老人介護についての個人的HP-5 思索 - (20) アセスメントツール
在宅介護者さまにはほとんど関心のない話題でしょうが、介護支援専門員資格の有無に関わらず職業人にとってはアセスメント方式にどれを用いるか?というのは、日々の業務内容に直結する重大な関心ごとだと思います。そこで、介護支援専門員実務者研修で説明された5つの方式について、おおやけの説明を受けた立場として個人的な見解をここでまとめておきたいと思います。少しでもご参考になれば、と思いますし、「そりゃ違うぜ!」という点がありましたらご指摘ください。
総 論
突然結論から申し上げれば、「完璧なアセスメント方式はない」ということになります。当たり前の事のようですが、a自分の力量、b日々の業務の中での作業負担、c実際にご本人さまご家族さまにどれだけお役にたてるか?という3要素の絡みで、業務上のツールとしてどれを用いるか?には、結構悩んでしまいそうです。
何にしても「これさえあれば完璧にニーズを把握してケアプランが策定できる」というものはないのだ、という点は、多くの方に賛同いただけると思います。
研修の最初にアセスメントツールについて、
『ツールに振り回されるのではなく、ツールを使いこなしてケースの抱える多趣多様なニーズを明らかにしていってほしい。』
とのお話がありました。そして、アセスメントツールを用いる利点として、
生活全体の問題把握のための目安となって、情報の取りこぼし、もれを少なくできる。
ニーズ、課題の根拠を明らかにできて、同時にサービス、ケアの根拠も明らかにできる。
などの理由があげられました。
本当の事を一気に書いてしまいます。
『「できる」人は既成のアセスメントツールを用いなくてもきちんと課題把握してニーズに応える事はできるし、「ぜんぜんできない」人はツールとして何を用いても結局できません。』
こう書いてしまうとアセスメントツールの存在意義は無いように感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。上記の私の文章はいわゆる極論であって、私自身も含めてすべての職業人は「完璧!」と「まったくの無能!」の中間に位置しています。その意味で、全ての人(評価者)にとってアセスメントツールは作業をアシストしてくれると同時に、広範にわたるニーズを的確に把握してきちんと対応していく作業の「思考訓練」の道具とすることができます。その訓練が進めば、各種アセスメントツールでは把握できない(例えばチェック項目に無い)ニーズにもきちんと気づいて対応できるようになっていくのではないでしょうか?私自身はこれまでの15年間の在宅・施設の要介護高齢者さんへの関わりを通して、まったく経験的に自分なりの(明文化できない)思考パターンや知識を身につけてきたつもりです。そしておそらくそれは、「偏りのある」ものだと思います。でも、アセスメントツールをきちんと使っていけば、より偏りを少なく効率的に、自分自身の実力を高めていく事ができると思います。
そしてそうなって初めて、『ツールに振り回されるのではなく、ツールを使いこなす』と言ってよい状態なのだと思います。
各方式の特徴
では、以下に5方式の「特徴」を、私なりにまとめてみます。くれぐれも以下は「私の個人的な感想」です。
※MDS−HC、CAPs
顕在ニーズだけでなく潜在ニーズをある程度、明らかにできる。
科学的思考手順に則り客観性が高い。
現状のサービスや制度と関係なく、本人家族のニーズを明らかにする。
書式化/マニュアル化の度合が高く、公平性客観性が高い。誰が用いてもある程度同じような評価結果が得られる。ただしあくまで平均的な要介護者をモデルに作成されたシステム/マニュアルなので、全てのケースのニーズに完璧に応えるものではない。
作業手順が煩雑膨大で、かつ現状のサービス需給状況や提供状況とは無関係な内容のため、多数のケースについて実務上用いていくことができるかどうか?疑問が残る。上記欠点を補うため、ある程度作業を自動化してくれる各種のコンピュータソフトが準備されているが、それでは総論に述べた「思考訓練」にならないし、マニュアルにはない重要な個別のニーズを見落とす可能性が高い。(PC利用については、以下の諸方式も同様)
※三団体ケアプラン策定研究会方式
顕在ニーズを明確に整理しやすい。
潜在ニーズや予防的ニーズの抽出はアセスメント者の力量によるところが大きい。
アセスメント時間や手間が(MDSに比べれば)少なくすむので実務上、使っていきやすい。
利用者中心(負担軽減)思想が鮮明である。
細かい具体的なケア内容を明確にしやすい。
施設内ケアと在宅ケアの内容に関連/一貫性を持たせやすい。
現状でまったくサービス提供を受けていない、もしくは劣悪な介護状況にあるケースについて、今後の方針を明確にしにくい。もしくはそれは全て評価者の主観/力量によるところとなってしまう。
※日本社会福祉士会方式
思いきったアセスメント内容の簡略化/シンプルなシステムで、さらに不必要なアセスメントは省略して良いという柔軟性を持たせ、日常業務での使いやすさを重視している。
未充足なニーズの把握を意識している。
いたずらに客観性を重視せず、専門職者の総合的/主観的な判断も尊重する。
家族本人の意見要望と、評価者の見解を、アセスメント項目ごとに記述できる。また、アセスメント項目ごとに「対応レベル」を5段階(問題無し〜緊急に対応)で判断/記入していける。
※日本介護福祉士会方式
最もチェック項目が少なくて自由記載欄が多い記入方式。
生活項目ごとの自立度や介護負担度を重視=具体的な生活援助を重視している。
評価者の能力(アセスメント能力や文章能力)もっとも要求される。
※日本訪問看護振興財団方式
MDSから日本独自の形式/内容に発展したもの。
ターミナルケアのアセスメントを含む。
3回分のアセスメント内容を同一書類に記入できる=モニタリング継続(再評価)に便利。
ちょっと説明を聞いただけでも、それぞれがかなり「個性的」です。各方式を「マニュアルシステム化 vs 自由度/評価者の主観」および「項目チェック方式 vs 散文記述方式」という観点でグラフ表示すると、以下の図のようになると思います。ただしこれはあくまで「相対的」な表現です。

結 論
私としては特に「これを!」とお勧めすることは避けたいと思いますし、私が研修用に選択した方式も内緒にしておきます。(^_^; でも、どの形式であっても総論に書いたことは同じことです。
どの方式であっても構いません。アセスメントツールを使うことを自身の訓練の機会としていき、そのうちに「えーい!これじゃぁ使いにくい!こう直してくれるわ!」と自分なりにアレンジできるほどに、実力をつけたいものですね。そして私個人の本音を言えば、自分なりに使いやすい書式を作って使っていきたい、と思います。それで“世間”で通用するかどうかは疑問ですが。(^_^;