老人介護についての個人的HP-5 思索 - (13)「生活リハビリ」という言葉
最近は「生活リハビリ」という言葉が当たり前のように使われています。施設の「宣伝文句」に使われたりもしています。ところが改めて「生活リハビリとは何か?」「生活リハビリとは何をするのか?」と具体的に考えてみると、その中身は極めて曖昧であることに気づきます。積極的にレクを取り入れたり生活動作をできるだけ自立させていこうとしたり、というイメージがありますが、それではこれまでのケアと何ら変りません。
そこで、このページで「生活リハビリ」について私なりの考え方をまとめておきます。まずは基本となる「障害」の段階・種類についてから。
日本語の「身体障害」も、英語で言うとimpiarment(機能障害)=例えば手足の麻痺の状態そのもの。disability(能力障害)=例えば手足の麻痺で歩けなくなっている状態、同じ麻痺でも若い方なら歩けるが高齢者だと歩けないというようなことが起こる。handicap(社会的不利)=機能障害や能力障害のために受ける社会的な不利益。と3つの段階・種類に分けられます。機能障害の回復には医学治療に限界がありますが、能力障害は時間をかけて練習し軽くしていくこともできます。社会的不利では、むしろ「回りの人達の態度」が決定要因になります。急性期病院の治療やリハビリ訓練では機能障害を主に扱い、施設や在宅場面では能力障害や社会的不利を主に扱う、ということになります。
『リハビリ』という言葉は極めて広い概念で、例えば上の3つの段階それぞれに対する方法論や技術があります。「生活リハビリ」とは上記3段階のうち、「能力障害」に対して「できるだけ自分で生活動作をやっていってもらおう」という考え方や、それよりも大切なのはむしろ『「社会的不利」に対して「高齢者がいかんなく能力を発揮し生き生きと暮らしていけるようなケアを“回りの人が行なっていこう”」という考え方であり運動』です。もう少し厳しい言い方をすると、「これまでの病院のあり方や施設内ケアは、むしろ高齢者をダメにしていたのではないか?」という真摯な反省が基礎となります。ですから、「生活リハビリ」運動で変えていこうとしているのは高齢者さん本人ではなくて、まずは私たちの態度そのものなんですね。「生活リハビリ」とは技術論や技術体系であるよりは、まずは「理念・考え方」なんだと思います。そこを勘違いすると、「病院リハ」と「生活リハ」を対比させたり対峙させ対立させたり、「生活リハ」は素人にもできるとか「生活リハ」は専門的でない、などという言いまわしがされたりします。病院で行なわれる機能訓練と生活リハは、とりあえずの目的も方法論としての概念の異なるものですし、素人でもできるとか素人が取り組む非専門的な貧しい方法論であるというように、いかにも「技術論」であるかのように扱うのは間違いなのです。
そのあたり十分に理解できれば、「生活リハビリなんて・・」という言い方をしたり、反対に「ウチでは生活リハに積極的に取り組んでいます」とか、そう簡単には口にできないと思うけどなァ。(^_^;
このページをアップして、もう2年半も経つのですが、どうも自分でしっくりいきません。何でかな〜と思っていたら、大事なキーワードが抜けていました。今回、長崎学会さんでお話するにあたって、ようやく自分でも納得のいくまとめができましたので、ここに格納しておきます。
生活リハという概念について
「生活リハ」とは、上にも書いた通り「日常生活動作の全てがリハビリ」ということではないし、また、レクをするのが生活リハでもありません。三好氏の主張の主眼は、
『高齢者の寝たきりや痴呆の原因は、その個体の医学的な内因によるものではなく、私たち(援助者)との“関係の障害”によるものであり、また“関係の障害”による“生活の破綻・生の破綻”こそが寝たきり・痴呆の原因である。その失われた“関係と生活”を取り戻すことが「生活リハ」ということである。』
ということです。そのための技術や方法論は、決して体系化され整理されているわけではありません。少なくとも、自立・治癒を目指した治療医学やリハビリ観では通用しないし、要素的自然観ではなく援助者自らのあり方こそが問われる、という世界です。つまり、要介護の高齢者さんは、私たちにとっての“客体たる援助対象”ではないのです。お年寄りのありようは、私たちのありようの反映です。彼と私の関係が彼のあり方を決めているのであって、彼をどうこうしようと言うのではなくて、私が変わり私と彼の関係が変われば、その時、初めてお年よりも変わる、ということです。こう考えれば、患者さんの異常な部分を着目してそこを治そうという医学教育を受けた専門職さんほど、以上のような概念にはなかなか自身を切り替えられない、ということが理解できます。いや、これはこれでなかなか厳しい世界です。一旦切り替えができてしまうと、パッと目の前が広がるような感覚が持てるものなんですけど。(^_^;
まぁ私がぐちゃぐちゃ言わなくても、三好さんご自身がそのものずばり『関係障害論』という本を出していますから、関心のある方はこれを読んでみたらよいでしょう。お勧めです。