老人介護についての個人的HP-3 施設家屋-(14) 片麻痺とスロープ

片麻痺者にはスロープよりも階段を(脳卒中の麻痺の性質と装具の性質)

 車椅子の場合に、スロープよりも場合によっては段差の方がよいことのあることは、既に「施設家屋構造のコーナー(3)」で説明しましたが、実は脳卒中後の片麻痺者さんで歩いていらっしゃる方にも同じようなことが言えます。このページではその理由について説明します。

スロープを下る場合

 まず、絶対にスロープよりも段差の方がよいのは、麻痺した足に装具をつけていらっしゃる方です。(写真1)この装具、足関節が足首直角(低背屈中間位)よりも下方に足部が垂れてしまわないように制動が利いていることがほとんどです。

 となると、この装具をつけて坂道を降ろうとすると、図1のようになります。足首が直角よりも垂れないのですから、装具をはめた下腿は斜めの面に対して直角にならずを得ず、結果として膝が足部よりも坂下に押し出されてしまいます。そのままでは身体ごと前に押し出されてしまいますから、膝を曲げて膝から上は地面に対して垂直にしなければいけません。つまり、「膝を曲げた状態で身体を支える」ことが必要となります。ところが、脳卒中で麻痺した足は全体を伸ばして突っ張ることはできても、図1のように膝を曲げた状態で体を支えることは大変に難しいのです。かくて、装具で坂道を下りようとすると、「膝折れ状態」となって転んでしまいます。

  

     写真1 下腿装具       図1 坂道を下る際の膝折れ

スロープを上がる場合

 でも、下腿装具の足継手は下方に垂れなくても若干上の方には起こせるようになっていることがほとんどです。では、上がる時は図2のように、若干足首を背屈させながら上れるかというと、これまた難しい。何故なら脳卒中で麻痺した足は、坂道を上がろうとするような「力む」ような場面では、足首がぎゅーと勝手に垂れ足の形に底屈してしまうものなのです。(ですから垂れ足にならないように、装具で中間位より下にはいかないようにするわけです。)ですから、装具をつけた状態で図2のように足関節が直角以上に背屈することはできない、ということがほとんどです。

図2 実際にはできない坂道上がりの際の足関節背屈

 ですから装具自体は若干背屈するにしても、実際には図3のように結局斜面に対して垂直に下腿がおかれてしまうことになります。となると、今度は膝から上、身体全体が装具をつけた足よりも後方、坂の下の方へ押しやられてしまいます。装具をつけた足をスロープに乗せて、次に良い方の足を前に出そうとした瞬間、後ろに転ぶ、ということが起きてしまいます。

図3 実際の様子:後ろに転ぶ

装具をつけていない方の場合

 麻痺が軽くて装具をつけていない方の場合はどうでしょう?これも「坂道は苦手」という方が多いです。平らな地面を歩けても、坂道を上がろうとする時は上記「スロープを上がる場合」と同じようなことが起きがちです。下りる場合には装具で底屈を制限している訳ではないのですが、足関節の底屈に伴って脳卒中に特有の「足部内反変形」(写真2)が起きてしまって、まともに斜面に足底をつけなくなったりするのです。

写真2 足部内反変形 (汚い足…ちょっと外反母指(^_^; )

 結局、装具をつけていようといまいと、脳卒中の後遺症者さんは、「スロープよりも、しっかりした手すりのある、段差20cm以内で奥行きが広めの段差が良い」ということになります。それは、装具の性質と脳卒中による麻痺の性質による、ということなのです。

 実は、同じようなことは「パーキンソン」の方や、「高齢者一般」にも言えることです。何にせよ“前後バランス”が悪くなったような状態で“斜面に足をおろして身体を支える”というのは、難しいことなのです。ただし、一足でまたげてしまうような2・3cmの段差を埋めるような「くさび」には当てはまらないお話ですよ。
 それから、このページと車椅子階段のページも併せ、『スロープは何が何でもダメ!』というわけではありませんので、ご注意を。要は、ケースごとの適応の問題、です。

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