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肉襦袢の咆哮


 綾乃とは、なぜかもう一度会うことがあるような気がした。根拠のないことだが、わたしの直感はたいてい当たる。しかし、どうしても会いたい一念から、わたしは柄にもない願をかけた。
「マーゴともあろう人が、M嬢一人に……」
 タバコをすすめて辞退され、理由を訊いたママに打ち明けたあげくに聞いたことばだった。そう、わたしはお酒のつぎに好きなタバコを、綾乃のためにあっさりと棄てたのだ。
 このあいだ、ふらっとママの店に寄った。
 見ていかないかと誘われ、気が進まないままプレイの現場を見学させてもらった。若い女性がMをつとめる現場なら別だが、お客はたいてい中年の男性客、わたしの興味の外なのだ。
 ただし、その日のお客は電気責めマニアで、電極を結んだワニ口をペニスにはさみ付け、もう一方の電極はドクターハンドをつけた女の子の手に握らせ、それでフィストファックさせて興じるというかなりのマニアだ。もちろん低周波治療器などではなく、本物の変圧器──この場合スライダックという名前だそうだが──を使っていた。
「ああ、おーう、ああっ、おおうーっ!」
 肉襦袢を着たようなたぷたぷした裸体が四つんばいになり、尻を突き出しているが、女のようにつるりとした尻だ。そしてだらんと垂れ下がったペニスからは赤のコードが伸び、長身でほっそりとした肢体が美しいS嬢の腕が2本までアヌスに埋めこまれている。
「さあ、もっといい声で泣きなさいっ! この白ブタがっ。あんたはコレが好きなんでしょっ!」
 激しくピストン運動を繰り返され、両腕をくわえたアヌスからは黒のコードが出て床に垂れ下がり、せわしなく揺れていた。
 わたしはアイマスクをして咆吼する男性客の顔を見た。マスクの目も、マスクをした顔も、一目で恍惚の兆しを見せていることがわかる。わたしが間近で見ていることさえ気づかないようすだ。
「直腸の奧深くにまで電気を流すなんて、凄いわ」
 心底感心した。
 だらんと垂れ下がってはいるものの、半勃起の状態で十分反応している。ワニ口を噛まされたペニスの先からは絶えず愛液が糸を引いてしたたり落ち、リノリウムの床に点々とした跡をつけていた。
 ひとしきりつづいたのか、「そーれ、アヌスはこれくらいにしてあげるよ」とS嬢が言って、ぐっしょりと濡れた両方の拳が一気に引き出された。
 「ひっ」という小さな悲鳴がして、男性客はぐったりと四つんばいの姿勢をくずして床に転がった。両腕を抜かれたアヌスに、ぽっかりと大きな空洞ができている。だが休む間もなく、その腹をハイヒールの足がしこたま蹴り上げ、そのあとS嬢が男の前にかがんで上体を仰向けさせた。
「さあ、もっと凄いことしてあげるよ」
 S嬢はやおらペニスをつまみあげ、半包茎の包皮を乱暴に剥きあげると、つるんと剥けたペニスの先に長い針を突き刺した。たちまちたらたらと血が流れ、床にしたたる。女の子はさらに1本針をとりだし、ペニスの根本も刺し貫く。
「くうー、くくぅっ、うっくく……」
 男はなすがままにされ、歓喜のような苦悶のような複雑な声をあげつづけた。
 もしやと思う通りの展開で、S嬢はいまさっきまで自分の手のなかにあったワニ口を2本の針に噛ませ、「さあー、いくわよ」とたっぷり脅しをくれてから、電圧をゼロからはじめてだんだん上げていった。
「あくぅーっ……女王様、お慈悲をっ。それだけは……それだけはっ……」
 男は電圧の上昇につれて激しく身悶え、泣き声をあげつつ赦し乞いを繰り返す。
「おまえは、これが欲しかったんでしょ? だったらもっと大声でよがりなさいっ。そしてペニス汁をまき散らすのよっ!」
「お慈悲を……お慈悲を……痛いですから、お慈悲を。お願いです、女王様っ!」
 針を突き立てられ、そこから電気を流されたペニスが痙攣している。これは相当に痛そうだ。アイマスクをしたM奴隷は顔をいっぱいにしかめ、脂汗すら浮かべている。わたしは、さすがに見ていられなくなり、目をそむけた。わたしは血の出るプレイは好きでないのだ。
「だいじょうぶなの? こんなに激しいプレイをして」
 電気責めプラス針を使った流血プレイとは、この子はわたしより上手かも知れない。それとも向こう見ずの怖いもの知らずなら危険だと思って訊いたのだが、
「おや、天下のマーゴ様が言う言葉かね」
 ママは外人がするように大げさに両手を広げておどけた顔をした。
 相手は男だったが、わたしは綾乃と置き換えて妄想をたくましくした。
 直腸に張り型を突っ込まれ、膣にいくつも異物を挿入された綾乃の体の中心から、何本ものコードが伸びている。ヴァギナはクスコで開かれ、子宮から1本、クスコに結ばれたものが1本、そしてラビアに何カ所か、クリトリスに1カ所のワニ口がかまされ、直腸からも複数のコードが延びている。そうして出産台に乗せられ、足を開いたかっこうで綾乃が激しく泣き叫び、身悶えている図──。
「どうしたの?」
 ママが真剣な顔をして訊いた。
「いえね」
「綾乃のことを憶い出したのね」
 そしてわたしのことを気遣い、こんな提案をした。
「なんなら、わたしのプレイもホームページのネタに使っていいわよ。どう? こんど2人で女の子を責めて、その状況をそのまま書いて出したら?」
「ええ?」
 わたしは、まじまじとママの顔を見つめた。
「あの子ね、実はわたしが気に入って雇った子なのよ」
 ママは得意そうに言って、「肉襦袢」を責め苛んでいるスリムS嬢を指差した。
「あの子が、ママの『指南』を……」
 まるで何年も勤め上げたSそのものになりきり、男のモノをダメにしかねない勢いで容赦なく責めあげ、罵倒しまくる姿からは想像できないことだった。
「あの子が相手じゃ、遠慮するわ」
 わたしは、それを機にママの店を退散した。
 渋谷の街なか、愛車を運転しながら、人混みに目を向けて綾乃に似た子を物色した。渋谷駅周辺はどこも渋滞、運転しながらよそ見をするにはかっこうだった。
 綾乃に似た子は案外多くいたが、体型がいまひとつちがう。綾乃とおなじ20歳代といえば身長が高すぎるのと、下半身の線が細すぎる。綾乃は骨太で、ややがっしりした体型だった。
「日本の女性も、ずいぶんスタイルが良くなったものね」
 スマートというよりは、頼りない感じだ。
「やはりわたしは綾乃のような日本人体型が好きだな。それとさち子のようなおチビさんか……」
 さち子も憶い浮かべた。あの子どものような体を逆さに吊して蝋燭責めにし、前と後ろに拳を突き立てるさまを想像したらヴァギナがうずうずしだした。
(でも、あの関西弁には閉口するなあ)
 思い出し笑いしている自分に気づいて、あわてて表情をもとにもどした。横についた車のドライバーがおかしな顔をして見ていた。
(「日本人体型」というのも、やがては死語になるのだろうか……)
 してみると綾乃は貴重な存在だ。だったらこのまま「脂肪ぶとりの有閑マダム」に独占させるのは、なんとしても悔しいかぎりだ。




爛れる!


 尿道というのは傷つきやすい部分。その一例を紹介しよう。
 わたしの友だちに酔ってSMオナニーを思い立ち、尿道責めプレイを試みた人がいる。なにをしたかというと、ボールペンの尖ってぎざぎざした芯部分を尿道の奧深く挿入して、尿道を傷だらけにしてしまったのだ。さあ、あとが大変。おしっこをするたびに猛烈な痛みに襲われるわ、血の混じった尿がでるわで、2度目以降トイレに立つのが怖くなったという。
 とにかくおしっこをすると激痛が襲うから、水分も控え目になり、おしっこの回数も減った。しかし、人間の体はよくできており、彼女、恥ずかしがって医者にも診せなかったのに、おしっこを繰り返すたびに傷は癒えていき、ついには完治したということだ。
 おしっこは汚いものと思われがちだが、尿に含まれるアンモニアが傷を癒し、回復する力になっていたのだった。
 
尿道電気責めというと、尿道の奥深くカテーテルを挿入し、それに電極を結んでの電気責めととられるが、そんなのは、ほんものの拷問はともかく、プレイとしてはもってのほか。たいへん危険、というより取り返しのつかないダメージを受けるので御法度、大鬼門
 わたしがいう尿道電気責めとは、ひたすら尿道孔とその付近に集中して責める。それも、できるだけ角のない金属製の部分を用い、けっして荒々しいあつかいはしない。それでもデリケートな尿道孔は傷つき、電圧によって軽い火傷の症状が生じたりはするが、その程度はしかたないことだ。
 わたしは、ママの店でのプレイを憶い出しつつ、綾乃とのプレイを振り返った。

 ママが綾乃のラビアをめくって、尿道孔とクリトリスを剥き出させた。が、クリトリスはこんども責めず、クリップはラビアの一端に噛ませた。
「綾乃ちゃん、やめられなくなるわよ」
「うそっ。ひどいっ。悪魔っ。人でなしっ!」
 綾乃は精一杯なじった。
 電極の先が、尿道孔に触れられた。
「痛いーっ! いやああーっ!」
 綾乃の叫びが長く尾を引いた。

 以上が前回紹介した終わりの部分──。
 クリトリスを責める個所からはずしたのは、電気責めによって大事な部分の性感が鈍くなる恐れがあるからだ。もちろんそれを承知でチャレンジするのがマニアだが、綾乃はなんといっても「輿入れ」する身。そうむやみに扱えないし、そうでなくともどこか一点はふつうの女のまま残しておきたい。
 そんなS心など解せるはずもなく、綾乃は初めて経験する電気責めの、それも恐ろしい響きのある「尿道責め」という行為におじけをふるったのである。
「いやっ、もうやめてっ、お願いだからっ──」
 綾乃は激しく首を振りつづけた。
 変圧器の数値は、10ボルトそこそこだった。それをたしかめ、ワニ口の先で尿道孔をつつく。
「あーっ!」
「ひぃーっ!」
 綾乃は悲鳴をあげてのけぞり、のけぞるたびに綾乃を縛りつけた手術用ベッドがきしみ、綾乃の腰と太腿を締めつけるベルトが白い肌に食い込んだ。
「ねえ、綾乃ちゃん。わたしはやたら泣き叫ぶのは嫌いと言ったはずだったわよね」
 そう言って、そのときだけはもう片方の手で尿道孔を剥きあげるようにし、電極の先をわずか尿道の奧に押し込むという思い切った責めにでた。
「ぎゃっ、痛いーっ!」
 ひときわベッドが大きく揺れて、そのあとぎしぎしと軋み音をたてた。
 痛撃が尿道孔を貫通して性感を反応したようだった。綾乃の激しい痛苦の叫びとはうらはらに、いま触れた一点から愛液がゆっくりとにじみ出していた。
「ほらほら、綾乃ちゃん。だんだん気持ち良くなったんじゃない。濡れてるわよ」
「いやっ。いやいやいやっ、そんなのウソよっ!」
「さあ、悲鳴をあげるとこうよっ」
 そう脅しをくれて、わたしは、もう一度今とおなじ動きを繰り返した。
「うぅーっ!!」
 綾乃は精一杯声を殺し、代わりに激しく目を剥いた。
「もう一度耐えられる?」
 さらに繰り返す。
「うっ、くうううーっ。つつっ!」
 綾乃の顔に激しいひきつれが刻まれた。
 尿道からは、絶え間なく愛液がにじみ出ている。そしてそれは電極の先をどんどん濡らしていき、ワニ口を覆っている部分にまで達するいきおいだ。
「あ、ああ、あーっ……」
 綾乃が泣き声になった。しかし、こんどのは苦痛からのではなく、よがるような、すすり泣くような複雑な響きの混じった泣き声だった。
 淫肉の中心にのぞく小さな入り口が、少しずつ充血していく。そして、貧弱な胸と腰から下の部分を切り裂かれ、無残なボロ切れと化した手術着をまとった半裸体はXの字に拘束されたまま、汗を吹きながら身悶えを繰り返した。
 わたしは電圧を少し強め、13ボルトほどにした。
「ううっ、むぅーっ!」
 当然、綾乃のうめき声も強くなった。
「どう? どんな感じ?」
「痛い。痛いです」
「すこし強くしたからねえ」
「そんなぁ……」
 恨めしそうな顔が返ってきた。
「でも、痛いのは最初だけよ。またすぐにしびれてきて、痛みが快感に変わるのよ。だから、少しのあいだ辛抱しなさいね」
「いや、いやぁー」
 わたしはワニ口の先をまた、ばっくりと開いたクレバスのあいだにのぞく小さな孔に向かって、触れては押し、引いては軽くえぐるような動きを繰り返して、これまでとはちがった動き──電気刺激に一定のバリエーションをつけて責めたてた。
 10分、15分……。
 激しく悶えていた綾乃の体が、まただんだん静かになり、苦痛の呻きに甘美な響きがまじった。
「うううーっ、あうーん……」
 最初の尿道責めから30分を過ぎたとき、綾乃の反応がそれまでとまったくちがったものになった。
 全身が激しく硬直し、四肢の先が宙を掻きむしるようにひきつった。そして、「あうーっ」「うおーっ」と、ときおりのけぞりながら、ケダモノのような咆吼を繰り返す。
 そのとき、尿道からはぴゅっ、ぴゅっと、断続的に激しく反応しているらしく、愛液が勢いをつけて噴出されるのである。それはかなりの粘りをともなったもので、ときおり電極の先から糸を引いて垂れ下がった。
 恭子ママが、耐えられないといったようすで綾乃に近づいた。そして胸をさらすために切って開いた手術着の両端をつかむと、残り部分を一気に引き裂き、そのまま下まで裂いていって体からはぎ取った。
 綾乃が一糸もまとわぬ全裸となった。
「おーっ! あううーっ!」
 尿道から愛液をしたたらせながら、身悶える。
 手首と足首、腿の付け根と腰をベルトで締めつけられ、自由を奪われた全身が硬直し、筋を浮き立たせている。
 わたしの手の動きにつれて、電流が性感帯を微妙に貫き、刺激しているのだ。
 なおも糸を引いて流れる愛液──。
 また断続的に繰り返される牝の叫びと悲鳴。それとともに、自由を奪われた肢体に革のいましめは深く食い込み、のけぞる体にあばら骨が大きく浮き立つ。
 1時間かそれ以上……とにかく、おそろしい時間が過ぎている感じがした。
 密室に汗のまじった体臭と、むせかえるような性臭が充満していた。そしてわたしと綾乃の時間(とき)は、性の呪縛にからめとられて魂を奪われたかのようだった。
「ああっ、あ……アアアーッ!!」
 ベッドがぎしぎしと軋み音を激しくして揺れ、綾乃は何度か絶頂を迎えるかのような叫びを発した。しかし、達しそうで達せず、それでいて一定の快楽が永遠に持続する、残酷で淫らな電気責め快楽が飽くことなく綾乃を狂わせ、叫ばせ、悶えさせ、のたうちまわらせていた。

 わたしのなかの綾乃の記憶に、さらに別のイメージがくわわることになるなんて、車を運転しながら悶々とあの日の出来事を振り返っている(あぶないわね!)ときには考えもしなかった。
 家に帰ってパソコンに向かったとき、思いがけず綾乃からのメールが届いていた。あまり思いがけないことに、声を上げるほどだった。そしてわたしは、どきどきしながらなかを開いた。




綾乃メール


――マルガリテおねえさま、ごぶさたいたしております。その後、いかがお過ごしですか?
 いつぞやは、わたしのような者を調教していただき、ありがとうございました。あのおりの経験を思い出すたび、からだのあちこちが火照るようでございます。
 はやいもので、おねえさまと初めてお会いしてより4か月以上たってしまいました。
 おねえさまに電気で責められたときの興奮が忘れられません。
 はじめはちょっと、いえ、ちょっとどころではありません。かなりきつかったです(とくに電気棒を入れられたときなどは!!!です!)。それが、だんだん乗ってきたときは、このままどこまでいくのかと空恐ろしくなったほどです。それがそのとおりになって、恥ずかしいくらい大声をあげてしまいましたね。
 あの、びりびり、ちりちりという独特の刺激が、あそこの部分にぴったりと貼りつくような快感が忘れられません。それこそ、ツボをとらえてはなさず、奧の奧まで刺し貫かれるような刺激、こうやってメールにするため、パソコン入力しているあいだも、わたしのあそこがどうなっているのか気になってしかたありません(だって、お風呂からあがって、パンティ替えたばかりなんですもの)。
 また、しつこくイジメてくださいね。いまの綾乃の願いは、おねえさまに一日中でもオモチャにされ、からだの外といわず、中といわず電気責めにされ、狂いまくり、泣きまくることです。
 おねえさまは、わたしの体を好きだとおっしゃってくれましたね。わたしはいままで、自分の体なんか好きと思ったことは一度もありませんが、おねえさまに言われてからは好きになったような気がします。
 笑わないでくださいね。最近は自分で自分を慰めるとき、この体を鏡に写して行為しているのですよ。そのときのわたしの指や手は、もちろんおねえさまの指と手です。そして、ついつい声をあらげてしまうのですが、家はボロいマンションなので、隣に筒抜けにならないかと、ふと気にしたりもしています。
 あー、環境悪いなあ。(笑い)
 ね。また、ほんとに「拷問」してくださいね(ああ、「拷問」と入力するだけで、そのことばの響きにからだが反応してしまいそうです。ほんとうに恥ずかしくて、イヤらしいわたし。誰ですか、こんなわたしにしたのは……)
 というわけで、こんどのご主人、美奈代おばさま(仮にそう呼ばせてもらいますが)とは、いい関係でプレイをつづけられています。
 ところでおばさまは、恭子ママがいうような「ぶくぶくの脂肪ぶとり」といった体型ではありませんでしたよ。まあ、痩せた子が好きなママからすればそういうことになるのかも知れないけど、わたしの目から見れば、けっしておデブさんではありません。豊満体型という点では当たっていますが。
 きのうもおばさまに呼ばれて一晩明かしてしまいました。疲労感で帰ってきて、帰ったらそのまま、ばたんキュー。ひとねむりし、目覚めてからこのメールを書いたのです。でも、おばさまはプレイするときはけっして強引ではなく、こちらの体調や気分を察してムリをいうことはありません。だからプレイに対するときとおなじく、根は非常にデリケートな方だと思いますよ。
 あのときは完遂できなかったけど、美奈代おばさまに開発されて、それほど大きな拳でなければ、やっとフィストファックも可能になりました。たしか、マルガリテおねえさまのは、そんなにおおきな手ではなかったですよね。恭子おばさまはダメです。あんなのは絶対入らないから。(またまた笑い)
 だから、こんど会うときは、二人だけのプレイということにしましょうね。
  平成14年10月20日

綾乃より

大好きなマルガリテおねえさまへ

「綾乃ちゃん……」
 わたしは熱くなっていた。
 やっぱり綾乃にもう一度会えるという直感は、はずれてはいなかったようだ。すぐにでも返事して会いたい。わたしが望めば、綾乃は無理をしてでも、いまはSMパートナーのご主人である美奈代という夫人をあざむいてでも、飛んでくるにちがいない。
「いや、それはいけないわ」
 わたしは自重した。
 やはり、綾乃の自由意思を尊重しよう。これでは美奈代夫人の足下にもおよばないではないか。彼女は綾乃の体を重んじ、無理なプレイなど強要しないという。綾乃への思いから、知らずに激しい対抗意識を持つようになった美奈代という女性に、これではプレイに対する心構えで負けてしまう。
「そうだ。メールで様子を知らせてもらおう」
 わたしはSには似合わぬ自虐的心境に陥っていた。メールで美奈代夫人とのやりとりを子細に語らせ、嫉妬心を燃えたたせるともに、それに負けないプレイを考える。綾乃がもっと悦び、もっと自我を忘れて狂爛の極致に達する、そんなプレイが見つかるかも知れない。
 それはまた綾乃にもお預けを与えることになり、わたしと会う欲求はより高まる。そしていざ再会したときには懐かしさと乾きのあまり、わたしに身も心も投げだし、狂態の限りをさらすことになるにちがいない。
 わたしはさっそくキーボードをたたいた。

――綾乃ちゃん。
 メールうれしく拝見しました。あなたの笑顔がありありとよみがえりましたよ。ほんとうにありがとう。
 わたしもいますぐ会いたい。でも、それではいまのご主人様に申し訳ないわよね。だから、もうすこしお互いがまんしましょう。そして、がまんの限界がきたら、ご主人様に甘えてみるといいわ。
 今日はその代わり、メール調教してあげるね。

 そこでキーボードの手を止め、あのときの綾乃を思い浮かべていた。

──もう、あなたは電気が忘れられない体になってしまったようね。でも、しばらくぶりだから、最初はきっと痛いわよ。いきなり12ボルトからはじめるけど、耐えられるかしら?

 まてよと、思いなおした。
 せっかくだから、もっと凄いことをしてやろう。どうせ現実でのことではないのだから、どんな残酷なことをしても傷ついたり死んだりすることはないのだから。
(ここから先は、筆者の妄想の部分です。くれぐれも現実のことと誤解なさらぬように)

──ふふふ……。もうこんなに濡れて。綾乃ちゃん、すっかり痛いことが好きになったようね。ラビアがだらしなく伸びきったようになっているじゃない。

 わたしの想像のなかで綾乃は解剖台に全裸で、うつ伏せのかっこうで縛りつけられていた。腰の部分が盛り上がり、綾乃の小ぶりなヒップが上を向いているのは、腹の下になにかを入れて局部を浮かされているからだ。
 わたしはカテーテルをつかむと、綾乃のラビアを剥きあげて尿道孔を露出し、金属棒の先を一気に尿道の奧深く突き入れていった。
「いっ、いったぁーいっ! いやああーっ!」
 綾乃が尻を振って激しく悶えた。
 つぎにドクターハンドをした手にゼリーをたっぷりと塗りつけ、ぬるぬるにしたあと、1本、2本とアヌス穴に指を入れていった。
「ううっ、いやっ。そこはやめてっ」
 わたしは容赦なく責めたて、3本、4本と入れていった。綾乃は「うっ、うっ」と呻きながら苦痛に耐える。4本入れた手で手刀を作り、回転させながらぐりぐりと入れては引き、入れては引く動作を繰り返してアヌス調教を繰り返した。
「いやっ、いやあっ!」
 もうこれくらいと切りをつけ、こんどは一気に抜き出した。
 わたしはそこでワニ口の一方を尿道から出ているカテーテルに結び、もう一方のワニ口はフィストファックに及ぼうとする手に持った。そしてボルタックのスイッチを入れた。
 綾乃が後ろを向いて目を見開いた。
「いやっ、なんてことをすのっ。そんなのいやっ!」
 わたしは空いている手を綾乃の尻にかけると、アヌスのそばに指をかけ、アヌス穴が大きくなるようにした。綾乃のアヌス穴はさっきの調教でゆるゆるになっており、指で開くと容易に暗い空間ができた。そこにドクターハンドの手でゼリーを塗りこみ、もういちど指でかき回し、さらにゆるんだところへ拳の先を押し当てた。
「いやっ、いやだーっ!」
 ぐいっ、ぐいぐいっ……拳が回転しながらアヌス穴をさらに拡げる。
「痛いっ、いたいーっ!」
 めりっと音がしたように思え、拳が綾乃のアヌスを大きく押し拡げて入っていく。
「いやっ、ぎゃあああーっ!」
 わたしは全体重を綾乃のアヌスを突いている拳にかけた。
「うああーっ!!」
 綾乃の全身が背中を基点にして大きく反り返った。と思うや、わたしの拳は綾乃のアヌスを一杯に押し拡げ、そのあと吸い込まれるようにして綾乃のなかに埋まった。そのあとは、綾乃の中心から手首が生えているような光景になった。
「うっ、う……うっ……ううっ!」
 綾乃がしゃくりあげるような声で突っ伏した。
 わたしは、それからゆっくり電圧を上げていった。
「うっ、うーっ、あっ、ああっ……」
 綾乃はゆっくり顔を上げて苦痛の表情を強くしていく。
「あーっ……!」
 激しいうめき声は悲鳴に変わり、悲鳴は絶叫に変わっていった。
「ぎゃあああーーっ!!」
 痙攣しながらのたうち回る綾乃の体の中心に電流の流れる拳が深々と突き立てられ、ずぼずぼと激しく責め立てるとどうじに、一方の電流は尿道に突き立てられた医具の先を通して残虐な刺激をあたえている。
「ぎゃああああーっ……ギャアアアアーッ!!」
 恐るべき電流責めの嵐が綾乃の体の中心をたたきつけ、脊髄をつらぬいて走り抜ける。そしてやがて、血を吐くような絶叫が耳をつんざいて響きわたり、電流責めフィストファックに揺さぶられる全身が、痙攣しながら激しくのたうちまわった。




続・綾乃メール


 綾乃から2通目のメールがきた。最初のメールにわたしが返事をだし、それにこたえてのメールだった。

 マーゴおねえさま……あ、せんだってのメールでそう呼んでいいとおっしゃられたので、こんどからはマーゴおねえさまと呼ばせてもらいますが、メール、たいへんうれしく読ませていただきました。とくに、「調教」の部分はどきどきしながら読みました。なんどもなんども読みました。そして、なんどもなんども自分でなぐさめていました。
 すごいですね。あんなことするんですか、こんど会ったときには。綾乃のお腹にこぶしまで入れたうえに電気を流して……。壊れないんですか? 死んだりしてしまわないんですか?……なんてね。あれは、あくまでもフィクションだってのはわかってますよ。綾乃はそれほどバカではありませんもの。
 でも、どきどき興奮したのはほんとうです。
 綾乃の頭のなかでも、わたしは解剖室の手術台に全裸でしばりつけられていました。そして、白衣を着たマーゴおねえさまが、手術用の手袋をした手で綾乃の恥ずかしい部分に触れて、電気の部品をゆっくりと取り付けながら、クリットをもてあそんでいたのです。
「ゲシュタポの拷問を知っている?」
 調教の記録には書いていませんでしたが、おねえさまはうつぶせにしたわたしの耳元に、そうささやいたんですよね。そのときのことばがよみがえりました。
 「ウフフ」といたずらっぽく笑って、「ゲシュタポ」のたとえは、その一言だけでしたが、あれからわたし、そのあとのおねえさまのセリフを想像してみました。
「あなたは秘密警察に逮捕された反体制派の女学生よ。だとしたら、なにをされるかわかってるわよね」
 わたしは、恐る恐るこたえます。
「拷問するのね」
「そうされたくなかったら、仲間の名前、組織、行動計画その他、あらいざらい白状することだわ」
「わたしはただのレポ(連絡員)にすぎず、組織のことなどなにも知らされていないのよ。だから、なにを聞いてもムダだわ」
 そう言い返したら、マーゴ拷問官(笑い)はなんとおっしゃいますか。
「では、しかたない。お前のからだに聞くしかないわね」
 うーん、これじゃあたりまえすぎるか。だったら、
「しゃべらないなら、かえっていいわ。しぶとければしぶといほど、責めがいがあるというものだから……」
 これならマーゴおねえさまらしいけど、これってなにかで見たセリフですよね。あ、やだ! これはHPの最初のほうで読んだ、黒岩ロックさんの小説からの引用だったんだわ。あー、恥ずかしい。
 とにかくそんなこんな妄想しながら、わたしはおねえさまとの燃えるような時間を思い出し、なぐさめていたんですよ。(こんど、このシチュエーションでプレイしませんこと?)
 ごめんなさい、一方的に書きたいことだけ書いて。マーゴおねえさまが知りたかったことは、美奈代おばさまとのプレイ内容でしたよね。
 6月でしたよね、おねえさまの調教を受けたのは。電気責めのあとが軽いヤケドになって、かさぶたになったあそこの部分がすっかり治ったのは、調教のあと4、5日たってからのことです。それからまた2日くらいして、美奈代おばさまのプレイを受けるというその前日になりました。
 麗羅さんという女性からのメールを受けました。

――はじめまして。わたしは麗羅といって、美奈代夫人の助手のようなことをしている者です。
 いよいよ明日ですが、体調はいかがですか。
 奥さまはあなたの体調を第一にかんがえ、もしものときは日にちを変更してもいいとまでおっしゃってますが、明日、対面の初日だけはどうしても来てもらわなくてはね。風邪などひいてはいませんか?
 さて、それでは明日のことですが、服装などはさして指示することはありません。食事もふだんと変わらずすませてください。そして、身ひとつで来てくださればけっこうです。
 それと、これはSMに経験ある方々がしがちな気づかいですが、浣腸などであらかじめお腹のなかを空っぽにしてくるような必要はありません。というより、むしろ食べたものは蓄めたまま来てください。そういえば、意味はおわかりですよね。
 あと、デジカメやパソコンなどを使って、メールに写真を添付して送り返すことはできますか? もしできたら、あなたの写真を撮って今すぐメールとともに送ってください。
 写真は、
  全裸であること。
  1枚は頭から爪先までの全身像。
  1枚は同じ全身像を後ろから。
  同左右いずれかの横から。
 それと、
  肛門をふくめた性器周辺は写せますか?
  いろいろな角度から5枚くらい。
 変な注文だけど、がまんしてやってね。それを見ながら、奥さまが明日のプレイへのイメージづくりにする元だから。(つけ加えれば、わたしにも必要だから。うふっ、そう、わたしもお相手するのよ。)
 明日は、わたしが車で迎えに行きます。時間と待ち合わせは…………
 それでいいかしら。なんにせよ、このあとメールください。
 今晩は、ゆっくり熟睡してお休みなさいね。といっても無理かな。ともあれ、明日は泊まりがけになるので、そのつもりで。

――すごいメールでしょう? で、どうしたかって? 言われたとおりやりましたよ。メールもちゃんと添付で送って……。
 そして、指定された時間、指定された場所に出向いて……。

 2通目のメールのあと、しばらくして、綾乃と再会する機会に恵まれた。
 美奈代夫人とのプレイを綾乃の口からじかに訊きたい、そう思ってメールのあとの部分は読まないことにした。




再会


 渋谷のパルコで、待ち合わせの階へ向かうべく、エレベーターに向かっていた。扉が開いて、満員の客が吐き出されている。それに間に合わせようと急ぎ足になったとたん、うしろから声をかけられた。
「おねえさまっ!」
 懐かしい声に振り返った。
「綾乃ちゃん……」
 声はたしかにその子と知って反射的に名前を口にしたものの、紺のGパンにベージュのジャケット、黒のセーターといったラフなスタイルの綾乃は、なぜか別人に見えた。
「なんだ、見忘れたんですか?」
 がっかりした声を出したあと、ぷっと頬をふくらませ怒り顔になった。そして勢い込んで歩み寄り、鼻と鼻がくっつく距離まできて、急に思い出したというように、
「あ、そうか。髪切ったんだ」
 短髪になった髪のはしっこをつまみ上げ、ひょうきんに目を剥いて見せた。
 肩まであった自慢の黒髪は男のような髪型になっていた。
「なんでまた……あ、こんどのご主人様の好みなのね」
「さすが、おねえさまはよくわかりますねえ。
 そんなことより、綾乃お腹空いてんの。なにか食べません? お昼、まだでしょ?」
 ずっと明るくなった感じがした。どうしたということだろう。
「今日はうんとごちそうするわ。なにか精のつくもの食べよう。この近くにステーキのおいしい店があるのよ」
「肉ですかぁ」
「あ、そうか。あなたは肉よりも魚だったわね。なら、どこか日本料理屋さがす?」
「お寿司が食べたい」
「お寿司屋さんはあいにく不案内なのよねえ」
「来る途中に回転寿司あったわ」
「回転寿司はないでしょ、ひさしぶりに会ってご馳走するというのに……あ、そうそう」
 上の方の階に、外人客が目立つしゃれた寿司バーがあるのを思い出した。
「そこへ行きましょ」
 結局そこも回転寿司形式の店だったのだ。ただ、若い女店員がしゃれたコスチュームなのと、2個一組ででてくるにぎりの1個が変わっていた。ただのタコやエビに、岩海苔、マヨネーズ和えといったトッピングがされているのだ。そんなことから、どこか高級感があって決めたものの、綾乃にとっては口に合わないらしかった。
「失敗しちゃったか」
「いえ、変わってていいです」
 そう言っておちょぼ口に頬ばっていたのは、岩海苔をトッピングした蒸しエビだった。わたしに気を使い、終始おいしそうに笑顔でふるまう綾乃を見ながら、ボーイッシュなのもなかなかそそられるものがあると感じた。
 渋谷の街もひさしぶりだという綾乃といっしょに、わたしたちは恋人のように仲良く手をつないで歩き回った。手を握りかけたのはわたしからだが、綾乃はごく自然に、もう何年も愛し合っている恋人連れのように握り返し、身を寄せてきたのだ。
「おねえさま、キスして」
「え? こんな人前で?」
「見せつけてやりたいの」
 綾乃の大胆さにおどろいた。ひとまわり以上も年がちがうのにと思ったが、綾乃を思う気持ちは誰に恥じることもないので、わたしはその肩を抱き寄せ、顔を近づけ、軽く唇を合わせた。
 わたしたちはウインドショッピングを楽しんだりもした。
「綾乃ちゃん、あれ、どう?」
「ちょっと派手だよぉー」
「だったら、あれは?」
「あれよりは、どちらかというとそっちのが好きだな」
 もちろんわたしがウソ買いなんかで満足するはずもなく、今日の思い出のしるしになにかプレゼントするつもりでいた。
「あれならきっと似合うわ」
「だけど凄い値段よ」
「綾乃ちゃんが喜ぶなら」と、わたしは早くもサイフに手を伸ばしていた。
「ええっ!」
「買わせてよ、今日はわたしに」
 綾乃は正直遠慮していた。知り合って間もないのにとか、そんな高級似合わないとか、とにかくわたしに金を使わせまいと、いろいろ言い立てて辞退した。
 なんとか言いくるめてプレゼントを承諾させたものの、それならと彼女がリクエストしたのは別のものだった。
「チャイナドレス?」
「そう。一度着てみたいと思ったの」
「チャイナドレスか……」
 実は綾乃のチャイナドレス姿を見たいと思ったこともある。これは一も二もなく賛成し、綾乃の精神的負担も考え、そう高級じゃない店を探し当てることにした。
「あったあった」
 漢字に強い綾乃が、遠目から中国語看板の専門店を見つけ、わたしの手を引いて足早に駆け込んだ。
「見立てはわたしにまかせてよ」
 そう言ってこだわり、しつこいほど試着を繰り返して店の女の子に変な顔までされた。
 しかしその甲斐あって、シックな紫を基調にした落ち着いた雰囲気のチャイナドレスを、綾乃はことのほか気に入った。
「気に入ってもらえて嬉しいわ」
「ありがとうございました」
「だけど、チャイナドレスが好きだったなんてね」
「美奈代おばさまが着ているのを見て素敵だと思ったから……」綾乃はそう言いかけたものの、あわてて口をつぐんだ。
「〈ライバル〉の名が出たからといって妬かないわよ」と、とりあえずは平静をよそおい、つぎには怖い顔をつくり、声色を変え、精一杯押し殺した声で、
「そのかわり、あとの拷問が凄いからね」
 たっぷり脅しを入れるのは忘れなかった。
 でも、「拷問」と聞いて、うっとり目を潤ませるところが綾乃らしかった。だから、「喫茶店にでも寄って行かない?」と誘うのを、
「早く2人きりになりたい」
 綾乃はハスキーな声に精一杯の甘えをたたえ、わたしにいっそう強く身を寄せてくるのだった。


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