@生活目標
目的:既に重度な介助が必要な状態ですが、可能ならば四肢拘縮や褥創の発生を防ぐと同時に介護者さんの負担が大きくなりすぎないように、長く続けられるようにしましょう。
手段:寝たきりであることを前提とした様々な介護技術を身につけ実践していくと当時に、時には車椅子離床を心がけましょう。
既に完全な寝たきり状態であっても、きちんとしたケアが行なわれていれば決して生命予後に影響するものではありません。寝たきり状態のままで10年以上長生きされることも珍しいことではありません。
座ってもいられない完全な寝たきり者さんにとっての「良いケア」とはなにか?それは、@介護負担が小さくて長く続けられる介護であり、そういう技術であること。A細かい観察力で身体状況の変化・悪化を初期のうちに気づくことができて対応すること。の、2点が基本と考えられます。
このうち@の「寝たきりを前提とした介護技術」については、実は私自身そんなに詳しくありません。寝たままでの着替えやシーツ交換、寝たままでの洗髪や清拭など、それらは重要でないということではなくて、既に様々な形で多く紹介されていますし、私の理学療法士という資格の性質にもよります。そして、この本はむしろそういう状態になる前の段階に焦点をあてているつもりですので、寝たきり者さんに対するより詳しい介護方法については他の成書を参考になさってください。それでも以下に、これまでの形式にそってまとめてみます。
A生活様式全般
基本的には機能的な介護しやすいベッド上での暮らしとなります。ベッドからの離床が大変で、どうしてもベッド上で過ごす時間が長くなる場合、居室については他のご家族の居間に近い部屋ということや、日当たり換気が良いということなど、社会面や物理的な面それぞれに、最大限に部屋の場所を考慮しましょう。(→ 在宅生活における高齢者の寝室・居室の満たすべき要件)ご家族からも遠く、薄暗い中で「座敷牢」のようには決してしたくないものです。
B家屋内移動
例え寝たきりであっても、多くの方は座らせてあげれば車椅子上で背もたれにもたれながらでも座っていられるものです。介助で絶えず身体を支えながらでも、ベッド横に足を垂らしながら身体を起こしていられる方は、まず車椅子で座れるはずです。もちろんきちんとした座位はとれないかもしれませんが、必要に応じて延長バックレスト(→ 車椅子延長バックレスト)やリクライニング式車椅子(→ 車椅子の種類と適応〜リクライニング式)、安全ベルト(→ 車椅子抑制・安全帯(及びその他の工夫)について)を使って、安全に移動する手段を確立しましょう。基本的な車椅子の規格は介護型(→ 車椅子の種類と適応〜介護型)として、そこに上記のようなオプション部品を付け足すわけです。
C寝具
ベッドは、ご本人さまが能動的に動きやすいと同時に、介護のしやすさを考えなければいけません。むしろこのレベルでは、介護のしやすさの方がより優先されるべきかもしれません。高さはやや高め、幅は狭めの方が介護しやすいですね。電動のギャッヂアップベッドは、短時間上手に使うのならば決して否定はできませんが、長時間そのままではむしろ弊害が大きいことは、既に指摘してきた通りです。(→ ギャッヂアップベッドの多用はちょっと待った?!)介護しやすいからと車椅子に移乗させにくいほどベッドを高くしてしまって、その結果、ギャッヂアップを多用してしまうのは、やはり本末転倒ではないでしょうか?よほど介護力に余裕がなければ仕方ありませんが、例え全介助ででも車椅子に移乗介助もできる、そんなベッドの規格にしておきたいものです。
D排泄
このレベルでは、既にベッド上に寝たままであっても例えば差込み便器を自力で使うなどの「自立」は難しいし、汚れたオムツを寝たまま自分で取りかえるのも難しいことが多いでしょう。
そうなると完全にオムツへの排泄となるわけですが、それでも可能ならば、できるだけ汚れたらすぐに交換する「随時交換」でいたいものです。その「汚れたよ!でたよ!」というサインをご本人さまが出してくれること、それだけでも確かに本人さまの能力が発揮されている場面です。既にできることが極めて限られているだけ、なおのことそういう場面を大切にしたいですね。そして「すぐに教えてくれてありがとうね」といささかわざとらしいですが、そんなふうにご本人さまに話しかけることもできますね。
具体的なオムツの種類やあて方などは、私は取りたててご提案するようなものを持っていません。色々と種類が増えましたし、あて方使い方も人それぞれであっても良いと思います。