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ナンバージャック 2-1

 襟の高い白いシャツ(新品)。
 首元には翼を広げた女神様が真ん中にぶら下がっているシルバーのネックレス(新品)。
 ワニ皮のベルト、色は黒(新品)。
 バックルは持っていたお気に入りの獣か悪魔の右手をかたどったものを取り付けてみた。
 レザーのパンツ(新品)にいぶし銀のバックルが映える。
 ブーツも買った。つま先の尖った皮のブーツ。
 ビンテージ風に加工された皮が良い雰囲気をだしている。
 イヤリングも良いのがあったんだが、俺の耳はむき出しのマイク状態なわけで、
 装着できそうもなかったので諦めた。
 耳が無いっつっても耳よりは長く伸ばした髪の毛で隠れてるから、
 そんなに違和感は無いと思う。
 俺の耳が無い理由?
 レイチェルが修理代をケチったからだよ。

 さて、買い物も終わったし、モーテルに戻ってゆっくりするか。

 ガチャリとドアを開けると、服を着替えようとしていたのか、
 半分シャツを脱いだ状態のレイチェルと目があった。
 透き通るような白い肌を薄緑色のブラジャーが頼りなげに保護している。
 よく見るとブラのゴムが伸びていた。
 レイチェルは素早く服を着なおして、物凄い剣幕を立てて怒鳴ってきた。

「何やってんだお前!」
「買い物」

 レイチェルが額に右手をあててうつむいた。
 ウェーブした黒髪が垂れて、ワカメのお化けみたいだ。
 肩で息をしているところをみると、怒っているらしい。
 レイチェルが無言でソファを指さし、座れと合図してきた。

 ゆっくりと腰掛ける。

「節約するって話はしたよな」

 俺は首を立てにふった。
 我々は水売りゆえに収入が不安定。
 だからお金を大事に使おう。
 切り詰められるところは切り詰めていこう。
 確かにレイチェルはそういっていた。

「確かに合意したよな」

 首を立てにふる。
 切り詰めるところは切り詰めた。
 でも、服代って切り詰められないだろ。
 オシャレしなくなったら生きてる意味ないだろ。

「この前も同じこといったよな」

 ああ、そーいえば、前も服買ったらレイチェル怒ってたけ。
 確かその前も、その前も……
 必要な物を買っただけなのに、なんでこいつ怒るんだろう?

「怒んなよ。カッコイイだろこのブーツ、ディテールが凄く……」
「死ねこのポンコツ!」

 モンキースパナが俺の顔面にヒットした。

『頭部・軽度の損傷』

「落ち着けよ、」
「落ち着いてられるか! どんだけ切り詰めてやってると思ってんだこの野郎!
 下着だってまともに買ってねーんだよこのクソ野郎。
 お前の修理代にいくら使ってると思ってんだよ!」

 レイチェルが俺の襟首を掴もうとしてきたので、右手でさっと払いのけた。
 体を触られるのは嫌いでね。それに、新品の服が台無しになっちまう。

「ちゃんとお前のぶんも買ってきてやったって」

 俺は可愛らしいイルカのネックレスを渡した。
 レイチェルは俺の手を払いのけた、ネックレスが輝きながら地面に落ちた。
 どことなく悲しげに落ちた。

「こんなもん買う金あったら、節約しろバカ!」

 ふと、そのとき俺の頭に疑問が生まれた。
 そういえば、こいつの笑顔って、出会ってから一度も見たことが無い。

to be continue

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