老人介護についての個人的HP-1介護 How to -(23) 科学的な動作介助
う〜ん、こうしてまとめてみると様々な動作方法や介助方法について、普通にはあんまり書かれていないことや意識されていないことをそれなりにまとめてこれたかな?とは思うのですが…何というのかな?単なる「マニュアル」のようにも感じられてしまいます。
これまでの諸ページを「マニュアル」として捉えられてしまうことは本意ではありません。もちろん、ご覧の皆さんがこれまで知らなかった、あるいは意識してこなかった事柄について、「なるほど!」という気づきを提供できることは嬉しいことなのですが…本当は以上のページにまとめてある事以外にも、ご覧の皆さんが自らケースと場面に応じて応用を利かせていけること、そんなことが一番大切だと思います。
そのためには、私たちが何気なく行なう「動作介助」にもいちいち「根拠」が必要です。「科学的」と言っても良いかもしれません。「根拠」が明確だから「応用」も利くのだと思います。
このページにはその具体的な例をまとめてみましょう。
片麻痺者の移乗動作は「健側方向」へ?なぜ?
これは、介護を職業としている方々にとっては「常識」ですね。では、なぜ「健側方向」なのでしょうか?もちろんそちらの方が「移乗しやすく安全確実に動作できるから」です。では、なぜ「健側方向が患側方向に比べて移乗動作しやすい」のでしょうか?皆さんは明確に答えられますか?それ(根拠)が明確に答えられれば、派生する他の問題?「車椅子はベッドに対して何度くらいの角度でセットするか?」「どうしても患側方向に移乗しなければいけない時はどうするか?」などにも答えられるようになります。
では、私なりの「根拠」を説明してみましょう。いやなに、そんなに面倒なことじゃありません。以下の文字での説明では、少しゴチャとなるかもしれませんが、実際に身体を動かしてみれば素直に納得できます。(^_^;
写真1をご覧ください。作者が右片麻痺となってベッドから左側に置いてある車椅子に移乗しようとしています。(服が白衣から現場作業着'肩ポケットつき'になっていることに注目!役場のオヤジです。(^_^; )典型的な動作の形です。この動作では、一旦立ち上がったあと図1のように健側の足を一歩前に出しつつ身体の向きを変えて車椅子に座ります。その、健側下肢を踏み出す動作がポイントです。健側下肢踏み出しの際には、大抵写真1の左手の位置で車椅子をつかんでいます。図2でこの位置を確認すると、健側下肢踏み出しの時の「体重支持面積」が理解できます。つまり、踏み出す足は空中にありますから体重支持していません。悪い方の足で体重支持しています。悪い方の足で体重支持するのは怖いはずなのですが…良い方の手がしっかりと車椅子に体重を預けています。図2でみれば分かるとおり、健側の手の支持と患側の足の支持と、その間を健側の足が踏み出していくわけですね。

写真1

図1 図2
これが反対に、患側方向へ移乗しようとした場合はどうでしょう?一旦立ち上がって、患側の足を一歩前に踏み出しつつ身体の向きを変えることにします。写真2のように一旦立ち上がる時には車椅子の側板をつかめても、体の向きを変えるときにはつかまるところがなくなってしまいます。(車椅子をつかみ続けては、身体の向きを座る方向に変えられない)では!とばかりに、健側に移動用バーをつけてみましょう。(写真3)これで患側方向へも何とか移乗はしやすくなります。が、図3で見れば分かるとおり、図2に比べて健側の手と健側の足で体重を支持している面積はずっと狭くなっています。加えてその体重支持面積の外で患側の足が動こうとしています。それでまだ不安定というかやりにくいのですね。

写真2 写真3

図3
これはつまり、「杖を良い方の側に持つ」ということと一緒です。片麻痺の場合でも片足のケガの場合でも、杖や松葉杖(1本の場合)は良い方の側に持ちます。悪い足と良い方の側の杖で立って、その間を良い方の足が出るのが楽なのですね。健側方向に移乗する時に楽なのは、これと同じことと言えます。ですから、手でつかまって体重を預ける場所がまったくないと、健側方向でも移乗しにくくなります。ベッド脇の健側側に、全然つかまるところのない丸いすをポンと置いてあることを想像すれば分かります。
では、やむを得ず患側に移乗しなければいけない時はどうしたら良いのでしょう?まずは移動用バーでなくても良いので、どうしても健側方向につかまる場所はなくてはいけません。写真では普通のベッドさくとしましょうか?そして思い切り腰を浅く腰かけた位置から患側足を思い切り前に出したままどうにか起立します。そこから健側上肢と健側下肢で体重を支持しながら患側の足を踏み出すのは難しいのですから、健側の足を後ろに引いてみたら如何でしょう?そうすれば身体は患側の車椅子に向かって腰かける方向に向きが変りますね。(図4)これが絶対にやりやすいということではなくて、「根拠」からこんなふうに「応用が利く」ということの一例です。

図4
もう一つの問題?「移乗する時に車椅子はベッドに平行に置くのが良いのでしょうか?あるいは何度くらいの角度で置けばよいのでしょうか?」ここまでの説明で答えは分かりますよね?答えは、『平行!』とか『○×度!』とか『29.623度!(^_^; 』とかではなくて、『その人にとって○×しやすいように置く』という形の答えになります。
ところがね、国家試験や中途半端な専門性?では、『29.623度!』的な答えがもてはやされたりするんですね…。
さて、「健側上肢つかみによる体重支持で健側足移動しやすいから」とは、もう一つ別の理由でもって「患側へよりも健側への方が座りやすい」理由があります。まぁそれも健側上肢からみですが…移乗に伴う足の動きとは別の体の動きに、健側上肢が役立っています。それは何でしょう?(^_^;