老人介護についての個人的HP-介護福祉機器(50)-車椅子座位調整作業手順

全ての方に共通する車椅子座位調整の具体的な作業手順

 このページの原型は、04年3月の日総研セミナーに参加してくださった方へのフォローアップページでした。7月の2回目研修会ではこのページの内容も一応時間内に行なったのですが、時間切れで不十分なものになってしまいました。

 まぁもともとそれほど大した内容じゃなし、とも思えるし、一定期間も過ぎたので、セミナー参加者さまかどうかは関係なく公開します。また公開にあたって、できるだけの増補も加えておきました。

 で、車椅子座位調整のための『評価手順〜作業手順』ですが、これは研修会でも発言したかどうか?車いす座位調整を、特定の資格制度にしよう!(車いす調整士みたいな)という話があるくらいですから、はっきり言って奥が深く、簡単にモノにできるとは思わないでください。ただし、以下を見れば分かる通り、そんなに特殊な、特別なことをするわけではありません。ただ、触って、見て、考察して、判断する、ということです。(^_^;

 ただし、以下の手順は「PT大渕の場合」であって、学術的?にこれが絶対正しい方法、というわけではありません。でもまぁ、日頃から車いす座位調整作業に取り組んでいる方ならば、大体似たような過程を辿っているのでは?と、勝手に想像しています。また、反対に車いす調整を行なう場合に、まずは必ず以下のような検討をしないといけない、ということでもありません。害にならない限り、色々試してみる、ということでも良いのです。以下の過程は、私はこれでも一応PTである、という屁のようなツッパリ意識と、それでもこんな過程を経れば少しでも作業効率が良くなり崩れの真の原因を見極めることもできるかな?というところです。

●研修会で出たご質問『評価用モジュラー車いす』について

 第1回目研修会当日、療養型病棟にお勤めのPTさんから、『車いす選択評価用モジュラー車いすを導入しようか?との案が出ているが、どう思うか?』と、ご質問を受けました。このことについて、改めてまとめておきます。

・車いす選択評価用モジュラー車いすとはどのようなものか?

 要するに、その方にとって一番望ましい車いすの形とサイズを色々に試すことのできる車いす、です。研修会でも説明したような車いすの沢山の構成要素それぞれについて、細かく調整設定することができます。物凄い大がかりですし、高価です。

・導入をどう思うか?

 あればこんなに嬉しいことはありませんが、私は使ったことはありません。(そういう立派?な施設で働いたことがない(^_^; )そして、無くてもやっていける、とも思います。同時に、それほど欲しい、とも思いません。
 それほど欲しいと思わない理由として、評価用モジュラー車いすで最適な形やサイズが明らかになっても、今の制度では所詮オーダーメィドでそれと同じように車いす作成することはできない、一般的な市販品せいぜいが簡易モジュラーで対応していかなければならない、という現実がある。2点目として、評価用モジュラー車椅子を何らかの形に設定するにしても、結局は以下に説明するような「本人の様子を確認する」という前段階がなければ使えない、反対にそれができれば最初から簡易モジュラーなりをあらかじめ望ましいと思われる形に調整して試みていくことができる。

くらいが、正式?な私のお答えとなります。

 以下に付けた写真と文章は、あくまでイメージするための「例」です。これだけをチェックしているわけではありません。なるべく色々とみますし、障害要素なりを見落としてしまって、あとから段階を戻ることもあります。


※実際の車いす座位検討作業の手順

1:現状での車いす座位姿勢の問題点の整理 & 調整目的の確認

 辷り座りになる、横に崩れる、タイヤをこぎにくい、etc・・ & とにかく安定してよい姿勢を保てるようにしたい、車いすでの作業や食事の実用性を高めたい、など。できる限り、問題点と目的を具体的に明確にしておく。そうそう、そのまた大もとに、「車椅子を何のために使いたいか?」という使用目的も明確じゃないといけませんね。反対に、「調整がうまくいけば、あんなふうにも使える」ということもおきてきます。例えば、これまではすぐに崩れて長く座っていられなかったけど、ある程度の時間を良い姿勢でくつろいですごせるようになる、などですね。

 次いで、2へ。  

2:ベッド上臥位にて座位のための可動域の確認
 臥位にて、膝・股関節屈曲回旋角度の確認(屈曲位90度をとれないと座位に障害あり、特に膝に伸展制限がないか?股に屈曲制限がないか?また、股関節に外旋拘縮がないか?注意。さらに左右両股関節同時屈曲で骨盤後傾の代償運動が起きていないか?注意。中には円背のため、背臥位になれない人もいる。)


『臥位の状態で、ヘンな変形や捻じれはないかな?』


『足はちゃんと曲がり伸びるかな?』


『両足を曲げた時に腰が丸まらないなかな?』(骨盤後傾腰椎後弯代償)

ここで、可動域が極めて不十分ならば、強いリクライニングもしくはティルティング、ということが多い。
もう少し詳しく例をあげると・・

 などなど、臥位の段階での可動性のチェックで、色々なことが判断できます。その上で、それなりの可動域あり、ということならば、3へ。

3:静的端座位保持状態の確認

 できれば、『35cm・40cm・45cm』それぞれの高さの腰かけ台を準備して、そこに腰かけてみてもらいます。


『ありゃ、横になってるときは真っ直ぐだったのに、腰かけたら背中が丸まるねえ。』
(この方は機器(42)で紹介している通り、右股関節に屈曲制限があり、
この台は低いために膝が突き上げられて骨盤後傾代償していると同時に、股関節が外旋に逃げています。)


『こうなりゃ、右から腰と大腿付け根だけでも支えてみよう!背中の支えはこの辺かな?(介助者の腕の上下前後位置)』
(これだけで端座位が安定し、背中の伸びる方もいます。としたら、車椅子上での骨盤帯全体の支持固定が問題となるわけです。)

 ここで、背もたれ・側板のない端座位保持をできない、不安定、つぶれていく、などの状態ならば、ある程度のクライニングもしくはティルティングにて、座面背もたれに配慮しつつ特に頭部について少しでも抗重力位で安定を図る、ということが多い。
ある程度、静的座位保持可能ということならば、4へ。

4:動的座位保持能力の確認

 もっとも安定して腰かけていられる高さの台に座ったまま・・

 なお、厳密にはここでつかう台の「高さ」は、そのまま「車椅子の座面高」になるわけではありません。原則としては、「車椅子の座面〜フットレスト蒿」になるわけです。


『う〜ん!とばかりに腰を伸ばしてみよう!』(自力で骨盤の起立と腰椎前弯できるか?)


『腕と身体を前に出せるかな?』
(座面傾斜が後ろに下がってもできるかな?平らのままの方がいいかな?)
(この方は、この段階で既に後傾骨盤サポートバスタオルを使っています。→HPでは未掲載)


『腰かけながら、身体を捻って横の物に手を伸ばせるかな?』
(これは“集団体操”でも行なう動作です。)

 例えばこの写真3点が、まともに可能な「車椅子使用者」は、むしろ稀です。ここまでできれば、きっと立てるし歩ける。(^_^;
ただ、どこまでできるか?車椅子がどうあれば少しでもできるか?車椅子をどれくらいに能動的に使えるか?をみている訳です。

※以上、それぞれの場面で、「痛み」「恐怖心」が生じないか?
※まずは静的座位の安定化を図り、ついで、可能な限りの動的座位能力を引き出す車椅子形態を考える。
※以上の検討により、本人の座位保持能力と必要な調整〜サポート内容に見当をつけた上で、当初の車いす調整目的とすり合わせ、目的実現のために無理はないか?より高価な専用車いすは必要ないか?とりあえず可能な対応内容から、どの程度まで目的実現が図られるか?検討し、実施する。

5:以上を踏まえて、これまで使っていた車いすに手を加える、もしくは別の車いすを調整した上で、座ってみてもらう。必要ならば、1〜5を必要な段階から繰り返す。

6:そうそう、1〜5までのうちに、ご本人さんの理解力・意欲・情緒面など、精神面も把握に努めます。特に車椅子調整の結果、危険が生じることの無いように考慮します。

※以上のような、車いす座位検討作業を進める上での、大原則

●車椅子座位姿勢調整の2方向:静的座位の安定化(安楽化)と動的座位能力の促進を、意識して。

●座位姿勢調整の基本原則
 a:その車椅子の使用目的に応じた座位姿勢を考える。
 b:骨盤〜脊柱〜肩甲帯と、中枢部からの安定と固定を図る。
 c:同時に、頭部の空間に対する位置姿勢安定を考える。
 d:静的座位安定化のためには、3点固定の原則を考慮する。

今のところこれくらいが、『俺流』です。


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