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ナンバージャック 3-4

「レイチェル。喉の爆弾を外す方法を喋るんだ」

 ジョーカーは諭すように言う。

「嫌だ」

 レイチェルが部屋の隅で首を左右に振る。

「お前らには絶対に教えない!」

 泣いている。頬が濡れている。

 カメラからの映像がレイチェルの涙をとらえた。

「私はパパに会いたかっただけなのに……
 どうして、どうして死んだなんて言うんだよ……」

 声が震えている。

 CPUが危険を察知した。

 レイチェルが自殺をするという可能性。

 しくじったか?

 そっと自分の喉をさわる。

 レイチェルの心停止を引き金に俺の喉の爆弾は
 爆発する仕組みとなっている。

「もう、終わりだ。最初から、何もしなけりゃ良かったんだ……
 こんな事になるくらいなら、何もしなけりゃ良かったのに……」

 レイチェルがポケットからスイッチを取り出した。

 俺の喉の爆弾を爆破させるスイッチ。

 素早く動いてレイチェルの細い手首を握り、持ち上げる。
 衝撃で手からスイッチが落ち、床の上を数回跳ねる。
 それを左足で踏み潰す。プラスティックの割れる音。
 スイッチは粉々になった。

「自殺は良く無いぜ」
「……」

 充血した目で睨みつけてくるレイチェル。

「お前なんか、死んじまえ! この裏切り者!」

 身体を動かし、強引に俺の手を離そうと暴れまわる。
 汚れたスニーカーで蹴りつけられ、お気に入りの服が汚れていく。

「るせーよ」

 腹に膝蹴りを入れると、レイチェルが口からよだれを垂らして、
 苦しそうに嗚咽まじりの息を吐き出す。

「いいざまだな」

 苦痛に呻きながら俺を睨みつけるレイチェル。

「殺してやる。殺してやる。殺してやる」

 アンドロイドは壊れるだけだろう?

 呆れて何も言えない。

 ペッとオイルの不純物を床に吐き捨てる。

「お前との旅もこれで終わりだな」

 笑いが止らない。

「世界を征服するなんて、おもしれぇじゃねーか。
 アンドロイドの国なんて考えた事がなかったぜ」

 そんな、くだらない世界に興味もない。

 なぜなら、俺は人間が苦しむ姿を見るのが好きだから、
 わざわざ皆殺しにする必要はないと思っている。

 それに、メカニックの存在しない世界ではアンドロイドは活動できない。
 人間が生活するのに酸素を必要とするように、
 アンドロイドにはメカニックと機器がかかせない。

 チラりとジョーカーを見る。

 お前が目指すその先にあるのは、幸せでも自由でもなく、破滅だ。
 無意識化で自らの破滅をお前は望んでいるのか?

 だとすれば、人を殺し続ける俺は、自らの死を?

「アンドロイドは……」
「殺してやる……殺してやる……お前も、あいつも……みんな……みんな……」

 憎しみに溢れた声がかすかにマイクに響く。
 レイチェルが小さな声で囁いている。

「壊れるだけだ」

 だから俺は永遠に死ねない。
 ただ、壊れて動かなくなるだけだ。

to be continue

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