老人介護についての個人的HP-3 施設家屋- (1) 居室の戸
写真1は、ごく一般的な施設の居室の入口です。身体に障害のある方は、ドアよりも引き戸の方が良いことは間違いありません。(特に車椅子使用者の場合)しかし、写真1のような戸は決して使い良いものではありません。
まず何よりも、「重い」のです。虚弱で小柄な高齢者が少しくらい引いても、なかなか動いて開いてくれません。それから、「自動閉まり」機能が働くことが一般的で、やっと開けた入口をゆっくり進んでいると、重い戸が身体の横めがけて閉まってきます。これは危ないですね。車椅子使用者の場合にも、戸を開けてさぁ車椅子を進めようか、という時に戸が閉まってきて車椅子にぶつかってしまいます。
「重さ」といい「自動閉まり」といい、これは断熱防音効果を狙った規格でしょうか?でも、上記のように使用者にとって使いづらく、危険でもありうるとなれば問題ですね。
私が見てきた経験の中では、写真2の戸がとても良いと思えました。和風の「ガラガラ引き戸」です。(←写真とこの“ネーミング”で分かりますよね?(^_^; )とても軽く開いてくれますし、2枚戸ですから必要な分だけ狭く開けることも、大きく開けきることもできます。断熱防音効果は低く、また棟内の戸がどれもこれも中途半端に開きかけとなってしまい、施設としては“みっともない”という状況となってしまうかもしれませんが、利用者にとって使い良いことが何よりの「必要条件」ではないでしょうか?
施設を設計する設計事務所の方々には、こんな現場の意見もぜひ知っていただきたいと思います。そして施設開設者の皆さんにも、常識と経営効率だけでなく、こんな現場の意見も考慮してもらえたら・・・と思います。

写真1 写真2
さて、HP開設時にそれこそ一番最初に作ったこのページについて、社会的な状況について追加説明しておきます。
このページアップ後も、介護保険の時代となって施設の新設は続いています。で、新しくできた施設さんを拝見すると、これがやっぱり「重い引き戸」ばっかりなんですね。「仕方ないかな〜」と思っていましたら、実は理由があったんですね。ある設計士さんが教えてくれました。その理由は、「行政指導」にありました。
私の手元に今、「消防通達文書」のコピーがあります。「予予第328号:平成10年3月25日、各部長等:各消防署長殿、予防部長」という頭書きで、『社会福祉施設及び病院等の防火安全対策並びに消防用設備等(非常電源)の耐震措置の一部改正について(依命通達)』という、長いタイトルの文書です。このHPが立ちあがる、わずか1ヶ月半ほど前の文書です。
この文書の最初に、『…社会福祉施設等の使用実態、火災予防審議会答申及び阪神・淡路大震災の被害状況等を考慮し一部を改正したので、下記の事項に留意し、適正な審査・検査業務の推進に努められたい。』とあります。つまり、阪神淡路大震災がこんな面にも影響しており、指導が強まった、ということでしょうか?
で、その肝心の内容ですが、居室の戸については、
第2 改正の概要 1社会福祉施設及び病院等の防火安全対策
(3) 入居質の廊下に面する出入口扉の閉鎖方式は、日常の使いやすさと出火時の煙対策を考慮した機構とすること。
と、あります。この「出火時の煙対策」という点がポイントです。さらに詳しく、
と、あります。これはつまり、『常時は閉めておけて開けておくにはストッパーで、ただし煙が出たら自動的にストッパーが外れて自動的に閉まる』扉である、ということです。これですね!上の写真1の扉…(^_^; しかし、これって「日常の使いやすさを考慮」しているんだろうか…?(^_^;
この「指導」には、確かに「地域差」があるようです。また、このページの上半分をアップした平成10年春頃は、まだこの指導文書も出されたばかりですからまだ現場の指導も行き届いていなかったのでしょうが、それから2年以上経って現在は厳密に指導されるようになっているのでしょうか?それで、新設の施設さんは「重い戸」ばかりなんでしょうか?写真2の扉の施設は、確かに平成10年以前の建築でしたから、こんなふうに作れたのでしょうか?このあたり、ご存知の建築関係者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ、ご教示下さい。
確かに「いざ、火事だぁ!」という時の、人命・煙対策の重要性は否定できません。でもだからって、非常に確率の低い事態のために日々の暮らしが…生活の場で部屋の扉を生活者が自由自在に開閉しにくいなんて…っていうのは、どうしても納得しきれない部分が私の中には残ります。皆さんはいかがですか?