老人介護についての個人的HP-1介護 How to - (6) 起座2

起きあがり動作について2〜長座位への起座

 次は長座位への起座です。長座位というのは「足を投げ出して座った姿勢」をいい、つまり畳の上などでの座った姿勢、ということになります。

長座位の困難性と利点

 一般的に言って、長座位姿勢をとることは端座位(椅子に腰かけた姿勢)をとることよりも困難なことが多いです。なぜかというと、膝を曲げて下腿を下垂させないため大腿部の後側の筋肉(ハムストリングス)が緩まずに、身体を後方に引き倒そうとするからです。(図1)健常な若い方でも足を伸ばしたままで体を前屈させると足の後ろが突っ張りますよね?身体機能の低下してきている高齢者の場合、寝ている姿勢から少しでも上半身を起こそうとすると、「すぐに足の後ろが突っ張ってくる」方がいらっしゃる、ということです。そして、そういう方でも膝を曲げて下腿を下垂させれば突っ張りが緩むことも、図から理解できるでしょう。ですから、まずは介助ででも長座位になっていただいて、その姿勢が保持できるかどうか?それを確かめる必要があります。一昔前は、「日本は和式の生活だから寝たきりが多い」と言われたものです。それはつまり、「端座位への起座に比べて、長座位への起座が困難である」ということを言っているのと同じことです。

図1 健常者の体幹前屈と虚弱者の長座位起座の、足の後ろの突っ張り

 しかし、そういう不利な条件があったとしても、長座位のために必要な身体の柔軟性があって一旦長座位に起きられれば、座位の保持自体は端座位よりも安定の良いものです。なぜなら足を伸ばすことで、端座位の場合よりも「体重支持面積」がずっと広がるからです。

 また、端座位からは起立歩行に移行しやすいですが、しょせん立てない歩けない、という方にとっては、布団の上での長座位からそのままいざったり、四つ這いになって移動したりと、和式生活に特有の移動方法の「出発点」ともなる姿勢です。さらにベッドを使っている方でも、「ベッド上で自力で長座位になれる」というのは、ADL上とても有利なことです。ベッドから車椅子への移乗には介助を要する方でも自力で座位にさえなれれば、その姿勢で新聞をよんだり日記を書いたり、という軽作業が行なえます。

長座位への自力起座

 下腿を下垂させるかさせないかかの違いですから長座位への起座の場合も、端座位への起座の場合と極端に大きな違いはありません。若い人の「腹筋運動」ようにまっすぐ起きあがるのではなくて、必ず横へ側臥位になり一旦「肘立て位」になってから、長座位へ起きあがります。(写真1)従って、頭の動き方を上から見ると、力に余裕のないほどに図2のように大きく横に曲線を動くことになります。

写真1 長座位への動作の流れ

図2 長座位起座時の頭の動き。余裕がないほど横へ動く。

こうしてみると、長座位への起座動作のポイントも、臥位→肘立て位までと、肘立て位→長座位までの2つの動作に分けて考えることが必要です。

@臥位→肘立て位

 まずはしっかり寝返りをして側臥位になること。そして写真1ののように、手を上向きにしてつかめるものがあると肘立て位になりやすいです。よく、布団の端をつかもうとされますが、それでは手が下向きになってしまいまい、効率はよくありません。この辺は、端座位のコーナーで説明したことと変わりありません。

A肘立て位→長座位

 ここも端座位への起座で説明したとおり、しっかり床を押しながら起座します。とにかく図2のように十二分に頭を大きく横に動かすこと、それが安定して起座するコツです。

長座位への起座介助

@部分介助:これも端座位への起座と同様で、上記動作のポイントを部分的に手伝う方法です。例えば写真1のの位置で、伸ばした腕をしっかり押さえていてあげることや、肘立て位から長座位へ起きる際に、わずかに肩から首の後ろを持って起座動作を介助するなど、です。

A全介助:長座位への全介助の場合、あくまで上記の「当たり前の身体の動き方」を介助する方法と、それは無視して一度に引き起こす方法とがあります。当たり前の動き方を全介助で再現する場合は、本人さんの苦痛も少なく介助者の力もそれほど必要ではありませんが、効率が落ちます。一度にまっすぐ引き起こす介助は、短時間で済みますが時に本人さんの苦痛を伴います。それでも望ましい「一度に全介助」の方法として、写真2のような形がよいでしょう。介助者の体重を下に落ちる力を利用しながら引き起こすので、コツさえつかめば腕の力は意外といらないものです。それに対して、写真3のような「手引き引き起こし介助」は避けたいものです。時間がかかって本人さんが腰の痛みや肩の痛みを感じてしまったり、写真のように首が後ろに残ってしまうことが珍しくありません。また、写真4のように後ろから押しながら起座させる様子を拝見することもありますが、その場合にはくれぐれも、頭「だけ」を押すことのないようにしたいものです。首の骨がグキッ!といってしまいそうです。(^_^;

 写真2 長座位への起座、一度に全介助

 

写真3 避けたい手引き引き起こし  写真4 首をグキッといわせぬように   

コーナートップへ ◆HPトップへ ▲総目次へ