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ナンバージャック 3-8

 ジョーカーは黒い髪の隙間からカメラを輝かせた。

 ピート・キャンベルの行動パターンから
 ジョーカーの次の行動を予測する俺の行動を更に予測したという訳か……

 動きを止めたまま、次の行動を推測する。
 それはジョーカーも同じなのかもしれない。
 一歩も動かず均衡を保つ。
 次にどちらかが動いた時が勝負の時だ……

 人間だったら手に汗をかき、心臓がはじけるように脈打っていたのかもしれない。

 次の行動は何か……記憶領域にある情報をかき集め予測を立てていく。
 再構築を繰り返しジョーカーの次の行動を算出する。

 俺もあいつも、きっかけを待っている。
 それは些細なものでいい。
 例えば光や振動、そして、物音……

「おい、お前ら……」

 レイチェルの声。

 俺とジョーカーは唇を吊り上げた。

 考える事は同じか!

 間合いを詰め、互いに頭を狙った右足の蹴りが交差する。
 鉄と鉄のぶつかる鈍い音。

<<右足脛・軽度のダメージ>>

 警告は無視して次の行動に移る。

 この展開も推測済みだ。
 次の行動パターンは僅か598,772通り。

 重心を崩した身体。
 右足を地面に戻しバランスを取る僅か数瞬で次の行動を計算する。

 次に奴が狙うのは右腕を失い、ガードが甘くなった俺の右半身。
 ジョーカーが左足を前に出し、腰を捻る。
 左腕が俺の顔に向けて接近してくる。
 徐々に0へと近づく距離の数値。衝突まで推定0.078秒。

 予測済みだ。

 体を後ろにずらし攻撃をかわしつつ、
 オイルの不純物を漏電したジョーカーの右カメラ向けてペッと吐きつける。

 ジョーカーは首を曲げてそれをかわし、唇を吊り上げた。

「死ね」

 ジョーカーの右手がカメラに接近してくる。 

 類似した思考ルーチンを持つ俺とジョーカー。
 この勝負は行動パターンを読みきったほうが勝つ。
 ここまでの予測はまだできている。
 次の行動パターンは3980通り。

 徐々に減り行く予測値。
 どちらの読みが深いのだろうか。

 右腕は途中で動きを止め、
 体を入れ替え下段の足払いが襲い掛かってくる。

 移動速度、角度を計算し、ジョーカーの足を狙って
 右足を地面に向けて叩きつける。

 ジョーカーは途中で動きを止めたため、俺の脚は床を抉る事になった。
 埋まった右足。移動が不利になった。
 足を床から抜き出す僅か0.2秒が惜しい。

 ジョーカーの右腕が俺のボディへと接近してくる。

<<左腹部・重度の衝撃>>

 脇腹にジョーカーの腕がめり込んだ。

<<左足指示経路遮断>>
<<出力30%低下>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>
<<危険>>

 警告を強制終了させる。

 一撃でしとめようとはせず、徐々に痛めつけて衰弱させる。
 お前の好きそうな行動パターンだ。

「ぐっ……」

 口から吹き返してくるオイルが漏れた。

to be continue

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