老人介護についての個人的HP-4 知識 - (13) 機能訓練の考え方
「機能訓練」とはよく聞く言葉です。それこそ私の職業、PTの専門分野でもあります。そして特に老人保健施設では利用者さま1名につき週に2回の「機能訓練」の実施が義務付けられていますし、特養さんでもPTが非常勤で関わることは珍しいことではありません。(私もそうです(^_^; )一般には「機能訓練をして体を良くしてもらう」というイメージがあるようで、在宅者さんの場合でも「家の中でどんな機能訓練をすれば良いか・・」という質問を受けることがあります。しかし病気発生直後の機能訓練と違って、すでに障害が発生して長い期間が過ぎている方、あるいは同じ状態で介護場面における機能訓練ということについては、簡単に「このようにすれば良い」と、how toで語られるものではありません。このページではその辺りのことをまとめてみます。
まずはPTの私がこんなことを言うのも我ながらどうか?とも思いますが、障害発生してから既に長い期間が過ぎている方やある程度自然な老化現象としての機能低下に対して、機能訓練がメキメキ効果を表していく、ということは大変少ないものです。(単に私のPTとしての“腕”が悪いからかもしれませんが…(^_^; )もちろん、全く意味が無い、とは言いません。でも、わずかな効果?のために以下に書くような悪影響?が見過ごされてしまうのは、いささか問題あり、と言わざるを得ません。
機能訓練の悪影響?そういう面も確かにあります。例えば機能訓練というのは基本的に「受動的」なものです。力んだり動作をしたり能動的なようにも見える場面もありますが、結局は“指示”されてやっているのですからやはり“受け身”なのですね。そういう機能訓練を積極的に行なえば行なうほど、ご本人さまの受動的な態度を強めてしまうことがあります。
また“障害否認・老いへの否認”が、機能訓練への意欲として表れることがあります。そのような方の場合、ADL場面では自分でできることも介助を要求しながら機能訓練だけはしたがる、というようなことも起こります。この場合に本人さまの要求にだけ従って機能訓練を行なっていくと、そういうご本人さまの心性をますます強めていってしまうということにもなりかねません。
では、介護場面で機能訓練が有効に位置付けられるための条件とはどのようなものでしょうか?私は以下のようにまとめたいと思います。
機能訓練を行なう前に、ADL場面でご本人さまの能力が十分に発揮されていること。そのような物理環境となっており、もしもご本人さまの身体機能に改善が得られたら、それがただちにADLに反映されるような生活状況であること。
機能訓練が、ご本人さまにとっていつか身体を元通りにするための「魔法」としてとらえられていないこと。心身機能を維持し、身体を「自己管理していく手段」として位置付けられていること。
生活全体にメリハリを持たせ前向きな生活を送っていくための一手段となっていること。
このように考えた上でむしろ機能訓練を行なうには問題と思えるようなケースでも、それでもあえて機能訓練を行なうのは、とりあえず「訓練欲求」を満たしてあげること、機能訓練をしなければ不穏に陥ってしまう、というような場合です。そのような場合でも、機能訓練を行ないながら同時に「できること」と「していること」のギャップを埋めるような努力援助をしていかなければいけませんし、とりあえず機能訓練を行ないながらもご本人さまの精神的な問題の存在を忘れてはいけません。
以上のようなことを踏まえていれば、例えば「知識のコーナー(11)最低限確保して起きたいROM」であげた関節の可動域を維持していくための一手段として、機能訓練を有効に位置付けていくことができると思います。