老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器-(47) 尾骨褥創用クッション
はじめに
最近は、『目を覆いたくなるような(特に仙骨部・大転子部の)褥創は少なくなった』と、つくづく思います。(いかがですか、中年以上の皆さん?若い人で「骨まで見えてる褥創」って、そう見たことのある人はいないんじゃないかな?←自慢にはならんけどね。)
それは、施設介護場面におけるスタッフさんの努力・在宅介護場面でも介護用ベッドやエアマットの普及・ご家族の介護についての知識技術向上や在宅介護への支援の充実・社会全体の「寝かせきりの弊害」に対する認識の深まりなどが理由でしょう。確かにまだまだ問題も多く、十分とは言えない「介護保険制度」および「この国の介護状況」ですが、昔よりはね、良い時代になった、とも思います。
同時に、車椅子に座って長い時間を過ごすことが当たり前になっています。そして最近、『車椅子に座っているが故の“褥創”』が私の身の回りでも頻繁に見られるようになってきました。昭和60年頃?「寝かせきりの弊害」を一生懸命訴えていた頃は、『車椅子に座っていてトコズレができた人がいたら教えてください。(頑張って離床したことを)褒めてあげます。』なんて冗談を言っていたものですが、それが本当に珍しいことではなくなってきたわけです。
尾骨褥創の位置
さて、このページで取り上げようとしている褥創は、寝たままでいるために起きてくる褥創=仙骨部・大転子部・肩甲骨部や後頭部といった“褥創好発部位として教科書に図示してある場所”とは違います。下図をご覧ください、このページで取り上げるのは、『尾骨先端部背面』の褥創です。体表面からは、よほど痩せている方でない限り、『殿裂(お尻の割れ目)の中に、少し入ったあたり』で、場合によっては『お尻のお肉を、左右に広げるようにしないと良く見えない』ような場所です。この説明でピンとこない方は、自分のお尻で確認したり、彼氏や彼女のお尻を見せてもらったり(指先で皮膚下の尾骨を)触ったりしてみてください。(^_^; 場所から言っても、それほど大きく広がることは少ないようですが、同時になかなか見つけられずにいたりします。

尾骨背部褥創の位置
尾骨褥創の原因
では何故に、こんな場所に褥創ができるのでしょう?原因はズバリ、『車いす上における“滑り座り”』です。いや、学術的に確認されたことではないので断定はいけませんが、HP管理者としては、『現場での経験上の確信』をしています。
これは割合簡単に、自分の身体で体感できます。車椅子やほどほどのクッションの効いた事務椅子などで、1:お尻を座面上で前に滑らせ、2:骨盤を後ろに倒して腰部を背もたれにあずける、3:脊柱を湾曲させ円背になる、と、私たちには苦しい姿勢をとってもらうと、次のことが体感できると思います。
1:完全に浮いているわけではないが、坐骨には体重がきちんとはかかりきらない。
2:寝ている時には圧迫される仙骨面が、座面に当たるわけでもなく背もたれに当たるわけでもなく、宙に浮いている。仙骨のすぐ上の下部腰椎も浮いている。
3:円背になった背中の一番後ろに飛び出たところが、背もたれに圧迫されている。
そして次が肝腎ですが…
4:尾骨が座面に突き刺さるように、あるいは小さな尾骨の小さな背面に、もろに体重がかかっている。
いかがですか?ご自分の尾骨で体感できますか?この状態で放置しておけば、そして自分で座位姿勢をゴソゴソできない方ならば、当然褥創ができてしまいます。
つまり、尾骨背面の小さな褥創というのは、『車椅子の不適合による不良姿勢(滑り座り・ずっこけ座り)による褥創』ということです。
尾骨褥創の対応
まずは、不良姿勢を直すこと=車椅子の適合を図ること、ですね。上記「体感コース」の、2:3:に注目してください。このあたりが、『難儀さ』の大きな原因でもあり、尾骨だけに体重が集中してしまう原因でもあります。
「気をつけ座り?」つまりきちんと骨盤を起こして脊柱を真っ直ぐにした座り方ができるのならば、それで尾骨への圧迫はなくなりますのでそのように車椅子を調整します。あるいはすでに脊柱が円背で固まっているようだと、すでに「気をつけ座り」はできませんから、後傾して浮いている骨盤仙骨面や腰椎下部をきちんと支えるようにします。また、座面もスリングシート張りのままなんてのは論外で、きちんと体重分散するようなクッションを用います。この辺りは、はっきり言ってホームページでの説明限界です。(^_^; 実物を手にしながら実際に体感していただくことが何よりの理解につながるのですが…。(研修会宣伝の臭いがプンプン…(^_^; )
で、まぁそんなふうにきちんと対応していれば、かなりの程度、尾骨褥創の発生は予防できるはずです。それでも既にできてしまった場合、改めて上記車椅子適合調整をきちんと行なった上で、下のような写真のクッションを用います。

尾骨褥創対応手作りクッション
これ、100円ショップのクッションを、介護スタッフさんが改造してくれました。上の写真だけ見ても、かなり円背がきつそうな人のための車椅子、というイメージが湧いてきませんか?(座面が縦に長い、体幹部も含めて横に狭い、など)もっともこの写真では、上で説明している「仙骨面や腰椎下部の支え」が写っていません、というか、このケースでは省略。(^_^; まぁ、そのへんはケースバイケースです。一旦できてしまった尾骨部の褥創、2週間ほどですっきり綺麗に治りました。