老人介護についての個人的HP:雑記帖(16) 第13回介護福祉士国家試験リハビリ問題
今回、1月の下旬に行われた標記国家試験問題のリハビリ関連問題について、模範解答と解説を行う機会を得ました。その内容について、アップいたします。たった4問ですが、実際に受験された方や今後の受験を考えていらっしゃる方の参考になれば、と思います。
実際に作業をしてみて思うことは、『あまり現場の実態を知ってしまうと、かえって回答に迷う。』ということです。ほら、現場では「絶対に正しい答えが一つだけ!」なんてことはあり得ないでしょう?それを試験では、強引に○×判断しなくちゃいけないから…。その具体的な例は以下を見ていただくとして、現場で必要なのは、こういう「基礎的な知識」を基としつつも臨機応変に応用を利かせる、ということですよね。教科書的に正しい知識技術を一つだけ覚えているだけでは通用しないし、かといって基本を無視した勝手では効率もあがらず危険かもしれず、独りよがりな介護になってしまう可能性がありますね。
まぁ、その意味で時には基本を振り返ることもとても大切なことなんだろうと思います。その意味でご覧ください。
※問題の解答と解説を作成するにあたり、「問題は、基礎的な知識と技術を問うている」との原則をもとに作成している。
21問
21A 必要以上の臥床安静は廃用性症候群を招き、全身症状の悪化、合併症の併発といった悪循環をきたしやすい。
21B 急な体位変換によって高血圧となりやすいので、少しずつ座位時間を延長することで、自律神経の回復を待つ。
21C 運動のし過ぎが原因で起こるものを誤用症候群といい、運動が適切に行なわれなかった場合には過用症候群が起こる。
21D 筋・腱などの短縮により、関節の可動域の制限による拘縮が起こりやすい。
21Aは正解。安静にしていることで生じてくる廃用性症候群は、心身機能の全般的な機能低下をきたし、寝たきりや痴呆の原因となる他、沈下性肺炎や尿路感染など死因ともなりやすい。
21Bは不正解。問題の文章から、急激な体位変換によって血圧は「低下」する、と考えられる。特に頭部を起こすことで起こる低血圧を「起立性低血圧」といい、時に失神に至ることもある。少しずつ座位角度をあげ時間を延長することで、血圧調整機能の回復を図る。(でも、時に乱暴なことをすればご本人さんが怒りまくり興奮して、血圧があがることもあるかも?!(^_^; )それから設問の「自律神経の回復を待つ。」という表現は不適切。「自律神経による血圧調整機能の回復を図る。」というべきですね。
21Cは不正解。問題における「誤用」と「過用」が反対。
21Dは正解。問題にある「筋・腱の短縮」の他、関節包・靱帯・皮膚短縮も起こり、拘縮の原因となる。
従って、解答は組み合わせ3の「○××○」とします。
22問(利き手右が右片麻痺となると)
22A 失語症を合併することが多い。
22B 肩の動きに比べて、手の機能は回復しにくいことが多い。
22C 歩行の時の介助は、左後方から行う。
22D 杖は左手に持ってもらう。
22Aは正解。ただし、統計的に右片麻痺者の過半数が失語症を合併するというものではない。利き手が右の場合の脳血管障害による片麻痺に特徴的な合併症として、右片麻痺の場合は「失語」・左片麻痺の場合は「失認」というのが、基礎的な知識とすべきなので、その意味において「正解」とする。『合併することが多い』という“文学的表現”は国家試験問題としてはいかがなものか?
22Bは正解。一般論として、肩はある程度の粗大な運動ができれば肩の機能が発揮されるのに比べて、手指は細かい巧緻運動ができなければ機能しにくい。
22Cは不正解。片麻痺者は「患側後方」に転倒しやすいので、歩行介助は「患足後方」から行うことが原則であり、「基礎的な介護技術・知識」となる。ただし実際の介護場面では、前方に合い向かいに立って、本人の肘を支え介助したり、健側に立って杖を持つ手を上から押さえ固定したり、様々な歩行介助の形態がある。問題として、『行うことが基本である。』くらいが良いと思う。
22Dは正解。そもそも右手は麻痺している側だから杖は持てないという他に、片麻痺が軽度の場合や整形外科外傷の場合でも、「杖は良いほうの側」に持つことが基本原則。
従って、解答は組み合わせ1の「○○×○」とします。
23問(脳性麻痺について)
23A 胎児期から生後4週目までに生じる、脳の障害を原因とする。
23B 姿勢や四肢の運動に何らかの障害を持つ。
23C 知的な発達の遅れを示すことはない。
23D 言語障害になることがある。
1968年の厚生省脳性麻痺研究班による定義では、「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく、永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常であり、その病状は満2歳までにあらわれる」とされています。その定義からすると、Aは○。でも、それが全世界的に絶対的な共通定義・認識ではありません。また、姿勢や四肢の障害は脳性麻痺の症状そのものであり、知的障害や言語障害は合併症として位置付けられます。
従って、解答は組み合わせ2の「○○×○」とします。まぁ、厚生省が定めた定義に基づいて国家試験問題を作るのもいいんですけど…。
24問(頸髄損傷完全麻痺の場合、障害されないのは、)
24-1 膀胱直腸障害
24-2 起立性低血圧
24-3 感覚障害
24-4 嚥下障害
24-5 発汗障害
24-1排尿便機能として、仙髄・腰髄に一次中枢があり頸髄損傷であっても膀胱直腸との間の神経反射支配は保たれますが、脊髄の障害によって随意的に排尿便をコントロールすることができなくなります。
24-2血圧の調整は、腹部の内臓領域の血管の動態の影響がもっとも大きい。つまり、内臓周囲の細動脈が拡張すると血圧は低下します。また下肢の血管の動態も、同様の影響を与えます。細動脈の収縮拡張は、血管運動神経により調整されており、その機能を司る血管運動中枢は「延髄」にあります。従って、頸髄損傷では血管運動中枢は障害されませんが血管収縮を司る交感神経は各レベルの脊髄から各臓器を支配するので、頸髄損傷によって中枢と血管運動神経の連絡が絶たれ、起立性低血圧が起こりやすくなります。
24-3 感覚神経は、各臓器レベルで脊髄神経として脊髄に伝達されるので、頸髄損傷によって大脳へ伝達されなくなります。
24-4 嚥下は、無意識のうちに起こる反射運動と意識的に行う随意運動とが複雑に絡み合って実現されますが、反射の中枢は延髄にあり、口腔・喉頭・食道への神経支配も脊髄は通らないので、脊髄損傷によっても障害はされません。しかし、脊髄損傷者が何らかの原因で誤嚥を起こした場合、気管に入り込もうとする食物を呼出させる機能(いわゆる“むせ”)は、腹筋が障害されているので大変に弱くなってしまいます。
24-5 発汗は、間脳の視床下部に中枢があり、そこから神経線維が各脊髄レベルに達して発汗神経に連絡している。従って脊髄損傷によってその連絡が絶たれ、発汗障害が発生します。脊髄損傷の場合、一般に麻痺域には発汗が見られなくなりますが、自律神経過反射といって膀胱直腸の膨満により、血圧の急激な上昇を伴う急激な発汗が見られることもあり、障害像は複雑です。
従って、解答は「4」となります。