老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(36) 禁断の車椅子調整ワザ
これまで幾つか車椅子の調整について取り上げてきましたが、未だ「車椅子座面の傾き調整」については触れていませんでした。ただ、モジュール型車椅子で、座面傾き調整も可能である、と取り上げているだけです。
そこでこのページでは、座面の傾き調整の例と一般的な適応について、まとめておきましょう。もっとも、きちんと調整可能なモジュール型車椅子はまだまだ珍しい存在でしょうから、一般的な安価な標準型車椅子での調整をご紹介します。ただし、注!以下にご紹介する方法は、禁断の裏ワザと言うべきです。取り組むならば、それなりの心がまえでもって取り組みましょう。(^_^;
※座面奥の沈み込みを大きくする。=座面の前方を持ち上げる調整
これは、車椅子に座っているとずっこけ座りになったり、それをお尻を引く形で直すと体幹が前屈してお辞儀してしまうような方に適応となります。(その前に、円背があるならば背もたれシートを緩めてみてほしいですが…)
写真1をご覧ください。写真ではちょいと分かりにくいですが、この車椅子は座面の前方が普通よりも3cmばかり高くなっています。その分、お尻が沈み込み、背もたれは後方に倒れているわけですね。

写真1
どうしてそのような按配になっているかというと、写真2をご覧ください。赤い矢印の部分だけ、前キャスターが下方に突き出て、その分、座面前方を持ち上げているわけですね。どのようにしてこのような形を実現しているかというと…

写真2
キャスターは分解すると、写真3のようになっています。写真3のキャスターの軸、および図1の左側の図で、黒い部分がありますが、ここはゴムです。ボルトを締めるとこのゴムが広がって、パイプの内側に押し付けられて固定されるようになっています。(図1の左側の図の状態)
ここで、一旦ゴムを緩め、写真3のCのようなパイプをキャスター受けのパイプの中に仕込んでしまいます。その様子が、図1の右側。このCパイプの分だけ、キャスターが下方に下がり、座面前方が持ち上がるわけです。

写真3

図1
このようにすると、車椅子上での重心が後方に下がり、後ろへ車椅子ごと転びやすくなります。ですから必ず、ティッピングレバーにパイプを継ぎ足して、後方に転倒しきらないようにします。写真1・4でも、その様子がわかりますね。写真4は、この車椅子を実際に使っている様子です。この方は、標準型車椅子でお尻を座面奥に引くと、お辞儀につぶれてしまうのでこのような調整を行いました。

写真4
ついでにこの方は、右足が既に尖足変形をきたしていてフットプレートの上にきちんと足裏がついてくれません。そこで、写真5のようにしてあります。

写真5
Bはお風呂場用クッションです。左側プレートのAの高さと、右側のBの高さが同じにしてあります。つまり、Bの部分に尖足になった踵を載せ、その前に足先を垂らし置くようにしてあるわけです。写真4でもその様子が分かります。これくらいの調整はしてあげてほしいです。
※座面奥の沈み込みを小さくする。=座面の前方を下げて、地面と水平にする
この調整は、特に円背があって背シートを緩ませたような方の場合、その分、重心が後方に下がってしまって、そのままでは車椅子に立ったり座ったりしにくくなったり、車椅子のままでテーブルに向かっては食事しにくかったり作業しにくい、という場合に行います。
方法は…これは簡単です。付いているキャスターを取り外し、ホームセンターで買ってきた、適当な大きさのゴムタイヤを付け替えるだけです。フォーク部分はそのまま使っています。写真6の左右は、オリジナルとミニタイヤに代えたところ。写真7は、バラで売っているゴムタイヤの例です。もっともこれは、もともとのキャスターに対して買ってきたタイヤが小さすぎ、車椅子が前方に傾いています。(^_^;
ここまでやっては転落の危険大!です。
でも、ある医科大附属病院さんでは脳卒中後のリハビリ中の患者さんには、こんな前方傾き車椅子を使っているそうです。傾きに負けない体幹保持能力があれば、立ち座りしやすいし、作業や食事もしやすいです。つまり、それだけ能動的な姿勢、ということです。

写真6

写真7
本当はね、やっぱりこんな貧乏な細工じゃなくて、きちんと「簡易モジュラー型車椅子」を施設さんに準備していただきたいです。が、やむをえない時はこっそりご参考になさってください。