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ナンバージャック 1-9

「気絶してんじゃねーよ!」

 男の腹をゲシゲシ蹴りつけてやった。
 肉を蹴りつける感覚がなんとも愉快だ。

「なんてことすんだよ!」

 レイチェルが唾を飛ばしてきた。
 汚い。

「ああ!? お前には関係ねぇよ、黙ってろ!」
「な、人、殺しといて何いってんだよ……」

 レイチェルの目はキョロキョロと揺れ、動揺している。

「お前の親父のせいでこっちは命狙われてんだぞ、
 生き残るためには追っ手を殺す。当たり前のことだろ?」
「もっと、違うやり方が……」
「無い、それに俺はそこまで万能でもない。殺さなきゃ殺される」
「でも……」
「ちょっと黙ってろ不細工、メモリがもったいないだろ」

 リリィ……何を考えている?
 なぜ俺は追われている?

 ニッキー・グルンワルドとはいったいどんな人物なんだ?

 とにかく、もう一度リリィに会う必要があるな。

 レイチェルがもごもごと口を動かしている。

「ころすころすころすころす……」

 聞かなきゃよかった……


 ○ ○ ○


「ねぇジャック、もしこのままずっと二人で暮らせたら……」

 僕は知っていた。彼女は僕ではなく、
 僕の顔をした誰か違う人を愛しているということを……
 僕は博士の娘が昔付き合っていたという死んだ彼氏に似せて作られた。
 そんな僕に生きる価値はあるのだろうか?
 全てが嘘でできた偽りの存在。
 惨めな鉄の塊が、こうして悩んでいること自体が、馬鹿馬鹿しいと思う。
 だけど僕の心のどこかで、本当は人になりたいという気持ちがあって、
 その気持ちが膨らもうとするたびに、
 僕は必死になってその気持ちを押し殺すのだ。

「ねぇ、聞いているの、ジャック……」


 ○ ○ ○


「つっ……うるせぇよ馬鹿……」

 暴走した思考回路のせいで現在と過去がごちゃまぜになっている。
 俺って誰だっけ?

 ああ、ジャックか……
 数瞬の間に過去と現代を走馬灯のように駆け抜けたあと、
 意識がはっきりとしてきた。

『後頭部ダメージ、危険、危険、危険』

 頭の中で赤い警告文が点滅している。
 アンドロイドにとって頭へのダメージは致命傷になるのだ。
 頭を狙うのはもっとも有効な手段で……

 俺を殴った野郎は誰だ!?

 振り返るとそこには、あの女がいた。
 リリィ。No.8金髪のポニーテールと華麗な足技が特徴的な女。
 認識するのに0.16秒を要した。
 左の拳が俺の頭へと向かってきたので、俺はそれを尻餅をついてかわす。
 俺はリリィの腹に向けて手に持っていたマシンガンの引き金を引いた。
 リリィが銃弾の嵐にもみくちゃにされながら後ろへ吹き飛んでいった。

 聞きたいことがあったので、頭は狙わないでおいた。

「ジャック……」

 吹き飛んだ左腕からオイルが漏れている。
 リリィの体が破損しいる。見るからに、
 まともに動ける状態ではないのがわかる。
 いくらアンドロイドが硬いといっても、
 同じ部分を何度も攻撃すれば、腕の1つや2つは簡単に落ちるのだ。
 アンドロイドなんて、所詮は人が作った鉄の玩具だ。

「ハハハ、答えがわかったぜ。てめぇの目的がよぉ」

 まったく、馬鹿馬鹿しい茶番につき合わされたもんだ。

to be continue

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