老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(11) 入浴移乗台の形状
このページは機器(2)「入りやすい家庭浴槽」の続きです。かなり細かいところにこだわる内容となりますが、以前から考えていたことでもあり施設・在宅それぞれの場面で役立つことと思えるので、ここで私の中のモヤモヤを整理してしまいます。
まずは「入りやすい家庭浴槽」の簡単な復習を〜※四角い小さ目の和式浴槽が半埋め込みになっていて、それを出入りしやすいように少し底上げして、浴槽縁と同じ高さの「移乗台」に腰かけながら足を出し入れする。〜というのが、基本です。この中で下線の部分、浴槽と移乗台はどのような位置関係にどのような形で置けば良いのでしょうか?それをこのページでまとめてみます。
図1をご覧ください。お風呂と移乗台を上から見た模式図です。まずは基本になると思われるAからDまで、4パターンをあげてみました。まずはこの4パターンに説明を加えます。ポイントは「身体の回転動作」です。
図1 お風呂と移乗台の基本パターン
Aは、基本の中の基本パターンとしておきましょうか?この場合、図中のアの部分にお尻をつき、その場でかるく身体を回転させながら足を浴槽内に入れることになります。足が浴槽に入ってしまえば、あとは端座位横移動でイのところまでずって、そのままの向きでお風呂に入れます。この場合で問題が生じるとしたら、アの部分に腰をかけた際に図の右側の部分に手をつける場所がない、そのことが怖く感じられることがあるということです。
さて、このAの形状は、現在ある業者さんから「特許出願中」だそうで「取り扱い注意」というお手紙をいただきました。皆さん、取り扱いに注意しましょう。(H11,5,22)
Bは、在宅者のお風呂でどうしても場所が取れない時に採用することがある方法です。(一番場所がいりません)お風呂の一部分に板を渡してふたをしているような形です。この形ですとウのところでお尻をついてから、入浴のための身体の回転を大変に大きく行なわなければいけません。手をつく場所もAに比べても少なくなります。また、湯の中に沈む際に、移乗台の板で背中をガリガリしてしまうことがあるので、実際には浴槽の底に足が届いてお尻が板から浮いてから、サッと板を外してしまう、ということも行なわれます。
Cは、Bと同じくあまり場所をとりませんから、同じく在宅場面で採用することが多いです。(機器(2)で、在宅者の具体例として載せている写真もこのパターンです)ただしこの場合は、浴槽の中に斜めに入っていく形となりますから、一旦浴槽の中に足を入れて立ちあがってから身体を回転させる必要が生じてきます。上がる時も同じですね、一旦立ちあがってから身体を捻って移乗台にお尻を乗せなければいけません。入る時はともかく、上がる際のこの捻りの動作が難しくなる場合があります。
Dは、一番場所を広くとってしまいますが、結論的に言って私が一番望ましいと考えているパターンです。ある程度の台の長さがあれば、エのところでザバザバ洗身作業が行なえます。オのところでかるく身体を回転させながら足を浴槽に入れる際にも、左右に広く手をつける場所があります。介助で入浴してもらう場合にも、台が左右に広いので怖くありません。ただ、在宅者の場合はこのパターンをとれることは大変に少ないです。
施設の場合であればDを、在宅者の場合でDが無理であればAか、Cの形でなるべく移乗台を横に長くとるのが次善では?と思えます。もちろん、身体機能によってはBで問題ない方もいらっしゃるでしょう。Bであっても立ったままで、またいで出入りするよりずっと安全です。
以上のような検討を踏まえ、私がもっとも望ましいと考えるパターンが図2です。
図2 これでいいんじゃないかな?
黒い部分は壁、緑の棒は手すりで浴槽縁=移乗台座面から5cm程度浮かして作りつけます。カランと排水口は邪魔にならないよう、奥に設置します。もちろん、浴槽は大きすぎずにアのところに腰かけて少し身体をひねれば、手すりに手が届く程度にします。移乗台の背中の方は、簡便であってもベンチのように背もたれがあれば安心ですね。サイズは、移乗台の座面の奥行きが45cm、浴槽から外にはみ出す部分が60cmという位かな?手すりは浴槽の真中あたりで垂直に伸ばしてL字にしても良いですね。
ただしこれでは片麻痺者が浴槽に出入りする際、入る時と出る時のどちらかが「患側方向への移動」となってしまいますね。せっかく手すりが壁についていますから、「入る時に健側から」にしましょうか?そうすると出る時は患側へということになります。ですから最後まで手すりにつかまっていられるように浴槽幅は大きすぎない方が良いのですし、移乗台が浴槽縁の向こうまで伸びていた方が、患側方向に移動する時も怖くありません。(だから図2は右片麻痺用ということになります)
病院に家庭浴槽を作ってもらった際はこの「片麻痺者」の左右別にこだわって、写真1のように浴槽を挟む形で移乗台を2本つけてもらいました。ところが移乗台の間隔が狭くなりすぎないように浴槽縦内寸で120cmを採用したものですから、結局浴槽内に箱を沈めて足が届きつけるようにしなくてはいけなくなりました。欲張りすぎてはいけませんね。図2のパターンで左右用に作れば理想です、例えば図3のように。
写真1 当院の個人浴槽
図3
左右どちらのマヒでも入りやすい
図3では、お互い向かい合いになって恥ずかしい、ということであれば(手すりがつけられないなど)多少使い勝手は落ちますが図4のような形も考えられます。アは浴槽縁に挟んでとりつける手すり、イがカランです。実際には浴槽の間隔は、もう少し広いほうが良いでしょう。
図4
でも図4のように浴槽を縦に並べるのであれば、浴槽の短辺が壁になりますからそこに手すりをつけるとすると、図5のようになります。これは基本パターンのCに近く浴槽内で身体の向きを変えなくてはいけませんが、手すりが伸びる分、Cそのものよりもずっと使いやすくなると思います。(でも、片麻痺者は図2の方がいいと思うなァ。もっとも図5では、浴槽が多数並んでいれば一つの浴槽をはさんであちら側へあがることもできますね。)
図5
さぁ、皆さんには図3・4・5のうち、どれがベストと思えるでしょうか?これ以上はこんがらがってくるのであえて答えは出しません。(^_^; それに、もっと良い形もあるかもしれませんね。
こんなふうにまとめてみても、私自身はこれから先にこれらの形を具現化するチャンスがいつやってくるか、見当もつきません。(老健を作る時には、残念ながら却下されてしまいました。)しかし先進的な施設では、このような「多数の個人浴槽」というのは随分と実現してきています。
それにしても我ながらオタクっぽい内容でしたが、全部図にしてしまってすっきりしました。(^_^;