老人介護についての個人的HP-1介護 How to -(10) 端座位からの起立介助
さて、やっと起立の介助編にいきます。なかなかこのページ作成に着手できなかったのは、実際に起立に必要な介助は個人差が大きくて、ここでいくつか具体的な介助の例をあげてもそのままで適応できる方は少ないと思われたからです。でも「以下の写真の通り」にはいかなくても、ポイントとなる「コツ」は説明していますし、それは多くの方に共通のはずです。
「起立」という一つの動作への介助のようですが、ポイントは2点あります。自力起立のページでまとめた通り「おじぎで重心前方移動すること」と「次いで、お尻を浮かして身体を起こすこと」の2つです。この2つの動作を介助するのが「起立動作介助」となります。
自力起立のページで説明した「起立のためのコツ」は介助場面でもなるべく丁寧に実現した方がよいでしょう。介助するのもされるのも、より苦痛が少なく楽に行なえるようになるからです。
最小の介助方法としては、端座位姿勢から「手先だけを持って起立動作を誘導する」ことが上げられます。(写真1)起立=重心を上に持ち上げることは介助していませんが、重心前方移動を介助している、ということになります。反対に手を持って上へ引っ張り上げようとするのは、正しい自然な起立動作を無視した間違った介助法です。
写真1 手先介助でおじぎの誘導
次に、「肘持ち介助」ですね。肘を持つと重心の前方移動を介助すると同時に、お尻が浮いてから先重心を上へ持ち上げるのにも介助を加えることができます。介助者の側が上達すると、この介助法でもかなりの介助量を提供することができます。(重度な方でも立たせてあげることができます。)(写真2)

写真2 肘介助でおじぎと体幹起こしも介助
手先持ちにしろ肘持ちにしろ、大切なこと。それは「相手に自分の手や腕をしっかり握ってもらうこと」です。一方的に相手の手首をつかんで引っ張るような介助はいけません。介助を受けてはいても「立つのは本人さん」なのですから、私たちは「立つのを手伝う」のであって「立たせるのではない」ということ、それが「握ってもらう」と「一方的につかむ」という介助動作の違いとなって現れます。
さて、介助を受ける方がお辞儀をするのを恐がったりその必要性を理解されていない方に介助する場合、あるいは身体を起こしていく力が不足して難しい方には、脇のしたから腕を回し、体幹を支え介助しなければいけません。しかしこれが意外と難しいです。本人さんが「協力」してくれて、介助者の首や身体をしっかり抱きしめてくれると随分楽になります。(写真3)また、身体をくっつけあうような形とはなりますが、やはりできる限り本人さんに一旦「おじぎ」の姿勢になってもらうよう、誘導介助すべきです。本人さんの協力が得られない場合は、脇のしたに回した介助者の腕が上方へずり上がって、本人さんの肩がバンザイになってしまうことがあります。これは大変危険な状態ですから、無理をせずに一旦諦めて本人さんの肩を壊してしまわないようにしましょう。本人さんの協力が全く得られない場合には、下記のズボン介助か起立介助ベルトを使わないと(特に慣れないうちは)起立させることは困難か?と思われます。

写真3 相手にもしがみついてもらって
本人さんが介助者の首に手を回してくれるなど、ある程度の協力をしてくれる場合、介助者の足は広めに前後左右に開いて構える場合と、本人さんの足を挟みこむように構える場合があります。介助を受ける方と介助者の体格の兼ね合いで、介助者の体格に余裕がない時は本人さんの足を挟みこむように介助した方が楽なようです。
オムツ着用者がズボンをはいている場合に使える方法です。お相撲さんの回しのようにズボンを持って介助すれば、股を下から支えることになりますから随分介助は楽になります。しかし、おむつをつけている人でないとズボンが会陰部に食いこんでしまいます。おむつをつけていない方に対して上記の「体幹介助」では困難な場合、下記の「起立介助ベルト」が必要になってきます。
以上の通り、@体幹介助では困難 Aズボンをはいていない、もしくはズボンははいているがおむつはつけていない という方に起立介助する場合、あるいは写真4の絵のように裸の場合に、介助ベルトがあると随分楽になります。(写真4)しかし、これをつけっぱなしで臥床しているわけにもいきませんから端座位になった時点でセットすることになり、いささか面倒ではあります。起立介助ベルトを使う場合の注意点として「お腹ではなくて腰に巻く」ということです。つまり骨盤のグリグリ(腸骨稜)を回し締めるようにすることです。お腹に緩く巻いた状態で上方へ引っ張り上げると、胸を圧迫するようになり肋骨骨折や呼吸困難に陥れる可能性があります。
写真4 起立介助ベルト
下肢がひどく屈曲拘縮を起こしていたり既に起立する能力を完全に失っている場合には、端座位から「立ってもらう」といよりは、端座位から「下肢を下垂させつつ体を持ち上げる」という格好に近くなってきます。これはこれで大切な介助技術です。実際に「気をつけ」の姿勢まで起立するのではなく、ベッドから車椅子への移乗時などに一瞬お尻を浮かすための介助です。
介助者が小柄な場合は、本人さんの脇の下に首〜肩を入れて、持ち上げるような形が楽なようです。(写真5)

写真5 脇の下にもぐりこむようにして抱える
反対に介助者が大柄な場合は、写真6のように本人さんを介助者の脇の下におじぎさせ、腰部を引っ張り上げるようにすると楽なようです。

写真6 介助者の脇の下におじぎさせて
写真5の場合も6の場合も、動作を始める段階で介助者と本人さんの身体がぴったりくっつくのではなく、少し余裕を持って本人さんに少しでもおじぎの姿勢になってもらうこと、お尻が浮いて体を起こす段階になってから身体をくっつけるようにすること、それがポイントとなります。
さて、一通り「起立介助」についてまとめてみましたが、一口に「起立」といっても様々な「目的」と「状態」とがあります。例えばベッドから車椅子への移乗動作を目的として全介助する場合、必ずしも足腰をきちんと伸ばすまで起立させる必要はないとも言えます。つまり、車椅子の側板を超える所まで腰を持ち上げれば良いわけで、車椅子の方が側板取り外しや跳ね上げ式であれば「端座位横移動介助」で済んでしまいます。また、同じくベッド車椅子間移乗を全介助で行なうのにベッドが極端に高すぎると、ベッド上へ移動するのに「起立」どころか相撲の「つり出し」のように足を浮かせてまで上へ持ち上げなければいけません。
つまり、起立に介助を要するような状態であるのならば、まずはその目的に合わせて機器環境をできるだけ相応しいものにしておくべきです。その上で足りない部分を介助する、ということになります。その手順を間違うと起立介助はとんでもなく難儀なものになり「寝かせきり」の大きな原因となります。