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ナンバージャック 1-5

 隣の部屋からベッドのきしむ音と、若い男女の声が聞こえてくる。
 モーテルの薄い壁では隣の音をさえぎることができなかったようだ。

「うるっさい!」

 レイチェルが壁に枕を投げつけて上半身を起こした。

「今何時?」

 体内時計で調べてみる。

「3時11分58……59秒だ」
「いくぞ」

 レイチェルはぼさぼさになった頭を両手で押さえつけ、
 適当な服を着てジュースを飲み、部屋から出て行った。
 ドアが開けっ放しじゃないか。困ったガキだ。
 レイチェルがドアから顔を出して部屋に残った俺を睨みつけた。

「お前もくるんだよ!」
「あ、あーやっぱりか」

 聞き込みくらい一人でやれよな……



 有名でもなんでもない一人の男を捜すというのは大変なことだ。
 街人に聞いても情報なんて得られるわけがないのだ。
 それでも聞き込みをするのは、それしか方法がないからなのだろう。

 歩きつかれたレイチェルは公園のベンチに座り、難しい顔をしていた。

「飲めよ」

 出かけるときに買っておいたオレンジジュースを皮袋から取り出して渡す。

「リンゴのほうが好きなのに」

 レイチェルが唇を尖らせた。
 それでもちゃっかり飲むのがお前だよ。

 案の定レイチェルはジュースを勢い良く飲んでくれた。
 日射病で死なれては困るので、とりあえず一安心だ。
 砂漠の昼は暑い。
 今日は風が弱く砂塵が舞っていないことだけが唯一の救いだった。

「なぁ、諦めちまえよ」
「うるさい黙れ死ね」

 レイチェルが小さな声でそういった。その言葉は俺を嗜めるときの口癖だった。

「そこまでして親父に会ってどうする?」

 うつむいて黙り込む。

「気持ちはわからなくもない、母親が死んで一人ぼっち、寂しいんだろ」
「違う、そんなんじゃない」

 レイチェルが顔を赤くして俺を睨みつけた。
 光沢のある黒い瞳は一直線に俺のカメラ(目)を見つめている。

「ジャック、あなたジャックじゃない?」

 どことなく懐かしい声がして振り返ると、そこには見慣れた女がいた。
 正確には俺と同じアンドロイド。

「リリィ……」
「久しぶりね、ジャック」

to be continue

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