老人介護についての個人的HP-5 思索 - (17) 介護保険におけるリハとPT/OT
さっちゃん、難しい宿題をありがとう!(^_^; 自分の中では解決のついているつもりの問題なのですが、全体システムとしての介護保険制度の中での問題となると、なかなかに難しいです。
まず、リハビリってのは「特別に何かをやる」ことよりは、日々の暮らしの中にこそってこと、そんなことはもうお分かりですよね?日頃寝かせきりにしておいて、週に何度か30分1時間起こしてリハビリしたってどうしようもない。そういうのを「アリバイリハ」っていうんです。(監査用リハとも言う(^_^; どうしてもそれくらいしか起こしてあげられないとなれば、無いよりはマシですが・・)
そうなると、介護全体そのものがリハビリの考え方に立脚したものであるってことになるし、そうでなくちゃいけないと思います。介護だけではなくて、あくまで一人の人間総体を扱おうという医療・看護・福祉・教育、全てがそうですね。PT・OTが「リハビリ専門職」というのは、「リハビリテーション」の中の「医療的リハビリ」の中の「理学療法・作業療法の専門家」ということでしかありません。
私はまじめに、老人介護の世界で第一のリハビリ施行者?さんは介護職の皆さんだと思っています。お年よりが元気になるのもダメになるのも介護次第、ですよね。介護職さんが機能訓練を行なう、というのではなくて、食事排泄入浴移動介助会話、日頃の何気ないケアの継続が、何よりもリハビリ機能を果たす、ということ。
となれば、ケアマネさんが組み込もうと組み込まないと、あらゆる介護保険援助の中には絶えずリハビリという考え方が機能しているはずですし、そうでなくちゃいけない、とも思います。(まぁそれが拙HPで一番訴えたいことの一つでもあります)
そうではなくて、「特別プログラムとしてのリハビリ」これはどう考えれば良いか?それがなかなかに難しいし、それがさっちゃんの疑問に近い部分だろうとも思います。
まず、上記の基本としてのリハビリ機能が日頃のケアで実践されていないと、「特別プログラム」がやたらと必要になります。「うちでは回想療法して効果を上げています」(日頃の介護場面で寮母さんとゆっくり昔話なんてしないのかな?)、「ワンニャン訪問のペット療法でお年よりに笑顔が戻りました!」(ウチの施設じゃ毎日犬が走りまわっているよ!)そんな落とし穴にはまらないようにね。
でね、日頃のケア場面以外の特別プログラムリハビリの必要性ということを考えると、以下のように整理できるんじゃないかな?
@イベントリハビリ・アメニティリハビリ
これはさっちゃんが「うちの病院の患者さんたちは、リハビリに行くことをとても楽しみにしています。リハビリに行くってことが毎日の張り合いになっています。」とお書きになっていることと非常に近い。リハビリ室で足腰を暖めてもらう、集う仲間とおしゃべりをする、ちょっと頑張って動いてみる、いずれも「活動的な生活の一場面」として位置付けることができれば、それはそれで良し。本当に治るか?機能向上するか?は二の次、ですね。〇〇療法も、日頃のケアが充実している上で、さらに上乗せの形で行なわれるならそれで良いと思います。
でもね、これは「必須」ではありません。日頃のケアが充実していれば(例えばリハビリに行く以外に何かに張り合いが持てれば)それでも良いわけです。さっちゃんがお書きの通り「全員に・・」って訳にもいかないし・・。
A身体管理/装具・車椅子・歩行器・杖等処方適合管理としてのリハビリ
介護職さんでは難しいガンコな患側片麻痺肢のストレッチ、痛み取りの徒手療法、装具や車椅子の検討や適合チェック、確かにそういうことにはPT・OTが関われれば良いですね。機能向上を目指したリハビリではなくて、日々の生活の管理の一部としてのリハビリです。だから、毎日とか多頻度にでなくても良いのです。たまに、でも良いからPT・OTが関わる場面が持てれば、と思います。
B積極的な機能訓練としてのリハビリ
これは急性期医療機関でやっているような積極的な(時には難儀な苦しい)機能訓練のことを指していますが、介護保険対象者さんにはそんなに必要性はないでしょう。それはまさしく「急性期医療の役割」であって、すでにその段階は終られているはずですから。
でも、これも確かに「必要な医療・機能訓練」を受けておらずにその必要性を持った方もおいでです。その必要性をPT・OT以外の職種の方が的確に判断するのは難しいかもしれません。これもまずはいずれかの場面でPT・OTが関わることができれば、次の対応につなげることができるかもしれません。
C充実した介護ケアを導き出すためのリハビリ(チェック)
私は個人的には、老人介護の中でのPT・OTの最大の役割はここだろうと思っています。「この方は、こんな環境でこんなふうに行なえば、自力で排泄できる能力を持っていますね」そのために必要な環境整備や、導入移行の段階付けと介護方法の統一プラン策定、これは「あらゆる要介護高齢者」が対象になりますね。
D通所リハビリ(ディケア)(ついでに訪問リハも)ということ
このように考えてくると、介護保険の通所リハビリ(現状のディケア)の役割の一つが見えてくるような気がします。老健にあって特養にないもの、その一つが「PT・OTが常駐しているか?否か?」の違いですね。
現状でもおそらく介護保険になっても、通所リハビリ(ディケア)で実際にやるリハビリプログラムがそんなに特別なものだとは思わないです。(送迎のバス中で皆で歌を歌う、例えばそんなのが“ディケアのリハビリ”として記録されています。まぁ提供サービス内容の差別化の努力も必要ですが・・)
じゃぁ、わざわざ「割高」な通所リハ(ディケア)を利用する価値はどこにあるか?その一つが常駐しているPT・OTさんが、上記の@〜Cの役割をどれほど積極的に果たしてくれるか?だろうと思います。ケアマネさんとしては、「この方は介護場面でもっと自立性を上げられるのではないか?今の介護方法で良いのだろうか?」「なんだか装具・車椅子が合っていないみたい・・」「この方はもっと“良くなる”んじゃないかなぁ・・?」そんなふうに感じられる方がいらっしゃったら、PT・OTの関わりがもてるような介護サービスプランを設定していただきたいですね。
ただ、以上は私の私論にすぎません。「介護保険におけるリハビリ」とか「介護保険におけるPT・OTの役割」とかいうことについては、人それぞれの考え方があっても良いわけです。で、例えば今の老人保健施設に勤務されているPT・OTさんの中には、私とは全然違う自らの役割をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。素直にいささか否定的に例示させていただきますが、もしかしたら施設の訓練室の中だけで治療的な訓練だけをすることだけがPT・OTの役割であって、介護生活場面には一切関わりを持たない・持ちたくない、という方もいらっしゃるかもしれないし、それが間違いであるとは言いきれないわけです。そのあたり、まだ歴史の浅い職種のことですから上手に「利用」してください。自ずと固まっていくんじゃないかなぁと思ったりします。ついでに昔話しを紹介しますが15年ほど前、私がまだ新人PTだった頃、「高齢者相手に(上記のような)こんな仕事がしたい」という私に先輩PTさんが「お前のやりたいことは分かったが、そりゃPTの仕事じゃない。そりゃPTの資格を捨ててやりな!」と言われたことを懐かしく思い出します。PT・OTを医学的治療者と役割限定すれば、確かにそうなります。たかが15年前でもそういう考え方がPT・OTの中では一般的だったんですね。で、今でもそういう方もいらっしゃるでしょう。