老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(25) 家具調ポータブルトイレ
以下は業界新聞「週間シルバー新報さん」のご依頼により、寄稿させていただいた拙文です。ちょっともったいないので、ここにも収録しておきます。
この号では「買ってはいけない・使ってはいけない福祉機器」という特集が組まれ、拙文の他、俗に言う「つなぎ服」についてや、「なぜ使いにくい機器が流通してしまうのか?」といった根本的な考察記事が掲載されました。その特集の中の「具体例の一つ」として掲載されたわけです。
この文章の論旨は、「せっかく高機能・高級感を目指した家具調ポータブルトイレなのに、かえって使いにくいものがありますよ。ご注意あれ!」ということで、「全ての家具調ポータブルトイレはダメ!」と言っている訳ではありません。どんな場合に使いにくいのか?は、文章中に「a,b,」という2つの条件で示してあります。従って、家具調ポータブルトイレでなくて普通の一体成形型ポータブルトイレでも、a,b,が同じような状態ならば、同じく使いにくい、ということになります。
つまり、家具調であろうと一体成形型であろうと、ポータブルトイレとして満たすべき条件は、文章中にある「座面の高さ」と「足を後に引ける構造の筐体」であることは共通で、使いにくいものがあることは「一体成形型ポータブルトイレ」も共通です。ただ、この文章であえて「家具調」にスポットを当てたのは、最初に書いた通りせっかく「より高機能・より高級」を目指しているはずなのに、という点からです。実際には、安価な一体成形型のPトイレには、使えないお粗末なものが多いようです。そのことは当然のこととして、という前提の文章ですからご注意ください。(機器のコーナー(4)をご参照ください)
福祉機器も単に機能だけを果たせば良い、という時代は既に終わろうとしている。これからは福祉機器が何か特別な道具としてではなく、当たり前の道具として私たちの日常生活の中に、ますます入りこんでくるだろう。そしてその際には、機能プラス「見た目の良さ」ということが、重要なポイントとなってくるようだ。
これまでの福祉機器の中にも既に、そういった観点からも設計された道具がある。例えば、一般に「家具調ポータブルトイレ」と言われる製品群がある。全体に木製で、一見すると「家具椅子」だが、座面を持ち上げるとポータブルトイレになる、というものだ。トイレと分からないようなデザインで、ポータブルトイレを使う際の心理的抵抗をも軽減してくれるというわけである。
ところが、現状の「家具調ポータブルトイレ」は、実際に使用してみると大いに「当たりはずれ」のあるもの、と言ってよいと思う。あまり一般的には知られていないようなので、指摘してみたい。
トイレのフタは豪華でも
まず、ポータブルトイレの満たすべき条件を整理してみる。
@身体機能に障害のある方が使うため、「立ち座りしやすい」こと。
それが一番大切なことである。さらに、
A安定性が良いこと。
ということも、安全のために大切である。その他として、
Bフタの開け閉めが行ないやすいこと。
C臭いが漏れないこと。
D清潔保持しやすいこと、お掃除しやすいこと。
などが上げられる。そして前記の通り、
E見た目が良いこと。
となる。
満たすべき条件として筆頭にあげた「立ち座りしやすい」ということについて、もう少し詳しくみてみると、
@座面の高さが40cm程度であること。
A腰かけた姿勢で、ある程度膝を曲げて足を後ろに引くことができること。
などがあげられる。
家具としてのいすも、座面高は普通42cm程度ある。極端に低すぎては立ちにくくなってしまうからだ。足が後ろに引ける、というのも自力で立つためには大切な条件で、私たちでもいすに腰かけ、足を前に投げ出したままでは、よほど気張らないと立てない。障害のある方が使うのだから、これらの点ができる限り使いやすい構造となっていることが必要なのである。
ところが、実際に販売されている「家具調ポータブルトイレ」には、以上の点がまったく考慮されていないのではないかとしか思えないような製品がある。a「家具調」を意識するあまり、いす座面=トイレのフタを実に分厚く豪華にクッション性を持たせてあって、それを引き開けるとトイレ座面が30cm少々になってしまうような製品。b筐体が、見た目は豪華ながらも汚物入れを大雑把にしか隠さない構造で、筐体前面=足もとが「垂直の壁」になっているような製品。中にはご丁寧?にも、abの2点を一度に満たすような製品もあるようだ。これでは立ちにくくて「使えない」ことは明らか。せっかく割高な「家具調ポータブルトイレ」なのだから、購入の際には十分注意したい。
メーカーさんも、単に「見た目が良い」というだけではなくて、同時に「機能的にも優れている」ということこそ、「優れたデザイン」なのだということをしっかり認識していただいた製品提供をお願いしたいものだ。
高さ40センチに補高を
残念ながら、現在お手持ちの家具調ポータブルトイレがそのような製品の場合には、見た目は悪くなってしまうが、せめてトイレ座面が40cm程度になるように脚に補高してあげたら良い。そうすると、クッションいす座面をおろした状態では、いすとしてとても高い座面になってしまうかもしれませんが、トイレの役割は果たせるだろう。
実は拙文がシルバー新報さんに掲載されるのは、これが2度目です。以上の文章から受ける感じが他のページの文章とは微妙に違っていたり、むしろ読みやすい!ということならば、それは編集者氏の編集能力の賜物です。(^_^;
量に限りのある新聞原稿で省略せざるを得なかった点について、補足しておきます。それは便座穴の位置と形です。
便座穴の位置と形は?
家具椅子調トイレですから、座面はむしろ広めである場合がほとんどです。その広い座面の真ん中に小さな丸っこい座面穴だったりすると、排泄するのに意識して奥に座らなければならず、使い勝手が悪くなってしまいます。トイレとして使う際には、椅子として使う時よりもむしろ浅めに腰かけて使えるほうが楽です。従って便座穴は、座面の真ん中からやや前の方に開いている方が良いと言えます。また穴の形も、あまり小さく丸々しいと、排泄器構造の問題で男性にはより使いにくくなってしまいます。かといって穴の横幅がありすぎてはお尻が落ち込んでしまいます。
従ってお勧めは、やや縦長の穴が座面の真ん中から前方に開いたもの、ということになります。