老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(35) 股関節伸展拘縮者さんの車椅子調整

股関節伸展拘縮者さんの車椅子調整

 今回のケースも、きっと似たような方は全国に沢山いらして、でも見逃されていることが多いだろうなぁ…と思えてしまうので、力みまくりながらアップします。お題は「股関節が伸びたままで屈曲しにくい方の車椅子調整」です。

 写真1をご覧ください。左膝がピーンと伸びたままで車椅子に座っていらっしゃいますね。ご本人さんはかなり重度で末期に近いパーキンソン病でいらっしゃいます。極端な筋緊張亢進の結果、膝が伸びきったままで全然曲がりません。ですから車椅子のフットレストも、エレベーター式となっていて前に伸ばせた足を乗せられるようになっています。つまり、この車椅子はご本人用に準備された車椅子なんですね。

写真1

 ところが、この車椅子に乗ってディケアに出かけると難儀くて仕方ない、あんまり難儀いからディに行くのも嫌だ!と言い出してしまった、ということで、相談が私のもとへ回ってきました。

 で、私が行なった調整後の様子が、写真2です。違いが分かりますか?写真2ではのけぞっているようにも見えますが、写真の角度の問題です。むしろ、写真1では大きく丸く曲がっている背中から腰にかけて、すっきり伸びていることが分かると思います。写真1ではお尻の後ろに背もたれまで大きな隙間ができていましたが、写真2では背もたれに腰部がフィットしています。写真1では左手が邪魔をして腰やおなかの辺りが分かりにくくなっていますが、これは苦痛のために左腕が不随意的に屈曲してしまっているんですね。苦痛のために、なおさら筋緊張亢進をきたしているわけです。実際、写真1の時には、苦痛で「う〜う〜」声が出ているような状態でした。その辺りも、写真2ではリラックスできています。

写真2

ではでは、写真1と2の車椅子はどこが違うか?一発で分かる写真が写真3です。

写真3

 ピーンと伸びた左足が、「車椅子の座面よりも下に伸びている」ことが分かるでしょうか?写真3で車椅子フレームの白いプラスチックカバーが見えますが、これが本来の座面の高さです。つまり、この方は膝が伸展拘縮をおこしてしまっているだけではなくて、股関節が屈曲してくれない拘縮をきたしてしまっている方なんですね。膝を前にのばしたエレベーターフットレストの上に乗せていれば、股関節は屈曲してくれませんから足が上に上がった分、身体が後ろに倒されます。で、腰椎から胸椎部で強引に背中を丸めて座っているのが写真1のわけです。ですから、写真1の本人用車椅子は、背もたれも後ろに倒れるリクライニング式になっていて、難儀いがるからいつでも後ろに倒すようにして使っているそうです。以上の身体の仕組みと動きは、図1でご理解できると思います。写真4は、座面から下方に伸びた足の様子です。


図1

写真4

 ではでは、なぜ足が座面よりも下に向かって伸びているのか?その様子は写真5で分かります。例のごとく、別名「器物破損状態」です。(^_^; 本人さんの押し付けられる左下肢大腿部の、座面上での位置と程度を確認の上で、「切り込み」を入れました。まさか、本人さんの車椅子にはさみを入れるわけにはいかなかったのですが、町のほうで古〜い車椅子を一台提供してくれました。ありがたや〜。これで具合がよければリクライニング機能なんて不要ですし、リクライニングの車軸後ろ下げがなくなる分、車椅子もコンパクトになります。

写真5

 それで、これで具合がよければこんなお古の車椅子を壊しかけたようなモノではなくて、きちんと本人用にオーダーメイド作成したいですね。切り込みになっている部分にも、きちんと立体裁断した座面を設けてもらいたいですし、これで股関節の問題は解決しても足載せ板とかが相変わらず不適合状態ですし…。でもその際にも、こんな壊しかけ車椅子がオーダー設計する際に、大いに参考になるに違いありません。それから介護保険利用者さんで車椅子オーダー作成するわけですから、担当ケアマネさんには「何故にしてレンタル車椅子ではダメなのか?オーダー作成しなければいけないのか?」説明文書を作ってもらわねばなりません。これだけの実物、説明文・写真・図があれば、きっと書けるよね?でも、その上でもしも「却下」なんてことになったら、介護保険なんてクソ喰らえ!てなものです。(^_^;

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