老人介護についての個人的HP-1介護 How to -(20) 固く握った指の開き方
このコーナーでも久しぶりに小ネタをひとつ・・三好春樹さんの生活リハ講座でも実技の時間にとりあげていたテーマで、『片麻痺の曲がった指を開くコツ』です。(今でもとりあげていらっしゃるのかな?)
典型的な片麻痺者では、患側の手の指は固く握ってしまいがちです。頑張って生活場面で沢山動いていらっしゃる方ほど、筋緊張が高くなってなおさら握り込んでしまう、という傾向もあります。それで「工夫コンテスト入賞作品」のようなソフトに握らせておく道具も工夫したりする訳ですが、特に夏場は手のひらの中にじっとり汗をかいて臭ぁくなったり、ひどいとただれてしまったりします。せめて入浴時などは指を伸ばして洗い、きれいに水分を拭きとってあげたいものです。
でも、なるべく本人さんも介助者も楽に麻痺して握った指をできるだけ伸ばすのにはちょっとしたコツがあります。ところが一般的にはその正反対の、指が開き伸びにくい形で引っ張ってしまいがちで、「イテテ・・」となって家族喧嘩の原因になったりします。(^ ^; その辺りのことを写真つきで以下に説明します。

写真1 一般的な指の開き方
写真1をご覧ください。これは右片麻痺のお父さんの指を奥様が伸ばそうとしているところで、お父さんは「イテテ・・」状態です。本人さんに対して前方から奥さんの側へ「引く」ような形で指を伸ばそうとされています。
実は、「引く」形で指を伸ばそうとすると、肘や手関節も伸ばし起こす方向(伸展方向)に動いてしまいます。ところが指は、肘を伸ばし手関節を起こすとなおさら握ってしまうんですね。(私たちが精一杯の力で握力計を握る時にも、自然とこの格好になります。)すると奥様はなおのこと引っ張り、なおさら肘手関節が伸び起きてなおさら固く握ってしまう・・挙げ句の果てに「イテテ・・」となるわけです。これは、肘と手関節を伸ばし起こすことで、指を曲げる筋肉が引っ張られると同時に、指を伸ばす筋肉は反対にゆるんでしまうからです。このことの解剖的な理解は図1をご覧ください。
図1 肘と手首の曲げで指がゆるむわけ
さて、以上のように理解できれば、どうすれば良いか?おのずと答えが見えてきますね。つまり、写真1のように「指を曲げる筋肉を引っ張り、伸ばす筋肉をゆるめる」のではなく、その反対にすれば良い訳です。つまり指の屈筋をゆるめて伸筋を引っ張るような腕の形にしてあげれば良いのです。それは、「できるだけ肘と手関節を深く曲げる」こと、です。
写真2をご覧ください。私の指導のもと奥様が「肘と手関節を曲げながら、指を引きだし」ています。写真1に比べて指はずっと伸びているにも関わらず、本人さんの苦痛は一切ありません。本人さんの手首を持った奥様の左手で「肘・手関節を一度に屈曲」させて、奥様の右手で指を引き出しています。まったく初めての場合は「肘・手関節を一度に屈曲」させるのに、ちょっと慣れが必要かもしれません。

写真2 こうすれば・・
一度上手に指を引きだせば、肘と手関節を動かさなければ指は半開きのままになりますから、その間に手の中のお掃除をしてあげれば良い訳です。奥様には「お風呂で手の中を洗い拭くのにとても楽になりました。」と喜んでいただけました。
これはそのまま、指の関節が曲がったままで固まってしまわないように行なう「関節他動運動」のテクニックとして使えます。ただし関節はある程度伸ばせますが、指の屈筋自体のストレッチにはなりません。屈筋のストレッチのためには、指を引き出したままでゆっくり手関節を起こし肘を伸ばしてことが必要で、場合によってはかなりの苦痛を伴います。ご家族でそこまでやりたい!という場合には、ぜひご本人さまご家族さまご一緒に、直接PT・OTの指導を受けられた方が良いと思います。