老人介護についての個人的HP-1介護 How to -(13) 床からの起立・自力

床からの起立・床への座り〜自力の場合

床からの起立動作の重要性 

 次は「床からの起立動作」です。「長座位への起座」のページで、「和式生活動作の中で難しい動作だから、“寝たきり”の原因になっている」と書きましたが、床からの起立動作もそれ以上に、その困難さから立てないばかりに“寝たきり”の原因となってしまいます。長座位への起座にしろ床からの起立にしろ、ベッドを利用すればそれぞれ「端座位への起座」・「端座位からの起立」となってずっと容易にはなりますが、移動方法としてあえて“屋内ではいざり”を選択している場合や、あるいは移動方法は歩行でも生活全体の生活様式が畳部屋での和式の場合、どうしても床への座り起立動作が必要になってきます。そのような場面で「転倒」されるという事故も多いようですので、ここでまとめておきます。方法としては、片麻痺者の場合と非片麻痺者の場合に大別できます。

非片麻痺者の床からの起立動作

 この動作に入る前に、まずは「四つ這い」のページで説明した手順で滑らかに四つ這いになれているでしょうか?その上で、動作の流れは写真1のようになります。ポイントは床にしっかりと両手をつき、腰が高く持ちあがって膝が伸びるまでその手を床から離さないこと、です。ですからここでも、身体の柔軟性が必要とされます。また、人によっては写真2のように一旦正座になり、そこから両足を一度に伸ばしていく〜床についた手をじわじわ足もとに近づけていく、という動作の方が立ちやすい、という方もいます。しかし、この場合は下肢機能が不足しているためであることが多く、歩行自体も不安定なことが多いと思われます。
  

 

写真1 四つ這いからの起立

@しっかり四つ這いになり、

A床にしっかりとついた腕に十分体重をかけながら片足をたて、

Bさらに腰をふったてながらもう片足もたてます。

C十分に高く腰を持ち上げてから片手を膝につきます。思いきり下品に、がに股に足を立てるのがコツ。(^_^;

Dもう片手も膝につき、腰を伸ばしていきます。

 

 

写真2 四つ這いからの起立、両足をそろえての場合

 床に手をつく方法では立てない・立ちにくいという場合は、「手つき台」を使います。写真3のように20cmから40cmくらいの高さの台に手をつくと、ずっと楽に立てるようになります。大き目で高めの台にして、手つきではなく「肘つき」できるようにしてあげるのも一つの方法です。

 写真3 台に手をつきながら起立

 ここで、長座位での安楽姿勢からの流れで床からの起立動作を考えた場合、大きなポイントが一つ生じます。それは「手つき台を長座位をとっている本人さんのどこに置くか?」ということです。図1の左側のような長座位姿勢から、そのまま目の前のコタツに手をついて立とうとしても、なかなか立てません。そうではなくて「四つ這い」のページで説明した通り、長座位から楽に四つ這いになってその正面に「手つき台」を置いてあげなければいけません。つまり、「長座位時の後方」ということになります。(図1の右)なんだか物が沢山置かれるようですが、足りない身体機能を補うためですから仕方ありません。もちろん、図1の左の状態から「いざり」でコタツから離れて後ろ向きに構えることでコタツを手つき台としてしまっても(面倒でなければ)構いません。


図1 手つき台の位置

片麻痺者の床からの起立動作

 動作の流れは写真4のようになります。ちょっと細かいコツが色々ありますし、足のつく位置など結構個人差があります。しかし、基本的なポイントはもれなく説明してきます。全体として非片麻痺者の起立に比べて、@悪い方の足を曲げたり伸ばしたりさせにくいので初めから伸ばしておく。A片麻痺のため安定した四つ這いはとれません。従って「あぐら座位・長座位」から健側の上下肢だけでの「四つ這い」になるように、思い切り身体を捻りながら手を床につきます。これは、非片麻痺者が身体を後ろ向きに捻りながら四つ這いになるのと同じことです。非片麻痺者の場合の「長座位から四つ這いへ」の姿勢変換動作と「手つきでの起立動作」を連続して一気に行なう、という形になります。そして片麻痺者の場合も、初めに長座位・あぐら座位していた方向からは、健側斜め後ろを向く形で起立することになります。(実際にやってみると納得できます。(^_^; )

写真4 片麻痺者の床からの起立

@悪い方の足は投げ出し、良い方の足はあぐらの形に曲げて足先を悪い足の膝の裏あたりにおきます。良い方の手は、手のひらを斜め後ろに向けて(しっかり床をつきます。

A写真中の黄緑色の矢印のように、身体を思いきり良い方の側へ捻りながら、良い方の膝をついて立てます。その時、写真中の赤線のように、バランスのよい三角形ができると文字通りバランス良く動作が先に進めます。このようになった時点で、良い方の足先を写真右下の()のように、つま先立ちにします。

B十分に腕に体重をかけながら、そして頭は低く下げたままで、良い方の足を立てます。

C十分に足が伸び腰が高くなってから、手を床から離し膝なりを支えながら腰を伸ばします。

 

 

 片麻痺者が起立する場合も床に手つきでは難しいようならば、手つき台を使えば楽になります。起立動作の途中で身体を捻りますから、座っている時の目の前に台があっても役に立たないのは非片麻痺者の場合と同じです。大体、図2の位置、初めに手をつく近くに置いてあげるとよいでしょう。

 図2 片麻痺者が起立する際の手つき台の位置

床への座り動作動作

 上記いずれの立ち方の場合も、座る時には全く逆の動きとなります。(連続写真を逆に眺めてみてください)ただし、人によっては「立つよりも座る方が難しい」ということがあります。その際も手つき台があると楽に座れます。ドッシーン!と座ってはアブナイので、余裕のあるうちに使うようにしましょう。

 それから座る時も、立っていた時とは異なる向きで座り姿勢になることになります。自然にそうなってしまうのですから、無理に同じ方向を向いたままで座ろうとすると大変に危険です。(後ろに倒れる、という感じになってしまいます)座った時の向きを見越して、座り動作を始める時〜立位のうちに身体の向きを調節するようにしましょう。もちろん、座ってからゆっくり向きを変えても構いません。

まとめ

 大体以上が、全ての方々に共通する「床から起立する際のコツ」です。現在「要介護状況」とまでいかなくても、畳の上への「立ち座り」に不自由を感じている方は沢山いらっしゃると思います。コツを覚え必要な道具は準備して、「転倒事故」を未然に防いでいただきたいと思います。また、「床からの起立の介助」についてはその動作が「目的」となる他に、「転倒者を助け上げる」動作介助ともなりますので、ページを改めて説明します。

※追加:片麻痺者さんが床へ座り降りるときの注意

 上の説明では、「座り降りる時は、立つ時の逆」と簡単に説明していますが、特に片麻痺者さんが床に座り降りる時は、慣れていないと典型的な失敗を起こしやすいので、それを以下に追加説明しておきます。

 

写真5          写真6

 写真5をご覧ください。作者が左片麻痺を模しつつ床に座り降りようとしています。このあと、写真6のような状況になってしまうことがあります。床についた右手と右膝がくっつくようになっています。また、悪い方の左膝も曲がって床についてしまいそうです。これでは写真4で示している「三角形」ができていませんから、非常に不安定で、ゆっくり安全に座位になることはできません。

 どうして(写真6のような)こういう危険な姿勢になってしまうのか?それは、「膝をつく前の、足の後ろ引き」がないからです。写真5から床に手をついて、右膝を床につく前に「右足を後ろに一歩」引かなければいけません。(写真7)この一歩の引きのおかげで、右膝を床についたときに、「右手〜右膝〜左足」で三角形の「体重支持面」ができて、安定して床に座れるようになります。(写真8)

 

写真7             写真8

 何気ないようなことなのですが、不慣れな方は恐いこともあってか写真7の「一歩後ろ引き」せずに座ろうとして、危険な状態になってしまうことが珍しくありません。自力の場合も誘導の場合も、部分介助の場合にも同じく気をつけてあげてほしいと思います。

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