老人介護についての個人的HP-4 知識 - (16) 介護に伴う骨折事故

介護場面で起こりやすい骨折事故〜機序の理解と予防〜

 

 本来あってはいけないことなのですが、やはりどうしても時には介護に伴って骨折事故が起こり得ます。「そんなことがあってはいけません!」でお終いにしてしまうのではなく、実際にどのような事故が多いのか?それを知っておくことは予防のためにも大変有意義なことと思えますので、私の経験している範囲内でこのページで説明しておきます。

 一応それぞれに、折れる場所まで具体的に示しておきますが、必ずそこで折れるとも限りません。しかしその場合でも、骨折の原因となる力の加わり方(機序)は、共通していることが多いものです。

 

@ おむつ交換時の骨折1:膝を伸ばそうとして〜膝関節屈曲拘縮を伸ばそうとして〜

印象として、もっとも多いパターンです。

 

A おむつ交換時の骨折2:股を開こうとして〜股関節内転拘縮を開こうとして〜

これも、@に負けず劣らず、多いです。

 

B 上衣の袖通し1:肘を伸ばそうとして〜肘関節屈曲拘縮を伸ばそうとして〜

見て分かるとおり、@とほとんど同じパターンです。

 

C 上衣の袖通し2:お腹の上の腕を持ち上げようとして〜肩関節内旋拘縮を外旋にひねって〜

これは、「内旋拘縮」している肩=上腕骨に、「外旋」の動きを強いるために起こる骨折です。
「肩関節内・外旋の動き」とは、下のビデオの通りです。動いているのは「肘から先」ですが、実際に(ねじれ)運動しているのは「上腕骨:肩関節」です。

ちなみに、「らせん骨折」と「斜骨折」は、下の写真を見るとわかるように、違いははっきりしています。骨折線を見るとどのような力が加わって起こった骨折なのか?なんとなく、想像できます。

 

D 上衣の袖通し3:閉じた脇の下を広げようとして〜肩関節内転拘縮を外転に開こうとして〜

これも起こりがちです。実際には真横ではなく、やや前方向に屈曲の動きで起こります。

 

E 立位で裸の身体を支えようとして〜起立支持で胴体を押さえつけて〜

入浴介助時に起こります。必要ならば「介助用ベルト」など、適切な道具を使いましょう。

 

F ギャッチアップで不良な姿勢を強制されて〜不良起座動作による脊椎骨圧迫骨折〜

残念ながら当園のベッドは、きわめてこのような姿勢に「なりやすい」ベッドです。
ギャッチアップする前に、十分に「頭側への臥位移動」をお願いします。

 

G 車いす座位で背中のめくれ上がりを直そうとお辞儀させて〜脊柱過屈曲による脊椎骨圧迫骨折〜

頭や首や背中の上の方を押して屈ませると、このような事故が起こりやすいです。
背中の一番飛び出たあたり(つまり、下の方)を、やさしくゆっくり操作しましょう。

 

H 介助による移乗動作介助で身体をひねって〜急いで乱暴な介助による身体へのストレスが原因の骨折〜

「まっすぐ起立する」「しっかり立ってから方向転換する」「方向転換が終わってからゆっくり座る」
というように、動作を分けて丁寧に介助すれば、事故を防げます。

 

  予防のためには?

   ●介護業務上、起こりやすい骨折パターンについて、知っておく。

   ●関節の動きの方向について、理解する。

   ●拘縮関節を扱う際の注意

    ※対象者の「拘縮状況」「骨ソショウ症」の状態について、把握しておく。
    ※
抹消部だけで引っ張らない。少しでも広くゆっくり力を加える。
    ※
拘縮関節中枢部を、しっかり固定する。
    ※二関節筋の作用を、考慮する。
     ・膝を伸ばす場合 → 股は閉じて、できるだけ伸展させて。
     ・股を広げる場合 → 膝と股関節は、深く曲げて。

   ●移乗時など体重を支持する場合、局所だけではなくてできるだけ広い面や部位で体重支持する。

   ●ギャッチアップベッドや車椅子での「座位ポジショニング」、特に骨盤の姿勢について、気を配る。


以下は、平成11年当時の内容です。今にしてみると、随分簡単に終わらせてるなぁ・・。

オムツ交換時に発生する恐れのある骨折事故

 本来あってはいけないことなのですが、やはりどうしても時には介護に伴って骨折事故が起こり得ます。「そんなことがあってはいけません!」でお終いにしてしまうのではなく、実際にどのような事故が多いのか?それを知っておくことは、予防のためにも大変有意義なことと思えますので、私の経験している範囲内でこのページで説明しておきます。

@立位歩行時、および移乗動作時の転倒事故による骨折

 自力で歩いていられる方が転倒されることは、ある意味防ぎきれないことではあります。もちろん、転倒の原因になるものをできるだけ取り除き、適切な歩行介助具を使ってもらうようにすることなどが大切であることは論を待ちません。

 介助による移乗動作時に、介助の失敗で介助者もろとも転んでしまう、という事故も起こります。この場合も、完全にゼロにすることは難しいのかもしれませんが、限りなくゼロに近づけるためには個人個人の技術レベル向上の努力もさることながら、現場管理者さん(婦長さんや介護主任さん)の「業務管理能力」も大変に大きな要素となってきます。(卒後研修態勢や介護計画の質の管理など)

Aオムツ交換時の骨折事故

 さて、@は教科書的にも“常識”と言っても良いのですが、教科書には記載がなくても現場をよく知る方々にとっては“覚え”のある骨折事故、それが「寝たきり下肢拘縮者に対するオムツ交換時の骨折事故」です。

写真1 オムツ交換時に骨折事故可能性のある屈曲内転拘縮

 この事故が起きるのは、完全な寝たきり状態で下肢に強い屈曲内転拘縮がある方の場合です。(写真1)パターンは2通りあります。@大腿骨の下部(膝の上)で、大腿骨が前後に折れてしまう事故、A大腿骨骨頸部が、横に折れてしまう事故、の2つです。

@大腿骨の下部(膝の上)で大腿骨が前後に折れてしまう事故

 これは膝の強い屈曲拘縮がある状態で、オムツ交換時に陰部を清潔にしようと下肢を下に伸ばすために膝を伸ばそうとしたり、オムツ交換が終ったあとに良肢位保持の目的に膝の内側=大腿後面と下腿後面の間にクッションをはさもうと膝を伸ばす瞬間に起こります。伸びにくい膝を強引に伸ばそうとするわけですから、膝関節が伸びずに膝の上の部分で大腿骨が折れてしまって、結果として「膝が開く」んですね。(図1のB)

A   図1   B

A大腿骨骨頸部が横に折れてしまう事故

 これは股関節に強い内転拘縮がある状態で、オムツ交換時に陰部を清潔にしようと下肢を左右に広げようとしたり、オムツ交換が終ったあとに良肢位保持の目的に両膝の間にクッションをはさもうとする瞬間に起こります。開きにくい股を広げようとするわけですから、股関節で開かずに股関節の上の部分で折れてしまって、結果として「股が開く」んですね。(図2のB)

A   図2   B

B予防法は?

 @Aの説明は、単語が違うだけでほとんど同じ内容であることにお気づきのことと思います。つまり、「場所は違っても同じ機序で起こる」んですね。では、予防はどうしたら良いか?決定的な予防法はありません。(1)オムツ交換に苦労するほどの拘縮は作らないこと、それが最大の予防であることは間違いありませんが、既にそういう拘縮になってしまっている場合は、(2)危なそうな方をあらかじめ意識しておく、良肢位保持のための作業はオムツ交換とは別に行なう(できっこない!でしょうか?(^_^; )など、消極的な内容しか思い当たりません。ごめんなさい。

 ただ、大変にお恥ずかしい話ですが、私がこれまで経験した中では、「いつ骨折したのか?」明らかになったことはほとんどありませんでした。日に何度も繰り返されるオムツ交換作業の中で、いつのまにか「ちょっとおかしいよね?」と聞いて確認してみたら既に折れていた、ということがほとんどです。折れた瞬間は、例え弱った骨であっても何らかのショック感はあったはずです。ぜひ、きちんと報告してもらいたいものです。そのためには、そういう事故を「たまたま事故を起してしまった個人」に責任の全てを被せるような体制・雰囲気であってはいけないことは、言うまでもありません。

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