кожа, коркаが同意語
(кожицаは薄い皮)で、кожураはオレンジの皮にも玉ねぎの皮にも用いられるので、「厚い」を削除すべきだ。688ページколесоватьを「車裂き(八つ裂き)にする」と訳しているが、広辞苑で「車裂き」を引くと、「車2両に罪人の各片足を結び付け、その肢体を引き裂く戦国時代の刑」とある。колесованиеの意味を編者が理解しているとは思えない。колесоватьは西欧由来の車輪で罪人の体の骨を砕いてゆく刑罰であり、この和訳は誤解の元である。「車刑(車上刑とか車輪による骨砕き刑)」とすべきだ。699ページкомпотをコンポート(干した果物を砂糖水で煮たデザート)としているが、実際ロシアで出されるのは、この果物を取り去ったジュースである。выпивать
за обедом компот(昼食にコンポートジュースを飲む)などの表現がある。同じページのкомпромиссにидти
на компромисс = войти в компромиссとあるが、この用法での完了体はпойти на компромиссというのがある。完了体なら完了体同士
пойдти/войти、不完了体なら不完了体同士идти/входитьとしなければおかしい。723ページкостёрをカラスムギ、チャヒキグサとしているが、カラスムギ(チャヒキグサ)はовсюг (学名Abena
fatua)であり、костёрは雑草であるものの学名Bronus tectorum (кровельный костёр), Bronus arvensis
(полевой костёр), Bronus secalinus (ржаной костёр) であり、カラスムギではなく、スズメノチャヒキ属であろう。737ページкризを分利と訳しているが、分利は熱が急に下がることである。一方криз
= внезапное сильное обострение какой-л. болезни, вызывающее резкое ухудшение
состояния больногоであり、「症状の急激な悪化、重篤化、劇症化」を指し、分利ではない。743ページкругの7「グループ、仲間」のところでВечера
он обычно проводит в кругу семьи.を「夜はふつう家庭の団らんで過ごす」とあるが、в кругу
семьиには「団らん」という意味はない。たんに「家で」という意味のはず。755ぺージкультурологияを「精神文化学」、культурологを「精神文化学者」と訳しているが、この学問はソ連崩壊後ロシアで始まった新しい学問であり、научная
дисциплина, изучающая закономерности развития культуры, взаимовлияния культуры
и обещественной жизниという定義なので、「文化学」でよいのではないか。別に精神を付け加える必要があるとは思えない。767ぺージのлалをルビーと訳しているが、16世紀ごろまではロシアではルビーとスピネルを区別しなかったが、17世紀から18世紀には硬度などで両者を区別し、ルビーはкрасный
яхонтとした。лалは赤い宝石を意味し、具体的にはアレクサンドライトや赤色スピネルのことである。788ページлинияは長さの単位でдюйм
(25,4 мм)の1/10で、古くは1/12であり、2.12 mmとしているが点の位置が重なってよく分からないし、古いのを記載するなら、1/10の2.54
mmをも記載すべきである。794ページのлицоを「面目、体面」としているが、лицо
= особенности, отличительные черты, составляющие сущность кого-л., чего-л.で、「本質となる特徴」ということで、たとえばлицо
страны「その国の顔」などである。сохранять лицо「面目を保つ」, терять лицоも「顔をつぶす」とも訳せるが、意味はもっと広い。同じく794ページкраска
(кровь) бросается в лицоを「さっと顔が赤くなる」と訳し、次のкровь кинулась (бросилась,
ударила) в лицо ⇒ кровьとあるが、740ページのкровь бросается в лицо ⇒ лицоとあるだけである。кровь
бросается в лицо というのは о состоянии сильного переживания, следствием чего
является покрасненин лтца, телаということだから、単に顔が赤くなるのではなく、不安な思いをして、それで顔が赤くなるわけだから、「血が逆流する」とでも訳すべきだ、そうでないと「顔が赤くなる」だけでは、「顔を赤らめる」という意味にもなりうるからやめるべきだ。743ページкругの7「グループ、仲間」のところでВечера
он обычно проводит в кругу семьи.を「夜はふつう家庭の団らんで過ごす」とあるが、в кругу
семьиには「団らん」という意味はない。たんに「家で」という意味のはず。795ページне
лишён の訳を「〜が無くはない、ある程度持っている」としているが、アカデミー露露辞典では не лишённый
= обладающий каким-л. свойствами, качествами(持っている)としており、не лишён
дара литератораなどは「文才がある」とすべきであろう。802ページの古いロシアの重量単位лотの数字と小数点が重なっている。12.8
gと明記すべきだ。827ページのмаркийは「(布・衣服などが)汚れやすい」と訳してあるが、露露辞典を引くとлегко
пачкающийся, светлыйという意味とпачкающий при прикосновенииがあるわけで、「汚れが目立ちやすい」と「触ると汚れやすい」という訳が適当だと思う。838ページのмедкомиссияを医療委員会と訳しているが、これではこの単語の意味が分からないだろう。これは徴兵検査で合否を決めるというもので、徴兵検査委員会とでも訳せばその意味が伝わると思う。844ページмельхиорを洋銀(洋白)と訳しているが、сплав
меди с никелем, похожий на сереброで白銅のことである。洋銀は銅、亜鉛、ニッケルの合金であり、нейзильбер,
альпакаのはず。850ページчёрные мателлыは鉄金属(鉄および鉄の合金)(このような日本語はない。このロシア語の意味するところは鋳鉄、鋼、合金鉄の総称である)ではなく、鉄鋼製品と訳すべきである。868ページмногоплановыйを「多層構造の」と訳しているが、сложный
по своему характеру, внутреннему содержаниюという意味なので、「多元的」とでもすべきではないか。881ページのморское
ушкоをミミガイと訳しているが、正しいとはいえ、この貝を普通はアワビというのでそう訳さないと実用的ではない。ушкоの力点の位置がコンラッド和露(アワビの項)では違っている。どちらでもいいのだろう。911ページнадに<従事の対象>とあるが、これはуказывает
на направленность, сосредоточенность какого-л. действия на ком-л., чем-л. ということであり、работать
над словарём(一心不乱に辞典作成に従事する)やдумать над этим(これについて一心に考えこむ)ということで、<根をつめて従事する>のはず。918ページのнадхвостьеを上尾筒と訳しているがこれは羽根であり、露露辞典にあるчасть
спины у птицы, расположенная у хвостаとは違う。鳥の尾骨であろう。950ページнасильственная
смертьを「(殺害・事故による)横死」とあるが、насильственныйは肉体的暴力によるという意味で、事故によるという意味はないはず。横死なら歴史家のКондратьевの著作にあるようにнасильственная
или неестественная смертьとすれば正確である947ページнарочитыйを「故意の、ことさらの、わざとらしい、見せびらかしの」と否定的な訳語のみ挙げているが、нарочитыйはпреднамеренный,
заранее обдуманныйという意味であるから、нарочитая красотаは「前もって計算された美しさ」のような訳語も載せるべきだ。980ページнедоимкаを廃語としているが、露露辞典(4巻)にはそういう記載はない。税務関係では普通に使われる。985ページнездоровая
пищаを「不衛生な食物」と訳しているが、「体に悪い食物」が普通だろう。「不衛生な」とザルービンの露和にもあるが、一応「体に悪い」という訳が先に来ている。1023ページのножницыで鋏状(きょうじょう)価格差とあるが、経済用語では「はさみじょう」ではないか?1026ページのв
нормеを「正常である」と訳しているが、в обычном, нужном состоянииということで、Остальные
синонимы в норме предполагают человека.(他のシノニムは通常人を想定している)というように、「普通は、通常」という意味のはず。1030ページのНужда
научит калачи есть.を「貧乏は白パンの食べ方を教える」とあり、「貧乏は勤勉の基」の意味とあるが、калачиがどういうものか分かっていないのではないか?この表現はНужда
заставит калачи печь.(なければあるもので我慢しなければならない、つまり「武士は食わねど高楊枝」)と同じ意味で、калачиはситникのような不純物のない上質のパンではなく、不純物のある多い厚みの異なるドーナッツ形のパンを指す。1062ページのобразныйを「形象による、形象を含む」と訳しているが、こういう哲学的に使う場合もあるかもしれないが、普通はВыражение
«дубина народной войны» стало образным названием партизанской войны.(国民戦争の棍棒と言う表現はパルチザン戦争の比喩的表現となった)のように「比ゆ的、たとえの」と訳すべきではないか。1075ページобществоведениеも1846ページのсоциологияも「社会学」と訳してあるが、同義語なのか。露露で調べた感じでは、обществоведениеは社会論とか社会研究と訳すべきではないか。1079ページовеществитьの中の例文труд,
овеществлённый в товареを「商品として物象化された労働」とあるが、「労働」ではなくて「勤労者」のはず。1095ページокись,
окиселをоксидの旧称としているが、最新のアカデミー版露露辞典にはそのような記述はない。оксидはIUPAC(国際純正および応用化学連合)の定めた化学用語に準拠しているが、окисел,
закись, окисьはロシア由来の用語である。ともに同義語で現在も混用されている。оксидのほうが多用されているにすぎない。1099ページокруглить
капиталを「資本をまとめる」と訳しているが、увеличить капиталのことであり、Полученное за женой приданое округляло капитал.(受け取った妻の持参金が資本をまとまった額にした)というように「〜のおかげでまとまった資本となる」としないと意味がよくわからないだろう。1122ページのоседлатьを「道などを完全に制圧する」と訳しているが、これはзахватив
в каком-л. месте (реку, дорогу и т.п.), закрепиться по обеим сторонамということだから、「遮断する」とか「扼する」とぅべきではないか。1144ページのОТКを技術管理部と訳しているが、日本語としてはおかしい。日本のメーカーでは普通「品質管理部(品管)」と呼んでいる。1184ページпажを「陸軍幼年学校生徒」と訳しているが、これは違う。つまりпажеский
корпусの訳「陸軍幼年学校」が間違っているのだ。日本語で「陸軍幼年学校」というのは陸軍士官学校の予備教育を行う学校だが、пажеский
корпусは初めは小姓を養成する学校だったのだが、後に近衛将校を育成するためのものであり、「近衛士官学校」とでも訳すべきだ。1185ページのторговая
палатаを商工会議所と訳しているが、これは商業会議所であろう。商工会議所はторгово-промышленная палата
(ТПП)のはず。商業会議所と商工会議所は別組織である。1188ページのпалыгорскитをパリゴルスカイト、山コルク(石綿の一)としているが、山コルクはグリュネル閃石をいう。パリゴルスカイトはsepiolite-palygorskite系粘土、つまり山皮のはず。ロシア語でもпарлыгорскитの別名はгорная
кожа(321ページ参照)である。1193ページのпараллельは確かに数学で使う平行線という基本的な意味はあるものの、日本語の平行線には、それ以外に、「意見などが折り合わないままでいるさま」とあり、一方ロシア語の方は「比較、対比」という意味もある。провести
параллель между + 造格を数学で使う場合に、「平行線を引く」とするのは正しいが、それ以外の意味では、「対比する、比較する」という意味なので、それも付記しておく方が誤解が少ないと思う。1200ページпастбищеを牧場と訳しているが、место,
где пасётся скотということで、выгонと同義語であり、たんに放牧地ということではないか。牧場というのは「家畜を放牧するための設備をした土地」であり、厳密に言えば、ранчоであり、牧場経営のことを指すならфермаとすべきだ。1231ページпереложитьсяの項の2にあるнапомощникаと二つの単語の間にスペースがない。1266ページпилонはクレムリン宮殿内のАндреевский
залでも用いられており、本来の意味は「アーチ状の天井を支える角柱」ではないか。またつり橋の場合「橋脚」と訳すべきではないか。1274ページпланкаにあるорденская
планкаを綬としているが、綬は布切れであり、орденские ленточкиのはず。орденская планкаは略章とでもしたほうがまだよい。1281ページплодоовощиを「果実および野菜」と訳しているが、日本語では普通「青果」とか「青果物」というのではないか。1290ページのповальный
обыскを一斉家宅捜査と訳しているが、一斉というのは同時ということであり、повальныйにはそのような意味はない。これは軒並みの家宅捜査とでもすべきではないか?1332ページподсечкаを「両足にタックルすること」と訳しているが、「サンボ」(古賀徹、ユーラシアブックレット、東洋書店、2006年)では、内がけ、外掛けとしている。подсечка
= приём борьбы (удары по ногам противника с повалить егоということなので、これをタックル(通常両手で相手の両足をつかんで倒す技
захват)に限るべきではない。サンボにもタックル技はあるが、通常は足で相手の足をかけると考えるのが普通ではないか。1341ページподчасокを「(哨所にいる)交代衛兵」と訳しているが、これでは衛兵の単なる交代要員とみなされる。これはпомощник
часового на постуとかダーリのкто назначен для смены часового, вс лучае необходимостиなのだから緊急交代要員とか衛兵補佐とでも訳すべきだ。研究社の方の訳の方が正確である。1351ページの見出しпойти-поехатьを口語で「(調子よく)始める(始まる)、みごとに動き出す」と訳しているが、この表現は過去形のпошло-поехоло以外は使わないはずで、意味も望ましくない行為や、物事の進展を示し、「あれよあれよという間だった」としないとおかしいはず。1355ページпокойницкаяを廃語として、мертвецкаяを標準語法であるかのような書き方をしているが、покойницкаяは霊安室という意味では標準語法のはず。мертвецкаяは口語用法である。1358ページのпокушение を「(不法・不当)な試み、企て」とするのは正しいが、例文の訳が暗殺未遂とだけあるのは誤解を招く。この単語は必ずしも未遂にばかりは使わない。試みであって、失敗すれば未遂であるが、成功する場合にも使われる。Они
предложили произвести покушение на
Акимова.(アキーモフの暗殺計画を提案した)やуспех московского покушения(モスクワの暗殺計画の成功)。暗殺未遂はнеудачное
покушениеとするほうがはっきりする。だから暗殺計画とか暗殺事件という訳の方がよい。1369ページのсемейное
положениеを家族状況と訳しているが、これでは意味不明である。独身か妻帯者かを聞いているわけで、「未婚既婚の別」としたほうがよい。1375ページのполутяжеловесでヘビーライト級重量挙げの選手とあるが、ライトヘビー級の間違いだし、1977年からはkgでクラス分けをされているから、2008年12月現在85
kg – 94 kg級のはず。1396ページのпорожний пробегを回送と訳しているが、これは空荷輸送の誤り。回送はв депоとでもするほうがよい。1415ページのпотраваを獣害、虫害と訳しているが、食害(動物による)ではないか?1456ページのприворотное
зельеを「ほれ薬に使う草」と訳しているが、このзелье = настой на травах , применявшийся в старину как
лечебное, колдовское или отравляющее средствоということであり、556ページにあるように「惚れ薬」とすべきである。同じ語句なのにページが違うと訳が違うというのもおかしなことだ。1465ページのприказчикを「手代、番頭、店員、売り子」と商家の主人以外の役職を当てているが、これはおかしい。приказчикは結婚を許されており、ある程度の商売の裁量を主人から任されており、「番頭」と訳すのが正しい。「手代」に相当するのはмолодецで、結婚はできないが、給金と休日休暇は保障されている。丁稚や小僧はмальчикという。1466ページのприкомандироватьの訳が「(一時勤務の目的で)派遣する」とあるが、普通日本語では「出向させる」というのではないか?прикомандировать
к канцелярии чиновника(役人を官房に出向させる)という表現もある。1501ページのпровокацияにスパイによる扇動とあるが、これでは意味が曖昧であり、スパイ工作とか罠とした方がよい。たとえばОн
попал в провокацию агента КГБ.(彼はKGBの罠にかかった)。1505ページпродинамитьはдинамить参照とあるが、динамить自体がない。1507ページのпродуктのсырой продуктを「半製品」としているが、これは「原料」の間違いである。1544ページのпротоколには外交関係で、議定書やプロトコールの訳はあるが、「外交儀礼(外交上の規則の総体)」と言う訳がないのはおかしい。1596ページのраздельное
написание словを「単語の離し書き」と訳しているが、「単語の分ち書き」ではないか?1543ページのпротивопоставить
の〜себе
(себя が正しい) коллективуの訳に「集団より自分を重く見る」とあるが、文脈によってはこういう訳にならないとはいえないが、ここは「集団を自分に対抗させる」とでもすべきではないか。この例文のもとは多分4巻本の露露辞典第3巻535ページのようだが、こう訳すのは筆の走り過ぎのような気がする。1625ページраскрыть
преступлениеを「犯罪をあばく」としているが、普通は「犯罪を解決する」の方が訳語としては適当ではないか?1630ページрасполагаться
⇒ расположйться(расположитьсяに訂正すべき)と誤植がある。1644ページрастяжениеの訳に捻挫とあるが、捻挫は関節をねじりくじくことであり、растяжение
мышц на ногеは足の肉離れと訳すべきではないか?ソ連出た和露辞典では捻挫も脱臼もвывихとしている。1654ページрегистрの6番目の訳が船舶管理局になっているが、実態はロイドや日本海事協会のように船舶建造規則の監督をするところなので、ロシア船級協会とすべきだ。1709ページсапを馬鼻疽としているが、鼻疽のはず。1722ページсветлейший
князьを「最高公爵」と訳しているが不自然な日本語である。革命前のロシアの爵位はсвелейший князь, (простой)
князь, граф, баронだけなのだから、светлейший князьを公爵とし、князьを侯爵と訳せばよいのではないか。1740ページのсекстильонをそのまま発音してセクスティリオンとしているが、10の21乗なら10垓のはず。1744ページのсемернойを(大きさ・量が)7倍のとあり、これは露露辞典のв
семь раз больший (о размере, количестве)の訳らしいが、正確に訳せば「7倍の、7個入りの」となるはずで、семерная
матрёшкаは7個入りのマトリョーシュカであって、7倍の大きさのマトリョーシュカではない。1748ページのсердечностьを「誠意、誠実さ」としているが、その意味もあるが、обстановка
сердечностиなどの例にあるように、「思いやり」という重要な意味が抜けている。1752ページсестьの項のСядь(те)「座れ」のところで、「完了体が命令を表すのに対して、不完了体は勧誘を示し、より丁寧な、やわらかい表現となる」とあるが、不完了体を使うところで完了体を使えば、無礼な感じを与え、逆の場合もそうであり、この説明では誤解を招きかねない。сестьの不完了体の命令形は一般に着手(勧誘)を示すので、そのときに完了体の命令形を使えば、文脈によっては強い命令的な感じを受ける場合が多いとでもすべきであろう。1759ページのчерез
силуが不定詞とともに使われるように書いてあるが、露露辞典の例文にあるようにа
потому ели только теперь через силуとかчерез силу слушая болтовню хозяина のように、動詞や副動詞などと使われるというのが正しい。露露辞典の解説にあるчерез
силу делать чтоを読み違えたのではないか。1766ページのсказительを語り手と訳しているが、民話やブィリーナ(英雄譚)の語り手、つまり「語り部」の方が日本語としてはよいと思う。語り手はより広い意味なのでрассказчикの方がよいと思う。1769ページскачкообразныйを「飛躍的」と訳しているが、そういう意味もあるが、неравномерный「平坦ではない」という意味もあるので追加すべきだ。1791ページсловоの中でгосподин
(хозяин) своего слова (своему слова)を「約束を守る人」と訳しているが、これは間違いではないか。Он хозяин
своего слова. Если он его дал, то он может его и взять обратно.「何を言っても許される人」ということではないか。1799ページのсмахиватьの例文Он
смахивает на отца.を「彼は父親そっくりだ」とあるが、смахиватьはнапоминатьと同様、似てはいるがそっくりではないという意味なので、「彼には父親の面影がある」ぐらいだろう。そっくりならпоходитьを使うはずだ。1831ページのаттическая
сольを「上品なしゃれ」と訳しているが、これはутончённое
остроумие, изящная штукаを言うのであり、「気の利いたしゃれ」とか「洗練されたしゃれ」とでもすべきではないか。1832ページのсольфатараを「硫気孔から噴出する硫黄質ガス、硫気としているが、これはSolfataraというイタリアのナポリ近郊の火山に由来する言葉で、ブロックガウスБлокгаузでも、сольфатара,
кратер, выбарсывающий только серные и водяные пары и газыとなっているし、英語のsolfatara
= a natural volcanic vent in which sulfur gases are the dominant constituents
along with hot water vapourとある。ブロックガウスの説明を取り違えたのではないか。これは硫気孔とすべきだ。1832ページのсоляр,
солярка, соляровое маслоをソーラー油と訳しているが、そのような言葉はない。石油軽油というのも妙な訳には変わりはない。これはもともとはランプ用だったが後に、低速のトラクターなど農業関係、船舶、戦車で使われる軽油(ディーゼル燃料)であり、機械関係で潤滑冷却油として使われることもあるが、通常は軽油(口語)と訳すべきだ。1836ページсопроводиловка,
сопроводительнаяの和訳が「添え状」となっているが、「送り状」のほうが適切である。1852ページспиннингをスピニングと訳しているが、ルアーフィッシングとすべきだ。1861ページのсравнятьсяの例文がЕму
сравнилось 20 лет.となっている。сравнялосьの間違いだろう。1874ページのстать3の未来形の訳に「するであろう」とあるが、これは日本語では推測を示すわけで、訳は「する」だけでよい。また類語解説で「статьの未来形が主体の意志に基づく意識的行為を言うのに対し、бытьの未来形は未来において客観的に起こる行為を言う」とあるが、口語ではбытьの未来計で意志を示すのが普通である。例えばЧто
вы будете пить?(何をお飲みになりますか?)。1882ページのстильのгазетный стильを「新聞体」と訳しているが、このような日本語はない。「新聞の文体」とすべきだ。またпублистический
стильも「評論(文)体」ではなく、「評論の文体」とした方が日本語らしい。1906ページのсуд
честиを名誉裁判と訳しているが、無理に日本語にない言葉を直訳的に作り出すのはどうか。「釈明の機会」とか「申し開きの場」でよいと思う。1920ページвести
счёт деньгиを「金を計算をする」とあるが、計算は演算のことであり、単に「金を数える」とすべきだ。1953ページのтерять
своё лицо (терять себя) を「我を忘れる」と訳しているが、これはутрачивать свою
индивидуальность, свои отличительные чертыということなので、「(いい意味での)個性がなくなる(直訳すれば「個性を失くす」)としたほうがよい。1954ページのтеряться
в догадкахを「察しがつかない、推測に苦しむ」と訳しているが、意味はнедоумеватьであるから、「理解に苦しむ」としたほうが訳が自然ではないか。同ページのтесенの項。тесмыйはтесныйのタイプミスであろう。1957ページтёщин
языкを「吹くと紙の管が舌のように長く伸びる玩具」とあるが、日本語では「吹き戻し、蛇笛」という。1966ページの
толчок = толкучий пынок はрынокの誤植であろう。1997ページтрудに「勤労者」という訳が欠けている。2025ページのугол
ртаを「口の端」と訳しているが、「くちのはし」だけではなく「くちのは」という読みもあり、これだと「口先、言葉の端々」という意味となり誤解を招く。振り仮名をつけるかуглы
ртаとして「口角」としたほうがよい。2038ページукладкаに「結髪」という訳があるが、セットのことであろう。Сделайте
укладку.は美容院では「セットしてください」と訳す。これなど一般の女性に聞けば分かるはずだ。2055ページのуповательный(廃)「期待(希望)にみちた」とだけ訳を挙げているが、副詞のуповательноはвероятно(きっと)という意味で使うことがあるので、その意味を載せてほしかった。2061ぺージのурожайの1に「収穫、取り入れ」とあるが、урожай
= количество уродившихся злаков, плодов, трав и т. д.なので、「作柄、実り」とすべきだ。収穫は農作物の取り入れ(刈り収める)ゆえсбор
урожаяではないか。2073ページのутилитарныйを功利的とか功利主義的と訳しているが、功利的というのは打算的ということで自分の利益になるためのということだが、утилитарныйはоснованный
на стремлении к практической пользе или выгоде, ставящий целью практическое
применение, использование чего-либоということで「実利的」という意味しかない。シノニムの辞典にあるБлаго
(предполагает) утилитарную характеристику итогового положения дел.(благоという言葉は結果的状況の実利的特徴を想定している)を功利的と訳せば非常におかしいことになることが分かろう。2095ページфилателияを切手(紙幣)収集としているが、切手と印紙の収集のはず。同じページのфилёрを「密偵、刑事」と訳しているが、主たる意味は革命前の秘密警察の尾行(для
наружного наблюдения)係である。2144ページのцветностьを「色合、色調」としているが、chromaticityであろうから、色度のはず。2169ページの見出し語чертаの横にни
чертаとあるが、その上の見出し語чёртのところにあるни чертаが間違って入りこんだものか?間違いなら削除すべきである。2176ページчислоのところで、дробное
числоを分数とだけ訳しているが、これはдробьと同義語だから、小数という意味にもなるはず。2177ページчистота
поверхностиを「表面粗さ」と訳しているが、技術関係ではшероховатостьというのが一般的である。2180ページ「чтоは活動体である獣や鳥についても用いられることがある」とある一方、749ページのктоでは「(人について)だれ」とのみで、どの文法書にも載っている「ктоは動物名詞に対する疑問詞」であるとか、「ктоは活動体の名詞に使われる」というような肝心の記載がない。獣や鳥について用いられる疑問詞は普通ктоのはず(たとえば、- Кто
летит? - Лебедь.)で、その旨記載しないと読者が混乱する。2239ページэстампを「作者自刷の版画」としているが、4巻本のアカデミー版露露辞典では、выполненный
самим хужожноким или масетром-гравёромとあり、版画職人が刷ったのも指すとあるから、たんに「版画」と訳せばよいと思う。2255ページясновидение
(ясновидец, ясновидящийも含めて)を、「透視、千里眼」と訳しているが、сверхъестественные способности
предукадать будеущееということだから、「予知能力」が正しい。千里眼は遠隔地の出来事を知らせる能力だし、透視はものが透けて見える事だから違う。ясновидениеには未来のみならず過去の出来事も知ることが出来る能力という説もあるが、それにしても透視や千里眼でないことは確かだ。果物、自動車など日本と違うものは、変な説明的な訳をつけるよりは写真をつけるのがよいし、面倒なら出版社のホームページで紹介すればよい。大きさなどもタバコの空き箱を使えば分かりやすい。日常生活や文学作品によく登場するものに限れば、数はそれほど多くはないはずである。凝ったアネクドートや若者向け雑誌、探偵小説などを読むときにこの辞典のみを頼るのは無理がある。ただロシアの薬については用途も書いてあり、便利である。
2.
研究社露和辞典(語数26万語)、1988
заплечных
дел мастер(死刑執行人)、поставили вопрос ребром(ズバリと言う)、лишний раз
(= ещё раз、942ページ)というのが研究社には載っているが岩波にはない。研究社のものは岩波ほど使わないので岩波には不公平な記述となったが了解乞う。1034ページмоскитを蚊と訳しているが、サシチョウバエのはず。1514ページпо
19 а) から4行目попятиをпо пятиに訂正。1732ページприйтиの語法でприходитьは過程を示せないという説明は特筆に価する。
しかしсестьを見たら、「完了体сядьтеは命令、不完了体садитесьは促し、勧めを表す。садитесьの多用から、具体・特定的一回動作でもсадитьсяを使う事がある。同様な傾向はлечь,
ложитьсяにも認められる」と書いてある。ラスードヴァ先生もびっくりの新説というか珍説である。
1813ページпросвет肩章の細い縦縞とあるが、長さ方向の縞であって、横縞ではないか?実際に見ていないからとしか思えない。岩波は肩章の色のついた筋とだけにしているからその方が正確だ。ちなみに954ページのлычкоは横筋となっているが、これも下士官用の肩章の横方向の縞ということである。2690ページэритроцитのところに血沈をРОЭとしているが、略語辞典を見る限り1970年代末からСОЭ
(скорость оседания эритроцитов)と略するようになっているのでそう 訂正すべきだ。
研究社のは見出し語26万語とあるが、岩波(13万語)のと比べて、私が小説を読むのや技術翻訳で使用した感じでは、数え方の違いで収録語数は大差ないと思う。どちらも口語や俗語・隠語の収録数が少なすぎて若者向けの雑誌や小説を読むには不向きである。ただ岩波の方が活字が大きいのではるかに読みやすい。内容的に岩波に対するコメントを研究社の露和辞典でチェックしてみたが、адрес,
аподиктический, артоподготовка, бисквит, запретительная пошлина, каменщик,
клубника, кожура, костёр, культурология, лал, семейный круг, морское ухо, нездоровая
пища, недоимка, окись, окисел, округилить капитал, провести параллель, пилон,
подсечка, покойницкая, приворотное зелье, противопоставить, протокол,
раздельное написание слов, скачкообразный, сольфатара, вести счёт, укладака,
урожай, цветность, кто, эстампと岩波でこちらが指摘したものの半分くらいについて私と同じ見解だった。これだけを見ると研究社の露和の方がほんの少しだが作りが丁寧なのかもしれない。ただ特に両者に差があると言う訳ではなく、ともに口語、俗語などが3万から4万語ぐらい欠けていて、今ロシアで出ている若者向けの雑誌や小説を読むにはこれらの辞書だけでは語彙が不足している。コンサイスの露和については持っていないので、立ち読みした感じでは訳語が洗練されているような気がするが、何せ収録語彙が10万語と少なすぎる。これでは仕事に使えないので買わなかった。
3.
*Русско-японский словарь(露和辞典), Русский
Язык, С.Ф. Зарубин и А.М. Рожецкин、1988
岩波と研究社の露和辞典は編者が似ているせいか採用した単語や例文が似ている。これはロシア人が編纂したもので語数が5万語と少ないが、作文に使える例文が多い。説明用に同義語がロシア語で付記されているものもあるので、分かりやすい。лишний
раз(ещё
раз, ещё и ещё раз、またしても、再三再四)など日本の露和辞典より詳しい訳がついているものが稀にあるので珍重しているが、重い。
4.
**Учебный словарь сочетаемости русского языка(ロシア語語結合学習辞典)、Денисов
и Морковкин, Русский Язык, 1978
翻訳や通訳などはもちろん、日本語をロシア語にするときに筆者が一番迷うのが「〜の」である。生格にすればよいのだろうが、必ずしもそうとは限らない。на +
対格や前置格、в + 前置格、о + 前置格など、単語によって違う場合がある。近くにロシア人にいればいいのだろうが、そういう幸運に恵まれる機会は日本ではなかなかない。そこで勧めるのが、語結合関係の辞典である。上記の本は例文も多く、会話や作文で使える表現の宝庫である。2500表現で700頁ほどなので1日2頁のペースで読破し、特に有用な表現は後ろのところ、または別にノートに書き抜いておけば後で役に立つ。例えば
испытаниеを引くと、主たる語義の定義が2つあり、定義毎に、修飾可能な形容詞(серьезноеなど)、испытание
чего(例えばмотора)、испытание
на что (на прочность)、名詞 + испытаний、どんな動詞が来るか(проводитьなど)、前置詞との語結合など簡潔に分かりやすく書かれているので、露作文には非常に重宝である。一般の露和は作文辞典ではないのでここまでは書かれていない。ただ難を言えば、例えばсообщить
результатыとсообщить о результатахのニュアンスの差に触れられていないことである。前者は結果全てを伝えるということだし、後者は概略または結果の一部を伝えることである。専門別の語結合辞典で筆者の持っているものを挙げる。
a) Учебный словарь сочетаемости обществено-политических терминов, Русский Язык,
1989
b) Учебный словарь сочетаемости терминов (технология металлов и
металловедение),
Русский Язык, 1981
c) Учебный словарь сочетаемости терминов (финансы и экономика), Русский Язык,
1988
d) Учебный словарь сочетаемости терминов (сельскохозяйственная техника),
Русский Язык, 1990
5.
*現代ロシア語文法、城田俊、東洋書店、1993年
ロシア語の仕事に就きたいなら必携の書。時々見て、自分の誤りをチェックしている。被動形形容詞短語尾の説明などは日本人の学者でなければこうは説明できないないだろうと思うくらい見事である。索引も充実していて学習者の使い勝手がよい本である。ただ完了体副動詞のところで、увидя/увидев/увидевши,
услыша/услышав/услышавши, встретясь/встретившисяもわりによく使われるものなので追記して欲しかった。それと運動の動詞(定動詞・不定動詞)にкатить/кататьを外し、брести/бродитьを入れている意味がよく分からない。бродитьはгулятьと同義で、брестиと対応しているとはいえないのではないか。
6.
*現代ロシア語文法(中・上級編)、城田俊、東洋書店、2003年
中級向けとしてはよいと思うが、上級向けには体の用法の説明(歴史的現在など)、運動の動詞、動詞の接頭辞などの説明が物足りない。文法全般についての本なので個々の分野について詳細にというのが無理なのかもしれないが、とにかく続編を強く望む。Иван
Ивановичの訳がイヴァーンさんとなっているのには敬服する。ロシア・ソ連文学で名 + 父称を「〜さん」と訳しているのを見たことはないので新鮮な驚きだった。それと通訳などで自然にしている反転(意味を変えずに単語を変える)という考えについて詳述しているのは著者の実用文法に対するセンスを感じさせる。ただ不完了体未来の用法で Вы
будете выходить на следующей станции?とあるが、Вы выходите на следующей станции?と現在形の予定という用法を使う方が自然ではないか?それとвсякий/каждыйの用法が異なるものについての例文はあるが説明がない。Каждыйは数詞を含む文で用いるとか、限定的な意味で用いるとかの説明が必要だと思う。理由を示す前置詞でиз-заは悪い原因、благодаряはよい理由を示すというのは、通訳するときなど便利な分け方だが、実際は、特にблагодаряなどは「感謝する」という語源からプラスの理由で用いるというニュアンスはあるものの、マイナスの理由でも結構使うわけで、それを「悪い結果には通常用いられない」などと書くのは行き過ぎのような気がする。例えば、Последние
дни благодаря дурной погоде он пил по вечерам слишком много.という文もよく見る。本書には第2部に表現法と題して、シノニム(類語)の使い分けについて触れている。試みは評価するが、類語の使い分けの入門編といえる。数も14程度とあまりに少ないし、基本的な語彙(特に動詞)がほとんど挙げられていない。これはНовый
объяснительный словарь синонимов русского языка(ロシア語新釈シノニム辞典), Апресян и
др., Школа «Языки русской литературы», 1999 – 2003(3巻、項目数355)の紹介程度あろう。和露の類語辞典の出版が待たれる。プロの通訳や翻訳者、ガイドを目指すならこれだけでは当然足りない。少なくとも「ロシア文学鑑賞ハンドブック」(中沢敦夫、群像社、2008)は勉強しておく必要があるし、「ロシア文法の要点」、「ロシア語の体の用法」、「ロシア語の運動の動詞」(いずれも原求作、水声社)も必須である。
7.
**ロシア語表現辞典、狩野昊子、アキーシナ、パヴレンコ、ナウカ、1983年、(1200項目) проблема
проблем(難問中の難問)、любовь
любовью(恋は恋として)など、主格 + 生格や主格 + 造格の言い回しで熟語にはなっていないものは辞書では引けない。そういうときにこの辞書が役立つ。疑問詞、代名詞、小詞、間投詞、擬声語、擬態語についてまとめられた好著。普通の辞書では載っていないような言い回しも載っている。たとえば、отставка
и отставка(引退なら引退でいい)というような名詞主格 + и + 名詞主格(〜なら〜でよい)については岩波露和辞典にもないが、これには載っている。中級以上を目指す学習者にとって必携の辞書であり、すべて読破すべきである。最近新生ナウカより再版が出た。
8.
CD-ROM
世界大百科事典第2版、日立デジタル平凡社、1998(48万語)
検索が早く、いろいろな情報のベースを調べるのや、学名も載っているので動植物の和名を知るのに便利。これでなければ、読者参加型のインターネット百科事典Wikipedia(他に英文や露文もある)で引くと載っている場合もある。
9.
*ロシア詩鑑賞ハンドブック、中沢敦夫、群像社、2005年
ロシア文学の精華とされるロシア詩とは何かについて日本語で書かれた唯一の参考書。非常に丁寧に説明されており、ロシア文学をやるのなら必読書といえる。
10. *ロシア文学鑑賞ハンドブック、中沢敦夫、群像社、2008年
ロシア文学を昧読する上で必読の参考書。著者はもともとРозентальやГолубの参考書を和訳しようと考えたが、日本人学習者にとってそのままで説明が分かりにくいところもあることなどから、別に本書を著したとのことである。「ロシア語ハンドブック」(藤沼貴、東洋書店、2008年)は初級文法の復習によく、本書は中級文法知識を整理するにはうってつけである。ただ題名の通り露文解釈の参考書であるので、会話力(和文露訳)養成には、現代標準ロシア語口語についての解説が特にないということを気に留めておく必要がある。しかも本書では19世紀ロシア文学が中心のため、会話では使えないものが多い。副動詞も会話では曖昧で会話では瞬時に意味を理解することが難しいため、使用を避けるようにとされているのだが、露文解釈では時間がたっぷりあるかどうかは知らないが、その反対に読んで意味が分かるようにする必要がある。例えば、80ページの部分性格の用法で、Дайте мне
воду.「水をください」として、具体的なイメージ(たとえば目の前にあるコップの水)の場合водуと対格が来て、なんでもいいからという場合には生格のводыが来ると説明しているが、これではこの例文を和文露訳に使う場合、つまり「その水をください」を露訳するときに、Дайте
мне воду.でロシア人が納得するかは非常に疑問である。この場合「世界中の水をくれ」と取るのが普通ではないか?コップの水ならДайте
мне стакан воды.というはずだ。このように一般的にはどちらを使うのかを示してくれないと会話力養成には使えないということになる。もっともこれは著者の意図するところではないのは明らかだが、和文露訳の勉強をする場合には露文解釈の教科書を自分なりに消化して使わざるを得ない(和文露訳の参考書で使えるものがない現状を考えると)現在では、やむを得ないと思う。
全般的に助詞、語順、疑問詞などの解説も含めて非常に良い参考書である。たとえば83ページの部分否定と対格、84ページの所有・所属を示す与格などの説明を見ればよい。440ページの定語の語順(性質形容詞と関係形容詞ではどちらを先に書くべきかなど)は日本で出た類書では触れられていないと思う。若干コメントすると、66ページтоварищиの語源をご存じないようだが、これはтоварищ
= арестант, который ест и пьет из одной посуды с другими арустантамиということで同じ釜の飯を食った囚人という意味の隠語で19世紀中ごろの奥バイカル地方Забайкальеや19世紀末のサハリンで用例がある。この語をボリシェビキーが利用しただけで、товар
ищиというのは単なるシャレ程度のことだったのではないか?77ページдать
махを「拒否する」と訳しているが、「へまをする」の誤り。78ページволь(ヴォルト)はвольт(ボルト)の誤り。85ページ「причина,
винаのような原因をあらわす語も与格を要求します」とあるが、与格のみならず生格だってとる。たとえば、Какова
причина этого?(この原因は何なんだ?)やЭто было причиной того, что я спасся.(これが私が助かった原因でした)などである。95ページНа
радостях = по случаю какого-л. счастливого событияということで、「大喜びで」は誤訳であり、「お祝に」とでもすべきだ。96ページ「高級な鉄鋼」という日本語はない。「高級鋼」か「ハイグレード鋼」とすべきだ。129ページОжедонкаはОдежонкаのタイプミス。「ものは多いか」ではなくて、「着るものは多いか」ではないか?161ページдремучий
лесを「眠っているような森」と訳しているが、густой,
труднопроходимый лесのことであり、「鬱蒼たる森」ではないか。同様にворонを「大ガラス」としているが、「ワタリガラス」のはず。162ページбледный
как теньを「影」としているが、「亡霊」ではないか?луньをチョウヒとしているがチュウヒの誤り。163ページперсикを「スモモ」としているが、「モモ」の誤り。190ページМой
здесь.を「あたしの人」と訳しているが、「うちの(人)」のほうが日本語らしいのではないか。221ページ「強調のтакойの後置」で疑問詞のあとが複数形になればтакоеも複数形になるとあり、кто
вы такие?の例が挙げられているが、これはктоだけの話で、чтоは違うのではないか?Что такое деньги? Что такое Япония?などの例で分かるはず。269ページливмя
литьを「長雨が降る」とか「雨はしとしとと降っていた」と訳しているが、литься
очень сильно, в большом количествеということだから、「土砂降りである」とか「沛然と降る」とすべきだ。同じ間違いが481ページにもある。лил, лил, лилを「雨がシトシト」と訳しているが、лить
= идти непрерывно, с силой (о дожде)と露露辞典にある。ゆえに「降って、降って、ザンザン降りだ」とでも訳すべきである。275ページнеудобь сказуемыйを「不都合」と訳しているが、これはнеудобный
для произношения, неприличныйということだから、「口にするのもはばかる、下品なもの」のはずだ。Фома
неверующийを「頑固な男」としているが、もともとキリストの12使徒の一人doubting Thomasのことなので、「疑い深い人」とすべきではないか?276ページの「受身表現として広く用いられている被動形動詞過去は、動作の時制(いつ行われたのか)をはっきり示しません」とあるが、278ページ上から2行目では»Мёртвые
души» были написаны Гоголем в 1841 году.とあり、はっきりと明示されているではないか?一般被動形動詞過去は動作の明示をはっきり明示できるはず。277ページ下から8行目быльはбыл(а,
о, и)のタイプミス。281ページ「всегдаは不完了体動詞の文中で用いられる」とあるが、例示的用法(何かあったら~するという用法)では、完了体が出てくる。たとえば、Я
всегда вам помогу.(いつでも助けてあげますよ)。289ページпо-ждовскиはпо-жидовскиのミスタイプ。317ページНиканор(ニカノール)が「ネストル」になっている。429ページРекомендуется
составить...の「推奨される」が訳されていない。479ページ「※ザリガニ(рак)どうみてもそんなに典型的な赤さにならないでしょう」とあるが、ゆでたザリガニは赤くなり、ロシア人にとって今でもよい酒のつまみであることを著者は知らないようだ。480ページ「ロシア語の作品には、日本の散文の技法である掛詞に当たる手法はほとんど見られない」とあるが、アネクドートではよく使わる。482ページтопотを擬音語としているが、「足音」と言う意味であり、「パカパカ」はロシア語ではтрюх-трюхのはず。486ページщёлкを「サラサラ」と訳しているが、「カチカチ」とか「パチパチ」とすべきだ。サラサラがロシア語ではшелест,
щорохが普通のはず。「カサカサ」をшоркとしているが、шаркではないか?На брюхе
шёлк, а в брюхе щёлк.「グーグー」と訳しているが、「ペコペコ」の方が原音に近いのでは?492ページと498ページБеловинскийをБеловинскицとタイプミス。
11. ロシア語の比喩・イメージ・連想・シンボル辞典(植物)、狩野昊子、鞄ソ、2007年
これまで出版が待たれた事典である。前に、「イワンのくらし いまむかし」(中村喜和編、成分社、1994年)を読んだ時に、植物関係(小林清美、伊東一郎)は非常にためになったので、是非この分野で他の植物も合わせて一冊の本が出ることを望んでいたが、望みがかなった。この事典なくしてはソ連・ロシア文学の正しい理解はありえないと思う。しかも革命前はともかく、現代ロシアにおいても類書がないというのはすごいとしか言いようがない。さらにロシア全体の基本的な風俗(特にロシアの衣服や生地)についての一書が出ることを強く期待する。図や写真がないのが欠点であり、必要ならロシアで出た植物図鑑を参照するとよい。読みながら、気のついた点を述べれば、2ページおよび564ページのадамова
главаの学名Cyrpedium Calceolusだが、Популярный атлас оперделитель (дикорастущие растения),
Новиков, Губанов, Дрофа, 2002によれば、少し学名は違う(Мельниковのタイプミスではないか?)が、Cypripedium
Calceolusなら、「カラフトアワモリソウбашмачок настоязий = венерин башмачок」のはずである。今はヨーロッパロシア、南シベリアや極東で見られるが、ランのうちで最も美しい花で、摘み取られて絶滅寸前でレッドブックに載っているとある。図版を見ても花はドクロマークのようである。10ページのарбузにもбананやлимонのように俗語で数を示し、миллиардの意味で使うということを付記すべきだと思う。14ページのбананは俗語で5段階評価の2点とあるが、ストルガツキー兄弟の書いたことを鵜呑みにして書いているだけではないか?Большой
словарь русской разговорной речи, Химик, Норинт, 2004では、5段階評価の1または2で不可を意味するとある。バナナは「1」の形に似ており、ここから不可という意味で2の意味も出てきたのではないか?それと5段階評価では「2」であって、「2点」とは言わない。70ページの「アレクサンドラ・フョードロヴナ」には生没年を入れるか、ニコライ1世の皇后である旨明記したほうがよい。シャルロッタと書いてあるとはいえ、百科事典などでは、アレクサンドラ・フョードロヴナはニコライ2世の皇后として記載される方がはるかに多いからである。それとヤグルマソウよりはヤグルマギクとしたほうがよい。日本の図鑑ではヤグルマソウは別の花を記載しているからである。96ページのвишняも日本の普通の「甘果サクランボчерешня
= птичья вишня」ではなく、「酸果サクランボ」のはず。英語ならsour cherryではないか?117ページの「天気が雨」は「天気雨」のミスタイプ。150ページель,
елкаをモミ、トウヒと書いているが、トウヒであって、モミはпихтаのはず。162ページземляникаが野生のイチゴで、211ページклубникаが栽培種という説明は大ざっぱすぎはしないだろうか。イチゴは普通клубникаと訳すが、本当のклубника (клубника = земляника мускатная, земляника мускусная,
земляника зеленая)のは実は小さくて、より香りが強く花軸は葉より上で収量が低いので栽培されない。つまり街でみかけるイチゴはклубникаという名を冠したземляника ということになる。земляникаにはдикорастущая (野生種)と садовая (園芸種)があり、大粒の園芸種を民間(店頭)では誤ってклубника と呼ぶとソ連大百科にも書いてある。ただ誤りだろうと何だろうとイチゴはклубникаが一般的であるのに変わりはない。212ページбрусника(コケモモ)をツルコケモモとし、213ページのклюкваをコケモモとする誤植がある。216ページのколокольчикにколокольчик
круглолистныйイトシャジン (C. Rotundfolia)も入れたらと思う。257ページのアカザだが、марь белаяはシロザであり、лебедаもシロザに似ているのでシロザ(あるいはハマアカザの一種)としたほうがよい。ロシアにアカザ(葉の根元が赤い雑草)はない。274ページлимонの俗語で100万ルーブル(1920〜23年の)とあるが、лимонは現在でも100万という意味の俗語である。322ページのネズ(トショウ)をビャクシン属と書いているが、ネズ(ネズミサシ)はネズミサシ属ではないか?それにビャクシンは幹が著しくねじれ外見もネズとは違うので外すべきだと思う。329ページのмята
полеваяの学名はMentha Arvensisで、これがいわゆるハッカ(ニホンハッカ)であり、そのことを付記すべきだと思う。328ページのмухомор
красныйはベニテングダケである。341ページогурецの中でрассольникを魚のスープとしているが、これは正確ではない。Русская
кухня, Менджитова, ЭКСМО- Пресс, 2001によれば、рассольникにはсолные огрцыを入れるものの、肉の入ったラッソーリニク、鶏肉の入ったもの、キノコの入ったものがあり、постのときには魚やイクラの入ったラッソーリニクを食したといい、これを特にкальяというとある。369ページосотをアザミ科としているが、正しくはキク科であり、осот
огородный (SonchusOleraceus、花の色は黄色)はノゲシ、ハルノノゲシであり、ノゲシ属である。一方、осот розовый
= полевой бодяк (Cirsium Aevense、花の色はピンク)は同じキク科でもアザミ属である。普通осотといえばノゲシを指すと思われる。384ページперекати-полеでГипсофила
метельчатаяとあるのは、学名からすればкачим метельчатый(宿根カスミソウ)ではないか?同様に、学名Gypsophila
muralisはкачим постенныйである。387ページпионだが、ロシアでいうпионはДальを見る限り、Paenia officinalisオランダシャクヤクと思われるが、牡丹(木本性)とシャクヤク(草本性)を特に区別しないようである。388ページの学名Lythrum
salicariaから判断して和名はエゾミソハギдербенник иволистыйが正しい。403ページのбледная поганка = вонючий мухоморシロタマゴテングタケは学名がAmanita
vernaではなくAmanita virosaではないか?それならドクツルタケである。406および419ページпрострел
раскрыйтыйは学名から判断すればセイヨウオキナグサとなる。501ページсезамゴマは普通ロシア語ではкунжутといい、中央アジアに滞在したことのあるロシア人なら知っている人もいる。596ページおよび589ページの克肖(こくしょう)は「神に似た聖なる生涯を送ったということで、聖人となった修道士に与えられる称号」というような解説をつけなければ読者には分からないのではないか。599ページ「クリト」とあるが「クレタ島」ではないか。パンの言い伝えに関する601ページから622ページに関する解説は見事というしかない。非常に参考になる。656ページчертополохの民間名としてбодякとあるが、бодякの学名はCirsiumであり、似てはいるが違うのではないか。蜂蜜で有名なдонник(シナガワハギ)が収録されていないのは残念だ。
12. Этикет
русского письма(ロシア語の手紙のエチケット), Акишина/Формановская, Русский язык, 1981 ロシア語でレターを書く場合の必読参考書。構文タイプになっているので、ロシア語作文の勉強にもなる。
13. ロシア語手紙の書き方、新田実/アキーシナ、ナウカ、1979年
ロシア語でレターを書く際に非常に役立つが、レターの背景に恋愛を用いているために、汎用としては若干問題があるように思われる。そういうニュアンスを排した方が参考書としてはもっと良くなったと思われる。
14. *ロシア・ソビエト姓名辞典、鳴海完造、ナウカ、1980(姓4万収録)
ロシア人の姓名の力点を知るには不可欠の辞典。最近「ロシアとヨーロッパ(3巻)」(マサリク著、石川達夫・長與進訳、成文社)を読んでいたら、内容も素晴らしいが、訳の中で、ゴンチャローフ、トゥルゲーネフと原音に近く表記されていたのには感激した。ロシア語の力点は強く長く発音されるものゆえ、日本語の長音符号(ー)をつければ原音に近くなるものが多い。力点がどこか分からないからといって、ナボコフ(ナボーコフであろう)などと書くのは大文学者当人に対して大いに失礼だと思う。チェルノーブィリもチェルノブィリではニガヨモギになってしまう。地名と植物名を一緒にしないために力点を変えたのかもしれないではないか。この辞典の他に、Словарь
современныё русских фамилий, Ганжина, АСТ АСТРЕЛЬ, 2001が力点つきで8000の姓について由来を解説している。名前については、Справочник
личных имен народов РСФСР, Русский язык, 1979やСловарь русских личных имен,
Петровский, Русских язык, 1980がある。
15. Словарь
сокращений русского языка(ロシア語略語辞典), Русский язык, 1983(収録語数17,700) 略語でも格変化するものについて分かるようになっているのがよい。これに載っていない略語はインターネットの yandex.ru やwww.rambler.ru
、あるいはロシア語略語のサイト www.sokr.ruで検索するとよい。
16. ロシア語のコーパス(語彙集)
http://ruscorpora.ru/index.html というサイトで、単語の用例を調べることが出来る。
17. ロシアの法律用語(小森田先生のサイト)
基本的な用語が記載してある専門家のサイト。
http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~komorida/Ruslegal.htm
18. インターネット検索エンジンyandex.ru やwww.rambler.ru
小話などで歌詞や詩がオチに関係しているときに、こういうロシア語の検索エンジンは便利である。ただ言葉の由来(典拠)を調べたいのが普通だが、ヒットするサイトが多すぎて調べきれない場合があるのと、ネットには不正確な情報も少なくないので複数の情報源にあたってみて自分なりに判断するのも必要である。言葉の意味や定義、由来や写真(写真が最初に来る例もすでにある)が最初に来るようなふうにはできないものだろうか?どちらかというと yandex.ru の方があたる確率が高いと思う。
19. *Большой словарь русского жаргона(ロシア隠語大辞典), Мокиенко и Никитина, Норинт, 2001(語数25,000)
現代の若者向けの雑誌を読むときのベースとなる露露の隠語辞典。これに「現代ロシア話しことば辞典」があれば、かなりまごつくことも少ないであろう。犯罪関係の隠語にも強く、車などの俗語表現(пирожок,
каблукなど)やコンピューターの俗語的言い回しも載っていて良心的な編集と言える。ただхуй, хер,
манда, пиздаなどの猥語は基本語だということからか(あるいは特に説明に値しないということからか)、見出し語にはない。
20. Русская
заветная идиоматика(ロシア隠語熟語集), Буй, Альта-Принт, 2005
最新の用語を集めており隠語熟語集としては出色の出来。一読に値する。
21. *現代ロシア話しことば辞典、日ソ図書、狩野亨・メドヴェートキン共著、1999
(語数14,700) 日本人向けに編まれた露和の俗語辞典。非常に良心的な編集がなされており、アネクドート、現代小説、テレビ、映画の理解には不可欠の辞書。特にロシア語関係で唯一の「スーパートリビア辞典、研究社、1977年」(英和)らしきものも(ソ連映画から俗語に取り入れられている表現など)載せているのは感心する。車の俗語的表現も載っている。ただコンピューター関係がないし、犯罪関係の隠語に弱いように思う。Места
не столь отдаленныеの訳は「便所」となっているが(Андрей Белыйも回想録でこの意味で使っている)、現代では、「刑務所(ムショ、塀の中)」という意味が普通ではないか?дело
техникиの訳も「要は技術的問題だ」では文意が通りにくいと思う。根本の重要なことは処理したので、残りは「手はずを整えるだけだ」とか「枝葉の問題」、「細かいつめを残すのみ」ぐらいだろう。例文の多いのは大変結構なことだが、全般に例文の訳はぎこちない。ただ
Вовка-Морковкаなどの仇名の説明などは類書にはなく素晴らしい。下記の口語辞典とは若干語彙が異なり、新語が少ない感じがするし、俗語より口語を収めている感じがする。
22. *Большой
словарь русской разговорной экспрессивной речи(ロシア語口語表現大辞典), Норинт,
2004, Химик(語数15,000) 米国、欧州、日本などでは隠語、俗語は大衆の間で使用されて淘汰された後いくつかが徐々にでも標準語に組み込まれていったが、ソ連には資本主義国のような犯罪が存在しないと言う建前から、隠語の存在についても無視されてきた。隠語は1950年代の犯罪者の何度かの恩赦で犯罪者がシャバに出てきて広めたのと、インテリである政治犯が刑務所で覚えたりしたものが、80年代頃から一般でも使われるようになった。また映画やテレビ、歌謡曲の歌詞などから俗語についても爆発的に広がってゆき標準語だけでは分からない場面が増えてきた。そのため庶民の会話、文学作品の会話部分など当時の辞典ではよく理解できない部分が多くあった。特にソルジェニーツィンの収容所列島で刑務所の隠語など出てきたときには、それ用の特殊語彙集が必要となったくらいである。ただ70年代から現実の動きを取り入れるような動きも見られた。例えば1971年の映画
Джентльмены удачи(直訳は「ラッキージェントルメン」だが、俗語では「強盗たち」という意味)冒頭で主人公に犯罪者用の隠語を教える場面などである。隠語辞典については80年代頃から出版されるようになったが、標準語と隠語の中間と言える口語や俗語については今まで用例を載せたものはロシアではなかったに等しい。これは口語や俗語の大辞典であり、現代ロシア語話しことば辞典に対応するものと言える。こういう辞典がないと現代の新聞や雑誌の見出しの意味すら理解できないことになろう。例文も19世紀のプーシュキンやレールモントフの好色詩、ゴーゴリから、チェーホフ、ゴーリキー、イーリフとペトローフ、エセーニン、ブルガーコフからシャラーモフ、現代のエロフェーエフ、グラーニン、はては歌手のヴィソーツキー、漫談家のライキンまで多彩である。ただこの辞典も完璧とは言えず、載っていない言い回しもある。意味は分かるものの、дело
техники(あとは細かい点残るだけ), не в последнюю очередь(少なからず重要な), места не
столь отдаленные(ムショ、塀の中)などである。Хуй, хер, манда, пиздаなども載っている。ただпиздой
накрытьсяを調べようとしてтаз、накрыться とたらいまわしされた挙句意味の説明はないなどということが、いくつかある(отстегнутьсяなど)。語や表現の出典も挙げられているのもあり役に立つ。面白いのはこの辞典の表紙には
Большой словарь русской разговорной речи となっていて、中びらきにあるэкспрессивнойが題名に含まれていないことである。ロシア的おおらかさか。例文も多いので1日2ページぐらい読んでゆくとロシア語の口語について新しい発見がある。
23. Словарь
тысячелетнего русского арго(千年ロシア隠語辞典), М.А. Грачев, РИПОЛ КЛАССИК, 2003 (語数27,000) 隠語全般だが、特に革命前の隠語について詳しい。隠語の勉強のとっかかりとして勧めるのはКупринのВор盗人(Киевские
типыキエフ職業図鑑)が短編で読みやすい。ただ書かれたのが1897年なので隠語がやや古い感じがする。その他にはКаверинのКонец
хазы(ヤサの最後)、ГиляровскийやИльф
и Петровの著作、ЛеоновのВор(これを「泥棒」と訳しているが、これだと頬かむりしたような間抜けな感じがするが、この小説はそういう内容ではないので、「盗人」、「盗賊」、「無頼」などの題名が望ましい。この小説の出だしに隠語が多用されているが、それを過ぎればそれほど隠語が多いというわけではない)を読むときに大いに役立つが、意味は分かるものの具体的説明に乏しい。
24. 「ラーゲリ強制収容所註解事典」、ジャック・ロッシ著、恵雅堂、1996年
ラーゲリに1939年から61年まで収容されたフランス人による用語集。1953年から54年のソ連各地のストライキについては本書によって初めて知った。非常に参考になるが、和訳の関係でいうとворを泥棒と訳しているのは問題がある。この語には日本語の「泥棒」、「コソ泥」のようなトンマなニュアンスはない。「極道」とか「顔役」くらいが適切だろう。
25. За
пределами русского языка(ロシア語の彼方に), А. Флегон, Flegon Press, 1973
猥語辞典としては基本的なものである。
26. Англо-русский
русско-английский словарь географических названий(英露、露英地理名称辞典), М.В.
Горская, Русский Язык, 1994(語数6000)
岩波や研究社の露和辞典には世界の地名がほとんど載っていないので、スペルや力点を確認するのに不可欠な辞書。
27. ロシア語身振り言語辞典、アキーシナ、狩野昊子、ナウカ、1980年、(400項目)
ロシア人の身振り手振りの解説。一応チェックしておいた方がよい。
28. Малый
атлас СССР(ソ連小地図帳), Главное управление геодезии и картографии при Совете
министоров СССР, 1975
ソ連時代のソ連の地名の所在地を調べるのに重宝している。
29. Малый
атлас мира(世界小地図帳), Главное управление геодезии и картографии при Совете
министоров СССР, 1979
中国の地名をロシア語に直したものはなかなか類推が難しい。Гиринがどこにあるか調べるのに、これとリーダーズ英和辞典を組み合わせて吉林ということが分かった。
30. 和露辞典、Русский Язык、Б. П.
Лаврентьев、1984
語数も少なく(約7万語)、不満も残るがまあまあ便利。コンラッドの和露大辞典(ナウカ、1974、縮刷版)は収録語数が10万語というが、語彙が古いし役に立たない。これはロシア人の日本語学習者向けだからであろう。ただこれも含めて和露辞典では、よほど簡単なものはともかく露作文は作れない。和露辞典では実用に耐えるほどの語結合がないという不満が常にある。類語の説明も少ないか、まったくないのも困る。編者も実務の経験がないからか露文解釈という発想から抜け出せないのだろう。警官棒(警棒のことか?)などとへんな日本語も載っている。軽油をлёгкие
масла, бензинと訳しているが、前者は「軽い潤滑油」、後者は「ガソリンまたはベンジン」であり、明らかな誤訳である。軽油はдизельное
топливоという。コンサイスの和露辞典も同じ間違いがあり、少なくとも技術用語に関する限り危なくて使えない。コンサイスの和露は「ばらつき」という単語など取り入れて、初級者向けにはそれなりに良い和露辞典だと思うが、上に挙げたような根本的な和露辞典の編集の考え方が露文解釈の経験のみで、実際のプロに和露を使ってもらうのだという気迫が感じられない。このように重箱の隅をつつくようなまねをしなくても、例えば、水素というのはводородで、1語対1語で対応するからいいが、レンズを引くとлинза,
объективが載っている。これだけで同義語なのか類義語なのか説明がない。同義語ならそれでよいが、類義語なら使用上の差を説明してもらわないと役に立たない。линзаはレンズそのものであり、объкетивは光学器械(カメラや顕微鏡)の一部としてのレンズだから、カメラのレンズはфотообъектив
(объектив фотоаппарата)であって、линзаとはいわない。望遠レンズはтелелбъективという。この両者の違いが分からないと和文露訳では使えないことになる。動詞や名詞にしろポツンと上げられても、動詞なら次にどのような名詞の格がくるのかとか、どういう前置詞を要求するのか、例文付きで書いてもらわないと使えないということである。こういう事が起こるのは辞典の編集者が実際のプロ(通訳がガイド)の仕事の現場をよくご存じないからではないか。これは専門用語のことを言っているのではなく、イカ、イチゴ、イモ、ウサギ、オイル、ガラス、機械、雲、コイル、工場、ゴム、坂、サクランボ、絞り、大学、ダイヤ、ドリル、ネギ、ネズミ、箱、バネ、ブルーベリー、ピン、マス、虫、レンズなど日常で使われる言葉のことである。一般的な事柄や雑談などにおいてもということである。だから分からないときは逆説的だが、勘で露和辞典でキーとなる単語を引いた方が役に立つ場合が多いのは皮肉である。だからプロの通訳やガイドをした経験のない人が和露辞典を編纂するのは無理があると思う。いくら露和の解釈の専門家でも裏返しすれば、和文露訳のプロになるというものではない。そのようなプロになるには実務の経験が必要であるというのは当然のことである。ただこの辞典は付録として年号(弘化、元和とか)に西暦が突いているので便利である。
31. リーダーズ英和辞典(第2版)、研究社、1999年
収録語数27万語はすごい。しかも普通名詞でも内容が分かりにくいものは簡単にどんなものかわかるようになっている。これは日本の露和辞典にはほとんどないものである。これで見つからなければ、www.alc.co.jpの英辞郎で引くと載っている場合がある。
32. *Толковый
словарь живого русского языка(生きているロシア語詳解辞典、4巻), В. И. Даль
и И.А. Бодуэн де Куртенэ, ОЛМА-ПРЕСС, 2002 (語数20万語) 有名なДальの辞書の第3版。第1版や第2版はミスがあるとソルジェニーツィンも自分で作った辞書Русский
словарь языкового расширения, Наука, 1990の序文で述べている。Бодуэн де Куртенэの校注で内容がかなりよくなったとされる。ロシアでは1918年に社会主義革命が起こったために、それ以降とは社会的語彙が一変してしまったため、革命前のそのような語彙については本辞典が不可欠である。特にエセーニンの詩や革命前のロシアの小説を読むなら必携である。
33. *Энциклопедический
словарь росийской жизни и истории(ロシアの生活・歴史百科), Беловинский Л.В., ОЛМА-ПРЕСС,
2003(6000項目)
革命前のロシアの日常雑学事典。白黒とはいえ図版も豊富で革命前のロシア文学を勉強する人の必読書。
34. 新明解国語辞典第五版、三省堂、1998年
手頃で新語についても収録しているのがよいし、説明も分かりやすい。
35. Краткая
Еврейская Энциклопедия(簡略ユダヤ百科、7巻)、ユダヤ共同体研究教会、 1996
ソ連ロシアをユダヤ人抜きにしては語れない。Cの項で終わっているが実用上は問題ない。ユダヤ関係の事物を知るのには不可欠の百科事典。ユダヤ人側に立った史観であることにしても大いに参考になる。
36. 類語新辞典、大野晋・浜西正人、角川書店、1981
駄洒落の和訳を考えるときなどに重宝している。
37. 日本語大シソーラス類語検索大辞典(CD-ROM版、山口翼、大修館、32万語)
意味が分かっているが適当な単語が見つからないときに大いに便利である。
38. 電子辞書 Casio, Ex-word XD-V9000
広辞苑第5版、研究社リーダーズ英和辞典第2版、ロングマン、漢字源、ジーニアス英和・和英辞典、ロジェシソーラスが入っており、特に広辞苑は出張以外でも毎日何度も活用している。説明が納得いかなければ新明解国語辞典を使う。
39. 新明解日本語アクセント辞典、金田一春彦監修、秋永一枝編、三省堂、2001年
7万5千語収録。日本語は高低によるピッチアクセントであり、東京生まれでないので、たまに見る。
40. ***Большой академический словарь русского языка(アカデミー版ロシア語大辞典), Горбачевич, Наука, 2004 – 2008 15万語収録予定。第16巻まで刊行されている。できるだけ速やかに全巻刊行されることを心から願っている。この調子だと全部で30巻になると予想される。
41. *Словарь русского языка(ロシア語辞典、4巻), Русский Язык, 1981(語数9万語)
これより大きい露露辞典を持っていないので、やむなく基本的な露露辞典として活用している。
42. Словарь современного русского литературного языка(現代ロシア標準語辞典、第2版), Русский Язык, 1991-94 6巻5冊Е-Зまでで中止となったのは惜しい。出版されている分はとても役に立つ。
43. Большая советсткая энциклопедия(ソ連大百科事典), Советская Энциклопедия, 1970 – 1978(全31巻) ソ連共産党のイデオロギーに基づき製作されているということを頭に置けば、それなりに興味深い。CD-ROM版も売られているらしいが、図版がないか制限されているのではと危惧する。Царьградские
рожки (стручки)というのは革命前の庶民の人気のある黒くて甘いおやつだが、ソ連大百科にはその図がある。またтаран(体当たり)という項目には、Нестеров
(1887 – 1914) が第一次世界大戦において1914年9月8日世界で初めて体当たりを敢行し戦死したとある。第二次世界大戦中にも弾薬が尽きた場合体当たりした例があり、戦車での体当たりもある。日本と違い国が奨励したり命令したのではない。トリビアのようなものや、反ソ的なものについては載っていないとはいえ、それ以外については役に立つ。これに載っていないものはインターネットで根気よく探すしかない。ただчерносотенныеなど、名称の由来などは記載ない。ロシアの生活・歴史百科や古のモスクワ言葉に頼るしかない。「ロシア・ソ連を知る事典」(旧版、平凡社、1989年)などもこの百科事典を典拠にしているのか、同じ不満がある。
44. Россия.
Большай лингвострановедческий словарь, Прохоров, АСТ-ПРЕСС КНИГА, 2009
ロシアの歴史、文化、自然、習俗など2,000の現実を反映した辞典。
45. Словарь
языка Пушкина(プーシュキン語彙辞典), гос. Изд. иностранн. и национальн. словарей, Академия
Наук СССР институт языкознания, 1956(4巻)
アネクドートを読んでいて、Это
он первым сказал: «Души прекрасные порывы!»というオチを見つけた。さっそくインターネットでしらべると200以上がヒットする。しかし一部しか引用されておらずオリジナルの詩全体が分からないから訳ができない。昔読んだプーシュキン全集10巻(Наука,
1977、第4版)の第9巻が索引なので、調べるが題名にそれらしき詩はない。そこでこの辞典の登場となる。душаで引くと、あったがこれも詩全体ではない。引用の末尾にС2
44.16とある。そこで辞典の付録を見る。С2は詩集の第2巻(アカデミー版1937〜49年全16巻)で、44は第44番目の詩、16は16行目とある。筆者の手元にあるのはアカデミー版ではない1977年版である。ただ有難いことに付録に詩の手引きというのが載っていて、アカデミー版の巻毎の番号について詩の題名が書いてあった。К
Чаадаевуである。これで第9巻に戻って詩の全体がようやく分かった。ロシア人は子供のとき詩を、特にプーシュキンを暗記させられるので、内容をよく覚えており、本のみならず、小話でも、サイトの中の引用でも出てくる。詩の場合は単語だけ訳しても意味が取れない場合が往々にしてあるので、この辞典の有り難味を最近ようやく知った。現在古本屋で手に入るかどうかしらないが、あったら是非買っておくべき辞典である。
46. *Большой
энциклопедический словарь(大百科事典), Советская энциклопедия, 1991(2巻) 上の大ソ連百科に載っていない80年代のものを調べるときに使う。
47. Новый
большой англо-русский словарь(新大英露辞典、3巻),
Ю.Д. Апресян, Русский Язык, 1994(語数25万語)英語の単語が分かっているときにそれからロシア語を調べるのに役に立つ。
48. *Словарь
русских пословиц и поговорок(ロシア諺辞典), В. П. Жуков, Русский язык, 1991 (収録の諺1200)
日常で使われる諺を収めたものでは一番詳しい。この諺辞典の長所は単語で引けるように工夫されていることである。だからうろ覚えでも全体の諺を調べることが出来る。一通り目を通し、「故事・俗信」ことわざ大辞典」(尚学図書編集、小学館、1982年、約43,000項目)を使って自分で訳語をつけた。
49. *「諺で読み解くロシア人の人と社会(ユーラシアブックレット No.
104)」(栗原成朗、東洋書店、2007年)
スラブ民俗学の泰斗である栗原先生のロシアの諺を中心にしたロシア人気質についての解説書と言った感じである。ロシア語を学ぶ人には必読書である。諺も500ぐらい収められていて、自分がこれはと思ったものは暗記すべきである。ただ本書の性質上、西洋から翻訳された諺(「健全な身体には健全な精神が宿るВ
здоровом теле – здоровый дух」といった類)は扱っていないので、それを知りたい人はСловарь
русских пословиц и поговорок(ロシア諺辞典), В. П. Жуков, Русский язык, 1991 (収録の諺1200)などがある。ただ若干気になったところがあるので書いておく。19ページ
Тише едешь – дальше будешь.で「より静かに行けば、より遠くに達する」、つまりТише едешьとは、「強行軍せずに、馬をいたわりつつ進ませれば」と書いているが、тихий
ход(徐行)という言葉があるように、тишеというのは「もっとゆっくり」というだけの意味ではないか?それともこの諺からтихийに「ゆっくり」という意味が生まれたのだろうか?28ページ「古代のスラブ人(東スラブ人)は海を知らなかった」とあるが、これはおかしい。バルト海
(Варяжское мореと言われた)と黒海は Путь варяг в грекиと呼ばれたのではないか。そのほかに白海もある。29ページ「シチュカ」と書いているが、「カワカマス」あるいは「パイク」と書いて悪い理由がよく分からない。
50. *Фразеологический
словарь русского литературного языка(ロシア標準語慣用句辞典),
ТОПИКАЛ, 1995(7000項目) 口語表現も多く大いに参考になる慣用句の辞典。
51. *ロシア語慣用句辞典、キム・ミネ著、浅沼寛司編、東洋書店、2001年
1500項目もある露和で唯一の慣用句辞典。例文も豊富で、基本的な慣用句ばかりなのですべて暗記する必要があるし、ロシア語上達のためには全頁読破すべきだと思う。ただ細かいことをいえば、ロシア語の方は問題ないが、和訳部分に若干問題がある。74ページ上から6行目および81ページ末尾の行にそれぞれ、「結果になるだろう」とか「過ぎないだろう」とполучитсяやсоставитという完了体未来形を「だろう」という日本語では推量の意味でしか用いない助動詞を用いているが、「結果になることになる」や「過ぎないことになる」とでもしないと誤訳になる。これらのロシア語の文には推量の意味はない。115ページおよび382ページにある訳語の「目玉が飛び出る」というのは、「ひどく叱られる」、「値段がひどく高くて驚く」という意味で、たんに「びっくりする」という意味はない。誤解を招くので削除すべきである。136ページЯ ни
капли в рот не брал.を過去形なのに「酒など一滴も口にしていないぞ」と現在形で訳してあるが、これは文法でいう不完了体の「事実の名差し」であり、意味は経験を示す。訳は、「酒など一滴も口にしたことはない」である。190ページのэкспрессは「急行」ではなく、「特急」である。253ページのв
час пикはв часы пикの誤りであろう。262ページの注にある「逐語的和訳は「口を天井へ釣る、あごを吊るす、あごが吊るし上がる」に相当する」とあるが、意味不明。この部分は削除すべきだ。265ページлёгок/легка/на
подъёмはо том, кто быстро соглашается отпривиться куда-л., делать
что-л., действовать и т.п.ということであり、訳の一つにある「尻が軽い」には、「動作が機敏」の他に、「言語動作が軽々しい」とか、「女の、浮気である」という意味があるので、誤解を招くから削除すべきだ。274ページのлошадиная
доляは、日本語でも「馬に食わせるくらい」という表現があるので、それを使うべきだ。277ページльвиная
доля = самая большая, лучшая доля чего-л.ということなので、「いいとこ取り」という和訳を追記すべきだ。405ページя
ему не очень верю.を「僕はあの人を信用しない」と訳しているが、間違いである。「僕はあの人をそれほど信用しない」とすべきだ。423ページбомжиを「浮浪者」としているが、今風に言えば「ホームレス」のほうがより適切である。433ページのконьякを「コニャック」と訳しているが、フランスのコニャック地方産なら別だが、それ以外は「ブランディー」とすべきだ。それと「星印ひとつか」は「星ひとつか」のほうが、「スリースターのものだ」は「三つ星だ」のほうが日本語らしい。441ページのон
покажет тебе, где раки зимуют.を「おまえをひどい目に遭わせてるだろう」というような推測かつ仮定法過去のような和訳はおかしい。「おまえをひどい目に遭わせてやる」とすべきだ。444ページの和訳の中に「袋を入れた猫を買う」とあるが、意味は分かるものの日本語でそのような表現はないので削除すべきである。448ページの和訳に「口の端にかかる、口にのぼる、口にかかる」とあるが、いずれも誤りで、「口の端に上る」が正しい。訂正すべきである。458ページの最後の露文の行にон
не напишет романаとあり、これを「彼には長編小説は書けないだろう」と訳しているが、これは完了体未来形の否定で現在における不可能を示す用法である。それに前にも書いたが、「だろう」というのは推測であって日本語では未来をしめすわけではない。ゆえに、「彼(には)は長編小説を(が)書けない」と訳すべきである。494ページс
Вашего позволенияの和訳が「ご免をこうむって」となっているが、「ご免こうむって」のはず。511ページС
луны свалилсяを「月から落ちてきたのか、別世界からでもやって来たのか」と訳しているが、意味は分かるものの、普通の日本語でそういう表現はない。「頭がどうかしているのじゃないか、頭がいかれているのじゃないか」とすべきだ。544ページзазанимаютсяはзанимаютсяに訂正の要あり。572ページпроездной
билетを定期券と訳しているが、乗車券の間違いではないか?588ページ「舌をかんでしまう」よりは「舌をかみそうな(名前)」とした方が日本語らしい。
52. ***ロシア基本語活用辞典、現代ロシア語社、1979年(項目数)
Словарь-справочник по русскому
языку для иностранцев (1. Глагол 2. Прилагательное 3. Наречие 4.
Существительное) の復刻版。いわゆる類語(類義語)辞典。同意語ではないが形が似ている動詞、形容詞、副詞、名詞の各単語(заявка とзаявление
など)について、類語の使い分けを外国人向けに解説している。このような類語辞典は例を見ない。類語の使い分けの参考書では初級編と言える。全部読破すべきだ。ありがたいことに、最近「ロシア語類義語語義・用法解説辞典(動詞・名詞・形容詞・副詞)Словарь-справочник по русскому языку」スレサーエヴァСлесарева, 2011(240項目1000語)として改訂版が出た。
53. Словарь
синонимов русского языка(ロシア語シノニム辞典), Евгеньев, Наука, 1971(2巻)項目数4,4148
命令と言う意味のприказやраспоряжение、указаниеとрекомендация、説明という意味のобъяснение
とразъяснениеなどシノニム(同義語や類義語)のニュアンスの違いを調べるのに重宝であるが、説明が強意であるとか文体の差ぐらいで簡潔すぎ、またおおざっぱなような気がして、和文解釈(会話のための和文露訳)の勉強には不向きのような気がする。ただ19世紀の同義語も挙げているのは評価すべきである。ロシア語新釈シノニム辞典と見比べれば、別の角度でのニュアンスの違いを知ることが出来るものもあり、それなりに重宝ではある。しかし、シノニム間の細かいニュアンスは分からない。同義語(入れ替え可能という)という誤解を生じる場合もあると思われる。
54. ***Новый
объяснительный словарь синонимов русского языка(ロシア語新釈シノニム辞典), Апресян и
др., Школа «Языки русской литературы», 1999 – 2003(3巻)
項目数355。シノニム(同義語や類義語)のニュアンスの違いを具体的にきめ細かく説明した辞典。露露辞典を読むだけでは得られない類義語のニュアンスが非常によく分かる。掲載されている単語の語法が懇切丁寧に示されているので、和文解釈をする上でも大いに役立つし、語感を高めることにもなり、また言葉の規範的用法の理解や確認のためにも座右の書である。詩の理解には言葉の吟味が欠かせないゆえに、この辞典は詩の観賞の座右の書と言える。対象のシノニムがすべて太字で示されており非常に読みやすいが、正確を期すため専門用語が多く(その説明は前の方に載っているが)、慣れるまで時間がかかるかもしれない。編集者でもある10名のロシア語学者のうち各項目の末尾に各執筆者が明記されており、責任の所在が明らかなのは誉めてもいい。類語の使い分けのために手元に置いてその都度調べるなら中級編であるが、学習辞典として一流の通訳やガイドになろうと考えるなら、あるいは和文露訳を教えるつもりなら全頁読破すべきであるが、中味を理解して活用できるようになるにはロシア語を20年から30年ぐらいやる必要があると思う。неправдаとложьの違いなど本書で指摘されなければ一生分からなかったに違いない。語結合の説明も完了体や不完了体に至るまで詳細に説明されているものもあり、アカデミーの露露辞典よりも非常に具体的で会話での和文露訳にも非常に役立つ。基本的な語彙について曖昧だった点や思い至らなかった点についてもかなり明確になったので大いに本書には感謝している。この辞典が読破できれば、かなりロシア語に通じたロシア人の先生も不要となる。
55. *Крылатые
слова(故事成句), Н.С. и М.Г. Ашукины, Художественная литература, 1987(1500項目) ロシア語でよく使われる故事成句、名言についての簡潔な解説書
56. *Particles in colloquial Russian, A.N. Vasilyeva, Progress Publishers,
1973
口語で使われる小詞について、そのニュアンスを英語で説明したもの。
57.
***Verbs of motion in Russian, L. Muravyova, Russian Language Publishers,
1975
定体、不定体も含めて接頭辞のついた運動の動詞について英語で説明したもの。進行形(過程)、未来形(意向、予定)について基本的動詞についてつっこんだ説明がなされている。通訳やガイドを目指すなら必読書である。
58.
*Russian
Verbs in Speech, Merzon, Pyatetskya, Russky Yazyk, 1983
会話で使える基本的動詞についてニュアンスを細かく説明している好著。сообщить
о чёмとсообщить что やрассказать о чём とрассказать чтоの違い(前者は例示的で、後者はすべての情報という違い)など類書にはない説明がある。
59.
***Справочник по русскому языку Практическая стилистика(ロシア語参考書 実用文体論), Розенталь,
ОНИКС, 2008
文体論の参考書だが、口語における類似の単語のニュアンスの差なども説明しており、正しいロシア語を知る上で参考になるところが多い。必読書。
60.
**ロシア語の体の用法、原求作、水声社、1996年
体の用法と言えば「ロシア語動詞 体の用法」(Рассудова、磯谷孝訳編、吾妻書房、1975年)が有名であるが、特に外国人向けという訳ではないために、訳者がわざわざ体の用法のまとめをはじめの方に書いているが、それでも不消化のような気がする。磯谷先生はそれを見越して、「演習 ロシア語動詞の体」(吾妻書房、1977年)を書いて体の用法の普及に尽力されたが、まだこれでも日本人学習者には十分とはいえないという感じがしていた。本書は日本人が体の用法を十分咀嚼して動詞の完了体、不完了体について説明した好著である。その他にもпри-
という接頭辞のついた動詞は進行形を取れない(приходить
в себя, приходить к концуなど抽象的なものは例外)などピンポイントでためになる説明が多い。
ただ過去における体の用法で動作の順次性(アオリスト)には、Во
Владивосток я приехал в начале июля 1943 года.というような類の例文を入れておかないと、学習者はロシア語の評伝などでこの種の表現を見れば戸惑うと思う。城田先生の本には分かりやすい例が載っている。また123ページのПриезжайте
в Осаку.(大阪にお越しください)という命令形は、「過程を表現できない動詞ですから、当然動作への着手も表現できない、ということになるのですが、命令形で使われる場合は例外、ということになります」とある。приходи(те)だって、Приходите и приводите друзей, если вам так
хочется познакомиться с нашим заводом.(当社の工場をそんなに見たいとおっしゃるなら、いらしてください、ご友人もご一緒に)などと使う。これも着手の用法から派生した促しという用法である。これは動作の時間と回数の制約がない「いつか」という意味の着手と考えてもよいような勧誘的意味合いを持つ動作の要請で、相手を拘束しないような動作の時に用いられる。さらに、Белые братья – Наливайという歌の歌詞にНаливай, выпивай, кайф поймай, и еще раз...(注げよ、飲めよ、ハイになれ、そしてもう一度)のвыпивайは多回体だから過程の意味は表すことができないが、この場合明らかに着手の用法である。過程と着手の用法は関係ないのではないかというのが私の考えである。
приезжай(те)という命令形はприезажатьという不完了体だけでなく、完了体のприехатьの命令形でもある。Приезжайте в Осаку.は通常の会話の文脈から考えると明らかに不完了体の命令形で着手の用法だが、そのため用例としてはあまり適切とはいえない。
それと同書に「普通の状況では不完了体の命令形が使われるのが当たり前であるような動詞というのは、おのずと決まっています。以下のような表現は、そのまま、丸暗記しておけばよろしい。Входите. Проходите. Приезжайте. Приходите. Раздевайтесь.
Садтьесь.」と書いてある。むろんこれに反対するものではないが、露文解釈の専門家やロシア語の会話は原則としてしないという人であればこれでよいかもしれないが、通訳やガイドといった和文露訳の専門家のみならず、ロシア語の会話に興味があるような人に対してはこのようなアプローチはよくない。着手の用法は不完了体の基本的な意味でもあるので深く理解していないと、命令形といえば完了体しか出てこなくなるというような弊害を生むことになる。
この他に、難を言えば磯谷先生の本もそうだが、露文解釈の観点で書かれているため、和文露訳をする上で体の用法を考えるときには自分で一工夫する必要があると思われる。それと索引がないので学習者には使い勝手が悪い参考書である。目次を詳細にするとか再版の際には考えて欲しいと思う。とにかく中級者には必読書であろう。本書を読んでから磯谷先生の上記の2書を学べば体の用法の理解が広がることは間違いない。
61. **ロシア語の運動の動詞、原求作、水声社、2008年
動作の着手は定動詞とか、定動詞の出発の反復、不完全な往復、動作の名指し、不定動詞の進行形(歩き回るなど)、при-のついた運動の動詞における視点の共有性などを語用論に基づき、分かりやすく説明した好著。初級者から上級者まで必読の参考書。不完了体には本質的に反復の意味はないという事も含めて、運動の動詞の否定についても非常に興味深い指摘がある。定動詞や不定動詞についてのみ書かれており、接頭辞の着いた運動の動詞については触れられていない。こちらのほうも日常会話も含めてガイドや通訳には必要なことなのでぜひ書いてほしいと切に思う。
62. **ロシア文法の要点、原求作、水声社、1996年
格の用法など中級者以上に非常に役に立つ参考書。109ページにЧе
вспоминал?として че = чего, чтоとあるが、чё またはчоのミスタイプではないか?чеというのをロシアで聞いたことはないし、чейと区別がつかないはずだ。目次が詳細なので「体の用法」よりは使いやすい。ただ174ページにロシア語に人を除いては助数詞(匹、個、枚など)がないと書いてあるが、крыло(飛行機の機), машина(飛行機の機), сабля(騎), хвост(魚の尾),
штука(個、匹), штык(兵)はよく使われる。
63. *Способы
выражения временных отношений в современном русском языке(現代ロシア語における時制対応表現法),
Всеволодова, Издательство Московского университета, 1975
時の表現について非常に細かく解説した名著。「〜まで」と言う意味のпоと доの違いなどにも触れている。
64. ***「ロシア語動詞 体の用法」、Рассудова、磯谷孝訳編、吾妻書房、1975年
一般向けに体の用法を説明した最初の参考書と思われる。ただ著者がロシア人なので日本人が理解しやすいようには書かれていない。ただ最初の方に、「本書を理解していただくために」と題して磯谷先生が解説を書いてあるのが助かる。ただ文例を見ても露文解釈が主体のようである。索引があるのが非常によい。ただ例示的意味は命令法には現れないというようなおかしなことを書いてあるが、さすがに訳者の磯谷先生は本書をさらに分かりやすく説明するために書かれた「演習 ロシア語動詞の体」(磯谷孝、吾妻書房、1977年)において、命令法における完了体の例示的意味は、諺、格言のほか、具体的動作を指示する掲示、注意書き、取扱説明書でよく見られる表現であると訂正されている。
65. *ロシア語時制論、金田一真澄、三省堂、1994
歴史的現在について体の体系も考慮して詳説した好著。文章もきれいで分かりやすい。日本語の歴史的現在についても触れており大いに啓発される。あえて重箱の隅をつつくなら、著者も書いているように例文が19世紀のロシア文学詳説に偏重しており、日本人で実際にロシア語を使う(和文露訳の)場合にどうするのかという観点からは書かれていない。小話の例も二つほどあるが子供の笑い話であって、いわゆる実際ロシア人の大人が話すアネクドートとは程遠く、説明に使えるものとは思えないのが残念である。
66. *ロシアの20世紀、稲子恒夫、東洋書店、2007年
著者畢生の大作。年表形式になっており、小話やчастушкаも採録され、庶民の側からもソ連という時代がどうであったのか解説しようという労作。コラムも充実しておりレーニンの名の由来など筆者も初めて知ったものもある。ただ粗を探せば二つほど小話の訳が間違っている(140ページ上イネッサ・アルマーンドではなくナジェージュダ・クループスカヤ、それとニンジンはレーニンの頭ではなく男性器、Вовка-морковкаはからかい言葉である)のがあるのが残念。40箇所ほど誤植(ほとんどは力点の間違い。有色冶金というような中国語のようなものもある。非鉄金属であろう)が散見される。それと事項索引の年数が1/5ぐらい記載がないので索引の用をなさない。ただロシア・ソ連の歴史を知るうえでは必携の書であろう。
67. ロシア語通訳教本、宇多文雄・原ダリア、東洋書店、2007年
ロシア語通訳者必携の参考書。ロシア語通訳に対する考え方が将来を見通しており好感が持てる。ただ100ページの数量のところでиметь
высоту + 対格としているが、ロシア語ハンドブックでは生格とある。個人的にはどちらでもよいように思う。細かい点を言えば116ページの「旧型」は「時代遅れ」のほうがよいと思うし、123ページのкомпотはコンポートと訳してあるが、日本語のコンポートは果実の砂糖煮であり、компотは果実の砂糖煮の汁である。236ページの柔道のところで、武道の訳がбоевое
искусствоとあるが、これでは「戦闘術」で意味が広い。ロシアではвосточное единоборствоが普通であろう。また柔道の技のロシア語がおかしい。ロシア語通訳協会の「日本案内」のロシア語を和訳したようだが、「抑え込み技」はприжимание
его к полуではなく、приёмы удержанияであり、「固め技」はзахваты、「関節技」はзахват суставов рук и ногではなく、болевые
приёмы で、「当身技」はболевые пирёмыではなく、удар рукойであろう。本書は誤字がほとんどない本という素晴らしい本だが、相撲のところにあるувертках
はувёрткахであろう。241ページ浴衣をспальное
кимоноとしているが、旅館ではそうだが、もともと浴衣であり、夏などでは花火などはこれをきて外出するからбанное
кимоноの方がよいと思う。242ページсёмгаは大西洋のサケで特に高級魚ということではない。キングサーモンや紅鮭はシロザケも含めて太平洋のサケである。「スープは外国語でロシア語ではスープ類はもともとпохлёбкаといった」とあるが、МеджитоваのРусская
кухня, ЭКСМО-Пресс, 2001(全ロ本の芸術コンクールで入賞)の86ページには「古代から18世紀末まであらゆるスープはуха(後には三平汁のような魚のスープを意味する)と呼ばれたとあり、同書116ページにはпохлёбкаとは古来густые
(полужидкие) супыであると書かれている。244ページのロブスターをракとしているがомарだろう。ネギもлук-татаркаではなくлук-батунであり、モスクワではлук-порей(リーキ、ニラネギ)が出回っている。白菜もこの頃作られているとあるが80年代初めには白菜モスクワなどで売られていた。「だし」は対応するロシア語がないとあるがотварでよいのではないか?245ページのテンプラはв
тестеよりもобжаренные в кляреのほうがよいと思う。日本酒は16〜18度の醸造酒でありрисовая
водкаとするのは間違いである。японская водкаは焼酎であり、рисовая водка米焼酎もあるからである。261ページのсемнадцать и пять десятых миллиардов はмиллиардаが正しい。с
половинойならмиллиардовでもよい。264ページ営業部отдел сбыта (Операционный отдел)とあるが、коммерческий
отделという。業務部операционный отделもотдел координацииではないか?総務部もаодминистративный отделというよりはобщий отделという。技術管理部とは言わず品質管理部(品管ОТК)という。本社もглавный
офисよりはголовной
офисというのをよく聞く。265ページガスパイプラインをнефтепроводはミスタイプでгаопроводが正しい。「省エネ」はэнергосбережениеのほうが短くてよくはないか?269ページの「電子書名」は「電子署名」のタイプミス。272ページвундеркинд「神童」でよいと思う。本書は「ロシア語通訳読本」や「ロシア語通訳コミュニケーション教本」よりも基礎に重点をおいてはいるがより充実した非常に優れた参考書である。
68. ロシア語文法便覧、宇多文雄、東洋書店、2009年
城田先生の「現代ロシア語文法中上級編」はプロのガイド、通訳、翻訳者が使うには内容的に不十分であり、これを補うべく露文解釈の参考書としては、中沢先生の「ロシア文学鑑賞ハンドブック」が出た。さらに文法事項で加えるものがあるとすれば、発話能力(会話での和文露訳)用の参考書である。本書は実用文法を標榜しているが、新しい知見はあるものの、初級から中級まで広く取り扱ったために、城田文法の2冊の域をほとんど出ていない。この2冊を持っているならあえて購入する理由は見当たらないと思う。新たに文法書購入する人で練習問題が欲しい人は城田文法を、そうでなければ本書がよい。体の用法など説明が簡略すぎて例文が不足しているように思える点もあるため、初級者には城田文法を、中級者には宇多文法の方が使い勝手が良いような気がする。123ページの「動詞の補語の対格と生格の使い分けがなくなっている」とか、169ページのэтот/тотの使い分けの説明、242ページのидти/пойтиを通常対応関係があるとはされないとか、統辞論(句読点も含めて)など非常に優れたところもある。この用法はどこまで使えるのか限界を示すことが出来る例文が最良であるが、本書の例文は105ページのНовый
компьютер стоит тысячу долларов.などよいものもあるが、可もなく不可もないものが多い。263ページの「文の時制」において説明はその通りだが、Он
(музей) был основан в 19 веке.など過去の具体的事実を示すときに、бытьの過去形を抜いた例文が一つもないので、読者は年号など明らかに過去の文との意味やニュアンスの違いがよく理解できないのではないか。城田先生の「現代ロシア語文法」ではこの点、Дом
построен в прошлом году.という例文も入っており、意味の違いが具体的に理解できる。あえて重箱の隅をつつくようなことを書くとすれば、未来を示すときに「〜だろう」を用いているが、日本語の「〜だろう」は国語辞典によれば推量を示すので、未来を示すときに用いれば誤訳となる場合もあるのではないか。例えば完了体未来形なども「未来に〜する」と話者が確信をもっているわけで、これに「〜だろう」を用いるのはおかしい。136ページのвладетьを「ものにする(マスターする)」としているが、これは状態の動詞なので、「ものに(マスター)している」とでも訳すべきではないか。224ぺージのОн
встретился с братом.「彼は兄弟と(あらかじめ約束をして)会った」およびОн встретил брата.の二つの文の違いについて明言していないが、後者は「彼は兄弟を出迎えた」か「彼は(偶然)兄弟と出会った」というだけなので、それを書けばよかったと思う。それとも他にニュアンスがあるのだろうか。230ページ移動の動詞を15挙げているが、普通は14のはず。城田文法ではなぜかкатить/кататьを外し13となっている。これはвалить/валятьを加えているからだが、валятьとкататьは同義語と言えるが、валитьに「ころがす」という意味はない。個人的には13が適当と思う。城田先生とは違い、бродить
は
гулятьの意味に近いから、брести/бродитьが運動の動詞の対としては不適当だと考えるからである。290ページнельзя「〜してはいけない」が不完了体、「〜できない」が具体的な意味なら完了体、一般的な意味なら不完了体とあり、Нельзя
жить без воды.を挙げている。しかし不完了体を用いたのは対応する完了体がないからだけの話ではないか。303ぺージのна
мореでもОн
работает на море.やгосподство на море.など「海上」を示す用法はある。304ページの@造格
вечером, веснойとあるが、露和辞典では副詞とある。331ページкараулの力点はкараулが正しい。341ページпора уйтиとあるが、пора уходитьが普通ではないか。пораの次に完了体が来るのは動作の着手ではなく必要性を示す時である。プロの通訳や翻訳者、ガイドを目指すなら本書だけでは足りない。少なくとも「ロシア文学鑑賞ハンドブック」(中沢敦夫、群像社、2008)は勉強しておく必要があるし、「ロシア文法の要点」、「ロシア語の体の用法」、「ロシア語の運動の動詞」(いずれも原求作、水声社)も必読である。
69. ロシア語ハンドブック、藤沼貴、東洋書店、2007年
ロシア語の勉強をずっと長く続けていくのだと考えている人には必携の書。初級者が中級を目指すときの参考書。第1部表現・文法編は初級文法の復習には最適であり、指示代名詞の説明には感心した。ただ体の用法が説明の部分が2ページというのは少なすぎる。小数点のところは「ロシアでは小数点にはカンマを用いる」と一言書いたほうが誤解がないと思う。第2部のテーマ別語彙項目編は若干間違いもある。特に料理や食品に多い。編者が一人ではやむをえないと思う。一部紹介すると(カッコ内は当方が訂正したもの)は、浴衣(халат)、アルミサッシ(алюминиевый
переплёт)、タイル(плитка)、サヤインゲン(стручковый фасоль)、サヤエンドウ(стручковый горох)、チェリー(черемухаではなくчерешня)、укропはディルまたはヒメウイキョウで、ウイキョウはфенхель、калинаはガマズミ、малинаはラズベリー、黒ビールの訳がない(тёмное
пивоでсветлое
пивоは普通のビールであり、ピルゼンビールだけとは限らない)、зубровка(зубрの好む草の茎が入っている)は薬草酒の一種だが総称ではない。薬草酒は
настойка、果実酒はналивкаであり、конфетыはキャンディーではなくチョコ菓子、печеньеはビスケット、картошкаはチョコ風味のスポンジケーキ、пастилаはフルーツ羹というよりはやわらかいフルーツ落雁、院長はглавврач(директор
больницыとは言わない)、「点滴する」はставить капельницуという。死亡記事はнекрологであろう。食物連鎖(пищевая цепь, цепь питания)、テンプラの訳がおかしい。в кляре(ころものついた)と入れないと意味が分からない。弁当はупакованный
завтракではなくпереносной обедであろう。винегретはビーツの入ったポテトサラダであり、похлёбкаは具沢山スープであり、солянкаはレモン、オリーブ、酢漬けのキュウリの入ったスープであり、飛行機の車輪(脚部)はшассиであり、腕立て伏せはотжиманиеである。手風琴と記載あるが、普通は日本語ではアコーデオンというのではないか?またロシア語の改行規則が守られていないところがあるし、30か所近く誤植があるのは残念だ。次の版で訂正されることを願う。
70. ロシア語のアスペクト、林田理恵、南雲堂フェニックス、2007年
体の用法について解説した参考書。第1部「序論」を読んで驚いた。受験英語の出来の悪い和訳が続くかのような悪文のオンパレードである。自分が初めて和文露訳をしたロシア語もこんなものかなとも思った。著者が内容を咀嚼せずに書いたことは一目瞭然である。論文用語としてはよいのかもしれないが、安い本ではないし一般の読者に買っていただくのだという意識が希薄である。ただ本論の第2部「ロシア語のアスペクト」になると、例文に基づく説明もよく日本語も分かりやすい。同じ人間が書いたのかと思うくらい違う。体の用法の最新の研究成果について一般読者に分かりやすく説明しようという努力は評価すべきであり、体に興味のある人にはボンダルコの「形態的範疇理論および体の研究」Теория
морфологических категорий и аспектологические исследования, А. В. Бондарко,
Языки славяских культур, 2005とともに、何度も昧読すべき必携の参考書である。しかしながら著者が意図したかどうかは別にして、本書は露文解釈についての体の用法の参考書である。我々プロの通訳やガイドにとっても和文露訳の際、どの体を使うかは切実な問題であり、学者と違って、我々プロの使う動詞はある意味で限られている。そのような和文露訳用の体の用法、例えば「イワノフさんがいらっしゃっています」をどう言うのかなど、中級ぐらいのロシア語学習者だってロシア語を話すときにどの体を使えばいいか悩んでいるはずである。体の用法を間違うと、ロシア人はこんな初歩的な動詞も使いこなせないかと通訳に不信を持つ恐れが多分にあるということを理解してほしい。学者がやらないのなら自分たちでそのような本を書くしかないかなとも考える次第である。
71. ***Теория
морфологических категорий и аспектологические исследования(形態的範疇理論および体の研究),
Бондарко, Языки славянских культур, 2005
3つの論文が収められており、「ロシア語動詞の体と時制」が相対時制、歴史的現在を含む時制の転用を扱っており非常に参考になる。もう一つの論文「スラブ諸語における不完了体および完了体動詞の歴史的現在」中のロシア語の項は示唆に富んでいる。上級文法に興味のあるロシア語学習者必読の著といえる。
72. *Словарь
эквивалентов слова(等価語辞典), Р. П. Рогожникова, Русский язык, 1991(1200表現) 和文露訳の練習のためには短文を作ることから始めるのは常道である。短文を作れるようになれば会話にも役立つ。会話では演説でもない限り短文の羅列が多い。しかしこればかりだと、文章に深みが出ないし、ロシア語として非常に不自然な感じを受ける。それで短文から1ページくらいの文章を作る練習をしてみる。そうすると接続語をいかに知らないかが分かる。ロシア語では同じ単語を繰り返すのは、耳障りなので、同義の接続語句も覚えていかなければならない。そういうときに役立つのが、本書である。
73. в
порядке, при всем том, в свете など補助語、叙法、副詞句についてこれまで露和辞典では説明が不十分なものについて例文をつけて説明してある。
74. Изучение
глагольных приставок(動詞接頭辞研究), А. Барыкина, В. Добровольская и С. Мерзон, Русский
язык, 1981
75. Пунктуация
и управление в русском языке(ロシア語における句読点法と格支配), Розенталь, Книга, 1988
句読点に関する参考書と2500語の単語の格支配を例文つきで示したもの。露和辞典に全部の格支配が載っているわけでもないので、その用例をチェックするにはよい。Проситьの補語の格支配(生格と対格)の違いなど簡潔に示されている。
76. ロシア語改行規則、ソ連産業技術研究所、1972年
今やコンピューター時代なので、ある程度コンピューターソフトが単語を1行の中に納めてくれるが、それが難しい場合、単語にどうハイフンを入れて(через
дефиз)改行するのかを教えてくれる。
77. Словарь
ударений для работников радио и телевидения(ラジオ・テレビアナウンサー用力点辞典),
Агеенко/ Зарва, Русский язык, 1984
そんなに頻繁ではないもののどうしても辞書には力点の位置が載っていない単語というものがある。родич,
Китежなどがそうで、そのような名詞や固有名詞の力点などを調べるのに役立つ。
78. *Какого
мы роду-племени?(我らが氏素性は何なのか?), Р.А. Агеева, Academia, 2000(150項目) 旧ソ連邦諸民族の由来について百科事典形式の好著。
79. Этимологический
словарь русского языка(ロシア語語源百科事典), М. Фасмер, Прогресс, 1987(4巻) 定評のある語源辞典。ドイツ語版(Max
Vasmer, 1950〜58)からの露訳。
80. 法廷通訳ハンドブック(ロシア語)、最高裁判所事務総局刑事局、1994年、法曹会、1500円 大体ロシア語通訳向けの仕事と言うのは少ないが、司法通訳は、漁業通訳同様、ある程度この参考書で勉強すれば、それほど通訳経験がなくても、通訳経験を積むには格好の仕事と言える。他のロシア語通訳業務でこれほど整った参考書はない。ただ、精神薄弱者の訳が
психопат となっているが、間違いとは言わないものの、これなら精神異常者ではないか。Слабоумные ぐらいだと思う。そこだけ気になった。
81. Словарь
трудностей русского языка(ロシア語難語辞典), Розенталь/Теленкова, Русский язык, 1981
例えば外国人には分かりにくいчерез(未来や過去の出来事にも使える)とспустя(過去の出来事のみ)の違いなど調べるのに役立つ。
82. Русские
названия жителей(ロシア都市住民名称事典), ородецкая/Левашов, Астрель/АСТ, 2003
14,000のロシアの都市住民について用例とともに力点を付したもの。
83. 漁業ロシア語、木元謙二、ナウカ社、1985年
漁業関係の通訳の研鑚を積むにも、この参考書から入るのがよいと思う。
84. *Самые
закрытые люди(最も閉鎖的な人々), Н.А. Зенькович, ОЛМА-ПРЕСС, 2004(229項目) ソ連時代の政治家についての Who's who。従来のソ連やロシアの百科事典における略伝では粛清された政治家の業績や失墜の理由などが無視されることが多く、記載されている人物像についても、血の通ったものではなく、また性格付けもなされておらず、まるでロボットが政治を司っていたかのような感があるが、本書の文章は簡潔で、人物の長所短所の評価も客観的かつ具体的、また趣味にも触れている。比較のために例えば平凡社の「ロシア・ソ連を知る事典」(「新版ロシアを知る事典」)のジューコフの項を見れば分かることだが、平凡社の方は事典という性格から事実と経歴のみ羅列してある。一方本書は事実や略歴についてもより完璧であり、スキャンダルについてもいろいろな説を紹介している。これは作者が1985年から91年までソ連共産党イデオロギー部副部長であり、ソ連のマスコミを統括し、共産党秘密文書についてもよく知る立場にあり、同僚からの四方山話でいろいろ内密の事件についても詳しく聞いていると思われるからである。全てではないかもしれないが、人が歴史を作ると言う面もあるのである。詳細にソ連政治史を研究したい向きには漏れている人名も結構あるので他もあたる必要がある。また全部を読まなくともЛенин,
Сталин, Хрущев, Брежнев, Горбачевの項を読むだけでもソ連政治史の概略が分かる。
85. *Самые
открыте люди(最も開放的な人々), Н.А. Зенькович, ОЛМА-ПРЕСС, 2004(368項目) 現代ロシアの政治家についてのWho's who。Ельцин,
Путинの項を読むだけでも1990年代初めから2002年頃までのロシア政治史の概略が分かる。
86. Москва,
Энциклопедия(モスクワ百科), С.О. Шмидт, Большая российская энциклопедия, 1997(4000項目) モスクワの過去や現在を知るには欠かせない百科事典。
87. *Крылатые
фразы и афоризмы отечественного кино(ソ連映画名言警句), А.Ю. Кожевников, Нева, 2004(1300の映画から15,000の引用例) 映画の名句・名言が主だが、それだけでなく、ほぼ有名なソ連・ロシア映画について最低限の情報が分かるようになっている。日常会話でもよく使われる表現の出典を調べるのに役立つ。
88. Мудрость народная, младенчество, детство(庶民の知恵、幼年時代、少年時代), Художественная литература, 1991
子供の遊びгусек,
прятки,
пятнашки,
чижики,
классы,
кошкт-мышки, лапта, чур мой, жмурки, казаки и разбойникиについてよく解説してある。また、дразнилки, скороговорки, считалкиについても記述がある。
89. Карточный игрок на все руки(何でもござれのトランプゲーム), Book Chamber
International, 1991
винт, преферанс, трынка, пасьянсы, дурачки, три листикаなどロシアの小説に出てくるカードゲームについて遊び方を説明している。
90. *Русская кухня(ロシア料理), Э. Меджитова, ЭКСМО-ПРЕСС, 2001
700種以上のロシア料理についてカラー写真入りで説明している好著。
91. Иллюстрированная энциклопедия (История России9〜17世紀ロシア史図解百科), ОЛМА-ПРЕСС(1000項目) 図解入りでソ連崩壊以後の歴史観による歴史百科事典。
92. Иллюстрированная энциклопедия (История России18〜20世紀ロシア史図解百科), ОЛМА-ПРЕСС(500項目) 図解入りでソ連崩壊以後の歴史観による歴史百科事典。
93. *ロシア教会史、N.M. ニコーリスキー、恒文社、1990
скопчество去勢派、хлыстовство 鞭打派など革命前のロシアならではの新興宗派についてもよく解説している。
94. Язык
старой Москвы(古のモスクワ言葉), В.С. Елистратов, АСТ-Астрель/Русские
словари/Транзиткнига, 2004(語数7000) 普通の辞書には載っていない革命前のロシア語について詳しい。
95. *Русско-английский
словарь научно-технической лексики(露英科学技術語彙辞典), Русский язык, Кузнецов, 1986(語数30,000)
語結合の辞典ではないが、技術関係のロシア語の例文が豊富であり、作文に使える。
96. Русско-английский
научно-технический словарь переводчика(露英科学技術翻訳・通訳辞典、第3版), М.
Циммерман и К. Веденеева, Наука/John Wiley & Sons LTD, 1991
科学技術関係で、基本的ではあるが既存の辞典では説明していないことが載っているユニークな辞典。訳例が英語であり、ロシア語でないのが惜しい。
97. Russian-English
Scientific and Technical Dictionary(2巻), M.H.T and V.L. Alford, Pergamon Press, 1974 動植物には学名もついており、一番信頼できる露英の科学技術辞典だがやや古くなりつつある。
98. Большой
русско-английский политехнический словарь(大露英技術辞典、4巻), ЭТС, 1996 – 98 収録語数が50万語で価格も買った当時200ドル(今や9000ルーブル)と高価な辞典。技術関係でどういう単語が結びつくか(形容詞や生格)詳しい。ただ学習辞典ではないので、句動詞などはない。
99. Большой
англо-русский политехнический словарь(大英露技術辞典、2巻), Д.К. Столяров и Ю.А. Кузьмин, Русский Язык, 1991(語数20万語) まあまあ役に立つ。
100. マグローヒル科学技術用語大辞典、日刊工業新聞社、1979
102の分野10万語を収録してあり説明が簡潔。和英でも英和でも引けるのがよい。
101. Краткий
иллюстрированный русско-английский словарь по машиностроению(簡略図解露英機械製造辞典),
В.В. Шварц, Русский Язык, 1980(語数3795) 機械関係では最良の露英図解辞典。
102. Политехнический
словарь(技術辞典、第2版), А. Ю. Ишлинский, Советская энциклопедия, 1980(1万項目) 技術用語を簡潔に解説する露露辞典。図解も多い。
103. 図解機械用語辞典、工業教育研究会、日刊工業新聞社、1978(語数8000)
英和・和英でひけ、簡潔に説明されている。
104. 岩波理化学辞典第3版、1978年
第4版はロシア語が極端に削られているので勧めない。
105. 電気術語大辞典第2版(英和独露)縮刷版、石橋勇一、オーム社、1968(語数25,000)
106. 和露科学技術辞典、З.А.
Завьялов, Русский Язык, 1976
語数が3万5千語と少なすぎる。和露でよい辞典がないので、和英(例えば49)、英露(48)で引くと言う腰にも懐にも負担を強いるということをせざるをえない。
107. 科学技術軍事図説辞典(露英独日)、現代ロシア語社、1980
やや古いが図解であるのがよい。
108. Живая
природа, Птицы России (Фотоэнциклопедия)(生の自然、ロシアの鳥類写真百科)、Иваницкий, АСТ/Астрель, 1999
(500種収録) ロシアの鳥類関係を調べるにはベスト。カラー写真および学名(ラテン語名)がついており日本の百科辞典(筆者は平凡社のDVD版を使っている)と組み合わせれば、学名で正しい和名(ロシア名)が分かる。
109. 鳥類・哺乳類ロシア語辞典、藤巻裕蔵、極東鳥類研究会、2008年
名称のみならず分布、形態や生態についても説明があり良心的な事典である。ただ図か写真がないのが欠点であろう。
110. Популярный
Атлас (определитель), Дикорастущие растения(早分かり野草図鑑), Дрофа,
2002(600種収録)
野草関係。写真ではなく絵なのでいい面悪い面があると思う。学名付。
111. Атлас
основных видов сорных растений России(ロシア雑草図鑑), Шептуфов, Гафуров, Папаскири, КолосС, 2009
ロシアの雑草を扱った図鑑。ラテン語付きなので和名も別に調べることができる。
112. Популярный
Атлас (определитель), Рыбы(早分かり魚類図鑑), Дрофа, 2004(450種収録)魚類。写真ではなく絵なのでいい面悪い面があると思う。学名付。太平洋側の魚は一般のロシア人は知らないものだが、我々日本人にとっては和名と対比可能である。
113. То, что
действительно можно вырастить в России: Овощеводство(ロシアで実際に収穫できる野菜),
Мухин, АСТ/Астрель, 2003(1000種収録) 日本にはないロシアの野菜がどんなものなのか調べるのによい。
114. Грибы(キノコ),
Сергеева, Культура и традиции, 2003(250種収録)
115. Садовые
новинки (Плодовые культуры)(園芸新種、果樹), Юрина, АСТ/Астрель, 2003(15種収録) カラー写真付で、例えば、日本にはない
алыча(ミロバランスモモと露和には英語からそのままの訳がついているが、もう一つの英語チェリープラムの方がよいのではないか?モスクワでは缶詰で売られている)、иргаなど学名を載せて説明している。Вишня
やчерешняの違いについてもよく分かる。もっともこれは実際に食べ比べた方がよい。
116. Садовые новинки (Ягодные культуры)(園芸新種、ベリー類), Юрина, АСТ/Астрель, 2003(30種収録) カラー写真付で日本ではよく知られていないベリー類について学名を載せて紹介されている。Земляника
とклубникаの違いについても触れている。
117. *Оружие уличного бойца(喧嘩用武器), А. Тарас, Харвест, 2003
白黒の図解入りで街の喧嘩に使われる武器(кастеты, свинчатки, розочки, финкаなど)を説明している。ソ連・ロシアの百科事典にはこの種のものは載っていないので興味深い。
118. Оружие
(Иллюстрированный словарь)(武器図解辞典), Ю.В. Шокарев, РОСМЭН, 2003(355項目) 古代から現在までの武器(主としてロシアやヨーロッパの)についてカラーの図解を交え紹介している。
119. Вооружение
пехоты(歩兵装備), В.Н. Шунков, Попурри, 2001
機関銃、迫撃砲、手榴弾、自動小銃、ライフル、ロケット砲、戦車など白黒の写真と説明がある。戦争関係や犯罪ルポなどを読むときに便利。
120. *Автомобиль
на ладони(掌に乗る自動車)、Каталог-Новости社、1993年?
ミニチュア自動車模型のカタログだが、露、独、英で簡単な仕様が書いてある。ロシアの個別の自動車について詳細に説明したカタログ(修理用)はあるが、まとめて記載したものは見当たらない。ロシア人の間ではありふれていて殊更本などにまとめる必要がないからかもしれない。しかしロシア語を学ぶ外国人にとっては、пятерка
、девяткаと言われても、多分ジュグリーだろうと類推がついてもそれ以上はロシア人にでも聞かないと分からない。(あるいは要領のよい説明が聞けないことが多いと思う。)この他に
Крылья Россииというロシアのミニチュア飛行機関係のカタログがあるようだが、筆者は未入手である。ロシアの車については筆者が最近ホームページに「ロシア我楽苦多市」と銘打ってフォトアルバム第2弾で外国人に分からない事物(自動車含む)を追加して写真と共に説明しているのでそれを参考願う。航空機関係は www.rus.air.ruというサイトが写真もあってよいと思う。
121. Вальный
танец (16 – 19世紀舞踏会用ダンス), Н.П. Ивановский, Янтарный сказ, 2004
舞踏会で踊るダンスについての図解入り解説書。革命前の小説を読むための一助になる。
122. 中露単語早見表、ロシア語通訳教会編、1990年
最近の中国経済の発展を見ると中国関係の地名・人名もロシア語でなんと言うかおさえておく必要がある。非常に有益な表だが、人名について最近のものを出してもらえればもっと有難い。
123. *日本案内(ロシア語ガイドテキスト)2005年増補改訂版、ロシア語通訳協会
ロシア語観光ガイドには必携の参考書。非常に良心的な造りで現在も訂正を続けている。本書なしには観光ガイドはできないとさえ言える。これに各人が工夫して自分なりのガイドとしての特色を出せるように努力すべきだし、本書改良のためガイドのコメントについてもロシア語通訳協会で受け付けているのは頼もしい限りである。
124. *Из России с
любовью(ロシアより愛をこめて), Попова, Япония Сегодня, 2005
ロシア人の日本語ガイド向けのテキストだが、日本人のロシア語ガイドにも非常に役立つ。言葉と言うのは双方向のもので、ロシアのこと(ロシアの常識)を知らねば、ロシア人観光客の望むようなガイドはできないという意味で、またロシアのことも客観的によいところ、悪いところも紹介している画期的な参考書である。特に社会の底辺の人々について説明したところは非常によくまとまっていて興味深い。用語が単語別ではなく、フレーズあるいは文で、しかも露和で示されているのが非常に良く、ガイドや通訳にとっても使い勝手が良い。特にロシア正教の歴史や儀式の説明(特に葬儀)は分かりやすくてとても参考になる。ただ若干和訳が直訳的なところや間違いがある。例えばダイモンドファンドの用語集のいくつかの和訳などである。細かいことを言えば90ページの日本の震度の説明で7-балльная
системаとあるが、これでは誤解を招く。確かに震度は0〜7までだが、5と6に強弱があり、全部で10段階である。時事ロシア語に関心のある人には必携。題名だけ見ると007みたいな感じがするので、副題に「ロシア案内」などと入れればもっと売れるだろうと思う。
125. 京都案内(全8分冊)、ロシア語通訳協会関西支部、2005年
現役の通訳・ガイド16名(尾崎直美、中井まりえ、田中ひろ子、シモーヒナ・タマーラ、西河礼子、熊見直子、木村祥子、榊原慶子、北岡千夏、渡辺伊都美、真野佳名子、浜田真理、阿部彩子、新藤伸江の諸氏)が書いた京都案内。単にロシア語に訳すのではなく、ガイドが使いやすいように、必要な語句のみロシア語にして、残りは簡潔に日本語で解説してあるのが、ガイド通訳の実際をよく知っているため後進へのよき参考書となっている。101の日本案内もこのような形式であれば使い勝手がはるかによかったろうと思われる。特に第2巻は京都ガイドにとっては必携といえる。
126. 奈良案内(全4分冊)、ロシア通訳協会関西支部、2008年
現役の通訳・ガイド9名(渡辺伊都美、荒木瑩子、中井まりえ、尾崎直美、木村祥子、榊原慶子、西河礼子、田中ひろ子、シモーヒナ・ラマーラの諸氏)が書いた奈良案内。京都案内同様ガイドにとって使い勝手が非常によい。全巻興味深いが特に第4巻の仏教史が非常に役に立つ。
127. Япония от А
до Я(日本AからZまで),
Япония сегодня, 2000
カラー図版も多く640ページと大部で、自然、地理、政治、歴史など日本関係の百科事典としてはロシアで出た中ではベスト。ただ記述が散漫なものも散見される。
128. Поверья,
суеверия и предрассдки русского народа, Даль, ЭКСМО, 2003
1845〜46年初出のロシア人の信仰、迷信、偏見についての著作。ロシア人気質を知るための基本文献である。
129. ロシア建築案内、リシャット・ムラギルディン、高橋純平訳、TOTO出版、2002年
建築家が書いたロシア建築紹介の書。モスクワやペテルブルグのみならず、日本ではあまり知られていない地方都市についても詳しく触れている好著。訳もこなれていて読みやすい。
130. 海運実務ロシア語会話、富井英雄編著、海文堂、1967年
古い本だが海運実務関係では唯一の会話集。露英和の三ヶ国語の会話集。
131. *時事ロシア語、加藤栄一、東洋書店、2008年
初級者が読解力をつけるために最初に読むものとしては最適である。文学と違い、ロシア的なものがあまりないということ(時事ロシア語は主として世界的に共通なものを扱っているゆえ)と、語彙の内容で分からないことがあってもインターネットや新聞などで調べることが可能であるからだ。初級者向けとあるが、読んだ感じでは初級と中級の中間ぐらいである。初級向けというなら、意訳はできるだけ避け、文章の構成が分かりやすいものにした方がよいと思う。しかし、扱っている分野が非常に広いことなど感心させられる。ただ本書は露文解釈用であって、和文露訳の会話力をつけるためのものではない。文体が書き言葉であるということと、語結合(熟語)や句動詞の説明が少ないからである。非常に良心的でよくできた本だが、敢えてコメントするなら、17ページのубедительная
победаを「地滑り的勝利」としているが、「確かな勝利」ではないか?19ページのпредварительные данныеを「これまでのデータ」としているが、предварительный
= неокончательный; предшествующий чему-л. основному, главномуという意味だから、「中間データ」とでも訳すべきではないか。39ページМною
был пописан указ.を「私は大統領令に署名したところであります」と現在完了のように訳し、Я подписал указ.の「権威の受動態」としているが、これはおかしい。Я
подписал указ.の受動態で結果の存続という意味ならМною подписан указ.となるべきだ。РозентальはСпоравочник по русскому языку Практическая стилистика,
ОНИКС, 2008(ロシア語参考書実用文体論)の中で、Мною дано указание. Я дал указание.「私は指示を与えた」という例を挙げて、Я
дал указание.に比べてМною дано указание.は文学や実務的発話で用いられ、断定を避け、より表現を和らげる形であると書いている。Мною
был подписан указ.というのは、文法的に正しい文だが、былがあることで現在とのつながりはきれている。そういう文を「〜したところであります」といかにも結果の存続のような訳し方をするのは問題である。つまりбылが入れば動作が発話以前に終了したことを意味するだけで、たった今〜したという意味はない。たんに「私が政令に署名した」という意味であろう。権威の受動態という用語は聞いたことがないが、革命前なら(つまりツァーリの時代なら)мы =
я(日本語なら朕とか余)という人称の転用を使うはずだが、民主主義の世の中なので、мнойの古い用法мноюで格式を示しているのかもしれない。65ページприверженностьをコミットメント(確約)としているが、コミットメントはзаверения(複数)のはず。приверженностьは賛意や支持という意味ではないか。72ページвыделение
кредитовを「融資の実施」としているが、間違いとは言わないまでも、学習者向けの参考書なのだから、より正しいвыделение (=
предоставление) кредитов「クレジットの供与」とすべきではないか。89ページразмещение
акцииはразмещение акцийのタイプミス。93ページпотребительсткий кредитを「消費性ローン」としているが、「消費者ローン」ではないか。имущественное
страхованиеを「物保険」としているが、「対物保険」ではないか。115ページтуриндустрия「旅行産業」とあるが、「観光業」ではないか。117ぺージменеджерを「経営者」としているが、マネージャー(課長、部長)ではないか。122ページцеллюлозно-бумажная
промыщленностьは「セルロース・紙産業」ではなく、紙パルプ工業であろう。инструментыを「測定機器」としているが、「工具」である。測定機器はизмерительные
приборыという。123ページспиртовая промышленностьは「スピリッツ製造業」ではなくて、「アルコール製造業」であり、ликёроводочная
промышленностьは、「リキュール製造業」ではなくて、「リキュール・ウオッカ製造業」である。131ページмногоцелевойは「多用途」と訳すよりは、「多目的」が普通である。133ページполётная
палуба аианосцаを「空母の甲板」としているが、「空母の飛行甲板」である。同様に、(攻撃原潜)は(攻撃型原潜)である。149ページ「部隊防空兵」とあるが、「防空部隊」ではないか。同じく「水路学部隊」よりは、「水路確保部隊」の方が原文に忠実だし、「掃海部隊」のことではないか?150ページбытовое
преступлениеを「家庭の犯罪」と訳しているが、「日常的犯罪」ではないか。159ページхулиганствоを「暴力行為」としているが、нарушение правил общественного
порядкаということで、反社会行為(公序良俗違反)ということなので、必ずしも暴力行為だけとは限らないはず。痴漢行為や落書きなどもそうではないか。161ページ「秩序の番人」は直訳すればそうだが、日本語では「法の番人」のほうがよいではないか。173ページдрагоценные
металлыをレアメタルと訳しているが、「貴金属(金、銀、プラチナなどの」が正しい。希少金属(レアメタル)はредкие
металлыでクロムなどを指す。177ページ「シャヒード・ベルト」は「自爆ベルト」が普通ではないか。185ページの「適応停止中」は「適用中止中」のミスタイプ。186ページの「重大な犯罪」は「重罪」でよいのでは。「行政的違法行為」とあるが、「違法な行政行為」が自然ではないか。187ページの「個人に対する犯罪」は「個人的法益に対する犯罪」、「社会的安全および社会秩序に対する犯罪」は「社会的法益に対する犯罪」、「国家権力に対する犯罪」は「国家的法益に対する犯罪」の方が自然ではないか。207ページのミキサー車をгрузовик-миксерとしているが、автобетономешалкаとかавтобетоносмесительが普通だろう。209ページの「非常口」はзапасной
выходが一般的。212ページのпо состоянию наは熟語なのだから、訳例通り「〜現在」とすべきである。214ぺージの訳例に「3万人」とあるが、более
30 тысяч человекなのだから、「3万人を超える人」などの正確な訳にすべきだ。219ページの「暑熱」とあるが、「熱波」のほうがよい。223ページの「休火山」と「死火山」は専門用語として今や使用されていないはず。233ページのрождаемостьを出生者数としているが、これはколичество
рождений за оперделённый промежуток времениをいい、出生率が正しい。смертностьも同様に、количество
случаев смерти за какое-л. период времениであるので、「死亡者数」ではなく、「死亡率」が正しい。244ページвсея
Руси の力点の位置が違う。всея Русиのはず。272ページのには力点が訂正されている。247ページの力点もпатриархияとなっており、патриархияも可とあるが、Словарь
трудностей русского языка (Русский язык, 1981) には、потриархия
(не патриархия) となっており、Словарь ударений для работников радир и телевидения
(Русский язык, 1984) にもпотриархияしか記載がない。256ページのракета-носительを「ロケット」としているが、「打ち上げロケット」が正しい。256ページの「ロケットの弾頭部分」はミサイルではないのだから、「ロケットの頭部」とすべきだ。
132. 「授業づくりハンドブック、ロシア語」ロシア語教育研究会編著、大阪大学出版会、2009年
ロシア語を教えようと考えている人には必読書。授業の進め方など、生徒のレベルに応じていろいろな提案をしている。ただ教える人のレベルには言及がない。露文解釈や文法だけなら別だが、現時点でもっとも需要が高いとされるロシア語会話を教える場合、教える側がバイリンガルであることが望ましいが、少なくともロシア人と自由にコミュニケーションを取れるレベルの発話能力(言語運用能力)がないと教えられないだろう。つまりロシアで留学や駐在を2~3年した程度では覚束ないということになる。できればガイドや通訳(会社通訳も含む)などプロの現場で10年以上経験を積んだ人がよい。そうでないと生徒の方が先生の能力に納得できず、ついてこないだろう。バイリンガルといっても、小さい時にロシアで過ごしてロシア語が上達した人ではなく、実際の生徒と同様20歳前後から苦労してロシア語を身につけた人がよい。生徒の気持ちがよく分かるはずだからだ。
133. 露和ビジネス辞典、Камионко,
Книга, 2008
句動詞(熟語)やビジネス関係の諺も含めおよそ39,000語を収録したビジネス関係の露和辞典。分野ごとの露和辞典では見るべきものがほとんどなかったのだが、本辞典は例外である。非常によく研究してあり、これがモスクワではなく、地方都市のロストフ・ナ・ダヌーで出版されたというのは驚きである。95ページのдебиторская
задолженностьを受取債権としているが、売上債権ないしは売掛債権、受取勘定の方が普通だと思う。имуществоの訳を財産としているが、間違いではないにしろ、ビジネス用語なら資産が普通だろう。この辞典の大きな欠点は動詞について文例がほとんどないことである。これはこの辞典を使う対象がロシア人だからかもしれない。そのためロシア語の作文用には肝心の動詞の文例がほとんどないためにあくまで参考用となる。
134. 和露・技術用語用例辞典、戸田進、バウムハウス、2005
私も商社入社して技術通訳の真似ごとをせざるを得なくなってから、自分なりに露和で語彙を集め始め、それが入社してから4年で3,000ぐらいになった。ワープロにまとめて印刷し、それが今に至るまで役に立っている。その後技術用語よりも一般語彙に興味をもつようになり、コンピューターで編集できる和露の形のコーパス(5万8千項目)となった。同じようなことを先達はされているわけで、戸田さんの活躍したバクーのクーラーは15年前くらいまでロシアや中央アジアでよく見かけたものだ。プラントなど技術ロシア語を習得したいと考える人はこの例文を一通り勉強すればかなり技術的な表現に強くなると思う。私も通読して和訳の参考になったものがいくつかある。用例は技術書類からの文章語だが、商談や技術交渉でも使える。欠点は価格が19,950円と高いことである。ただ著者の長期にわたる現場での数少ない得がたい貴重な経験を2万円で学ぶ機会が得られると考えるなら、またプラントや技術関係のロシア語を勉強したいという人はぜひ購入すべきだと思う。見出し語およそ3,000、用例8,500、検索可能語11,000とある。訳語についても感心させられるものが多い。124ページの「消音」、「要項」、「省力対策」など多数ある。本辞典には正誤表がついているが、それ以外にも若干誤りがある。たとえば7ぺージ最終行проверяесяはпроверяетсяの誤植、8ぺージの「上がる」の項「速度が上がった」が正しい、同様に「階段で2階へ上がる」はво
2-й этажではなくна 2-й этажが正しい(210ページも同様)。9ぺージ下から2行目「ヒドロキシン」ではなく、「ヒドロキノン」が正しい。12ページの「ホールソー」кольцевая
пилаではなく、今はロシアの工具店などではсверильная
коронкаとして売られている。13ページ「雨」のПрогноз погды はПрогноз погодыの誤植。14ページ「表面の荒さ標準片」はЭталон по шероховатостиのほうがよくはないか。19ページの「痛み」は「鈍痛・疼痛」とすべきである。27ページ「インターロック」Блокировка,
позваляющая はБлокировка, позволяющаяの誤植。31ぺージзакрыть
заземление в землюはзарыть заземление в землюの誤植。39ページ下から2行目экономика(経済)はэкономия(節約)の間違いではないか。そうでないと意味が通らない。40ページтипоразмер上から15行目では「規格寸法」と正しく訳しているが、下から16行目では「規格種類」としており、62ページでは規格サイズ、65ページでは機種と統一されていない。50ページの「確認」の中に(Настоящим)
утверждаю, чтоを「確認する」としているが、「承認する」ではないか。54ぺージのпроспективные материалыはпроспектыとすべきではないか。このような形容詞は使われていないのではないか。しかも「商品目録」と訳しているが、проспектыは「カタログ、パンフレット(小冊子)」であり、каталогはスペアーパーツリストなどの分厚いカタログを指す。55ページпроработаетを「稼働している」と状態で訳しているが、完了体未来形なので「稼働する」とすべきである。56ページскорость
заполенения скорость заполненияのミスタイプ。58ページのレアクターと282ページのリアクトルは同じもののようだが、やはりリアクターに統一すべきだ。66ページмедикаментные
леченияはмедикаментозное лечениеではないか。「病気・加療」と訳があるが、薬物治療を指している。67ページправительственная
партияを与党と訳しているが、与党は普通はправящая партияであり、和露辞典という性格上、広く使われる単語を用いるべきだと考える。71ページ「端数」は「小数」とすべきだ。74ページ「1日の勤務時間」をслужебное
время сутокとしているが、普通は(восемичасовой) рабочий деньとする。76ページнаколоны
туловищаは「体の傾き」であって、「屈伸(のびちぢみ)ではない。78ページ「多角経営」はмногопрофильноеであり、многоцелевоеは「多目的」ということで少し意味がずれているのではないか。「敬具」にточкаがついているが、つけない。カンマをつける例は見かける。85ページ「既設の原発」をдействующие
АЭСとしているが、これは稼働中の原発であり、既設というならпостроенные
АЭСではないか。88ページ「交渉」のところでпредставительства
инофирмを「外国社の代表機関」と訳しているが、これは「外国の会社の駐在員事務所」のはず。90ページのラジカセはМангиторыではなくМагнитолы。91ページ「コード」のна
длинуはв длинуのはず。96ページЭлектротехническая частьは「電気の部」よりは、「電機篇」のほうがよいのでは。97ページ「ピストン押しのけ容積」というのは排気量のことなので、Теоретический
часовой объём, описываемый поршнемではなく、рабочий объёмではないか。102ページの「遡及力」を「さっきゅうりょく」としているが、遡及「そきゅう」の間違い。遡及力という言葉はないし、訴求力と紛らわしい。Фунгицидは防カビ剤の方が殺菌剤(意味が広いので)よりよいと思う。Пастеризация「加熱殺菌(特に100℃以下)」は「低温殺菌」が定訳。104ページ「酸性雨」はкислые
дождиとあるが、кислотные дождиではないか。106ページ「時間を測る」は「時間を計る」が正しい。107ページ「治具」はкондукторではないか。110ページдолжностные
лица на предприятияхを「各企業の担当者」としているが、担当者が平社員ということもありうるわけで、「幹部(社員)」とすべきではないか。119ページの「周知徹底」инструктироватьは「指示する」ということで、その完了体にも「周知徹底」という意味はない。訳が過ぎたのではないか。121ページ「出荷」をпогрузкаとしているが、これは「積み込み」であって、出荷ではない。出荷はотгрузкаのはず。вход
в конторуを「出社」としているが、これは「入社」ではないか。122ページ「出入国」をприезд/отъездとしているがвъезд/выехдとするはず。「鋼種」をтип металлаとしているが、「金属の種類」であって、鋼種ではない。鋼種はмарка сталиのはず。124ページ「省エネ」省エネ、資材節約型をмало-энерго
и материалоёмкихとしているが、материалоёмкийというのは材料を大量に使うという意味なので誤訳である。これはэнергосберегающий,
материалосберегающийとすべきだ。「資源節約型」は「省資源型」のほうがよい。128ページпрокаливаниеを燻蒸としているが、高温加熱のことではないか。134ページдоверенностьは信用状ではなく委任状である。136ページоцениватьсяを「推定する」と訳しているが、この動詞に推測の意味はない。「評価される」と訳すべきだ。139ページ「スラッシュ(斜線)」はдробьというのが普通のはず。153ぺージ「総合エンジニアリング会社」をобъединённая
инженерная компанияとしているが、универсальная инжниринговая фирмаの方がよいと思う。「操作」のところна
местеを「現場で」と訳しているが、「機側で」ではないか。газ бытового назначенияを「日用ガス」と訳しているが、「家庭用ガス」ではないか。кабинаを「車室」としているが、「キャビン」ではないか。155ページ「ぞくへい」としているが、「ぞくがら」か「つづきがら」のはず。「プラグをソケットに差し込む」とあるが、プラグならコンセントのはず。158ページ「耐圧試験」の例文に「交流」がぬけているのでは。「ダイカスト」英国でと米国で露文が違うがどういうことなのだろう?165ページ「多品種少量生産」でпроизводство
многих номенклатур малым размером партий, производство малого размера партий
многих номенклатур изделийはいずれも「多品種小サイズ品生産」ではないか。166ページ「たらす」のところでпипеткаをピペットと訳しているが、これは「スポイト」のはず。日本語のピペットにスポイトのようにゴムはついていない。170ページ「荷役標識」のところでстеклоを「ガラス」と訳しているが、これは「こわれもの注意
Fragile」ではないか。172ページ「聴診」тонов сердца и лёгкихを「心臓や肺の調子」と訳しているが、「心音と肺の音」が正しいと思われる。175ページ上から18行目завоевал
(забоевалではなく)に訂正のこと。「通行」левопутноеとあるがлевостороннееではないか。177ページтолочь「搗き砕く」とмолоть「挽いて粉にする」を分けて書いているが、この両者の違い(あるとすれば)は露露辞典で見る限りтолочь
にразминать(こねる)という動作が加わるぐらいで、「搗く」という意味はない。молоть
пшеницуとも言うし、どちらかというとмолотьのほうが使用例が多いと思われる。184ページ上から5行目водная
вытяжкаを「水浸液」と訳しているが、「水様抽出物aqueous extract」ではないか。「工業デザイン」をтехническая эстетикаとしているが、промышленный
дизайнが普通ではないか。188ページ下から4行目「住宅用電源」とあるが「家庭用電源」ないしは「電灯線」ではないか。192ページ「同等の」のвзрывозащищённое
исполнение「保護グレード」と訳しているが、これは「防爆仕様」である。「投与」назначение внутрь лекарственных
средствを「薬物を体内投与」としているが、「薬物の体内投与用」ではないか。「同様」のところでв том же
порядке, какを「同様の方法で」としているが、厳密に訳せば、「同一の方法で」ではないか。195ページ「特許を取得する」をзапатентировать
としているがзапатентоватьが普通ではないか。198ページ「人を取り違える」はпринимать
кого-нибудь другогоではなくпринимать кого-нибудь за другогоが正しい。204ページ「認証」のところで、「印により写しの正しさの認証」とあるが、認証は正当性を公に認めることなので、「印による写しの認証」でよいはず。205ページ「インゴットの型抜き」раздевание
слиткиはраздевание слиткаの誤り。206ページ「患者を寝返らせる」とあるが、「寝がえりを打たせる」のほうがよいのでは。210ページналедникを「庶子」と訳しているが、「皇嗣」の誤りであろう。211ページのゼオライトをциолитとしているがцеолитの誤り。216ページの「ボール紙箱」は「段ボール箱」ではないか。219ページ「波動発電所」とあるが、приливная
электростанцияなら「潮汐発電所」のはず。」波動発電という言葉はない。あるのは「波力発電」である。223ページ「反対」のнапротив
точкеはнапротив точкиの誤り。напротивが与格を取るのは「逆らって」という意味の時で、例文のように「向かいにある」という意味の時は生格を取るはず。226ページ「控え」корешок
чековой книшки はкнижкиの誤り。235ページторкрет-бетонを「吹き付けコンクリート」と訳しているが、これはguniteのことで「吹き付けモルタル」ではないか。238ページ下から2行目робочего
местаはрабочего местаのタイプミス。243ページの「別の著者たちは別の用語を使う」とあるが、различные
терминыは「いろいろな用語」とすべきではないか。разный = другой だがразличныйは「さまざまな」という意味のはず。259ページ上から3行目подвежение
はподведениеが正しい。264ページ「世界的名声を博する」にиспользоваться
мировой известностью とあるが、пользоватьсяの完了体は воспользоваться であり、воспользоваться мировой известностьюのはず。264ページ「本のページをめくる」переворативать
はпереворачиватьの間違い。273ページ「雪降り」とあるが「降雪」のほうがいいと思う。「譲る」の на
прокат はнапрокатの誤り。278ページ最後の行のсиетемыは системыのタイプミス。280ページ上から8行目создаетеяはсоздаетсяの誤り。
135. 科学英語・科学ロシア語、プンピャンスキー、総合図書、1973年
科学とあるが、扱っているのは化学英語・化学ロシア語である。文の組立て、言い回しなど非常に参考になるが、例文が化学関係だけというのが残念だ。