老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(13) 車椅子の種類と適応
車椅子はそれが必要な方々にとっては、まさに「健常者にとっての靴」と同じ機能を果たしてくれる道具です。靴には様々な目的とタイプがあるように、車椅子にも様々な目的とタイプがあります。それら車椅子の種類と適応についてこのページでまとめてみます。一般的な分類の他、介護していく場面や必要性に応じた紹介を心がけ、またカタログに見える「最新型」のご紹介などもしたいと思います。ただし、ここでは「マラソン・スキー・バスケット」用の車椅子など、スポーツタイプの特化したものや、壮年の脊髄損傷者が使うような車椅子については触れません。それでも必要な説明を行なうと凄まじく長文になりますので、最初に典型例として車椅子のタイプを例示します。そのタイプの具体的な意味を、下記より読み取ってください。
ケース1:施設内だけで使い、両手で車椅子をこげる場合
鉄製のスタンダード型でもよい。ただし、車輪や座面サイズは体格にあわせて大きすぎないように。
ケース2:屋外を押してもらいながらの散歩用
アルミ製の介護型車椅子がよい。長期間の使用でも錆びず、また小さいので玄関先などに置いておいても邪魔にならない。介助者用ブレーキをつけるのも良い。
ケース3:狭い屋内で自力駆動して使う場合
介護型の車椅子でフットレストが取り外し型のもの。これを足で床を蹴って移動すれば、狭い家屋内でも座位保持用・移動用ともに目的を達することができる。最近は「介護型の大きさで自力駆動可能」というヒット商品もある。
ケース4:車椅子を自家用車に積んで持ち運ぶ必要があったり、車椅子を施設・家庭間を往復させ使う場合
アルミ製で軽くし、同時に「背折れ背もたれ」に「フットレスト取り外し式」として、小さく収納できるようにするのが良い。
分類1:一般的な分類(全体の形による分類)と適応------------------------------------
1-1,スタンダード型
まずは車椅子といえば、このタイプの形が思い浮かびます。安価に大量生産されているようです。ただし安価に手に入る物は、大車輪径が24インチもあって大抵の場合高齢者には大きすぎ、全体も重く自家用車に積むことも困難です。従って、スタンダードなタイプで安価な鉄製のものは、施設共用備品として使うのがせいぜいだと思います。個人用として準備する場合は、車輪の大きさを必要最小限の大きさにとどめた方が何かと使い勝手が良くなるものです。

写真1
例えスタンダード型でも、以下に述べるような材質やオプション機能を持たせたものは例えば個人の外出用などとしてふさわしいものとなります。ただし、一般的な家屋ではスタンダード型車椅子が自由に操作できるという環境は、大変に恵まれた環境であると言えるでしょう。一般的な家屋内で車椅子を自走で使いたいという場合は、以下に述べるような工夫が必要となります。
1-2,トラベラー型(前方大車輪型)
大車輪が前方、小さなキャスターが後方についています。一般的にはほとんど見かけません。あえてこれを使う理由もありませんが、唯一適応となるのが慢性関節リウマチの進んだ方で、肩関節が大きくは動かせないという方です。車椅子をこぐのに肩を大きく後ろまで引く必要は無く、膝もとでちょこちょことこげます。それ以外の適応はちょっと思い浮かびません。
車輪が14インチから16インチ程度のもので、自力ではこげないタイプのものを介護型といいます。もっともこげないといっても、足が床まで届けば足で床を蹴って動くことはできます。長距離を移動するような駆動方法ではありませんが、家屋内でスタンダード型車椅子が大きすぎるという場合に介護型を足蹴りで移動するというのは、有力な選択枝の一つです。

写真2
背もたれが後ろに倒れる車椅子です。また、フットレストも上げることができます。つまり、必要に応じてストレッチャーのような形にすることができます。そしてその時のために、背もたれも頭の上まで来るように延長背もたれとなっています。非常に重度な障害をお持ちの方用ということになります。

写真3
この車椅子は、背もたれを倒した時に車椅子全体が後ろにひっくり返らないように車輪の軸を後ろに下げてあります。従って、スタンダード型に比べても小回りが効かず介助操作もしにくいものです。ですから、施設内ケアの場面ではともかく、家庭内介護の場面で「移動用」としてこの車椅子が使われることは少ないと思います。
1-6,その他
これは特定のメーカーから発売されている車椅子で、レバー操作で前後左右どちらへも移動することができます。片麻痺者でどうしても「片手片足駆動」できない方が施設内で自力移動する歳に使われます。ただ、これも一般的な高齢者には大きすぎることが多くてしかも決まった大きさしかありませんから、一般家屋内で使うのは難しいと思います。

写真4
*介護自走型
これはまさに「在宅用」です。これも特定のメーカー製ですが、全体は「介護型」の大きさでありながら膝あたりの小さな輪が車輪とゴムベルトでつながっていて、膝もとで小さな輪をこぐと好きなように駆動できます。車輪が小さいことや力の伝達の関係で、長距離を早く移動するというのには向きませんが、家屋内の部屋を移動するにはちょうど良いと思います。

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*簡易型
介護型よりももっと簡便な車輪で、ほとんど「シャワーチェア」との区別がつかないような製品もあります。ある程度の時間、座って過ごすにはいかにも苦しくなってしまいそうですが、本当に環境が狭い状態で本人様の意欲もある時は、こういうタイプに座ってもらって足で蹴って動いてもらうこともあります。

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分類2:フットレストの種類と適応------------------------------------
さて、次は「足を乗せる部分」の分類です。単に種類を述べるのではなくて、介護上の意義についても触れていきます。
2-1,一般型
金属やプラスチックの板が撥ね上がるだけのタイプです。車椅子を施設内だけで、しかも両手こぎで使うのであれば、これでも構いません。
2-2,取り外し〜スィング型
フットレスト全体が取り外せたり横を向いたりします。車椅子だけを自家用車に乗せるようなことがあるのならば、このように取り外せた方が車に乗せやすくて便利です。また床を足で蹴って動く場合には、フットレスト全体を取り外してしまった方が自由に動けます。

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2-3,布ハリ型
足関節が変形して、まともに足の裏で板を踏めないような場合は布を張ってそこに足部を載せるようにすることもあります。
分類3:タイヤの種類と適応------------------------------------
3-1,空気入りタイヤ
あまりに当たり前の、自転車と同じ空気入りタイヤです。あらゆる場面でこれで問題ありませんが、メンテナンスが悪くて空気が少なくなると、廊下を進む時に「ギュギュ〜」という音をたてたり、介助にしても自走にしても進むのに重く感じたりするようになります。こまめな空気入れ作業や空気入れ口の虫ゴムの管理など、意外とメンテナンスが大変です。(普通の自転車と同じことですが)
3-2,ソリッド型
空気入りタイヤではなくて、固い細いゴムでタイヤができています。屋外ではガタガタ乗り心地が悪く実用になりませんが、家屋内だけを進む場合には特に問題ありません。メンテナンスの必要もありませんし、あえて選択することもあります。
3-3,硬質スポンジ充填型
特定のメーカーから発売されているもので、「空気入りタイヤ」の空気の代わりに「硬質スポンジ」が詰まっています。ソリッド型ほどガタガタせず適当なクッション性もあり、同時にメンテナンスの必要もありませんから大変に優れています。一般の車椅子のタイヤだけを、このタイヤに交換することもできます。(ただし20・22・24インチのみ)
分類4:スカートガード(側板)の種類と適応------------------------------------
4-1,一般型
普通の四角い側板です。下半分に板が張ってあるのが普通ですが、安価なものではフレームだけの構造のこともあります。
4-2,デスクアーム型
車椅子に乗ったままでテーブルや机に近づきやすいような形になっています。特に一般型のスカートガードでは食事テーブルが高すぎてしまう、もしくは低いテーブルに近づけないという場合には、選択することがあります。ただし、ベッドなどから車椅子に乗り移る場合、この「欠けた部分」につかまることが多いので、移乗はしにくいと言えます。その際には、ベッドの方へ「移乗用のバー」を取りつけたりする必要があります。

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4-3,取り外し型
一般型にしろデスクアームにしろ、スカートガード全体が取り外せるタイプです。ベッドから車椅子に移乗する際は、お尻を高く持ち上げなくても良いので大変に楽になります。ただし、抜き差しには両手で丁寧に行なわなければいけません。最近は、以下のようなより使いやすいタイプの物が主流になりつつあります。
スカートガードが外れてしまうのではなく、座面があらわになる形に移動します。撥ね上がる形と横に開く形があり、それぞれ特定のメーカーから発売されていますが、私は断然「跳ね上げ式」の方が良いと思います。「横開き式」だと、ベッドにつけた状態では開くことができず、横に開いたままベッドに近づかないと移乗動作に役立てることができないからです。

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分類5:ブレーキの分類と適応------------------------------------
5-1,レバー型
当たり前の金属棒を並型の板で固定しタイヤを押さえつけるタイプのブレーキです。安価なタイプで、操作には力と微妙な加減(後ろに引きながら横にはめるというような)が必要です。ですから、あまり高齢者向きとは言えません。

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5-2,タッグル型
てこの原理を利用して、まっすぐ引いたり押したりすると「カタン」とブレーキのかかるタイプです。高齢者にはこちらの方が良いでしょう。

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5-3,介助者用ブレーキ
上記本人様が操作するためのブレーキではなく、介助操作バーに自転車と同じ様な形でブレーキレバーがついているタイプです。本人様用ブレーキと合わせてつけくわえることもできます。主に屋外で、特に坂道を介助したりする必要のある時などは大変に便利です。

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分類6:材質による分類------------------------------------
6-1,鉄製
普通の鉄パイプにメッキで仕上げてあります。安価ですが、重いですし長期間使っていると錆びてきます。
6-2,アルミ製
軽く錆びないアルミ製の車椅子。個人用にはこちらで準備したいものです。
6-3,チタンなど新素材
スポーツ用には利用され始めていますが、介護の世界では一般的ではありません。
その他の規格やオプション機能
他-1,大車輪の大きさについて
安価なスタンダード型では24インチのタイヤがついていますが、これでは高齢者には大きすぎます。タイヤには2インチ刻みで、24・22・20・18・16・14インチの各サイズがあります。この中で、18インチがスタンダード型と介護型の「境界」です。高齢者が両手でこぐ場合でも、20インチ程度でこと足りる場合が多いものです。
他-2,キャスターの大きさ
キャスターにも、大・小の違いがあります。小さい方が操作しやすいですが、屋外では小石にもつまづき直進性が悪くなります。大きいのはその反対となります。屋内用には小さく、屋外用には大きく、それが基本となります。

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他-3,座面の高さ
座面の全面の高さ。普通は44cmほどですが、足で床を蹴って動こうという場合にはこれでは高すぎて足が床に届かない場合があります。その際は「低床型」といって40cm程度の高さに座面を抑えます。
また、座面クッションを用いる場合には、クッション分だけ座面が高くなってしまいますから、あらかじめ低い座面の車椅子を準備します。
他-4,座面幅・奥行き
安価なスタンダード型車椅子ではそれぞれ40cmが普通ですが、小柄な方だとこれでは大きすぎて、座位が安定しなかったり車輪をこぎにくかったりします。それぞれ38cm程度に小さめにした既成品もありますし、オーダーメイドではどちらにせよそれぞれちょうど良いサイズで作ります。
他-5,背折れ機能
必要に応じて背もたれが真ん中の高さでパタンと後ろに倒れてしまいます。特に自家用車に積みこむ必要のある時は、このタイプだと大変に助かります。

写真14
いかがでしょうか?目が回りそうですね。(^_^; 既成品の車椅子の場合は、上記それぞれの規格のうちいずれかのタイプが寄せ集まって製品ができあがっている訳です。オーダーメイドで個人専用で作る場合には、ご本人様の能力・ADL様式や家屋環境・予想される介護状況や介護者の介護能力・車椅子の使われる社会的場面など全てを勘案して、規格を決定します。ただし、それを短時間のうちに的確に判断するのはなかなか難しいことです。(理学療法士が自宅での必要性に応じてふさわしい車椅子の形を決めることができるようになれば、“在宅生活援助PT”としてそろそろ一人前か?と言っても良いくらいです。)
ではありますが、在宅介護の現場を拝見すると安価な大きな重い鉄製のスタンダード車椅子を狭い部屋の中で使っていたり、高い座面の車椅子で姿勢を崩しながら足で床を蹴って動いたりと、あまりに「不適応」が目立つことがあります。長文ではありますが、車椅子を準備される場合には上記諸点をよくお読みになって、適切なタイプをご準備いただきたいと思います。
最近の注目の車椅子
注-1,室内椅子型
介護型車椅子でも、室内で使うにはまだ大きすぎると感じることがあります。それは「車輪が座面幅よりも外へ飛び出している」からだと私なりに解釈しています。シャワーチェアのように簡便なタイプだと、長い時間、安楽に座って使おうという気にもなれません。車椅子メーカーの営業さんに「どうにかなりませんか〜?」と訴えると「折りたたむためにはどうしても車輪がはみ出すんですよね〜」とのことでしたが、ごく最近の製品にこのような物がありました。これならば、大きさは本当に「普通の椅子」です。床を蹴って自力移動することもできそうです。ただし、折りたたみ機能は犠牲にしてあるようです。早く実物が見てみたいです。

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機器のコーナー(12)でも説明した通り、当たり前の車椅子の座面は決して座りごこちの良いものではありません。椅子としての機能は極めて貧しいものと言うべきでしょう。車椅子の椅子としての機能をもっと高めようとした製品に次のようなものがあります。座面と背もたれがクッション地で機能的な形をしています。これならば、長い時間座っていても安楽ではないでしょうか?車椅子もこのように、様々に進化していってもらいたいものだと思います。

写真16