老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器- (2) 家庭浴槽
身体の障害があっても、入浴は大変に喜ばれるものです。このページでは、障害があっても入りやすい浴槽について、まとめてみます。
壁が垂直に近い和式浴槽を半埋め込みにしたものが障害のある方にとっては入りやすい、ということはだいぶ広く知られるようになってきました。バスタブに身体を伸ばして入ると腰が足元へずり落ち、頭が沈みそうになって不安定なものです。
同時に半埋め込みであると、浴槽の縁に腰かけて浴槽内に出入りすることができます。したがって、縁の高さは椅子の座面と同じかそれよりもちょっと低いくらい、40cm弱くらいが理想かと思いますが、一般家庭では33cmくらいのことが多いようです。それでも、据え置き型で60cmもあるよりは、ずっと良いです。そして、浴槽の縁と同じ高さの腰かけ台を準備すること、この台に腰かけながら浴槽へ足を出し入れします。
お湯の中で身体がふらついたりしないよう、あまり大きすぎない方が良いです。縦内寸については、背中を壁につけて足も反対の壁に届けば安定します。小柄な女性で90cm、男性でも1mあれば十分でしょう。横幅は身体が左右にゆれても支えてくれるよう、55cmから60cmで十分です。
特に1・2については、「介護本」にも大抵触れられていますが、私は加えて「浅めに」ということを強調しておきたいと思います。当たり前の和式浴槽の場合、深さは55cmから60cmもあります。これでは浴槽の縁に腰かけて浴槽内に足を下ろしても、足が浴槽の底に届きません。それでも「入る時」はどうにかなりますが、浴槽内で浮力を利用しながら立ち上がり、お尻を浴槽の縁に腰かけようとしても届きません。(写真1)しかたなく、わきの下を羽交い締めにして引っ張りあげたりすることになってしまいます。
つまり、縁に腰かけたときに同時に浴槽の底に足が届くこと、それが滑らかに浴槽内へ出入りするための条件となります。その深さは小柄な女性高齢者の場合で45cm程度、男性でも50cmあれば十分でしょう。
考えてみれば深さ60cmもある深さの浴槽に、満々とお湯を溜めて入浴していることは少ないはずです。(小柄な方はおぼれてしまいます(^_^; 写真2)つまりそれだけ深すぎて、お湯の面から浴槽の縁までは、そのまま移動の際の「バリア」となっているわけです。しかし、既成品の中には(特に深さの点で)上記のような条件を満たす浴槽は無いようです。そこで「底上げ台」(写真3)を準備して使っています。これで、縁の高さで腰かけながら、同時に底に足が届くようになります。(写真4)また、もう少し元気な方ならば、立ったままでまたいでも洗い場の床と浴槽底の差が少なくなるので楽に出入りできるようになります。(写真5)
上記諸条件が満たされていれば、例え歩けない人でも割合軽い介助で入浴することができます。(更衣や洗い場までの移動は別にしての話ですが)したがって、あとは本人さんとご家族の意欲次第で、少しでも楽に入浴できるように取り組んでみる価値はあります。

写真1 お尻が届かない 写真2 お湯が多いと溺れるよ 写真3 底上げ台

写真4 お尻と足と両方つきます 写真5 またぐのも楽
さて、写真4に見える「移乗腰かけ台」、現在ある業者さんから「特許出願中」だそうで、「取り扱い注意」のお手紙をいただきました。皆さん取り扱いに注意しましょう。(H11,5,22)
さて、以上の説明に自信はあるのですが、「家庭浴槽」とはいっても、例示の写真は実際には「施設内設置」されているものですから、もう一つリアリティがありませんね。そこで、実際の住宅での工夫の様子を以下に紹介します。
このお宅は、最近ようやく上水道が通った、というくらい、イナカのお宅です。家も古く浴室は狭く、浴槽は和式の完全な据え置き型で、浴槽縁まで70cm近くあります。また、廊下脱衣場から浴室内までに20cmの段差があります。(写真6)これでは足腰の弱ったお年寄りは「入れない」ですね。これまで写真6の隅に写っている洗い腰かけを踏み台にしてどうにか入っていたそうですが、怖くて仕方なかったそうです。そして、施設のディや短期入所の利用のご希望を出され、私達と縁ができました。
家庭訪問し実測した数値をもとに、私達の方で準備した道具は写真7のようなものです。洗い場に敷く「足つきスノコ」が2枚と、「浴槽出入り腰かけ台」「浴槽底上げ台」です。以上でちょうど2万円で準備できました。この4点をセットすると写真8のようになります。廊下からの段差20cmをスノコで埋めてしまい同時に浴槽縁の高さが45cm程度になるようにしました。そして、浴槽縁と同じ高さの腰かけ台と浴槽内に15cmの底上げ台をセットすればOKです。

写真6 入れない! 写真7 準備した道具、全部で2万円 写真8 セットしたところ
足の長さなどは洗い場の床が微妙に水平ではないため、現場で切りそろえ、全部に防水スプレーをして仕上げてから、本人さんに使ってみてもらいました。(写真9)ぴったり、お湯が入っておらずに浮力は使えませんが、それでも自力で簡単に浴槽内へ出入りできるようになりました。深さも底上げ台でちょうどぴったりです。(写真10)

写真9 入れる! 写真10 深さもいいね!
このように、現場が施設内であれ古い木造住宅であれ、基本的なポイントをしっかり押さえて、あとはわずかな経費と手間を使えば、「安全で活動的な」生活を維持していくことができます。
もう4年も前に作ったこのページ、高齢者にとって望ましいお風呂とはこのようなものであること、その考えは今も変わりません。
でも、それはそれとして、↑のようなお風呂って、若い世代には決して受け入れやすいものではないですね。例えば、わざわざ介護保険を使って住宅改修するのに、↑こんなお風呂を新しく「導入」するとは考えにくいですよね?中古のボロ一戸建ての私の自宅も、縦90cmの一人用和式浴槽ですが、私が入っているには狭い狭い。綺麗なユニットバスか何かでリッチな気分を味わいたいな〜と、思わないこともありません。(^_^; ところが、これまでのユニットバスは、むしろ高齢者にとっては入りにくくて仕方ないものばかりでした。
「でした。」というのは、ちょいと注目すべき製品が出たから、なんですけど、写真1がそれです。

写真1
これは、TOTOさんの1坪ユニットバスの新商品です。注目すべきは、赤い矢印のレベルで浴槽内に段がありますね?この浴槽の特長について、カタログでは図2のような説明がされています。

図2
この図2をご覧になって、「何か似たような絵を見たことあるなぁ〜」という方は、拙HPを良くご存知の方ですね。施設家屋のコーナー(6)施設大浴槽のページで紹介している「うなぎの寝床浴槽断面図」よく似ています。(図3)

図3
写真1のTOTOバスの、縦サイズ中段までが932mm、全縦サイズが1232mm、注目の深さは500mmです。図3よりも、一回り大き目のサイズですが、図3ではごく小柄な方でも対応できるサイズということなので、TOTOさんのこのサイズは、一般高齢者から若い世代まで使うものとして、妥当なサイズだと思います。
へへ、やっぱりちょっと嬉しいです。「時代の要請に基づく偶然」ということでしょうか?それとも…パクられた…かな?(^_^; (それでも一向に構わないんだけれど…)図3の説明も、上記ページで触れているしね。

図3
こんな浴槽ならば、若い世代や新しいお家にも無理なく取り入れられて、同時に高齢者にも使いやすいものとならないか?そして、一般家庭の中で普及していかないか?注目したいと思います。でも、やっぱり若い人には、ちと無理を強いるのも事実。カタログでは若い方が使うときの様子として、図4のようにコメントしてるけど、これって楽な姿勢なのかな?!(^_^;

図4
写真・図は、『TOTO:システムバス、フローピアシリーズカタログ:'02.2版』によります。