老人介護についての個人的HP-2 介護福祉機器- (6) 歩行器
HPのあちこちに、「次は・・」とか「なるべく早く・・」とか書きちらし、一向に整理できずに大変申し訳なく思うのですが、何の脈絡も無く突然「歩行器」にいきます。(Howtoの@で、予告はしています。(^_^; ) 「歩行器」も、様々なタイプのものがあって実際に色々使われている割には、その適応や向き・不向きがきちんと整理されてはいないように常々感じております。以下に整理を試みてみます。
1,脚・キャスターの有無による分類 〜 a,4輪型 b,前2輪・後ポイント型 c,4ポイント型
2,上肢支持のタイプによる分類 〜 a,手掌把持横型 b,手掌把持縦型 c,肘つき可能型
3,上肢支持の位置と、脚支持の位置関係による分類
〜 a,上肢支持点が4脚の間で肩幅よりも広いタイプ b,4つの脚よりも上肢支持点が後で肩幅よりも狭いタイプ
いかがでしょうか?介護現場を良くご存知の方ならば、上のような分類説明でそれぞれに、思い浮かぶ歩行器のタイプがあるのではないでしょうか?それぞれの構造にそれぞれの「特性」があります。大まかには次のようになります。
※車輪・脚の別:「4輪=移動が楽」 vs 「4ポイント=安定が良い(体重を支える)」
※持つ腕の形:「横把持=前後バランスを支持」 vs 「縦把持=左右バランスを支持」 vs 「肘つき=体幹伸展を介助」
※持つ腕の位置:「上肢支持が4脚の間で肩幅よりも広い=体重を効率良く支え、左右バランスも支持」 vs
vs 「上肢支持が4脚の後ろで肩幅よりも狭い=前後バランスのみ支持」
より詳しくは、以下で実際の製品の写真とあわせ、説明していきます。
1,U字型歩行器(写真1、分類;4輪-肘つき-4脚の間で支持)
施設内で使われている歩行器と言えば、まずは「これ」ですね。4輪で、高さ調節により肘までを歩行器にあずけることができ、身体を起こすことができます。歩行を助ける度合い〜「介助度合い」は割合に大きいのですが、時に「歩行器だけ先に進みすぎてしまう」ということが起こります。それから、あまりに腰が激しく曲がった方には相性が良くないようです。そのような場合は次に述べる「4ポイント」か「2輪2ポイント」タイプのものが良いでしょう。
この歩行器、適合さえ良ければ大変頼りになりますが、原則として「極めて整備された洋式環境の中だけ」でしか使えない、と考えてください。大きいので持ち上げることも出来ず、小回りも効きません。従って、特に段差の多い、そして廊下などが手狭な和式の一般家屋内では、まず使い物になりません。ですから、施設から自宅に帰る予定のある方や、ショートスティ中の方などに対して漠然と使うべきではありません。
また、4輪の中で「前2輪がフリーキャスター、後ろ2輪が固定キャスター」というのが一般的(写真1もそう)ですが、中には「4輪ともフリーキャスター」という製品もあるようです。これはいけません。(^_^; ショッピングセンター内の買い物カートが4輪フリーだったりしますが、フラフラして一向にまっすぐ進んでくれませんね。歩行器につかまった途端に、ま横へズズズーとずっていく、ということになりかねませんので、施設備品として準備される場合はご注意ください。そうそう、「大人用」では高齢者には大きすぎる場合がほとんどですので、「中人用」で準備してあげてください。
写真1 U字型歩行器
2,乳母車歩行器(写真2、分類;4輪-横把持-4脚の後ろで支持)
これは割合に街中で見かけることの多いタイプですね。ホームセンターなどでも売っているようです。これも4輪ですが、握りを持つ形が「横に握る」形になり、しかもその位置は4輪のうちの後輪よりも、さらに後ろになることが普通です。そして握る「幅」は、むしろ肩幅よりも狭くなってしまいます。この形ですと、歩く時に身体が左右に動揺するような方にとっては助けにはなりません。むしろ激しく腰が曲がった方が、前方に腕を伸ばしてその先ですがるのにちょうど良い形となります。つまり、前後方向のバランスをとるのに都合が良い訳です。もっともあまりに腰曲がりが激しいと、押し車の前輪が浮いてしまうことがあります。そのような時には、「荷物入れ」の中に5kgくらいの重りをいれるとちょうどよくバランスがとれるようになります。
このタイプは、やはり一般家屋内では使いにくい形となります。デザイン的にもそうですが、歩行器を押す姿勢で歩行器の前端から腰の位置まで、とても距離をとりますから、狭い家屋内では自由に歩けません。そんな場合は、以下のタイプの中から屋内用に選びましょう。
写真2 乳母車型歩行器 写真3 同機能のタイプ
3,フレーム箱型歩行器(写真4、分類;4ポイント-縦把持-4脚の間で支持)
このタイプには、キャスターが全くついていません。ただの箱型のフレームです。キャスターがついていませんから、足と同時に前に進ませながら前進するわけにはいきません。まず歩行器全体を持ち上げ前に出してから、次に両足を交互に運ぶことになります。両足を運ぶ時には歩行器はしっかり地面に立っていますから、キャスターのようにずったりはしません。つまり、極めて安定が良く、体重もしっかりと支えてくれるのです。「歩行訓練用平行棒」を「持って歩く」というイメージでしょうか?ですから歩行介助度合いは極めて高いと言ってよく、やっと歩けるか?という方にはこのタイプを使うほか、「歩行練習用」として一旦歩けなくなった方が再び歩き出す際に使われたりします。
ただし、上記の使い方をみれば分かる通り、歩行の効率は良いものではありません。また、一旦持ち上げて前に振り出すという使い方は、初めはどうしても馴染みにくいようで、痴呆のある方は使いこなせなかったりもします。反対に、一旦持ち上げて使う物ですから、多少の段差があっても大丈夫なことが多いようです。それに床を痛めないですね。現状以上に広く使われるようになって欲しいタイプの一つです。
写真4 4ポイント型歩行器
4,ロレータ歩行器(写真5、分類;前2輪後ろポイント脚-縦把持-4脚の間で支持)
これは、前がキャスターで後ろが脚ポイント、というタイプです。4キャスターでは歩行器が軽く前に進みすぎてしまう〜4ポイントではまだらっこしい、というそれぞれのタイプの欠点を補っています。4キャスターのように、足を運ぶのと同時に押しながら進むこともできますし、4ポイントのように、一旦歩行器だけ前に進めておいて、次に足を運ぶこともできます。(その際には、後ろのポイント脚がしっかり体重を支えてくれるわけです)
このように、大変に適応が広く、使い勝手の良いものなのですが、大きな欠点があります。それは後ろのポイント脚を引きずっていくことになるために、床を痛めたりギギギーというような音を立ててしまいがちなのです。(ですから、大抵は写真のように「布でキャップ」をして、せめて改善を図ります)その欠点を、クリアもしくは黙認さえできれば、歩行器としてお薦めできるタイプです。
ただし、このタイプは屋外では使えないですね。まさかアスファルトや砂地を、引きずっていくわけにはいきません。

写真5 ロレータ歩行器
5,小型4輪歩行器(写真6、分類;4輪-縦把持-4脚の間で支持)
最近はこのようなタイプの歩行器も見かけるようになってきました。かっこいいですね。(^_^; 年寄り臭くなくて良いですね。基本的には4キャスターで縦把持タイプですが、キャスターが大きくて屋外でも使えます。また、全体を軽めに仕上げてあれば多少持ち上げることもできますから、少々の段差がある家屋内でも使えると思います。
ただし、このタイプは今のところ「輸入品」が多いようです。そのせいか、サイズが日本の高齢者には「大きすぎる」ということが多いようです。写真の歩行器もカナダからの輸入品ですが、握りを一番下までさげても小柄なおばあ様には、まだ高すぎます。腰かけられる構造にもなっていますが、座面高は55cmもあって日本の家具椅子よりも10cm以上高くなっています。(^_^; 無理に座ろうとすると、かえって危ないかもしれません。国産品もありますが、どうも全体の剛性やキャスターの品質などでは、今のところ輸入品にはかなわないようです。それに国産品は横把持タイプが多いようで、本当に歩行の助けとしたい、という時に不満が残ります。
使用目的を屋内に限定してキャスターを小さくおさえれば、写真7のように安価に手作りした品物でも、十分に役に立ちます。

写真6 小型4輪歩行器 写真7 同タイプの手作り品
一通り、歩行器のタイプ別に説明をしてみましたが、これではまだ、実際にどの歩行器が良いか?ということが分かりにくいと思います。そこで、より明確に選択ができるように、まとめてみたいと思います。ただし、これはあくまで「原則論」であって、実際には「試してみる」という作業が必要なことが多いです。
@本当に歩行を助けたい時は、横把持タイプよりも縦把持タイプを選ぶ
腰の曲がった方が膝に手をつく代わりに歩行器を押す(乳母車タイプ)以外の場合は、「縦把持タイプ」のものが歩行を効率よく助けてくれます。
A膝の変形(俗に言うO脚変形)がある方
絶対に縦把持タイプとし、同時に肩幅よりも広めに、そして上肢支持点が脚の間にくるタイプのものが良いです。歩行時の身体の左右動揺を支えてくれます。ロレータタイプが良い適応だと思います。左右動揺のある方は、乳母車タイプのものはほとんど役にたちません。
B腰が激しく曲がっている方
屋外では乳母車タイプでよろしいでしょう。屋内でも歩行器が必要であれば、小型の4輪歩行器で対応できると思います。
C足腰の力が全体に不足して歩行が安定しない方
ずばりロレータタイプ、もしくはフレーム構造の4ポイントタイプのものが良いでしょう。脚力の不足している方が4輪タイプのものを使うと、時に歩行器だけ突進してしまいます。
U字型歩行器を肘つきで使うのならば、自然な立位姿勢での「肘の高さ」に合わせてあげれば良いことになります。それ以外の場合〜手掌で縦、または横のバーを把持する場合には、杖の長さのあわせ方と同じ考え方で良いでしょう。つまり、自然な立位姿勢における「足のつけねの高さ」ですね。(解剖学的には大腿骨大転子の高さ、となります。)分かりにくければ、「骨盤のグリグリ(腸骨稜)よりも少し低いくらい」というあわせ方で大体あうはずです。もちろん、実際に使ってみて多少の調節を加えることは、一向に構いません。→ 訂正!
もう4年も前に書いた文章なんですが、歩行器の握りの高さって、「少し高め」を好まれる方が多いですよね?確かに真上から地面に向かってつく杖よりも、腕は前外側に伸びるから、杖よりも高くても良いように思えます。では、何を基準にしたらいいのかな?と思っていましたら、ようやく で、「押しやすい荷車の取っ手の高さ」という資料がありまして、そこから『骨盤の上前腸骨棘、もしくはおへそを握りの高さの基準とする。』に、訂正したいと思います。(→機器(43)高齢者のサイズについて)