老人介護についての個人的HP-1介護 How to -(21) 全介助移乗動作

一人全介助によるベッド〜車椅子移乗介助

 さて、介護の現場ではこれまでのこのコーナーの諸動作介助を組み合わせて様々な介助を行なっていくわけですが、このページではその代表的な例として「完全寝たきり者を一人でベッド〜車椅子移乗介助する」ということを考えてみましょう。

 モデルの方は、実際の寝たきり者さんで、下肢体幹とも伸びたままで曲がりにくく、端座位を自力で保持することもできません。もちろん、わずかでも床を足で突っ張ることもできません。ただ、痴呆はそれほど強くなく、こちらの介助意図を十分に理解して協力してくれます。さぁ、この方を一人介助で車椅子に座ってもらいましょう。

 基本的には、『寝たままの状態で担ぎ上げるのではなく、形だけでも端座位姿勢から起立介助の形で移乗を行なう』ということになります。この大原則は、意識の無いような植物状態の方であっても同じです。

@まずは準備(写真1)

 一人介助ですから、例えば車椅子は初めからちょうど良い位置にセットしておかねばなりません。(一旦本人さんを起こしたら、車椅子なんていじっていられなくなります。)写真のベッドは電動昇降ベッドですので、あらかじめベッドと車椅子座面が同じような高さになるように調整しておきます。なぜならそちらの方が本人さんも介助者も「より、楽」だからです。Bで説明しますが、「立たせる」というよりは、「お尻を浮かせて横移動する」という感じなので、段差の無い方が楽なのです。それから、Aの「起座介助」をしやすくするため、あらかじめベッドの上半身の移乗する側をより空けておき、必要ならば「臥位移動介助」でベッドの端の方へ寄っておきます。

写真1

A端座位に起す

 さて、次に足をベッド横に垂らしながら上半身を起こします。「起座全介助」のページでは、一旦寝返りをさせるように書いていますが、寝たきり状態が強いとそれも手間ですし、介助者が慣れていれば上を向いて寝た姿勢のまま、くるりと端座位に起すことができます。もっとも写真のモデルの方も、介助を加えても体幹の固さから充分に体を起こせているわけではなく、絶えず後ろに転びそうになっています。ですから、もうこの介助者の手は外すことはできません。空いている方の腕で足の格好を調整しています。

写真2

Bお尻が浮くまで抱え上げ、横移動する

 介助者は写真2から上手に腕を離すことなく回して、ご本人さんを抱える態勢になります。その際、モデルの方のように腕だけでもしっかりしがみついてもらうと、それだけ楽に介助できます。写真では体幹全体を抱えるようにしていますが、その際、介助者の足は、片足(車椅子の置いてある側と反対側)を前に踏み出して本人さまの両足の間で床を踏むようにします。本人さまの体に寄せたこの足が本人さまの足の代わりに体重を支えると同時に、軸足となって車椅子へ横・回転移動します。ただ、この「体幹抱え」は強すぎるとプロレス技の「サバ折り」になってしまいますし、弱すぎると介助になりません。写真の方は体幹を伸展させても大丈夫ですが、体幹抱えで腰を伸ばさせると痛がるような方の場合には、「端座位からの持ち上げ」で紹介しているような方法(本人さんの体幹はある程度曲がったままでも構わない介助方法)でも良いでしょう。このあたりは、ご本人さんの体格・状態、介助者さんの体格・技能それぞれの兼ね合いで、まさに千差万別と言って良く、とても一つの方法だけで対応しきれるものではありません。ちなみにモデルの方の足は、写真では見えませんがほとんど浮いた状態になっています。

 あと、この段階で車椅子が側板とり外し式、もしくははねあげ式だと、お尻を高く持ち上げで側板を超える必要がなくなりますから、介助はずっと楽になると言えます。

Cお尻をとりあえず浅くとも車椅子座面に降ろす

 このような重度障害の方への移乗介助の場合、一発で車椅子に良い姿勢で座らせるのは無理です。写真のように、とりあえずはお尻が座面に乗っかり落ちない程度で構いませんから、とりあえず座ってもらいましょう。もちろん、極端なズッコケ座りになります。その姿勢を正すのは、移乗介助とは別に行ないます。

D車椅子上姿勢を直す

 で、改めて最後に車椅子上での姿勢を直すわけですね。ここは、車椅子上ズッコケ座りの直し方〜介助の場合で説明している通りです。ただし、このページの移乗介助動作の流れの中では、次の点に注意してください。それは、「姿勢を直す前に、可能ならば足はきちんとフットレスト=車椅子足板に乗せておく。」ということです。足が床も足板も踏まずに下腿がダラリと垂れ下がり、大腿部後面がベッタリ座面に密着した状態では姿勢が直しにくいのです。(難しい理屈は言わなくても、感覚的に分かりますよね?(^_^; )写真の方は、既に膝も曲がりにくく足関節も尖足となっていますが、それでもせめて、きちんとフットレストに足を乗せています。

 さて、いかがでしょうか?このページから既にアップしてある複数のページにリンクがしてある通り、実際の介助場面というのはこれまでの個々バラバラのページで説明しているような技術が単独で行なわれるのではなく、このページのように一連の流れとして行なわれることが普通だと思います。となると、例えばこのHPのページごとの技術を知っているということと、実際の介護場面で動作介助に熟達しているということは、全然別のこととなります。これまでのページで説明している介助技術も、唯一絶対というわけではなく様々な介助方法があると思いますし、ですから、慣れた方は見事に流れるように介助もできますし反対にきちんと技術を学んできたばかりのはずの若い方だとどうにもならなかったりもします。

 でも、だからといって個々の動作への介助方法の基本を知らなくても良い、という訳にはいきません。「より本人さまの能力を引き出しつつ介護負担もできるだけ少なく、同時に効率の良い介助」を実践していくためには、豊富な知識技術を持ち、同時にそれを現場で使いこなす力量が必要とされます。そういうより良い動作介助の実現のためにこのコーナーの各ページが、皆さまご自身が日頃行なっていらっしゃる介助方法についてちょっと見なおしてみるそんな「機会」になれば、と思います。

 これからもこのコーナーには、随時追加や新しいページの追加があるかもしれませんが、大枠としては↑の文章でもって一応の「締め」とさせていただきます。

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