企業倫理
企業は社会に認められてこそ継続します。そして認められるためには評価を受けるような行動を実行しなければなりません。では評価を受けるような行動とはどのようなものでしょうか。
それは、
@公正にビジネスを行ない、社会の維持・発展に寄与すること
A上記が実現できるように組織の理性と良心が働く仕組み(体制、制度、風土)を備えること
であるといえるでしょう。
前者は企業の行動理念(経営理念)を規定するものです。「いったい企業は何のためにあるのか」という根源的な問いに答えられるビジョンおよび価値基準を示す必要があります。そこには地球市民を対象とした最大多数の最大幸福の実現を含んでいます。
また後者はその方向へ自らを導いていき、必要に応じて見直しができる能力を表しています。経営理念に基づいてインテグリティ溢れ、礼儀正しい企業活動が遂行されるような仕組み形成することが必要です。
企業倫理はビジネスにおける誠実性の発揮という、いわば自主的な活動ではありますが、取り組んでも取り組まなくても良いというものではありません。最小限の範囲の道徳を規定しているものが法律であり、それ以上の範囲を規定するものが倫理とする見方が広まっており、企業倫理の道を外れた場合は法律的な罰則(行政処分、刑事罰、罰金支払など)はありませんが、社会的な罰則それも企業の存続を危うくするほどの罰則(評判失墜、製品ボイコット、従業員のモラール低下など)を伴うものなのです。
逆にいえば、社会から感謝や尊敬される企業活動を実行することが、繁栄への必要条件でもあります。
倫理観溢れる行動とは、自らを見直して問題があれば主体的にそれを改める。しかも、組織においては役職の上下の別なくこれを行なう。そのために、現実を直視する態度、大きな流れに無批判に同調しない態度、問題がある場合はそれを直言する態度を示すものです。これが「企業倫理」が求める本質であると考えます。
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工(巧)が支えるものづくり
小関智弘氏の講演をお聞きする機会がありました。氏は町工場で50年の旋盤工生活を送りながら、何冊もの著書を出されている職人作家です。
実際に、切削しないで圧造機だけで製造した、カメラに内蔵される超音波モータの主軸(葵精螺製作所)、プレス製造による缶詰用ダブルセーフティ・プルトップ(谷啓製作所)、パイプを曲げて製造したエルボ、エアゾール使用後に最後までガスが抜ける工夫の蓋などのサンプルを拝見しました。
これらそのものは、びっくりするような斬新なモノではありませんが、作る方法・手順(プロセス)を変えたこと、町中に蓄積された技能を活用したことなど、職人の知恵と工夫が集約されています。
ものづくりの工(たくみ=巧)の奥深さがひしひしと伝わってきた講演内容に感銘を受け、その後何冊かの著書を拝読しました。そこにはものづくりを活き抜く、以下のメッセージが凝縮されていました。
@現場は活きた知恵の宝庫である。知恵が無かったらどんな優れた機械があっても、優れた性
能の製品は作れない。
A機械は人の心を写す。愛情をこめず、精度、剛性を考えず、ただ量産のみを志向するのでは、
ミクロンオーダーの精度は安定して出せない。
B規格には外れていないが、こんなものを出したら工場の恥だとする人の作るモノは、美しさが
違うのですぐ分かる。ものづくりが築いてきた価値観である。
Cコンピュータ付の機械が出はじめたころは、熟練不要の時代がやってきたといわれた。しかし
旋盤加工は歪との戦い。熟練とはそれを予測して捨てる工夫をすることである。
D冶具は知恵のかたまり。冶具はみんな捨てる工夫。コンピュータに捨てるという思想はない。
熟練の多くが捨てるという言葉で括れることに気づいた。
E職人とはモノを作る道筋(プロセス)を考え、モノを作る道具(冶具)を工夫することのできる
人間である。
これらの内容から、コンサルタントとして考えるべき事柄が浮彫りになります。
一つ目は、ものづくりの価値を再認識することです。ものづくりは、“信頼性の高いモノを安定してしかも安く作る”ことが目的です。しかしその取り組み姿勢の順番が重要で、“安く”が最初に来ては良いモノはできません。
ものつくりへは、知恵と工夫の活用と蓄積を推進することが大切で、そのためにはモノを作る人たちの社会的地位を高める必要があります。モノをカネにしか換算できない社会は、ものつくりの現場が軽んじられる風潮を生みます。モノの“質”を見抜く感性を身に付けるべきでしょう。
二つ目は、コンサルとしてのプロセスを持つことです。ものづくりの業務改善の支援を求められた場合、全体を見て手順(プロセス)をイメージすることが大切です。
相手にとって大切なことは、課題に直接アプローチするという近視眼的な対応ではなく、製品としてどのようなものが作りたいのか、そのための工夫の余地はどこにあるかなど、解答を求めるプロセスを与えてくれることにあります。
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戦略的意思決定
戦略的意思決定とは
戦略的意思決定は経営の本質的かつ究極の機能であり、見識・先見性・創造的革新力・情報力・胆力などが問われる過酷な課題である。このうちの「戦略的」とは、問題があるかどうか不明な状況において問題を作り出し、それを解決することである。つまり「正しい問い」を作り出すことをいう。
これに対して、与えられた問題に対して「正しい答え」を出すことは戦術的といわれる。(『正しい問いがわからずに、正しい答えが得られるはずがない』P.F.ドラッカー「現代の経営」より)
戦略的意思決定の要件は次のようにまとめられる。
・現状を改革するための問題を形成する
・長期的に企業の存亡を左右する
・不透明かつ曖昧な状況においてリスクテイキングする
・経営哲学や信念が反映される
アサヒビールの事例
今でこそアサヒビールはビール業界のトップの座をキリンと分け合っているは、一時は市場シェアも10%を切るまでに落ち込んだが、2001年にはビール・発泡酒出荷量で市場シェアは38.9%を占め、トップを続けてきたキリンビールの35.8%を上回り、トップを奪い返す歴史的な復活劇を演じた。
この見事な復活劇を指揮した経営者のリーダーシップと意思決定には、学ぶべきところが多い。それも1人のカリスマ的経営者の成せる技ではなく、村井勉氏が社内の意識改革を行って復活の種を蒔き、それを樋口広太郎氏が受け継いで苗を育て、瀬戸雄三氏が大きく花開かせたという、3代にわたる社長の強力なリーダーシップの発揮と意思決定のコンビネーションは、革新的な事例であろう。
■村井勉氏の時代(1982〜86年)
トップ主導の組織革新を実行。経営理念・行動規範を策定し、企業風土の改革に取り組み、CI(コーポレートアイデンティティー)を導入。タブー視されていた「ビールの味を変え」、コクがあるのにキレがある生ビールの発売に漕ぎ着けた。
■樋口広太郎氏の時代(1986〜92年)
村井氏の命を受け積極路線を展開。強烈なリーダーシップを発揮して、トップダウンによる意思決定を実施。工場の利益管理制度を廃止し、「工場は商品づくりに徹しろ、会社のマネジメントは経営者に、利益責任は社長に任せてくれればいい」と責任の所在を明確にした。必要な金は惜しまない経営。スーパードライの奇跡を演出。
■瀬戸雄三氏の時代(1992〜99年)
生え抜きで後を継ぎ、鮮度の鬼として社内のリズムと緊張感を保つ施策を打つ。「攻めの経営」から「バランス経営」へ。工場出荷までの期間を半減。シェア逆転を果たし見事No.1の座を射止めた立役者。
意思決定の特徴
三氏の経営者としての活動内容には当然ながら相違があるが、その意思決定プロセスやリーダーシップスタイルには下記のような類似点が見られる。
@意思決定プロセス
やるべき内容を明快に示すトップダウン的ではあるが、いきなりの指示ではなく、戦略ビジョンを示してまず社員に内容を十分に揉ませて、その結果を引き取って「意思決定の場」としての取締役会を活性化。最後に自らが意思決定するというプロセスを取った。
単に各部門から多段階の合意形成を経てもち上がって来た案件を、最終的に集団合議制によって意思決定するボトムアップ方式をとってはいない。
A意思決定内容
先が見えずやってみなければわからないし、かつ失敗すると命取りという切羽詰った状況下で、「前例がない、だからやる」(樋口氏言)を信条とした、大胆かつ明快な意思決定を行っている。つまり、過去の成功経験や現状の延長線上で発想した決定、あるいは社内の利害関係を反映した妥協的決定ではない。
Bリーダーシップスタイル
決定内容の認識や前提を明確にし、社員の共感を得ることで、参画意識を高めてやる気を引き出すことに主眼を置いた。また相手のことを良く知ることに腐心した。各人が本来持っている能力を発揮させるという、支援的行動が高く指示的行動が低い、「支援型リーダーシップスタイル」を取っていたと見ることができる。
事例からの知見
戦略的意思決定の領域は、事業変革・新規事業進出、M&A、意識変革、組織改革など多岐に及ぶ。創業は本来戦略的要素が要件であるので、創業経営者には戦略的意思決定の事例を見出しやすい。
ファーストリテーリング、マクドナルド、ホンダ、ソニーなどの創業者の意思決定事例からは、カリスマ的リーダーシップを学ぶことができる。
しかし多くの専門経営者(サラリーマン経営者)は白紙の上に自らの構図を描く立場にはないので、従来路線を引き継いでリスクを回避する不作為の罪の謗りを免れない事例も散見されるが、アサヒビールを始めとして低迷する企業を蘇らせた「中興の祖」とされる専門経営者も多い。その再建過程での戦略的意思決定とリーダーシップスタイルは学ぶべき点が多い。
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サプライチェーンマネジメント(SCM)再考
はじめに
サプライチェーン構築の目的は、業務を改革して効率を向上することはもちろんのこと、コラボレーションによる企業価値の向上、さらにはあらたなビジネスモデル展開への可能性までをも含んでいる。
現状多くの企業でサプライチェーン構築が進んでおり、今後も拡大する機運にある。サプライチェーンを最適に保つには、企業内外を通じた全体最適を目指した運用が必要であり、そのためには目的と課題を十分に認識した上での推進が必須となる。本レポートではこれら留意点について論じる。中でもSCM推進上の課題についての考察を中心とする
グローバルサプライチェーンとは
(1)サプライチェーンとは
ポーター(*1)は、企業内部の活動は互いに連結関係を有しつつ、全体として買い手のための価値を創造しており、この連結関係をうまく管理することができれば、競争優位に立てると指摘する。つまり、競争優位を獲得するには、企業のバリューチェーンを個々の部分の集合としてではなく、ひとつのシステムとして管理する必要があると主張する。これから、企業内の物および情報の流れをバリューチェーンと呼んでいることが確認できる。
一方、サプライヤーから顧客に至るまでの、企業を横断した製品、サービス、および関連情報の流れをサプライチェーンと呼び、この流れを最適化して価値を増大させるビジネス戦略をサプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management) という。
なお、前者のバリューチェーンを企業内サプライチェーンと呼び、それに対応させる形でサプライヤーから顧客に至るまでの企業を横断したサプライチェーンを、企業間サプライチェーンと呼ぶケースも見られる。
SCMは、製品とサービスに対する市場の需要を生み出してそれを満たすさまざまなプロセスから構成される。これは、最終的な顧客を満足させるという共通の目標に携わっている取引パートナー・コミュニティ全体を包括する一連のビジネス・プロセスの集合である。したがって、サプライヤーのサプライヤーから顧客の顧客までを対象とする必要がある。
取引パートナー・コミュニティが国内に留まらず、国をまたいだSCMをグローバルSCM(GSCM)と呼ぶ。
(2)グローバルとは
グローバル化と国際化とは一線を隔している。ロバート・ライシュは『ザ・ワーク・オブ・ネイションズ』で、「次の世紀の政治・経済では、自国の製品とか技術は存在せず、自国の企業、工業、経済も存在しない。今後のグローバル経済社会から見たとき、国境は意味はない」としており、グローバル化の本来の意味は、ボーダーレスつまり国境を意識しないということである。一方の国際化は、「国」の「際」があり、国境が意識されていることを示す。
現実を見た場合は厳然として国境が存在し、これを意識した活動が必須となる。この意味では、此処で扱う国をまたいだSCMは国際SCMと呼ぶほうが相応しいが、大勢としてのグローバルSCMと呼ぶこととする。
このグローバルSCMは、供給ニーズに応えるために世界的視野にたって最も利点のある地域にアクセスすること、つまり最適市場、最適地購買、最適地生産を指向することである。
(3)ロジスティックスとの関連
サプラーチェーンが企業間の連携を重視するということは、その最適化には物流が大きな意味を持つことである。物流の分野でも、このサプライチェーン概念の台頭を受けて、供給先・メーカ・販売先・顧客までをトータルに捉えた、新しいロジスティクスを確立しようとする取り組みがなされてきた。
矢作(*2)は、サプライチェーンとは「生産から販売に至る円滑なモノの流れを首尾一貫して作り上げるための統合化されたロジスティクス・システムのことである」と定義し、サプライチェーンと従来型ロジスティクスが異なる点は「組織・システムの統合、戦略性、在庫圧縮機能」の3点であると分析している。
つまり、企業内においては調達から販売に至る生産・流通活動を担う各組織、各部門が、あたかも単一組織のように連携しており、機能的にも一つのシステムとして統合されている。そして「供給」が、各々のコストや市場シェアに強い影響を及ぼすという戦略性が、各組織、各部門において認識されており、加えて、情報の共有や蓄積を通して、在庫調整が図られると主張している。
さらに、源流から顧客に至るまでの各企業が連携して、一つのシステムとして統合された形がSCMである。
(4)サプライチェーンの手段は
サプライチェーンは、流通チャネル全体最適化を目的とするものであり、そのために、企業間の連携の方法・仕組みが鍵になるが、これを達成する手段として脚光を浴びたのが、製販同盟やアウトソーシングである。つまり、サプライチェーンは、企業内および企業間のロジスティクス関連活動の戦略的統合に特徴があるということが言える こうした観点から西澤(*3)は、サプライチェーンは、戦略的提携(ストラテジック・アライアンス)の重要手段であると考えられるとの指摘を行っている。なおバワーソックスほか(*4)は、「戦略的提携とは、複数の独立した組織体が特別な目的達成のため、緊密に協力し合う意思決定をしているビジネス関係をいう」と定義している。 阿保(*5)は、戦略的提携の問題点として、協調の不足や組織上の障害などを指摘する。そして戦略的提携は、今後、因襲的な「系列」から、民主的でイコール・パートナーシップを尊重するような「調和型自律分散」システムとしてのサプライチェーンを目指すべきであると主張している。
(*1)ポーター,M.E.、土岐坤ほか訳『競争優位の戦略』ダイヤモンド社、1985
(*2)矢作敏行『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』日本経済新聞社、1994
(*3)西澤脩「供給連鎖管理によるロジスティクス・コスト管理」『企業会計』Vol.49,No.5、1997
(*4)バワーソックス,D.J.ほか,宇野政雄監修『先端ロジスティクスのキーワード』ファラオ企画、1992
(*5)阿保栄司『ロジスティクス革新戦略』日刊工業新聞社、1993
SCM・GSCMの課題
(1)SCM構築の鍵
SCM構築にあたっては、全体最適のための統一モデルに基づく企業間連携の方法・仕組みが鍵になることが理解できたが、さらに、企業経営の新たなビジネスモデルの探求が求められている点も指摘されている。とりわけ製造業においては,「SCMを効率化のために用いる」といった考え方から,「新しいビジネスモデルを作っていく」という方向へと変質している。たとえばEMSの台頭はビジネスモデルの変質の一つである。この背景として企業経営のためのビジネスモデル,つまり「儲け方」が変化してきたことが上げられる。
とはいえ、全体の最適化のためには個々の最適化が達成されていなければならない。古くから経営における意思決定のレベルを長期(ストラテジック),中期(タクティカル),短期(オペレーショナル)の3つの階層に分けて考えているのにならい,ここでのSCMの最適化も,意思決定レベルの違いによって前述の3つに分けて考える。
(2)長期(ストラテジック)レベルの最適化
全体最適のための企業間連携の意思決定は主にこのレベルに属する。ここでの最適化対象としては、ロジスティクス・ネットワーク全体の最適設計が上げられる。また具体的な項目として、
@ロジスティックスのフロー企画(顧客群(誰がお客様か)、設備配置(生産をどこで行うか),物流配置(資材や製品の流れをどう捉えるか)、EMSの採用なども含む)
A長期継続的調達活動の決定(長期的な取引をどう構築するか、VMIの採用なども含む)
B国際取引への対応方法の決定(関税,関税控除,移転価格)
C不確実性(為替,需要などの)への対応方法の決定
Dリバース・ロジスティクスへの対応方法の決定
環境問題意識の高まりにより、源流から顧客までという動脈のみを捉えたSCMに留まらず、静脈まで意識したリバース・ロジスティクスへの対応は必須となっている。
などが上げられる。前述の在庫調整という意味では、対象はフロー在庫となる。
(3)中期(タクティカル)レベルの最適化
全体最適を睨みつつも、企業個々に全社としての最適化を図る意思決定はこのレベルに属する。関連企業を含めた最適化も包含する。具体的な項目として、
@ロジスティックスのフロー設計(生産・物流をいつどこで行うか)
A中期継続的調達活動の決定(中期の安定的な調達をいつどう実行するか)
Bサプライチェーン全体の資源利用計画(需要の季節変動や景気変動の考慮した計画、製品ライフサイクルを考慮した計画、収益管理を考慮した計画(価格も決定変数))
Cストック在庫の最適化(サービスレベル維持のための安全在庫、安全在庫の最適配置、これらはフロー在庫も加味)
Dロットサイズ最適化(安全在庫、生産方式を配慮)
などが上げられる。在庫調整はストック在庫が対象となる。
(4)短期(オペレーショナル)レベルの最適化
企業個々に業務としての最適化を図る意思決定はこのレベルに属する。上位の意思決定内容と矛盾が発生する場合があるが、その時は上位を優先する。具体的項目として、
@スケジューリングの最適化(資源への時間軸上の作業配分の最適化、資源制約付きスケジューリング、
A生産の最適化(段取りと生産のトレードオフ、ジャストインタイム生産、制約資源活用生産、生産ロットサイズ)
B調達の最適化(ジャストインタイムに対応)
C輸送・配送最適化(能力に応じた運用、総費用最小化)
が上げられる。
(5)GSCM実現の難しさ
SCM最適化には、これまで述べたような多くの対象項目があり、それぞれに課題が控えている。ただ企業内の最適化については、中期および短期レベルが中心となりその方法論やサポートツールが充実してきた。理論的裏づけとしてはORによる最適解、制約理論、ロジスティックス理論などがあり、企業内の現状ルールの変更(古くからの慣習の打破)というネックはあるが、解決方向は見出しやすい。そのためツール導入を前提としたSCM構築に向かっても大きな間違いはない。
しかし企業間に広げた場合は(国をまたがないSCMでも)、まず長期的レベルの意思決定が前提となり、その上での中期レベルでの方法論を展開することになる。そのための裏づけは戦略的提携論、企業経営論、チャネル理論などであり、解決方向が一意に求まる訳ではない。また全体最適モデルは時代(環境)に応じて変化するものであり、多くの研究はなされているものの、確立したモデルは寡聞にして見あたらない。
さらに、国をまたがないSCMと比べて、国をまたいだGSCMの実現は一層の難しさがある。その要因としては、国をまたぐことで生じる関係者の範囲の拡大と、技術的・制度的な前提の違いが発生するためである。
まず関係者の範囲の拡大については、国をまたぐことによりその範囲は資材業者、製造業者、卸売業者だけでなく、銀行、保険会社、物流会社、さらには通関業者、税関、その他関連省庁等にまで拡大する。これは、遠隔地取引であるために、貨物の引渡しや代金回収の方法で国内取引と異なる手続を採用していることや、国境を越える取引であるために、国別の輸出入制度が深く関わってくるためである。
また、SCM構築にあたっては取引のために情報の共有が必須となるが、そのための技術的・制度的前提が一致しない場合が多い。企業個々の情報化の度合いだけでなく、情報をやりとりするための技術的な取り決めや、その際のルールなどが一致していなければ、国をまたがった情報の共有は実現できない。
このような背景から、GSCMは国内取引のSCMと比較してその実現がはるかに難しく、現時点では研究も含めて事例は極めて少ない。
おわりに
SCM推進上の課題もしくは検討・具体化すべき項目を整理した。SCM推進を成功に導くには、その目的を把握するとともに、それに対応する検討課題への対応策を具体化しておく必要がある。
システム構築(ソフトウェア導入)にあたっても、課題や研究すべきテーマを十分に認識しておくことが大切である。
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