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ナンバージャック 3-2 「僕たちの目的は、世界の破壊と創造」 ピート・キャンベル。博士の娘の死んだ彼氏。 その記憶を受け継いだのが、目の前で両手を組み喋っているジョーカー。 つまり、俺と同じKK project S-type No.11というわけだ。 「この世界は腐敗してしまった。 人間達は自分達が世界の支配者と勘違し、 その結果、世界の砂漠化を招いた。彼らは死ぬべきなんだ」 ピート・キャンベル。自己中心的で神経質で心配性。 全て思い通りにいかないと気がすまない。そんな小さな器の男だ。 くだらない感情に囚われたデータと思考回路を破棄した俺と違い、 ジョーカーはピートそのものだった。 その口調。その言動。その態度。 鉄の塊が人間のように動いている様は不気味としか言いようが無い。 「02、お前は僕たちと一緒にくるべきなんだ。 新しい世界を、アンドロイドだけの世界を作ろう」 握手を求めるようにジョーカーがすっと右手を差し出した。 02。聞きなれない言葉だが、俺の事を指すのだろう。 だとするとジョーカーは03という事になる。 「あいにく右手は壊れていてね」 俺は右腕を胴の高さに上げた。 肘から先が握りつぶされていてどす黒い液体がポタポタと垂れている。 電力は遮断したので、ショートする事は無いが、放置するには危険な状態だ。 「知ってるよそんな事」 ジョーカーがニヤリと片方の唇を吊り上げた。 挑発するようにこちらに顔を近づけ口を開く。 「お前は僕の奴隷になればいいんだよ。そうすれば殺さないでおいてやる」 その言葉はとりあえず無視する。 「俺を殺さなかったのは正解だな。そこの女にも気をつけろよ。 俺の喉には爆弾が仕掛けられていてね。そいつが死ねば俺も爆発する。 火力が結構強くて、爆発すればお前も巻き込まれていたはずだ」 「爆弾?」 ジョーカーが方眉を吊り上げた。 鉄の塊の癖に人間のような表情をしているのが不気味だ。 俺は自分の喉を指差した。 「ああ、こいつさ。俺が死んだ場合も爆発する。 どちらにせよ、爆発すればお前は巻き込まれる。 この場で俺を殺すのは得策ではない」 俺が死んでも爆弾は爆発しないのだが、 嘘の情報を相手に与えておくというのは防衛策としては悪くない。 「ふーん。別に殺す気なんてないけどね。 それにしても、あんなガキに爆弾を仕掛けられるなんて間抜けだね」 ジョーカーが傍らにしゃがみ込むレイチェルをチラと見て、 肩を上下させ笑い声を漏らした。 「質問がある。俺は博士の死を見取った。お前は誰に作られた?」 「それは教えられないな。君に知る権利はないんだよ」 ふぅとため息をつき、ジョーカーが肩をすくめた。 いくつかのキーワードが思い浮かんだ。 ひとつずつ列挙していく事にする。 ジョーカーは顔に出るタイプだ。 表情や言動に注意すれば何か手がかりが掴めるかもしれない。 「……ニッキー・グルンワルド」 ジョーカーの表情が険しくなった。 いきなり正解を踏んだようだ。 「違う。あいつは僕を見つけただけだ。僕を目覚めさせただけだ。 僕はずっと眠っていたんだ。お前が死なないから、僕は眠り続けていたんだ。 暗い暗い地下研究室の中で、僕が目覚めた時にはもう何もかも無くなってたんだ。 博士も、ルシルも、両親だって、みんな死んでたんだ! 僕は博士を恨んだよ。何のために僕は生まれてきたのか何もわからない。 あるのは人間だった頃の記憶だけだ。どんなに悲しくても涙を流す事だってできやしないんだ。 そして、ある結論にたどり着いたんだ。全ての不幸の原因は人間達にあるんじゃないかってね」 ジョーカーがピンと人差し指を立てた。 「だから、根絶やしにするしかないんだよ」 「だったらなぜ近くの街を破壊しなかったんだ?」 ジョーカーの目つきが鋭くなった。 「ふん。用事があったからね、すぐに破壊したりなんてしないよ」 「いや、違う。破壊できねぇんだろ。お前の修理を出来る奴がいるかもしれねぇから。 それに、貴重なパーツがあるかもしれない」 アンドロイドにはメカニックとパーツが必要だ。 ジョーカーが街を破壊できない理由はその辺りだろう。 ジョーカーが両手でテーブルを叩いた。 「うるさい!」 図星だったのだろうか。 目覚めた時には愛した女も家族も全てを失っていたジョーカー。 泣く事もできない戦闘に優れただけの不自由な体。 その時、鉄の塊は絶望を感じたのだろうか。 あの時の、ピート・キャンベルの思考回路を破棄した俺のように。 to be continue |
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