老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(14) 手すり

手すりについて

 壁に手すりをとりつけることは、足腰の不自由になってきた方々にとっては本当に心強い道具となります。でも、「手すりをとりつけましょう」だけではどこにどのようにとりつけたらよいのか分かりませんね。ご本人さまの体格と運動能力にあわせ、大体の位置でも大いに役立つこともありますが、時には「これはちょっと・・」と思われるようなとりつけ方がされているのを拝見することもあります。

 そこで、このページでは「手すり」について、できるだけ要領よく分かりやすくまとめてみたいと思います。なお、具体的な数値は年金福祉事業団による「年金バリアフリー住宅設計マニュアルとその解説」によりました。

手すりの基本規格・太さと壁からの距離

 太さは、上記資料では28mmから40mmとされています。まぁ常識の範囲でよろしいわけですが、成人男性である私が実際に握ると「28mmではやや細いなァ、40mm程度あってもいいかな?」という感じです。小柄な方は細めでもよいかもしれませんが、反対に手すりにすがる度合いが高ければ高いだけ、太めの方が力をかけやすいでしょう。

 壁からの手すりまでの距離は、上記資料では30mm以上とること、となっています。この値を大きくとると、その分例えば廊下の幅が狭くなってしまうわけですが、私の手では30mmではいささか狭く感じ、40mm程度は欲しいところです。(10mmの差が使い勝手を大きく左右します)この値も手すりに頼る度合いが高いほど、壁から離してあげた方がよい、ということになります。

歩くための手すり(廊下・浴室内など)

 歩くための手すりは、要するに上記のような手すりを平らにつけてあげればよい訳です。あとは「高さ」ですね。これは「杖の高さ」と同じに考えればよいでしょう。基本的には立った時の手首の高さとし、腰が曲がっている方の場合は手首の高さを中心に色々試してみる、ということになります。

腰かけ姿勢から立つための手すり(トイレ・浴槽移乗台からなど)

 立つための手すりを考えるには、「起立動作の基本的な動き方」が理解されていればおのずと答えが出てきます。(→ How to のコーナー(9))つまり腰かけた姿勢から少しおじぎをして、腕を前に伸ばした位置が相応しい場所となります。大体の目安として側方手すりの場合、腰かけた姿勢での「おへそ」の高さで「膝頭から前方に大腿部の半分の距離」のところを中心にして、前後に手すりがあるようにすれば良いと思います。(写真1)起立動作のことが頭の中に入っていないと、腰かけた姿勢の真横に手すりをつけたりしてしまいがちですから注意しましょう。

写真1

 また正面に水平手すりをつける場合には、同じく軽くおじぎをして腕を伸ばした距離でおへその高さにとりつけられれば理想的ですが、在宅のトイレではそんなに距離をとれない場合もあるかもしれません。そんな場合は仕方ないですから、少しでもおじぎをするのに邪魔にならないよう縦に手すりをつけるか、高めなのを承知でとりつけて、引っ張りあがるような立ち方をしないといけないかもしれません。実際に前にとりつけると施設家屋のコーナー(10)で紹介したようになります。

 トイレでよくとりつけられる「L字手すり」は図1のような位置でとりつけます。数値は上記資料によりましたが、私にはトイレから垂直部までの距離が近すぎるように思われます。要するに水平部はおへその高さで垂直部はお辞儀をして伸ばした腕先の位置で立ちあがっていれば良いのです。

図1

 それから「立つためのおへその高さの手すり」では、立ってから歩いていくのに使うにはやや低すぎます。能力に余裕があればもう少し、とりつけ位置を高くして兼用にすることもできますが、余裕のない時はあくまでそれぞれ別々につけた方がよいでしょう。

階段と段差を超えるための手すり(階段・玄関土間と廊下の上がり口・脱衣場と浴室間など)

 まず段差の連続している階段の場合、「歩くための手すり」で導かれたちょうど良い高さを、図2のように階段の段の前端上方にとります。そして、最後の段を上りきり下りきった先には、もう30cmほどは水平に手すりをのばしてあげましょう。(施設構造家屋構造についてのコーナー(2)

図2

 一段だけの段差で横(斜め)に手すりをつける場合には、概ね以下のように場所決めすれば良いと思います。(図3)つまり上段奥40cmと下段先40cmのところで「ちょうど良い高さ」にあわせ、つなぎます。そうすると、連続階段の場合よりも手すりがやや水平に近い状態になりますね。一段だけならそれでよろしいと思います。(根拠:実践(^_^; )

図3

 スペースが狭かったり段差が30cm以上もある場合は縦手すりとし、段差付近にちょうど良い高さを中心に40cmから60cmくらいの長さでつけてあげましょう。

 さらに段差をはさんで「段違い」に水平手すりを2本とりつけるのも一手段です。その際は図のように、段の上下それぞれから「ちょうど良い高さ」で水平手すりをつけてあげましょう。(図4)それぞれの長さは30cm以上はほしいところです。それより短いと、段差を越える時に助けになりません。

図4

浴槽出入りのための手すり

 浴槽に出入りするための手すりについて考えてみます。立ったままでまたいで出入りする場合と、移乗台に腰かけて出入りする場合に分けて考えることが必要です。

 まず立ったままでまたぐ場合には、浴槽縁の線上に縦手すりを設けること(図5-A)、そして浴槽に挟む手すりを使うこと(図5-B)が考えられます。

図5

 移乗台などにいったん腰かけて浴槽に出入りする場合には、図6のような位置にとりつけると都合良い場合が多いです。横手すりは浴槽に入る時につかまる手すり、縦手すりは浴槽内で立った時につかまる手すりとなります。もっとも入浴のための手すりは、本人さんの体格・能力と物理的な環境とのかねあいによってまさに千差万別と言ってよいほどに違ってもくるものです。実際に動作してみて「この辺りにつかまるところがあれば・・」という場所を丁寧に探し検討することが必要です。

図6

一般的な施設の手すりの高さの実態は?

 ちなみに職場の病院、併設の老健、隣のディサービスセンターの「廊下の手すりの高さ」を実測したところ、それぞれ「79.7cm、79cm、84cm」となりました。この高さどう思われますか?実は身長172cmの私で84cmの手すり高がちょうど良いです。つまり、これらの手すりは高齢者が使うには高すぎます。ごく大雑把に言って70cmもあれば十分ではないでしょうか?この辺りも成人男性が基準となって「建築の常識」が形作られているのかもしれません。もちろん、低すぎるよりは高すぎる方がまだ使えます。(肘付きで使ったり、ですね)かといって、「手すりの高さ」など気にせずに建築してしまっていることがほとんどではないでしょうか?せっかく新築されるのならば、こういう細かいところまでこだわることをお勧めします。

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