老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(42) 車椅子調整の例

車椅子調整の具体例5人さん

 これまでも、このHPでは車椅子に関する色々なノウハウを紹介してきたつもりです。ここらで実際の作業の様子をご紹介しましょう。5人さんの場合、です。写真が多いですが、ゆっくりお付き合いください。


Case1 車椅子で座位をとっていると下肢が左右に傾き、ずっこけ座りになってくるんですけど…。

写真1−1

 写真1-1がその様子です。ご相談の通りの状態ですね。でも、これはそんなに難しいことではありません。

写真1−2

 いかがですか?随分きれいな座り方になっているでしょう?また、両膝頭が自然に軽く開いていることにも注目してください。(写真1-1は、ヤラセでわざとに大きく姿勢を崩している、というわけではないんですよ。この状態でスタッフさんといらっしゃったんです。(^_^; (以下のケースも同じ))施行した調整は…

  1. 座面のへたりキャンセルのために、座面クッションの下に座面よりも一回り小さな板を敷く。<機器(41)>

  2. 足置き板の高さを適切な高さに調節する。<機器(9)>

 この2点のみ、です。写真1-1の状態のままでは、体幹下部(腰椎あたり)から骨盤にかけて、捻じれて横に曲がる「側弯変形拘縮」の発生が強く懸念されます。あるいは、股関節の内転拘縮発生の怖れですね。そういう変形をきたしてしまってから、さぁリハビリ!ということではなくて、写真1-1から写真1-2の状態になること自体が何よりのリハビリであること、それが日々のケアの一環というか、むしろケアの「前提」であることの重要性を感じていただけたら、と思います。


Case2 車椅子で座っていても、どうも安定しないでずっこけてきます…。

 相談内容はケース1とほとんんど同じですね。でも、どうも原因はもちっと複雑そうです。

写真2−1

 写真2-1では、原因を探るべく背もたれなしの端座位をとってもらっています。この写真で注目すべき点は、「骨盤が後ろに倒れかけていること」と、それなのに「頭を前に出そうと、背中が丸まっていること。」です。実はこの方、右股関節に屈曲制限がありました。写真2-1では手前側の股関節ですね。写真でも、屈曲せずに外旋に逃げてしまい、屈曲制限のある股関節の続きで骨盤が倒れていることが感じられると思います。
 残念ながらこの方は、初期状態での車椅子座位写真が残っていません。2-1のような感じで、もっとずっこけており、足部(下腿部)も捻じれて斜にフットレストの上に投げ出されていました。

 で、まずは以下のようなクッションを準備しました。(写真2-2)ロホクッションの沢山の空気部屋のうち、屈曲制限のある右股関節〜大腿部が乗る部分の空気部屋を根元から輪ゴムで縛りつけ、膨らまないようにしました。

写真2−2

 つまり、屈曲制限のある股関節〜大腿部の部分のクッションを潰して、大腿部を下方に逃がしてあげるわけですね。これは座面を切り裂いてしまった機器(35)ほどの強い拘縮でない場合に使えるワザで、ロホクッションでなくともお風呂マットを2・3枚も重ねてクッションとして、必要な部分を切り落とすことでも似たような機能を持たせることができます。
 さらにこの方、右足部が既に軽度の尖足拘縮状態ですので、足乗せ板をそれに合わせて調整しました。足乗せ板の後ろ半分にだけ、スチロール板を重ね乗せて踵が高く持ち上げられ乗せられるようにしました。その結果、写真2-3のようになりました。

 

写真2−3

 写真2-3では、右股関節が左よりも下垂していること、右足部が軽度尖足位にお辞儀をしてフットレストに乗っていることが分かると思います。


Case3 どうも安定しないで左右に傾いたりします。それで、「当てモノ」とかするのですが、今度は前に崩れてきます…。

 まぁ、色々な表現はできますけど、ご相談内容の状態は、似たりよったりですね。(^_^; 要するに安定しない、ということですね。

写真3−1

 写真3-2では、例の如く端座位をとってもらって、座位保持能力・身体変形拘縮の按配を確認しています。

写真3−2

 その結果、この方には問題となるような変形拘縮は見当たらず、むしろ端座位保持能力(筋力・気力?(^_^; )の不足していることが分かりました。で、車椅子の種類を代えて…

  1. 座面ベースのしっかりした車椅子にする。(写真3-3の車椅子は、標準でついてくる座面クッションの下に金属板がはじめから敷きこまれており、その金属板がフレーム構造の一部となっています。)

  2. 座面幅は、必要最小限とする。(この車椅子は、座面幅を36・38・40cmに調節可能なんです。すごい!)

  3. 車椅子の側板・肘置きは、身体の傾きが起きないように高さを上下して調節する。(この車椅子は、肘置きの高さも調節できるんです。(*_*))

  4. 背シートを、ご本人の端座位保持能力に合わせた形状に調節する。(この車椅子は、標準で背シート調整機能がついています。)

  5. 思い切り低床として、移動時以外は足をしっかり床に下ろしてもらう。

写真3−3

 その結果、当てモノも不必要にあり、(残念ながらここではモザイクがかかっていますが)顔もしっかり前を向いてくれるようになりました。


Case3 標準型車椅子を使っていますが、当てモノしても身体が左に大きく崩れ、しかも前に滑ってくるので「またぐりベルト」で抑制固定しています…。また、食事は介助なんですが、“食べ”も悪いです…。

 

写真4−1a・b

 さぁ、段々とシビア〜になってきました。ちっとはお役に立てるか?この段階ではこっちもドキドキものです。(←マジです。)

この方の場合、身体状況を確認すると、身体の変形拘縮までは起きていませんが、筋緊張の亢進・左右のアンバランスが強く、また痴呆〜理解力の問題も大きいことから、一発、新兵器の投入となりました。

写真4−2

 ティルト型車椅子に座ってもらうだけで、こんな感じです。正面からの写真が無いのは残念ですが、左への傾きも改善され、股関節〜下肢全体の伸展筋緊張も弱まっています。要するに、「リラックス」して座っている状態となれました。食事も上手に食べられるようになりました。

 しばらくこのリラックスした状態で過ごしてもらえば、筋緊張の亢進や左右のアンバランス具合も改善してくるかもしれません。そういう好ましい変化が得られれば、改めて標準型車椅子を調整の上で使えるようになるかもしれません。

 また、そのような“改善”が得られなくとも、写真4-1のような状態でこの先を過ごせば、体幹の側弯変形・下肢の伸展拘縮が起きてくるのは時間の問題と思われます。写真4-2のようなリラックスした状態で過ごせてもらえれば、そのような好ましくない問題の発生を少しでも防ぎ、先延ばしにできると思います。


Case5 デラックスリクライニング車椅子を使っていますが、とにかく車椅子の上から滑り落ちてくるし、何だか全身屈曲拘縮が強くなってきているようです…。

 

写真5−1a・b

 何だかよく見かけますね、この姿勢。(^_^; この方の場合、車椅子がデラックス型で、背もたれとフットレストエレベーティングが連動していることがミソでした。(背中を倒すと自動的に足も上がる、背中を起こすと足も下がる)この方が、デラックスフルリクライニング車椅子を使うと…

 という、状態でした。つまり、ご本人の身体状況と車椅子の規格が合っていないのです。(何だか同じような言い回しを、HPのアチコチに書き散らしているような気がする。(^_^; )そこで…

 背シートとフットレストエレベーティングの連動を、外してしまって背中の起こし具合とフットレストの上げ具合を別々に設定できるようにしました。(写真5−2)車椅子をひっくり返してよ〜く見てみれば、どのネジを一本外せば良いのか?理解できます。

写真5−2

 で、背中の起こし具合と足の下げ具合をそれぞれちょうど良く設定した様子が、写真5-3です。分かりやすいように5-1aも並べておきましょう。

 などの違いに注目してください。そして、これらの違いから、例えば食事摂取の状態がどう違ってくるか?想像してみてください。写真5-3の右端に写っているスタッフさん、ご本人の状態があんまり違って嬉しくて仕方ない様子まで写しこまれています。(^_^;

 

写真5−3            (再掲:5−1a)


 こういう車椅子調整は、私の日々の仕事の重要な一部分となっています。まだご紹介できるケースもありますが、いいかげん長くなるのでこれくらいにしておきます。

 それから、このページの5人さんのうち、半数以上の方々が不定期にでもPT・OTリハスタッフさんとの関与があるそうです。例えば、老健勤務の先生方がとても忙しいことは重々承知しておりますが、例えご自分で施行できなくとも、介護スタッフさんに適切なアドバイスはいただけないものでしょうか?まぁ、この5人さんの中には「こんな超慢性期の方は、とっくにPTの適応外です。」と言われた、なんて方もいるようですけど、いっくらなんでもそれはないんじゃないかなぁ?(^_^; そのケースさんとの長い関わりの経過の中で、様々な事情はあるのかもしれませんが…。

コーナートップへ ◆HPトップへ ▲総目次へ