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ナンバージャック 2-2

 レイチェルが笑ったことがない?
 いや、笑ったことはある。
 金を手に入れたとき、水を手に入れたとき。
 じゃあなぜ笑わないと感じたのだろう?
 それは、レイチェルは俺に対して微笑んだことがないからだ。

 殺してやりたいくらい憎らしい俺を連れて旅をするのは、
 俺の知識と戦闘力が必要だからだろう。

 窓の無い部屋。湿っぽく部屋の隅にはカビが生えていた。
 物置を改装して作ったであろう地下の部屋は、
 お世辞にも居心地が良いとはいえなかった。
 閉鎖された空間でレイチェルと二人。ここでじっとしていると気が滅入る。

 レイチェルは機嫌が悪いらしく、あれから一度も口を開こうとしない。
 部屋の壁にもたれて床に座る俺に背を向け、
 湿ったベッドの上でレイチェルが横になっている。
 まったく、スケールの小さい女だ。

「パパ……」

 なんだ、寝てやがったのか……

 胸ポケットに入れたボトルを取り出し、蓋を開けて一口飲む。
 潤滑油のオイルが身体に満ちていく。

 ……そろそろ俺も休むか……

『コマンド・スタンバイ』

 ゆっくりと機能が停止していく……





 エンジン音。揺れる車内。軽トラックといっても砂漠を走る軽トラック。
 車高は高く、タイヤは路面を走るものよりも分厚い。

 レイチェルの機嫌が悪いせいか、運転はいつもより荒かった。
 助手席の硬いシートから伝わる衝撃で、ときどき処理落ちする。

 向かうはギムール共和国。ヤギの名産地。
 昨日いた街で聞き込みをしたところ、
 どうやらレイチェルの親父はそこに向かっていったそうだ。

「もっと優しく運転しろよ」
「うるさい、黙れ、死ね」

 運転中は話もまともにできなくなる。
 レイチェルはひとつのことしかできな不器用な女だった。
 だが、メカニックとしての腕は悪くない。
 これほどの腕を持つメカニックは世界に10人といないだろう。
 ひとつだけ欠点があるとするなら、この女がケチということだった。

 節約修理のため、むき出しになったマイクを左手で撫で、
 俺ははぁとため息をついた。
 耳くらい付けてくれても良かろうに。

 突然、轟音が鳴り響き、車が揺れた。
 コントロールを失った車をなんとかしようと、
 レイチェルが必死になってハンドルをきる。
 タイヤがやられたのか?
 右斜め前方に車を発見。
 助手席に座る男が窓から身体を出し、こちらに銃口を向けているのがわかる。

 なんとか車を止めたレイチェルが甲高い声で怒鳴り、ハンドルを殴りつけた。

「くっそう、邪魔すんじゃねーよ!」

 クラクションの音が、砂漠に響いた。

to be continue

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