冬の訪れ
「あっ!?・・・雪!」
中隊陣地から、大隊本部に向かうレイチェルの目の前を雪が舞った。
この3ヶ月、待ちに待っていた雪だ。
2週間もすれば、根雪になるだろう。
ノトリ軍との戦闘は膠着状態になって久しい。伝令任務さえ、ルーティンワークになってきた。しかし、雪が降れば一気に状況が変るはずだ。
この地方は雪が積もれば、大軍の移動は困難になる。補給が続かなくなる前に、撤退するに違いない。
戦費負担による財政の悪化と増税のため、ノトリ帝国も国内に厭戦気分が増していると聞く。運が良ければ春になっても、再出兵はしてこないだろう。そうでないとしても、春までは時間が稼げる。
少なくともしばらくは戦わずにすむという安堵と、これから冬越えの準備を急いで進めなければならない慌ただしさ、父が戦死したという事実への暗澹たる思いがないまぜになって、一瞬複雑な気持ちになったが、すぐに冷たい北風で現実に引き戻され、急いで本部に向かうのだった。