老人介護についての個人的HP- 可能動作レベル別(5)-2

〜具体的な「介護生活」のイメージの仕方〜

てないが起きあがれる・・という方(後半)


E入浴

 既に自力で立つことさえできないのですから自宅で入浴するには色々と工夫しなくてはいけません。でも反対に、座っていることができるのなら自宅で入浴することは決して不可能なことではありません。

 基本的には、まずは浴室まで、さらに浴槽までの「移動」が問題となります。この点については「立つのがやっと・・という方」の入浴の場合と同じであって、さらに介助のための場所が広く必要になります。浴槽内への移乗台、浴槽の深さもできる限り望ましい状態として、さらに浴槽出入りの介助の際には介助者が浴槽内まで入ってしまい、移乗台に腰かけたご本人さんの正面から介助するようにした方が良いでしょう。移乗台はできれば浴槽の短辺を覆う形(→ 入浴移乗台の形状ページのD案)で、浴槽の深さは確実にお尻が縁に足が底に同時につく深さとすべきです。(→ 家庭浴槽について)以上の条件を整えた上でお湯を一杯にして浮力を使えば、たとえ自力では立てない方でも割合に軽い介助で浴槽の出入りはできるものです。

 座っていることはできるのですから、移乗台に座ったままで片手で身体を支えてもらいながらでも介助者一人で洗体はできると思います。ところが立つことができないのですから、「お尻」を洗うことができません。お尻を洗うためには立ってもらうのに介助する人と洗う人、二人の介助者が必要になります。

 以上のようにまで行なうには、広い脱衣室や浴室・適切な機器の設置・ある程度の介護力などが必要であって、全ての方の場合に実現できるとは限らないでしょう。例えば浴槽内に浸かることは諦めても、熱い夏場には浴室にシャワーチャでシャワーやかけ湯で汗を流す、それだけを実現できるだけでも大変に良いことです。その場合には寝室や居間から脱衣室・浴室までの移動方法と、脱衣室・浴室間の移動・シャワーチェアへの乗り換え方法さえ確立すれば実現できます。 


F食事

 既に立てず、大抵の場合ベッドから離れるのにも介助が必要なわけですから、生活状況によっては食事もベッドの上、ということになりかねません。しかし、可能ならばより望ましい介護の原則に則り「寝食分離」を実現していきたいものです。(→ 寝食分離を図りましょう)その際には、ぜひとも屋内用車椅子の活用が必要となるでしょう。端座位横移動が可能ならば、車椅子の側板が跳ね上げ式であれば、自力で車椅子〜ベッドの間の移乗が自力でできる可能性があります。(→ 端座位横移動について)それもできない場合はどうしても移乗動作介助が必要になりますが、その際にもベッドの規格や立つための手すりなど、できる限り立つための本人さまの力が発揮されやすいように環境を整えた方が、介助者も楽ですしご本人さまの能力も維持されます。(→ ベッドについて、→ ベッドにとりつける起立用のバー)そして車椅子で食事を摂る場合は、車椅子とテーブルの適合やテーブル自体の高さに気をつけてあげてください。(→ 食事テーブルの高さと車椅子使用時の工夫

 このようなきちんと離床しての食事が日に3度とも実現できればそれが一番良いわけですが、それが無理なら昼夜の2度、最低でもご家族が揃う夕食の時だけでも実現できないでしょうか?たった日に一度だけでも、ベッドを離れご家族とともに食事を摂ることの身体面・精神面に与える好影響は、はかり知れません。

 もしも何らかの事情でどうしてもベッド上での食事となる場合には、せめてベッドの上半分を起こした「ギャッヂアップ」ではなく、ベッドから横に足を垂らした「端座位姿勢」で摂りたいものです。ギャッヂアップ姿勢は決して食べやすい姿勢ではなく、また弊害も大きいものと思えるからです。(→ ギャッヂアップベッドの多用はちょっと待った?!)ベッドの高さを腰かけるのにちょうどよい高さとし、そこにちょうど良い高さのテーブルを準備しましょう。


G日中安静

 このレベルですと、生活空間が一気にベッド上に限定されてしまい自宅・自室・ベッド上に「閉じこもり」となってしまう可能性があります。特に最近は福祉施策のそれなりの充実により、家庭内でも電動ギャッヂアップベッドが導入される場面を多く見かけるようになってきました。電動で上半身が起きるわけですから、日中の安静姿勢としても楽に多用してしまいがちかと思いますが、できる限りそれは避けたいものです。ギャッヂアップの多用は、下肢の屈曲拘縮を誘発するなど望ましくない点も多いからです。(→ ギャッヂアップベッドの多用はちょっと待った?!)食事の項でも触れた「ベッドから車椅子への移乗方法」を何とか介助力に余裕のある範囲で確立し、まずは食事の時間から、そらにより多くの時間をベッドから離れて身体を起こして過ごす時間を持ちたいものです。身体機能がより制限されていますから、車椅子のサイズや規格は、より慎重にご本人さまに適合したものである方が望ましいことは言うまでもありません。また、座面クッション活用の必要性も高くなるでしょう。(→ 車椅子クッションについて

 でも、自宅内だけで車椅子で起きていてもツマラナイですね。次項の「外出手段」を検討して「屋外お散歩」なども習慣化できればそれも良いことですが、それでも(ご本人さまにとって)時間は沢山あります。可能ならばディケアやディサービスを利用し、「閉じこもり」は避けたいものです。


H外出手段

 この項目は、「立つのがやっと・・という方」の外出手段と大体同じです。屋内にいるうちに屋外用の車椅子に乗り換えてしまわなければいけないことが多いでしょう。屋外用の車椅子であまり家の中まで進むのは汚れの点でできるだけ避けたいですから、玄関前の廊下や玄関土間で乗り換え介助できれば良いですね。それにしても、ベッドから車椅子への移乗にも車椅子の乗り換えにもそれなりの介助が必要でしょうから、それなりの広さが必要になります。介護者さんによほど余裕があれば、玄関の車椅子まで抱きかかえていく、という手段もありますが実行可能な方は少ないでしょう。

 こう考えてくると、既に車椅子であってでも屋外に出ることはなかなかに大変なことです。大変ではありますが、反対に何らかの理由でどうしても屋外に出なければいけない、ということもあり得ます。(急病時の外来受診や、あってはならないことですが火事地震などの災害時など)そんな時に手間取ってしまわぬよう、日頃から外出方法を検討し、できれば実践していることは大変に大切なことです。


I外出機会

 このレベルでは意識して家庭内のADL方法について考え実行していかないと、「立てない」ということが一気に「ベッドから離れない」ということに直結してしまいがちです。そうであればあるほど、むしろ社会的な生活はきちんと保証し、他者と交わる機会をできるだけ持ちたいものです。積極的にディケアやディサービス、市町村の保健事業(リハビリの集いなど)に参加できたら良いですね。また、出かけていくことが何らかの理由で難しい、ということならば、→ 閉じこもりを防いで他者との交流をもちましょう、にも書いた通り、ホームヘルパーさんや保健婦さんなどに訪問してもらうことも大変に良いことです。訪問してもらって何らかの具体的な援助を受けることもさることながら、他者が家庭の中に入ってくること「お客さんが来ること」、その社会的精神的な好影響も大きなものです。

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