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ナンバージャック 1-11

 人間とアンドロイドが愛し合っているだって?
 馬鹿馬鹿しい。吐き気で口からオイルをぶちまけそうになる。

「ゴステアーノ……ずっと一緒にいたかった……ただ……それだけ……」
「そう……」

 ゴステアーノがリリィから手を離した。
 リリィの目が信じられないといったように見開かれる。
 ゴステアーノは銃を取り出し、何度も彼女に向かって撃ち放った。
 アンドロイドの弱点んであるカメラを狙い撃つ。
 銃弾はカメラから内部へ進入し記憶媒体や計算装置を破壊する。

「な、なんてことを!」

 突然の出来事に、レイチェルが怒声をあげた。
 ゴステアーノに殴りかかろうとするレイチェルを俺は押さえつけた。

 リリィの顔がぐちゃぐちゃになっている。
 修復は不可能だろう。

 ゴステアーノが焦点の定まらない目でリリィを見つめている。
 今にも泣き出しそうな表情で地面に膝をつき、
 彼はリリィの体に顔をうずめた。

「何で?」

 レイチェルが疑問符を浮かべた。

「俺の記憶領域に奴の記憶をコピーすれば、
 永遠に二人は一緒に暮らせる……
 リリィはそう思ったわけだ」
「……それって……」
「そこで泣いてる男ではなく、男のコピーと永遠に暮らす。
 愛している女が自分ではなくコピーを選ぶと知って、
 正気ではいられなかったんだろうよ……
 手に入らないのなら殺してしまえばいい、
 そんなことでも思ったんじゃねえか?」

 レイチェルの顔をチラとみて俺は肩をすくめてみせた。

 少し時間を置いて、ゴステアーノは落ち着きを取り戻した。

「今回は大変ご迷惑をおかけしました。
 部隊には無線で貴方たちへの指名手配を
 解除しておきましたのでご安心ください」

 憔悴した声と瞳。男の表情からは生気が抜けきっていた。

「最後にひとつ、知りたいことがある……」
「ニッキー・グルンワルドのことですね」

 質問を投げかける前に、ゴステアーノが口を開いた。

「ちょうど3日前に奴はやってきた。
 先ほど部下に聞いたのだが奴はリリィに、
 人の記憶をコピーする方法を教えていたそうだ……
 それを知って私はショックで……」
「そんなことはどうでもいいんだよ。
 俺が知りたいのはニッキー・グルンワルドの居場所だ」

 俺は眉根を寄せて睨みつけ、地団太を踏んで怒りを演出してみた。
 こうすると人間は怖気づくのだ。

「……西へ、奴は西へ向かうといって昨日の朝に出て行った。
 どこに向かっているのかはわからない……」
「そうかい。行くぞ」

 俺は男を置いて歩き始めた。
 後ろからレイチェルが何か叫びながらこちらに駆けつけてくる。

「待てよ、コラ、もっと聞くことがあるだろう」
「ねぇよ、バカ」

 そのとき、地面を揺るがす轟音が……
 俺のマイクはそれを銃声と認識した。
 レイチェルが銃声の方へと駆け出した。ゴステアーノがいた方向だ。
 頭を撃ったなら即死だろう。

 胸ポケットからボトルを取り出し一口。
 安物のオイルは、いつもよりどこか味気なかった。

end

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