老人介護についての個人的HP-4 知識 - (1) 廃用性症候群について
人の身体(心・精神も)は「使わなければダメ」になっていきます。日常生活で自分のことは自分で行っていれば、そのための体力は維持されますが、日常生活の色々な場面で介助を、それも「必要以上の介助」を受けていると、それだけ身体能力は低下していきます。
それを「廃用性症候群」と言います。廃用性症候群の緒症状として、「関節の動く範囲が狭くなる=関節拘縮」、「筋肉の力が低下する=筋力低下」など、いくらでもあげることができます。(表1)そして、日本においてはこの「廃用性症候群」の結果としての「寝たきり老人」が大変に多いように思われます。
つまり、身体機能からいって本来寝たきりになる必要のない人が、「寝て暮らしている」うちに身体機能を低下させ、やがて本当に「起きていられなく」なってしまっている、ということです。それはやはり大変に残念なことです。はじめに「寝込む」のは、骨折や脳卒中といった病気怪我であることが多いでしょう。しかし、病気怪我が「寝たきりの原因」なのではありません。病気怪我が「きっかけ」となって、「廃用性症候群」に陥ってしまう、ということが大変に多いようです。
廃用性症候群の緒症状は、表面的にはあくまで個々の疾病状態として現われてきますが、図1のように実際には全て関連しあっています。一つの病態が別の病態を導くのです。「寝ている」→「足の筋力が低下する」→「たまに立とうとして転ぶ」→「なおさら寝込む」といった具合に、大きな「悪循環」を作ってしまうのです。従って、関節拘縮に関節可動域訓練、褥瘡に処置と個々に治療を施しても根本的な改善にはなりません。あくまで廃用性機能低下に陥っている「状況」そのものを変えなければ治療は永遠にイタチごっことなります。
そして、最終的には「廃用性症候群」が命取りとなることも多いようです。肺炎・尿路感染など直接死因としての病名はつけられますが、そもそも寝たきりにしていたために重篤な肺炎になってしまう(沈下性肺炎=痰や誤飲した食べ物が肺の底に溜まって炎症を起こす)というようなことが、多いように思われます。
さらに廃用性症候群についての正しい知識と認識のないままに廃用性症候群に陥った方を前にすると、『もう年だからしょうがない、今さらどうしようもない』という諦めに似た感情を持ってしまいがちのようです。でも、そういう回りの人の「無理解・あきらめ意識」が廃用性症候群の悪循環を促進させるもっとも大きな要因なのです。高齢者の援助にあたる人は、廃用性症候群についての正しい知識と認識を持ち、自分自身の意識が廃用性症候群の悪循環の中に取り込まれてしまわないようにしなければなりません。
では、廃用性症候群に陥らないためには、あるいは脱却するためにはどうしたらよいのでしょうか?上記の通り、これといった治療法や訓練法があるわけではありません。ADL(日常生活)のありようから、廃用性症候群の悪循環から抜け出すしかないのです。そのための様々な、具体的なノウハウを提供したい、というのが、そもそもこのホームページを作っている大きな理由なのです。
a.運動器系 筋萎縮・筋力低下・関節拘縮・異所性仮骨・骨粗しょう症・痛み
b.循環障害 起立性低血圧・静脈血栓症・肺塞栓症・沈下性肺炎・浮腫・褥創
c.自律神経障害 便秘・尿便失禁・低体温症
d.精神障害 抑うつ・無意欲状態・食思不振・拒食・昼夜逆転・不眠・仮性痴呆
e.その他 尿路感染・尿路結石・脱水など

図1 廃用性症候群の悪循環の概念図