老人介護についての個人的HP-1介護 How to - (4)寝返り〜横移動
さて、このあたりからが「能動的な動き」となってきますし、自分でできない方には「介助」が必要になってきます。
単純な寝返りであっても、それに努力を要する方にとっては、「寝返りをしてから○○をする。」とか「寝返りしてから次に起きあがる。」というような、寝返りをする目的というものがなければ、なかなか能動的には行なわれないもののようです。とにもかくにも、まずは「寝返りしやすい」環境・条件について考えてみます。
身体機能の低下があって寝返りにも努力を要するような方の場合、腕の力も利用することが一般的です。腕を伸ばしてものにつかまり、引っ張るわけです。腕の引きが寝返りのために必要ならば、しっかりつかまる場所を準備しましょう。医療介護用ベッドの場合にはベッドさくを頭の方に付けてあげれば良いのですが、さくのつかない家具ベッドや畳の上の布団の場合はつかまる場所がなくて、敷き布団の端をめくり上げながら引っ張る姿を見かけることがあります。家具ベッドの場合には、ちょうどよい位置でベッドフレームに「縦棒を一本」とりつけてつかまれるようにしたり、「差しこみ式の家具ベッド用手すり」(写真1:家具店で3千円くらい)を準備したり、「力ひも」を横から伸ばしてあげてください。布団の場合も同様です。

写真1 差しこみ式手すり。薄い板に取りつけ板ごと敷きこむと固定が良い。
寝返る方向ですが、片麻痺者の場合は腕や足の麻痺している患側側へ寝返る方が楽です。しかし、患側を下にしてしまうと、次の起座動作につなげることができずにそこで動作が終わってしまいます。起きあがるための前の動作の寝返りならば、ぜひ健側側へ寝返ることを覚えてもらわなければなりません。ところが、ベッド上で動く手を患側に伸ばすことに比べて動く手をそのままベッドの健側の方へ伸ばすと、ベッドの端がすぐ近くになり腕が縮みこんでしまいます。腕が縮みこんでしまうためにつかまっても引くことができず、健側に寝返りできないということが起こり得ます。となると、次の臥位移動を行なうか、「広いベッド」に変えるしかありません。実際にベッド幅が不足しているために健側への寝返りができない、という方も見かけます。
どうしても自力で起きあがって座ることはできないという方の場合には、寝返りしやすい患側方向への寝返りだけでもぜひ行なえるようにした方が良いです。反対に、多少の介助を要してでも起座動作につなげたいのならば健側方向への寝返りもできる限り行ないやすいように環境を整えることが必要です。(具体的にはベッド全体を広げてつかまる場所を用意できれば一番良いし、写真2のように部分的に広げても構いません。)

写真2 部分的に広げたベッド、寝返り・起座とも容易になります。
あと、もしも足が片方でも自力で動くのならば、膝を立ててから寝返りすること。立てた膝を横に倒す感じで寝返りが少しでも容易になります。
次は介助方法について。現在でも「介護本」や「介護教室」で、『寝ている人の肩と腰を持って、引き寄せるように(丸太を転がすように)寝返りさせる』という説明を見聞きすることがあります。あれはなんなんでしょう?(^_^; あれは例えば脳卒中発作直後で、できる限りの安静が必要な人に対する「寝返り介助法」です。基本的には生活場面の中で行なう介助法ではありません。
介助といっても様々な「介助レベル」があります。一番軽いのが「見守り〜声かけ誘導」ですね。自力でできそうな方には環境を整えた上で、上記の方法を「誘導」してあげてください。手でものにつかまるまで腕を誘導してあげてもかまいません。また、片足でも立ててあげること、あるいは本人さんが寝返ろうとしている瞬間に立てた足を横に押してあげること。それだけでずっと寝返りは容易になります。
意識もないような方への寝返り全介助についても、できるならば自立〜半介助で少しでも自立性を高めるための条件を満たすべきでしょう。具体的には少しでも膝が立てられるのなら、その上で寝返りさせること、などです。寝返りして側臥位になった時点で、下肢が屈曲していないと側臥位が安定しませんから、自力であっても全介助であっても膝を立てる〜曲げるというのは必要なことと言ってよいと思います。
体幹も下肢も、完全に拘縮してしまっているような方への寝返り介助は、下に敷いたバスタオルごと引っ張りあげて寝返りさせるのが一番楽なようです。
たとえ起座できない方でも、寝返りだけでも頻回に行なってくれていれば褥瘡の心配はずっと減ります。しかし、具体的な寝返りをする目的がなければなかなか行なえないものである、というのは当初に書いた通りです。そこで、寝返りをする目的を設定できれば一番よいということになります。「安静臥床」のコーナーで紹介したように、頭の回りだけでもミニ箒ではいてもらう、というのでも良いですし、テレビラジオ、雑誌や水のみなどを寝たままであっても操作しやすいように、ベッドの両脇にセットしたり、色々な工夫ができると思います。そして、そんなふうに寝返り動作だけでも能動的に行なえれば、上下肢とも曲がったままカチカチに拘縮してしまうことは避けられるはずです。
意識もないような重度な方の場合、全介助で寝返り介助〜体位交換を熱心に行なっても、どうしても褥瘡発生や拘縮の発生は防ぎきれないかもしれません。そんな方にこそ、実は車椅子座位の時間をとることを勧めます。褥瘡予防や拘縮予防には何よりの手段になりますし、沈下性肺炎や尿路感染の予防にもなります。ただ、介助は大変になりますし、そのための技術はこれから先のページで説明していきたいと思います。