老人介護についての個人的HP-特別コーナー『食事大作戦-B』
次は食事テーブルの「高さ」です。写真1のモトさんの写真では、テーブルが随分と高いように感じられませんか?テーブル天板が本人さんの胸から脇の下あたりの高さとなっています。老人ケアの世界に入ってから、色々な場面で高齢者の食事風景に接するたび、どうもテーブルが高すぎるのではないか?と、感じてきました。それに比べて写真2の食器トレイの高さは随分と低くしてあることが分かると思います。

写真1 普通のテーブル 写真2 モトさんテーブル
一体、ちょうど良い食事テーブルの高さとはどのような高さなのでしょうか?リハビリ学院で教わった覚えはないし介護本でも見かけたことはありませんでしたが、部下のPTが探してきてくれました。「インテリアデザイン」の世界で資料を見つけたそうです。で、「食事など軽作業時のテーブルの高さ」の出し方は「椅子座面からテーブル天板までの距離が、座高の1/3からそれよりも2cm程度低く」すれば良いのだそうです。そしてそれを「差尺」いうのだそうです。(@の写真4で説明しています)つまり床上○cmという考え方ではなく、あくまで本人さんの体格と椅子座面高さとの兼ね合いから導くものであるわけです。
そこで、一般的な家具としてのテーブル・椅子の高さを計ってみますと、どれも判で押したようにテーブル天板は70cm程度、椅子座面は42cm程度であることが分かります。つまり差尺は28cm。身長172cmの私の座高を実測すると89cmでした。89cm÷3=29.66cmとなって、一般的なテーブル・椅子の差尺が「ちょうど良い」ことがわかります。つまり、一般的な家具としてのテーブルや椅子は、あくまで「健常成人男性」を「基準」に作られていることが分かります。ちなみにスタンダードな車椅子の座面も大体44cmでしかもシート地が沈みますから、状況は家具椅子とほとんど同じです。
さあ、これで高齢者には一般的なテーブルでは高すぎることを、根拠と具体的な数字でもって言えるようになりました。多少円背があるような方は座位の時の肘の位置が下がってしまいますから、上記の式から導かれる数字よりも、さらに低くて構いません。歩行可能な方にはテーブル天板高が60cmから65cmもあれば十分、と言えると思います。
ところが車椅子使用者の場合、低いテーブルにつけてあげようとしても車椅子の「側板」(スカートガード)がテーブルにぶつかってしまって、体がテーブルに近づけません。これでは「食べにくい」ですね。このような障害をさけるために、車椅子の側板が階段のようになっていてテーブルや机に近づきやすい「デスクアーム」(図1)という形状の車椅子もあるのですが、車椅子への移乗時につかまるところがなくなってしまいます。
そこで私どもは車椅子使用者のために、写真6のような「車椅子用テーブル」を設計製作して使っています。差尺は19cm程度に押さえてあります。ちょっと狭苦しい感じですが、食べやすさはずっと改善されます。
ところがモトさんの場合は亀背が強く、私どもの車椅子用テーブルでもまだ高すぎます。写真7を見てください、食器トレイの位置が座高の1/2近くまできていることが分かります。そして決して動きの良くない腕の肘が、トレイよりも下がってしまっています。上肢運動機能の問題が少ない方ならばこれでも何とかなるでしょうが、モトさんにはまだ高すぎます。
そこで、モトさんには写真2で見るような「大げさ」なテーブル準備をしている訳です。モトさんの場合、差尺はわずか「13cm」となっています。

図1:デスクアーム側板 写真6
写真7