老人介護についての個人的HP-4 知識 - (10) 補装具の考え方
補装具とは、身体機能を補うための道具のことを言います。代表的なものでは、腕や下肢を切断した方がつける義肢や脳卒中片麻痺の方がつける下腿装具(写真1)、腰痛の方がつけるコルセット(写真3)、広くは杖や歩行器や眼鏡や入れ歯も補装具ということになります。
これらの補装具について時に誤った考え方が聞かれることがありますので、このページで説明しておきます。
まずは、片麻痺者の麻痺した足につける下腿装具(写真1)や変形した膝につける装具(写真2)、あるいは神経麻痺してタランと垂れ下がった足先(下垂足)につける装具などの「身体の麻痺や変形に対する矯正のための装具」について、です。特にこれらの装具に対して、「使っているとクセになって、良くない」とか「使っていると無しではいられなくなるから、なるべく使わない」といった言葉が聞かれることがあります。これは「間違った考え方」であるとはっきり申し上げます。既におこっていて、多くの場合はさらに固定状態にある障害に対する装具なのですから、「使わない方が危険」なのです。それどころか、使わないで居るために新しい障害を引き起こすこともあります。片麻痺者の場合は「反張膝」(膝が後ろに逆“くの字”型に曲がってしまう障害)や足先が引っかかるための転倒事故が起こる可能性があります。膝の変形の場合には装具を使わないでいるために変形がどんどん進んでしまったりします。

写真1 写真2
つまり、これらの方々にとっての補装具は「もはや身体の一部」として考えるべきなのです。「無いと困るもの」なのです。
「装具を使いたくない」という気持ちが、心的な「障害受容」の問題の現われとして聞かれることもよくあります。つまり、何とか装具無しでもでも普通に歩けるようになりたいという願望が、「装具はクセになる」という言葉になるわけです。しかし、実際には上記のように新たな問題さえ引き起こす可能性さえあるのでから、何とか使ってもらった方が良いに越したことはありません。そこで、「使わないと、ますます身体が壊れちゃうよ。」ということをよくよく説明し、「いつか麻痺がもっと良くなってから外そうよ。今はまだ早いよ。」という形で何とか理解してもらえるように説得します。
次に、腰痛の方がつける体幹コルセット(写真3)は、麻痺した身体を矯正するのではなく、足りない体幹筋力を「補う」装具です。これは装着することで体の機能(筋力)が補われ、大変に楽になります。ところがこれこそ「クセになる」ものなのです。身体の機能は使わなければますます低下していきます。体幹筋力が不足して腰痛が起きているからと体幹コルセットを使うと、「体幹筋肉(腹筋や背筋)は楽をする」のですから、「ますます筋力が低下してしまう」ということが起こる可能性があります。そうするとなおのこと「装具無しではいられない」ということになってしまいます。体幹コルセットを使う際は、「腰痛体操」などを行なって装具を使うと同時に体幹筋力の維持増強に努めるべきです。(これについては、次に「腰痛への対応」としてまとめます。)

写真3
このように、装具のタイプによって多少考え方や対応が違ってきます。リハビリ関係者にとっては当たり前のことなのですが、介護看護職の皆さんやご家族ご本人さまも是非このような知識をお持ちになって、適切に装具を使っていただきたいと思います。
なお、装具は定期的なメンテナンス、お手入れも大変に大切なことです。それについても「補装具のメンテナンス」として、いずれ、まとめます。