朝
膠着状態の戦場に初雪が舞って一週間後。
前線の陣地にある監視台で徹夜の警戒任務についていたレイチェルは夜が明けて、日が差してきた正面の平原が、もぬけの殻になっていることを確認して大声を上げた。
「みんな!ノトリ軍が、撤退したわ!」
予想されていたことではあるが、待ちに待ったその一言に、眠れぬ寒さの中うとうとしていた、中隊の連中も毛布をはねのけて、飛び出してくる。
中隊長が、いつもと変らぬ調子で、全員に声をかける。
「大隊本部に伝令!・・・レイチェル、行ってこい。第一小隊は確認のため、索敵準備。他の小隊は陽動の場合に備えて、念のため陣地を固めろ。」
その声を聞くか聞かぬかする内に、みんな喜びを隠しきれない様子で、はじかれたように飛び出していくのだった。