老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器- (4) ポータブルトイレ

使いやすいポータブルトイレについて〜長文!(^_^;

 さて、介護福祉機器の「大御所」、ポータブルトイレについてまとめてみます。一口にポータブルトイレと言ってもありとあらゆる形がありますし、今のところそれらを分類整理し、特徴や利点欠点適応などをまとめた資料は見たことがありませんから、無謀にもこのページでそれを試みたいと思います。 (^_^;
 まず、基本的な機能分類を行ない、それに基づいて代表的な既成品の特徴をまとめてみます。すると、既成品にはないタイプや既成品では実現できない機能、足りない機能が明らかになりますから、それを補う工夫や改造についてまとめてみます。

1 望ましいポータブルトイレ規格の基本

 一通りポータブルトイレについてまとめてみましたら、恐ろしく長文となってしまいました。詳しいのは良いとしても、かえってポイントがボケてしまうようなので、最初にごく大雑把に、望ましい規格をまとめておきます。

@ 座面高は40cm程度であること。
 普通の椅子と同じくそこに座ったり立ったりするわけですから、未だに安価な製品に見られるような、低い座面では困ります。
A 座面形状は馬蹄形よりも、板状であること。
 普通の洋式便器は馬蹄形の座面ですが、ポータブルトイレを使う必要のある方にとっては、それだけでは不足のことが多いです。詳しくは以下の文章で。
B フレーム構造を有していること。
 立ったり座ったりを確実に安全に行なうために、原則としては肘つきやフレーム構造のあった方がよい場合が多いです。

 以上は色々なケースのあることを承知で、ごく一般的に言えそうなことをまとめたものです。それぞれに細かくはどのような意味があるのか?そして例外はどのような場合か?などについては、以下の文章で詳しく説明していきます。

2 基本的な分類

 まず基本的な分類をしてみます。機能面から、以下の項目で分類してみるのが良いと思われます。

@ 座面による分類 1,馬蹄形楕円形の座面 2,板に穴のあいた構造、または座面両脇に平面のある構造
A 筐体構造による分類 1,筒型構造 2,脚構造
B フレーム構造による分類 1,フレーム構造無し 2,肘つき構造あり 3,外付け部品

それぞれに、利点欠点があります。以下、具体例をあげながら説明します。

@ 座面による分類
「1,馬蹄形型もしくは楕円型」というのは、一般的な洋式トイレの座面構造ですね。あまりに普通ですからそれで良いとも思われがちですが、次の二点で「やっとポータブルトイレを使う人」には「使いにくい、もしくは使うのが怖い」構造です。まず、座った時に体重を支えてくれる支持面が文字通り馬蹄形ですから、はじめからど真ん中に上手に座らないと座位が安定しません。時に馬蹄形の座面にお尻を半分しか乗せられずに、転がり落ちそうになる方をみることがあります。また、馬蹄形の座面では立ちあがる時に、腰の両脇に手をつくことができません。無理に座面の片方に手をついて体重をかけたりすると、トイレごとひっくり返ったりします。そのような場合は、「2,板に穴のあいた構造、または座面両脇に平面のある構造」の方がよいでしょう。これは平らな板に、卵型に穴が開いている構造ですね。これならば座る際もとりあえずアバウトに腰を下ろし、そしてHowtoのコーナーで説明した端座位横移動で正しく座りなおせば良い訳です。立ちあがる際も腰の両側に手をつく場所が確保されます。

A 筐体構造による分類
 「筒型構造」は一般的なポータブルトイレの構造ですね。全体が一体型となっていて、汚物入れのバケツは外からは見えません。ただし、この構造は座面の下、前方がそのまま壁構造になっていますから、立ちあがる際に足を後ろに引くことができません。これでは立ちにくいですね。で、よく足をがに股に開いて両足の間にポータブルトイレを挟むようにしながら足を後ろに引きつつ立ちあがろうとされている方を見ることがあります。そのような場合は「脚構造」のポータブルトイレの方が立ちやすいものです。脚構造になっていて、脚の間に足を引くことができます。ただし、脚構造の場合は全体の構造の関係で重心が上になってしまい、また全体が軽く出来ているものの場合はなおさら固定性が悪く、フラフラする感じのものもありますから要注意です。そして脚構造の場合には、脚の長さ調節〜「座面の高さ調節」ができるタイプが普通ですが、筒型の筐体では製品のままでは高さ調節ができません。

B フレーム構造による分類
これはいささか分類のネーミングが苦しいです。要するに座面とは別に「肘つき」のような座位を安定させ、起立を介助するような構造があるかどうか?ということです。一般的に、安価なものには何もついていません。俗に「デラックス型」と銘打って、肘つきが筐体の一部としてあるものもありますが、全体構造が大型になり、その分Aで説明した前下方の壁が大きくせり出してしまっているものもあり、これでは立ちにくく何のための肘つきか分からなくなりますから、要注意です。一般的に言って、そのような「デラックス型」よりも、「外付け」でフレーム構造をつけてあげた方が中途半端とならずによい結果となることが多いものです。

3 代表的な既成品構造と利点欠点

@ 基本型
 写真1はもっとも安価で簡便なタイプのポータブルトイレです。バケツをひっくり返したような形をしています。基本分類では、@馬蹄形座面、A筒型構造、Bフレーム無し、ということになります。このタイプははっきり言って使いにくく、これを使いこなせる方は十分普通のトイレが使えるのではないか?と思えるほどです。高さは低いものが多くて、座面が33cm程度の製品も珍しくありません。
 従って、身体に障害があるからポータブルトイレを使ってもらおう、という場合には、このタイプは使うべきではありません。
 しかし、利点もあります。あとで紹介する工夫で、外付けのフレームを取りつけたり一旦ばらしてポータブルトイレを改造したりするためにはうってつけなのです。(^_^;


 写真1 基本的(安価(^_^; )なポータブルトイレ

A (俗に言う)デラックス型
 写真2は、俗に言うデラックスタイプです。もっとも安価なポータブルトイレに左右の肘つきがついた筐体となっています。基本分類で言えば、@馬蹄形座面と板状座面の中間、A筒型構造、B肘つきあり、ということになります。これは基本型よりは使えます。座面高も多少考えてあり、40cmくらいありますから、まぁ身体障害のある方でも使いやすい高さ、と言えます。左右の肘つきのおかげで、ベッドから移乗する際にも掴まるところがありますし、座面の両側にも筐体がありますから、座りそこねて床に崩れ落ちるような心配もずっと減ります。
 ただし、1基本分類のBフレーム構造で説明した通り、筒型構造で筐体が大きくなっている分、壁構造の問題で足が後ろに引きにくく、かえって立ちあがりにくい場合があります。そして全体が大きい分、ちょっと底上げして高さを上げる、といった改造もしにくいです。また、左右に肘つきがある分、しっかり立ちあがって移乗する方でないと使えません。Howtoのコーナーの端座位横移動で紹介した、端座位のまま横移動で移乗することはできません。

 写真2 デラックス(?(^_^; )型

B 4脚型ポータブルトイレ
 写真3は代表的な4脚型ポータブルトイレです。脚構造となっているため高さ調節ができる、というのは大きな利点です。肘つきもついていることが一般的で、その利点はデラックス型と同様です。また、立ちあがりの際に足を後ろに引きやすいので立ちやすい、というのも利点です。
 ただし、全体に軽く重心があがってしまい、また筒型の筐体構造に比べて4脚の支持面積が狭いのが普通ですので、例えば立ちがる際にトイレを押すような形で力をかけると安定があまり良くありません。ベッドフレームにしっかり固定するなりの対策が必要でしょうが、残念ながら「何かに固定する」ことが前提の造りとはなっていないことが多いようです。

 写真3 4脚型ポータブルトイレ

 

C 家具型ポータブルトイレ
 写真4のようなタイプ、これが家具型と言われるものです。このタイプはちょっと見た目はどれも良く似ていますが、一般に高価であると同時に実に「当たりハズレ」が多いので、準備の際には注意が必要です。
 まず問題となるのは、「座面高」です。家具調を強調するあまり、ふたに分厚いクッション材を使用したりしていると、ふたを開けてトイレ座面が現れた時に、座面高が30cm少々程度まで下がってしまうことがあります。これでは低すぎて使いにくいですね。家具としての椅子の座面高とトイレとしての座面高、その両方が40cmを挟んで前後に設計してあるもの、そういう物が良いでしょう。
 2点目は筒型筐体と同じく、前の壁構造です。家具調をうたうだけあって、「バケツ」は見えないようにしてあることが多いのですが、そのために前部が壁となってしまっていては立ちにくいですね。壁を若干後ろに引いてあるような構造がよいでしょう。
 3点目、座面構造の問題ですが、完全に平らな板に穴の開いているタイプと、馬蹄形型に盛り上がっているタイプがあるようです。好みの問題でもありますが、機能的には座面構造で説明した通り、「平らな板に穴」構造の方が、より安心して使えるでしょう。
 この家具調ポータブルトイレで上記基本的なサイズ構造が良く、同時に左右の肘つきがとり外し自由で高さ調節も可能、というタイプになると、Howtoの横移動のページで紹介した「横移動で使うポータブルトイレ」に近い構造となってきます。しかし、そういう製品は一般にとても高価です。

写真4 家具調ポータブルトイレ

D外付けフレーム
 写真5は、外付けフレームの一例です。このタイプはトイレとの固定も考慮してありますが、トイレ自体の高さ調節はできません。写真6はトイレとの固定は不完全ですが、トイレ自体の高さ調節もできる構造となっています。 写真7は私どもの方で手作りしているポータブルトイレフレームです。手作りですから全体の構造やサイズ、トイレの高さ調節や固定も必要に応じて自由になります。しかも安価にできますから、私どもの方ではほとんど手作りし、既成品を使うことはあまりありません。

  

写真5            写真6            写真7

4 使いやすくする工夫

 写真7の「手作りフレーム」は使いやすくするための工夫としてはかなり大がかりなものですが、例えば写真8のように安価なポータブルトイレを少しだけ高くしてあげる、これだけでも使い勝手はずっとよくなります。また、写真7をよく見ると、座面を少し前に傾けてあることが分かります。これは痩せたお尻がトイレの穴にはまり込んで、立ちにくくなってしまう傾向があることを考え、取り入れている構造です。トイレの後ろを、前よりも2〜3cm上げてあげると立ちあがりやすいようです。もっとも最近は、既成品の中にもそのような、機能的な構造の座面を取り入れたポータブルトイレが出始めています。(写真9)

               

写真8 安価なポータブルトイレを少し高く   写真9 より機能的なタイプ

5端座位横移動用トイレ

 「Howto〜端座位横移動」のコーナーで紹介をお約束したトイレが写真10です。安価なポータブルトイレをバラして、座面とバケツだけを利用しています。板を二枚用意し、一枚目はバケツがはまるように、二枚目は座面がはまるように穴をあけ、二枚の板を螺子固定で1枚にしてあります。それに適当な長さの脚をつけてあります。慣れてしまえば製作時間は半日もあれば十分です。板の横サイズは、あまり布団に近いと衛生の問題もあり、横移動や座位保持の際にしっかり手をつけるよう、既成品の家具調トイレなどよりも若干広めにしてあります。大体、全幅で70cm程度に仕上げることが多いです。

写真10 手作り端座位横移動用ポータブルトイレ

6 私の結論、お薦めポータブルトイレはこれだ!

 長々書いてきましたが、やや独善的にでも私がもっとも望ましいと思えるポータブルトイレの規格についてまとめておきます。

@しっかり起立してトイレに移乗する方の場合
 安価なポータブルトイレにしっかりしたフレームを取りつけて、高さや傾きやベッドへの固定を良くしたもの。フレームのサイズは使用者の体格や動作能力により調節します。要するに写真7。(^_^;

A不十分な起立状態、もしくは端座位横移動で移乗する方の場合
 板に穴の開いた構造便座のトイレ、要するに写真10。(それに、適当な「起立介助バー」を併用する→機器のコーナー(5)へ)

 もっとも、家具調ポータブルトイレもしくは椅子型のポータブルトイレの中でよく考えられた製品の中には、それ一つで@/Aとも一度にクリアするような製品もあるようですが、高価ですね。(^_^;

7 その他の手作りポータブルトイレ

 写真11は、「男性立ち小便用ポータブルトイレ」です。(^_^; 既成品にはないですね。これは身体機能よりは痴呆の問題が大きい方用に作りました。足腰が弱くなってきているにも関わらず、長年の習慣から、どうしてもお尻を出して腰かけでお疾呼してくれないのです。(^_^;

 写真12は「和式しゃがみ用ポータブルトイレ」です。これもむしろ痴呆の問題から苦し紛れに作りました。ウチの施設には「和式トイレがない」のです。これは失敗でした。長年の習慣からどうしても洋式トイレを使ってくれず、トイレ室床の排水口に向かってお疾呼してしまうおばあさんに作ってあげたものです。(^_^; 和式トイレカバーを切って便器風にして、四角い箱を中に仕込んであります。箱を後ろに引き抜いて始末できるようになっています。

     

写真11 立ち用男性用Pトイレ      写真12 和式しゃがみ用Pトイレ

8 和式トイレを腰かけトイレにする「かぶせ便座」

 あとポータブルトイレではありませんが、関連機器として和式トイレにかぶせて洋式トイレにする「かぶせ便座」をここで紹介しておきます。和式トイレといっても、便器が一段高くなった所にあって大便器と男性用小便器を兼ねた「汽車式トイレ」といわれるタイプと、純粋な和式トイレがあります。

 写真13は汽車式トイレを腰かけトイレにする便座、写真14は和式トイレ全体を覆って腰かけトイレにする便座です。大がかりな改築はしなくとも、臨時にはこれでも十分です。

 

  写真13           写真14  

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