老人介護についての個人的HP-4 知識 - (7) 変形性膝関節症

変形性膝関節症について(対応と日常生活上の注意)

 純粋に整形外科的なお話しですが、介護場面にも大変大きな影響を与え、しかもかなりの頻度でみられるものですので、ここで知識や対応方法について、まとめておきます。

※変形性膝関節症とは?

 写真1をご覧ください。見事なO脚ですね。(^_^; これは私どもの施設に入所していらっしゃる方で80歳代の方の膝ですが、ごくお若い頃からこんな膝だった訳ではないでしょう。少しずつ長年をかけて膝関節の変形が進み、このようになっているのです。高齢者にしろ介護をしている側の方にしろ、皆さんの回りには、似たような方はいらっしゃいませんか?変形性膝関節症のために歩けなくなってしまう、また介護をしていく上での大きな苦痛になってしまう、ということが起きるのは、大変に残念なことです。

写真1 変形性膝関節症の膝

 膝の関節は、関節面が「外側と内側」に分かれています。そのうち、内側の関節面にばかり体重がかかるようになり、内側の関節面だけがつぶれてしまっているのです。もちろん、痛みも伴うことが普通です。

 これは、言うなれば「関節の老化変性」ですから、完全に元通りにすることはできません。しかし、痛みは心がけ次第によって随分状態が変わりますし、何より「少しでも長持ち」させていくことが大切となります。お医者さんで関節に注射をしてもらえば一時的に痛みがなくなりますが「痛みの原因」が解決されるわけではないので、痛みを感じなくなった分、かえって無理をして状態をひどくしてしまうこともあり得ます。ですから、まずは「日常生活上の注意」が大切となってきます。

※変形性膝関節症の発症〜時期と症状

 変形性膝関節症の発症は多くは50歳代に始まると言われています。そして、膝が痛むということでの外来受診は60歳代になってから、という方が多いそうです。その時点であまりに症状がひどくて年齢的にも若ければ「手術療法」も考慮されます。しかし、年齢的にそれ以降の方は、写真1のように既にかなり症状が進行している方が多いのが実際のようです。そしてそれくらいの年齢になると「手術療法」が選択されることはほとんどありません。

 50歳代に始まるという初期症状は「正座時痛」と「階段昇降時、特に降りるときの痛み」が特徴的です。その後の症状進展により、歩行時痛や夜間痛が出現するようになります。

 そして、大腿四頭筋(太ももの前面の大きな筋肉で膝を伸ばす筋肉)の萎縮は早期から現れる、とされています。

 膝の痛みがあまりに急激で強い場合には、緊急避難的に整形外科のお医者さんで痛みをとる処置が必要ですが、少しでも慢性的な状態になったら「日常生活上の注意」や「筋力運動」を心がけ、さらに歩行介助具や装具の使用も考慮していかなければなりません。

※対応〜日常生活上の注意

 まずは日常生活上の注意です。これはいくらでも上げることができますが、いくつか特に大切な点を以下にまとめてみます。

 どんなにお医者さんに通っても、あるいは歩行介助具を使っても、これらの注意を怠っていては何にもなりません。まずは意識して心がけることが大切です。

※筋力運動

 変形性膝関節症では膝を伸ばす力の低下が特徴的ですから、日ごろから運動で、その防止改善を心がけることは大変に良いことです。椅子に腰かけ足くびに2・3kgから5kgくらいの重りをつけて、ゆっくり膝を伸ばしてみましょう。そしてゆっくりと下ろしてみます。重さによっては「伸ばせても、(痛んで)ゆっくりとは下ろせない」というのが変形性膝関節症での特徴的な状態です。その時は重りを軽くして構いません。

※歩行介助具の使用

 変形性膝関節症の原因は「膝関節への力学的負担」なのですから、歩行時に適切な介助具を使用することで膝の負担を減らすことができ、悪化進行の防止が図られると考えられます。

 まずは「杖」ですが、変形性膝関節症では歩行時に身体が左右に動揺しますので、両膝に症状があるのならば左右両手に杖を持つことが必要です。それはあまりに大げさな・・ということならば一本にして、「より痛い方の反対側に持つ」ようにするだけでも、何もしないよりはずっと身体のために良いことです。

 そして2本も杖を持つのならばいっそのこと、歩行器の使用を考えても良いでしょう。機器のコーナーの歩行器のページでも説明した通り、変形性膝関節症の場合には、肩幅よりも狭く横に握って身体の前方に構えるような「乳母車型歩行器」ではあまり役に立ちません。写真3のような肩幅よりも広く縦に握るようなタイプの歩行器を準備できたら良いと思います。

写真3 変形性膝関節症に望ましい歩行器

 何にしても「悪化の防止」が大きな目的なのですから、「まだ何もなしで歩ける」うちから、ある程度の「歩行介助具を使う」ことが大切です。  

※装具の使用

 次は装具です。装具とは身体に装着することで身体の機能を補い負担を減らすもの・道具を言います。装具の規模の順に並べると次のようになります。

大腿部の緊縛包帯・膝サポーター → 足底外側楔装具 → 膝装具

 大腿部への緊縛包帯は気楽に試すことのできる方法です。痛む膝の上の大腿部をしっかり包帯などで縛りつけます。幅は大腿の1/3から半分くらいもとれば良いでしょう。大腿部をしっかり縛ることで筋肉の収縮効率が良くなり、膝関節への負担が減り、痛みが軽減して歩きやすくなる、という方が多いようです。膝サポーターも薬局で市販されていますが、どうせ使うならばある程度しっかりしたものを試してみましょう。ただ、こればかりに頼っているとかえって筋力が落ちてしまうことがありますから、同時に上記の「筋力運動」も行ないましょう。

 足底外側楔とは写真2のようなものです。足の裏につけますが、外側が少し高くなっています。これで立った時の「O脚」の足の格好を「X脚」方向に修正しよう、というものです。軽度の変形に対しては、痛みや負担を減らすだけではなく「変形の進行を抑制する」と考えられます。屋内でも外出時も、起きている間はつけていて構いません。

写真2 足底外側楔装具

 膝装具は膝サポーターの大がかりなものと言って良いものです。各種の形があり、写真3はその一例です。膝の保護作用は大きいのですが、つけ外しは大変になりますし見た目もあまり良いものではありません。そして、「違和感」が強く感じられることもあります。しかし、膝装具を準備することで、ようやく実用的に歩ける、という方も実際にいらっしゃいます。

 写真3 変形性膝関節症用膝装具の例

 以上のうち、膝サポーターや大腿部への緊縛包帯は自宅で気楽に試すことができますし、それで構わないと思いますが、足底外側楔や膝装具は、やはり整形外科病院で医師やリハビリ関係者と相談の上で準備し、使うべきでしょう。

※変形性膝関節症への心構え

 繰り返しになりますが、変形性膝関節症への心構えをまとめておきます。初めに書いた通り、初発は50歳代とある程度若い時にも関わらず写真1のようにヒドイ状態になってしまうのは、進行が極めてゆっくりでなかなか本気で悪化予防・改善に取り組まないから、です。でも、これだけ平均寿命が長くなっている現在、個人個人が自分の身体をしっかり管理して、少しでも長持ちさせることがこれからますます大切になってくるでしょう。現在既に、時に膝が痛む、というような症状がある方は、10年・20年後に写真1のような状態になってしまわないよう、ぜひ早いうちから心がけていただきたいと思います。

 思索のコーナーの「忘れ得ぬ三人の方々〜今の私がある理由」で紹介しているAさんのような方が一人でも減るよう、祈っています。

※正座用小椅子のご紹介とお勧め

 さて、前々から「実物が欲しい!」と思いながら、ようやく手に入りましたのでご紹介します。「正座用小椅子」です、なんの説明もいりませんね。写真に見るとおりです。

 ちょっと膝は痛むけど、趣味や冠婚葬祭のためにどうしても正座をとりたいという方や正座の習慣のある方は、ぜひ使われたらよいと思います。正座が全然苦痛ではありません。写真の小椅子は、家具店で安売り750円でした。

  

写真4                写真5                  写真6

※さらに追加情報、「靴屋さんにも売っていた膝の痛い人用中敷」

 もう一つ、知り合いのPTさんが実物を見せてくれました。写真1の彼氏の靴の中に「中敷」が見えます。これを引っ張り出してみると、写真2のように踵の部分の外側が高くなっていることが分かります。つまり、写真2の「足底外側楔装具」と同じ形ですね。随分外側が高く見えますが、適度なクッション性もありそれほど斜めになってしまうわけではありません。

 

写真1          写真2

 これを見せてくれたPTさんは、ご自分でも変形性膝関節症のために膝が痛んで大変だったそうですが、靴屋さんでこの中敷を見つけて使いだし、随分楽になったそうです。1000円くらいだったそうです。本来はきちんと整形外科医の先生の指導のもとで使うべきものなのかもしれませんが、一般の靴屋さんで売っている以上、個人の責任において試し使ってみることは一向に構わない、と思います。 

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